駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇花組『ME&MY GIRL』

2016年07月30日 | 観劇記/タイトルま行
 宝塚大劇場、2016年6月4日11時(Bパターン)。
 東京宝塚劇場、7月5日18時半、26日18時半(Aパターン)。

 1930年代イギリス。ロンドンの下町ランベスに住むビルことウィリアム・スナンブスン(明日海りお)は恋人のサリー(花乃まりあ)とともに自由気ままな日々を過ごしていた。そんなビルに思いもかけない幸運が舞い込む。なんと彼が由緒正しきヘアフォード伯爵家の前当主の落とし胤であることが判明したのだ。遺言によって伯爵家の財産と当主の座の継承者となったビルは、弁護士のパーチェスター(鳳真由、柚香光の役替わり)に連れられ、サリーとともにヘアフォード家へと向かうが…
 作詞・脚本/L・アーサー・ローズ、ダグラス・ファーバー、作曲/ノエル・ケイ、改訂/スティーブン・フライ、脚色/小原弘稔、脚色・演出/三木章雄、翻訳/清水俊二、訳詞/岩谷時子。1937年ロンドン初演、1987年に宝塚歌劇で初演された人気ミュージカル。全2幕。

 直近の月組での上演の際の感想はこちら
 今回の役替わりは、Aパターンがジョン卿/芹香斗亜、ジャッキー/柚香光、ジェラルド/水美舞斗、パーチェスター/鳳真由、マリア/桜咲彩花。Bパターンがジョン卿/瀬戸かずや、ジャッキー/鳳月杏、ジェラルド/芹香斗亜、パーチェスター/柚香光、マリア/仙名彩世。
 観に行くのがけっこう遅くなってしまい、Bパターンの評判が良く、先にBパターンを観たので、そのときはなるほどなるほど、と思いましたが、その後ちゃんとAパターンを観てみると、やはりこれがスタンダードかな、とも思ったりしました。
 Bはゆきちゃんのマリアがさすがで、ちなっちゃんのジャッキーのいい感じのお姐さんっぷりが良くて、カレーちゃんのパーチェスターが気持ち悪くておもしろくてすばらしく、キキちゃんの坊ちゃんっぽいジェラルドには私はあまり萌えず、あきらのジョン卿は見た目はすばらしくダンディなんだけど芝居はどうにも棒だな…と思いました。
 Aはべーちゃんのマリアがやっぱりさすがで! あんなにしっとり深い声が出せるとは! でも別におばさんくさくなりすぎていないし、よかったです。ジョン卿は二番手スターがやるには苦しい役なのだけれどどうしてもそういう配役になりがちで、なのにマリアは専科のおばさまがやることが多いので今まではカップルとしてどうにもちぐはぐでしたが、今回はA,Bともそういうことがなくて本当に良かったです。べーちゃんは歌もちゃんとしていましたし、フィナーレも素敵でしたし、よかったよかった。
 キキちゃんのジョンはさすがの達者さ。これで卒業のPちゃんのパーちゃんは、もうちょっと歌えるかなと思っていたんだけれどやや怪しく、でも愛嬌とこれまた達者な芝居で魅せていましたね。カレーちゃんのジャッキーは歌がどうにも苦しかったですが、こちらもいい感じのオカマ感がよかったと思いました。

 みりおのビルは滑舌が怪しかったり小道具の扱いが危なっかしかったりしましたが、下町育ちの気のいいあんちゃんがだんだん紳士になっていく様子と、それでもサリーへの愛がずっと変わらないでいる様子を的確に演じていて、よかったと思いました。ホントはビルの方がずっとサリーに依存しているよね、という感じなのがいいですよね。
 そしてかのちゃんサリーはとてもニンにあっていて元気溌剌、そしてキュートでプリティ。歌詞はともかく「一度ハートを失くしたら」には毎回泣かされました。私は二幕の「街灯によりかかって」から幻想のダンス場面がミュージカルらしくて大好きなので、ここでもセリ上がってくる赤いドレスのサリーの美しさにも毎回泣いていました。
 いいトップコンビになりましたよね。

