駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

吉田秋生『カリフォルニア物語』

2009年12月04日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名や・ら・わ行
 小学館叢書全4巻。
 明るい太陽、夢のカリフォルニアにあこがれながらも、寒さ厳しいニューヨークの吹きだまりに集うしかない若者たちの青春…

 サイファンにはサイフリートの影があります。不器用で不運なイーヴには実社会でうまく生きられなかったジルベールの影が見えます。
 でもあれらは確かにヨーロッパの物語で、これはアメリカの物語になっています。
 そして確かに、『BANANA FISH』へと続いていくのです。不思議です。
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木原敏江『ユンター・ムアリー』

2009年12月04日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名か行
 小学館プチフラワーコミックス。
 名門旧制高校を舞台にした青春浪漫『摩利と新吾』の外伝短編集。
本編の方は白泉社文庫版で読んだのですが、今ひとつぴんと来ず、手放してしまいました。どうも、ふたりの愛の形に納得できなかったんです。

 ここに入った三つのお話はみな素敵です。
「のたれ死にしたって わたくしの人生ですわ」
「聞きたくありませんわ それはあなたの人生ですわ」
 と言い放つロシヤの亡命貴族の娘。
「そんなに殺したけりゃ結婚して 結婚は人生の墓場だっていうじゃない」
 と迫る苦労人の少女。
「ほんとにアースキンはバカだから…あの人あれで28よもう」
 と泣く女優。
 それぞれが摩利と少しだけ関わり、また去っていきます。
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吉田秋生『河よりも長くゆるやかに』

2009年12月04日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名や・ら・わ行
 小学館プチフラワービッグコミツクス全2巻。
 ガールフレンドにワイ談に、喧嘩にドラッグ、それがトシ、深雪、秋男の男子校の青春…
 ずっと「これで完結」と言っていなかったので、今も正式にはそう言っていないかも、いずれ続きが描かれるのかと楽しみにしていたのだけれど…さすがに絵柄が変わっちゃって苦しいかな?
 今や男の子を主人公にした学園ものの少女漫画は数多いですが、この作品はリアルな汗や精液の臭いがあって(失礼!)、特異な位置を占めていますね。
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坂井久仁江『架空の園』『花盛りの庭』『約束の家』シリーズ

2009年12月04日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名さ行
 集英社ヤングユーコミックス。
 父親とのふたり暮らしに耐えかねた雅樹は、家出して祖父の住む洋館を訪れる。その庭には亡き母にうりふたつの少女がいて…親子四代にわたる愛と憎しみの年代記。
 ジュネ系の同人誌からプロメジャー誌デビューした作家ですよね。アンソロジー同人誌持ってます。すみません(と誰にともなく謝る)。
 冒頭の、アラブだかどこだかのことわざ
「明日できる事は