 とはいえやはり役はないし、「心を動かされがちになるのです」みたいなナゾ日本語の台詞にはあいかわらず手が入っていなかったし、歌詞も誤訳だったり日本語としてあまりに意味不明なものが多くて、通うのはやはりつらかったです。役替わりがあるとはいえさすがにチケットは中では大量に余っていたようだし、ぼちぼちちょっと考えた方がいいと思います。
 ある種の人気があるのはわかるし劇団の財産だとも思うけど、ホントは若手スター主演でバウホールで30人くらいでやってちょうどいい演目だと思うんですよね。新公も役替わりして好評だったようだし下級生のいい経験になったでしょうし、そういう演目にしていっていいと思うんですよね。
 観れば楽しいしほっこりするけれど、積極的に観たいかと言われると「別に…」としか言いようがないのが残念です。
 みりおは任期は長そうだけれど、まだ「これぞ当たり役!」というものをもらえていないのが気がかりです。くーみんの新作には期待しています! まあヴァルモンも化けるかもしれないけどね!!




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五十嵐貴久『編集ガール!』(祥伝社文庫)

2016年07月28日 | 乱読記/書名は行
 出版社の経理部で働く久美子は、突然新雑誌の編集長に任命されてファッション誌を作ることになる。編集未経験の彼女は大パニック! 集められた創刊メンバーはクセモノばかりで、彼氏の学まで部下になる始末。久美子は書籍編集者の学に頼るが、どこかとんちんかんで…働く女子が悪戦苦闘する、お仕事ラブコメディ!

 久々に怒りに震えあきれかえるレベルの小説を読みましたよ…仕事を、女性を、出版事業をナメまくっている。こんな小説を書いて平気な作家がいるなんて信じられません!
 ヒロインが抜擢されるきっかけになる企画書にはまったく目新しさがないし、それに関するフォローもひねりもオチもナシ。不安がって不平を言っているだけで何もしないキャラクターには終始イライラさせられました。
 ワンマンだけど敏腕で鶴の一声で企画を通すという社長も、設定だけで裏もオチもない。それじゃ単なる魔法使いじゃん、現実的なキャラクターとは思えません。
 とりあえずファッションページらしきものを作ろう、とスタイリングして撮影してみる…というのは100万歩譲っていいにしても、ホントに取材した? 中の人の話聞いたことある? 聞きかじった程度の知識で書いてない? ファッション誌編集部にいたことがない私が言うのもなんだけれど、こんな感じを想像するけれどでも絶対に現場ってこんなじゃないよ?とは言えます。安易すぎる、ひどすぎる。
 しかも学の身勝手さに関するリカバリーもオチもありません。編集経験者だから、というだけで、上司であるヒロインを無視して勝手にあれこれ進めて、反論されるとふてくされて投げ出して…経験のない、女性である、恋人を完全に下に見ていてまったく尊重しない男。なのに逆らわれたら不満たらたらで職場放棄していなくなる男なんて、人間としてなってなさすぎて別れた方がいいに決まっているのに、まさかの妊娠小説展開! 別れるどころか「会社を辞めて主夫になってきみを支えるよ」と言われてハッピーエンド、なんてありえない! 気持ち悪い!! それで喜んで結婚できるヒロインの気持ちが皆目わかりません!!!
 しかもこのヒロイン、経理出身ってことになっているのにお金の心配や算段をいっさいしていません。モデルやカメラマンやスタイリストのギャランティはいくらに設定されているのでしょう? 打ち合わせとということで喫茶店で飲んだお茶代に領収書をもらっているけれど、それが経費で落とせる予算があるの? そもそもこの雑誌が定価いくらで何万部が予想されていて原価率はどれくらいなの? なんでそういう部分を書かないの? この作家にとってヒロインが経理出身なのは「編集経験がない」ということのための記号にすぎないからです。総務でも人事でもいいってことなんです。でも出版社にだって経理も人事も総務も必要なのはあたりまえのことです。そこに取材はしないのか? そこにドラマは感じないのか? アタマの中の知識だけで書いて、よく作家面してられるな?
 誌面ができたって雑誌は創刊できません。資材とか制作とか広告とか宣伝とか営業とか取次とか書店とか電子とか、そういうこと全部すっ飛ばしてるのは何故? 知らないからでしょ、調べられなかったからでしょ、興味がないからでしょ。そんなナメた態度で出版業界のお仕事小説を書こうだなんて片腹痛いです。当の出版社もなんでこんな本を出版しちゃったの…?
 まあ帯に騙されて買って売り上げ上げさせちゃってる私みたいな読者がいるからいけないんでしょうが…
 お仕事ドリーム小説だとしてもあまりレベルが低すぎると思いました。文章も平易だけれどまったく滋味がない描写しかないし、話の展開がスローでリズムが悪い。素人か!
 他に何を書いている作家か知りませんが、たまたまこの作品だけがひどかったのだと、せめて思いたい気分です…



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坂井希久子『ウィメンズマラソン』(ハルキ文庫)

2016年07月27日 | 乱読記/書名あ行
 岸峰子、30歳。シングルマザー。二年前、ロンドン五輪女子マラソン代表選出という栄誉を手に入れた彼女は人生のピークに立っていた。だがあるアクシデントで辞退を余儀なくされ、そして今、ブランクを経て復活へのラストチャンスをつかむため、リオ五輪を目指し戦い始める…

 気持ちよく読みました。特に構成が見事だと思いました。
 よく取材しているんだろうし、彷彿とさせるモデルもあるのだけれど、ひとりの女性の、アスリートの、人間の生き様のドラマとして、物語として、すがすがしかったです。
 あと、ラストが本当に鮮やかでした。私は個人的にこのタイプのラストを『タッチ』式、と呼んでいます(笑)。意味は、読んでいただければわかります!



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宙『エリザ』初日雑感

2016年07月26日 | 澄輝日記
 宝塚歌劇宙組『エリザベート』大劇場公演初日(7月22日15時)と23日11時、24日11時を観て帰京しました。二階上手、一階前方下手、一階後方ほぼセンターとバランス良く観ることができました。
 初演から20年、宝塚では9度目の上演、宙組では18年ぶり二度目、初日に通算900回を迎え大千秋楽に1000回を達成する予定の公演です。
 前回の花組での上演の感想はこちら
 また、そもそも私が『エリザ』に思うことはこちら
 なので、毎度のことではありますが、あくまでごく個人的な現時点での感想です。

 というわけで、個人的には、楽曲は素晴らしいと思うのですが演目としては好きでも嫌いでもない、というのが正直なところ。そして宝塚版ではトートが主役とされているとはいえやはりこれはタイトルロールであるヒロインこそが主人公の物語であり、今回のみりおんに関しては私はここでは何度か言及していますが、なんでも上手いスターだとは思うけれどトップ娘役としては申し訳ありませんが飽きてきているので、共感できるか、そもそも好意を持って観られるかがけっこうネックだな…と思ったり、していました。
 制作発表もプログラムのスチールも、お化粧が地味なのも気になりましたしね…

 で。観てみて。
 まず、シシィにとってのどアタマの「パパみたいに」が意外に音程が不安定に聞こえて、アレ?となりました。
 でも、そのあとのまぁ様トートとの出会いの場面が、まずよかった。
 トートは、ハイハイまた獲物が来たねー、じゃあ死の接吻を与えておきますかねー、みたいな無頓着さでシシィに近づくんだけど、朦朧としていたシシィが正気を取り戻して「私を帰して!」と主張したときに、その生気と力強さに初めて魅せられて、初めての恋に落ちた…ように、見えました。決してシシィの美貌に対する一目惚れなんかではなかった。それは私が観たい解釈の演出だったので、私はすごく納得できました。
 そしてゆりかフランツがマイルドで優しくて生真面目そうで、こちらはシシィの元気さ、溌剌とした様子とともに単純に美貌に惹かれたんだな、という感じがあって、これまたよかったです。ゆみちゃんヘレネもすっごく可愛いんだけどね、そこはお話の約束としてね(^^;)。
 で、せーこゾフィーがまたよくて、エキセントリックすぎたりヘンにおもろかったりしていなくて、フツーにちゃんとしていてフツーに怖い。彼女の言い分は責任あるキャリアウーマンとして一理ある主張にも思えて、決してただの意地悪で理不尽な姑ではない。
 そしてそれに反発するシシィも、エキセントリックすぎるわがままさを見せることはなく、「でも私は私で私のフツーでやりたいんだもん、だからここでは死なないよ」と言っているだけの、いたってナチュラルな「私だけに」に聞こえて、すごくよかったのでした。
 そんなシシィをトートも気長に見守って、優雅に待ってくれている。そんな穏やかさ、自然さが全体にあった気がしました。
 最後通告のくだりも、「死ねばいい」のくだりも、不自然だったり作意的だったりせず、感情の流れがとてもナチュラルに感じられました。
 ずんちゃんルドルフがまたまっすぐ自立していていろいろちゃんと考えていそうで、ヘンに不安定だったり病的に母親に傾倒しすぎている感じがないのもよかったです。
 シシィは「自分の子供に何をして何をさせるか、たった今から私が決めます」と言ったわりには放任なんだけれど、そもそも彼女自身が、趣味人で子育ては放任だった父親と教育熱心だけれど過干渉気味な母親に育てられていて、パパっ子で勉強嫌いだったんだから、子供の教育に関してヴィジョンも本当の意味での関心もなくても、当然なんですよね。そんな中でもそれなりにまっとうに育ったルドルフがいるからこそ、「シシィひどいなあ」みたいに思うことが私は今回ありませんでした。
 みんながみんなけっこうちゃんとまっとうで、ただいろいろな小さなことがかけ違って悲劇に至っただけで…という気がしたのです。
 ルドルフの葬儀で、フランツがさっさと十字を切るだけで臣下たちに退出を命じちゃうバージョンもありましたが、今回は彼も棺に覆い被さらんばかりになって悲しみ悔いている芝居をしていたのも、とてもよかった。なーこたんになって大きな脚本・演出の変更などはなかったと思うのだけれど、全体に芝居がすごく丁寧につけられていた気がしました。
 フランツとルドルフは政治的には対立していたんだけれど、家族としては意外とよき父であり息子であり、でもフランツもまた「自分を守るため」ルドルフを見捨ててしまったところがあるのではないかな、と思わせられ、泣けました。
 打ちのめされたシシィが「♪あげるわ命を、死なせて」とトートにすがったときのトートの「死は逃げ場ではない!」も、今までさんざん誘ってきておいていざ拒否するのっておかしいだろ、と思わせられるときがあったりするのですが、今回はそれもなかった。シシィはトートにされるがままに顔をあおのかせて、でも全然トートのことを見ていなくて、だからトートがそれにショックを受けて拒否するのがすごく納得できました。彼は本当に「死」で、シシィの妄想や願望の具現化などではなく、安易な逃げ場として利用されたくはない、不当に扱われたくない尊厳を持った一個の存在なんだよな、と思えたのです。そこからの、まぁ様がややウェットに歌う「愛と死の輪舞」もとてもよかったです。ここでまた今までは、人間的になりすぎているトートに違和感を持つこともあったのだけれと、今回は「死」のトートの感情の動きとして、素直に受け止められました。
 でもここで初めて、シシィの中にも何かが芽生えたのかもしれませんね。これは私の勝手な補完ですが。彼女はそれ以前からも当てのない旅を続けていましたが、このときから喪服しか身につけなくなりました。それはもちろんルドルフへの弔いのためであったのだけれど、真に死を、トートを迎えるための準備を始める意味もあったのかもしれないな、と思いました。
 シシィを、シシィに愛されることをずっと待っていたはずのトートが、愛ちゃんルキーニにナイフを渡すことで結果的に彼が彼女を殺しにいくことを容認する形になることへの引っかかりは、私には未だにあります。最終審判でフランツと対立して激昂して…ってのはあるんだろうけれど、何せこの場面、濃いケープを被っていても美しさがダダ漏れるあっきーエルマーの霊魂を追うのに必死なので、私はメインのお芝居がちゃんと見られていないのです、すみません。
 でもレマン湖畔の芝居はよかったと思いました。ルキーニの襲撃に日傘を掲げるのは反射として、次にトートの声を聞いたときのシシィが、そこですべての反応を止めてしまう感じなのがよかった。ここで喜んで刺されにいったらやはり自殺を肯定するようで嫌だし、かといって怯えて抗ったりしたらやっぱりトートが性急すぎたんじゃん、って悲しくなってしまう。ここですべてが終わって、シシィはそれをただ受け入れた。生きて生きて生きて、天寿をまっとうしたからこそ死は迎え入れられるべきもので、簡単に惹かれたり安易な逃げ場にしたりするものではない、そう私は思うからです。これは皇妃と死神の恋物語かもしれないけれど、やはり人間が簡単に死に恋するような流れになるのは自殺を容認するようで、私は嫌なのです。
 ラスト、何もかもから解放されて真に自由になったシシィは、トートを愛している、というのとはもしかしたらちょっと違うのかもしれないけれど、それでもやっとすっきりとキスし合い、抱きしめ合います。十分に身長差があるからか、シシィが跪かないバージョンなのもいい。あれだと人間が死に隷属しているように、女が男にただ従っているように見えて、私は嫌な気がすることがあるので。そしてここでシシィがヘンに晴れ晴れとした顔をしていないのもいい。トートが示す雲海の先には何が見えているのでしょうね? 人間界? 自分の来し方? これから生きていく未知の世界? 来世?
 それこそこのふたりがこの先泳いで渡る愛の湖とはあの世でのことであり、それはこの世を生きる我々には窺いしれないものです。単純なハッピーエンドとも言えないある種の不可解さを一抹残して、暗転するのではなく役者の上昇と降りてくる幕とに遮られてわりとバッサリ終わる感じなのも秀逸だ、と私は思っています。
 とてもおもしろく観ました。
 ま、かといって追加できるだけ追加してガンガン通う!ということは、ないかな、とも思ったりはするのですが…すみません。

 初日に、今回の公演はシンプルというか、原点に返るというか、過剰なものが削ぎ落とされた舞台に仕上がっているように感じられる、といったツイートに同意のリツイをしましたが、私はそれが今の宙組のカラーなのかもなあ、とも思いました。地味だとかおとなしいとか感じる人もいるでしょうが、必要十分な美しさをじっくり堪能できるし、それだけで勝負できるってすごいことだと思います。この先も深まったり濃くなったりはするにせよ、不必要な余剰や派手さは生まないのではないかしらん。そこがいい、そういう組で、そういう芸風なんじゃないかな、と思いました。
 まぁ様は『王家』から本当に歌が達者になって、今回も大健闘していたと思います。ヨレたりカマしたりはたまにあるんだけれどほとんど個性なうちの気もするし、ビジュアルが素敵で演技が的確で、見惚れました。色っぽいんだけどヘンにナルシーっぽすぎてなくて、シシィを求めてはいるんだけれど押しつけがましくない感じなのもよかったです。でももっとラブラブが観たい人には、もしかしたら物足りないのかな…?
 みりおんの歌は上手すぎて心に響かないところもあったかと個人的には思いましたが、ノーストレスで聴けることはやはり素晴らしい。舞台化粧はちゃんと華やかで美しく、よかったです。オーストリー皇后の物語だけれど彼女自身はあくまで田舎貴族の出身でごく普通の女性であった、という感じが上手く出ていてよかったと思います。病的にする役作りもありえたと思うけれど(そして本当のエリザベートはそういう人だったのではないかと私は考えているのだけれど)、そうはしていないところが現代的でいいかなと思いました。
 ゆりかも歌は本当に安定しましたよね、星組時代がもはや幻のようですね。髭になってもわりと若々しい作りだったのにも好感を持ちました。マザコンのヘタレというよりは、少し内気で真面目で不器用な好青年から始まって、風格が出てからも威圧的ではない老皇帝になり、よかったです。私はゆりかがルキーニでなくてよかっと思っていますし、フランツこそ正二番手の役でトートとフランツがシシィを取り合う三角関係だからこその『エリザ』であり宝塚歌劇だろう、と思っているので、満足です。
 愛ちゃんは、声は特徴的ですが歌が下手だと思ったことは私はわりとなくて、なのであまり心配していませんでしたし、これまた大健闘していたと思います。観ていないけれど今、ソンハのルキーニが大評判ですよね、それに前回のだいもんが圧巻だったので割を食っているかもしれませんが、「ああ、これはルキーニの裁判の物語なんだ」みたいな極端な吸引力はなくても、行き過ぎた狂気もなく軽みが鮮やかで、よかったと思いました。

 ずんちゃんは素敵なルドルフでした。猫を殺したことを後ろめたそうに歌う愛らしいまどかがそのまま成人したのが納得の、まっすぐで真面目で凛々しいルドルフでした。歌もいいし、「闇広」のハーモニーは耳福でした。まぁ様のスーパーロングアームが美しく発揮されていましたねー! ずんちゃんエルマーなら革命はもうちょっと成功しそうに見えるのかもしれません(^^;)。
 りくシュテファンは何しろエルマーのシンメにいることが多いのでオペラグラスに入れられずあまり見えてなくてすみませんが、台詞がクリアで声音が温かで、熱い革命家を演じていますよね。エルマーも楽しみ。ルドルフでは課題の歌がどうなっているか、こちらも注目です。役作りもずんちゃんとは全然違うものになるんじゃないかな。プログラムの雰囲気もよかったです。
 りんきらツェップスはとにかく銀縁メガネですよ! ダンディ!! エルマーたちはハンガリーではややヘタレだったのに、ウィーンに移ってからは強気になるのは、この人のサポートがあるからなのかもしれません。さらなる進化が楽しみです。
 かなこジュラは美しい。でも台詞と歌はいつものかなこでしたね(^^;)、がんばれ!
 すっしぃ、てんれー、まっぷうにさおりおの重臣たちは上手くて手堅い。特にりおちゃんがいい感じで芝居をしているなーと感心しました。てんれーがちゃんと笑いを取っているのも素晴らしい。
 ゆうりちゃんマダム・ヴォルフはとにかく美しすぎて、露悪的な濃さがどうしても出ないきらいがありましたが、低いキーで歌う歌はまったく問題がなく、ハケ際のルキーニへの濃厚キスで笑いも取り、素晴らしいです。パレードはこの姿で降りてもいいと思うんだけどな。Cパターンプロローグの霊魂ではあきゆうり並びという美の暴力が見られます、絶品!
 黒天使たちは揃いつつも個性が出せていて素晴らしいです。まだ半分くらいしかきちんと見られていないのですが…あのかけるセンパイが意外にもクールにきっちり務めていて、そらがさすがに華があって、ひとり女性的なラインで入っているゆいちゃんの妖しさが効いていて、ゆいちぃのスタイルの良さやなっつのそれでも出てしまう顔芸が愛しいです。
 各国美女のキャットファイトもコレクションの娼婦たちも女官たちも、娘役ちゃんたちが入れ替わり立ち替わり大活躍で目が足りず、たまりません。フィナーレの娘役群舞、ありさのエトワールも素晴らしかったです。
 せーこゾフィーは歌の上手さはもちろん、ヘンに笑いに走っていないのがいいし、しーちゃんリヒテンシュタインも声がよくて「皇后の務め」も鮮やかで、よかったです。
 まりなやほまちゃんのバイト大活躍も印象的でした。大きな戦力だなあ。

 でもMVPはモンチだよね! 男役バイトもたくさんしていますが、ウィンディッュ素晴らしかった!! 童顔と、ヘンにソプラノにせず地声で歌う感じが幼いようで、でもだからこそ哀れで、取り押さえられるときの絶叫がせつなくて、ボロボロの白い扇を世界から身を守るように顔の前にかざす姿が悲しくて。そこからのみりおんの「♪もし替われるなら替わってもいいのよ」も泣かせたし、扇の交換が復活していたのも嬉しいし、もらった黒い扇を大喜びで広げるウィンディッシュの笑顔に泣かされるし、もあちゃんスターレイが顔を背けて泣くのも響くし、そこからの「無礼者!」の引っ込みまで、圧巻の場面でした。毎回縛泣きしました…

 それでは最後にプチ澄輝日記を。Cパターンではエルマー、ハンガリー一古い貴族の家柄で、父親は反逆罪で処刑されている、独立をもくろむ革命家たちのリーダーです。
 本当に痩せちゃったけれど、とにかく美しい。ハンガリーの軍服と片脱ぎのマント、帽子が似合うこと! 三色旗を出したり拳銃を出したりが初日はややモタモタしてヒヤヒヤさせられたのはご愛敬。シシィの三色旗ドレスに圧倒されて落胆し、旗を投げ落とすときの「ああ…」の嘆きがそれはそれは弱々しくて、もう負け戦感満々なのがたまりません。
 ウィーンに移ってからはロイヤルブルーのフロックコートが美しく、ツェップスやトートに励まされてか凜々しく根気よく活動し続けている感じなのが頼もしい。トートと握手したとき、その感触に怪訝そうな顔をするのが好き。「ミルク」で銀橋に出てくるときにはあたりを睨み渡していて、怖く激しく、しかし美しかったです。
 二幕になってからの髭がまた美しくて動揺しました。私はあまり髭萌えがないのですが…ルドルフと蜂起をもくろむような晩年になると、顎髭もついて鬢に白いものが混じり、なんたるイケオジ…!と震えさせられました。そんな素敵なおじさまがあんなに鮮やかに軽やかに踊っているのに、なんで成功しなかったのかさっぱりわかりませんねこの蜂起!?!?
 最後は脚を撃たれてツェップスに抱えられながらハケるのですが、その後このふたりはどうしたのかしらね…?という妖しい妄想が湧いちゃってタイヘンでした。てか戴冠式の場面とかも下手でこのふたりがいちゃいちゃ(語弊)してるので、真ん中が全然観られないんですよね! 早くこのツーショの舞台写真出して!!
 フィナーレも、残念ながらルドルフ役が誰にかかわらず最初に平場に出る紳士Aはずんちゃんで固定なので、最初のうちは大階段の方ばっか見ることになりました。初演から隊形などが変わるだけで振りはほとんど変化がない、あの有名なアレをやっているのに感無量。まぁ様がハケたあとなのかな? 一度みんなして下手に移動するあたりから、笑みを口元にひらめかせ始めるのが素敵すギルティでした。
 パレードは革命家3人でセンター降り。晴れやかな笑顔が素敵でした。
 りくの台詞発声がクリアになっていただけに、この人独特の変わった声とちょっと喉が詰まっているようにも聞こえる台詞は、人によってはマイナスだろうなとは感じました。そこが課題なのかなー、歌はいいんだけどなー。シュテファンになったときも台詞はけっこうあるので、がんばっていただきたいです。そしてルドルフは…どんな感じで来るんだろう? とりあえずプログラムの別カットは素晴らしすぎましたけれどね…
 お稽古待ちはあまり行けませんでしたが、後半は連日出が遅くてお疲れ気味だったとも聞いていますし、初の役替わりしかも代役含めたら4役というのは本当に大変だったろうと思います。プレッシャーも大きかったろうし、イケコのダメ出しが長くて大変なことは評判ですしね。
 でも最後の最後にはきっちり納得して仕上げられたのか、公演が始まったら、やるべきことをきっちりやっていくだけといった感じにうまくシフトチェンジできたのか、いつもの元気で優しくて穏やかでにこやかな空気を身にまとうようになっていて、安心しました。怪我などに気をつけて、夏バテしないようちゃんとごはん食べて、がんばっていただきたいです。おかんか! 私はちょっとは夏痩せしたいくらいですが、がんばって通います。なんだかんだ毎週末遠征しますので!!!








 
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ディズニー・オン・アイス『アナと雪の女王』

2016年07月20日 | 観劇記/タイトルあ行
 代々木競技場第一体育館、2016年7月18日18時。

 フィギュアスケートはテレビ観戦ばかりで生の試合は観たことがなく、アイスショーなら観たことがありました。
 これは氷上のミュージカルというかなんというか…かな。家族向けのイベントみたいな要素もあって、観ながらみんなで歌ったり踊ったりもしちゃうようなものでしたが、なかなか楽しかったです。
 私の最低限のディズニー知識でもわかるキャラクターもたくさん出てきて、十分楽しめました。お誘いいただかないとなかなか自分からは行かなかったろうから、おもしろかったです。
 しかしホント人気あるんだなあ、『アナ雪』…続編がどうのこうのって、その後どうなったのかしら…


 

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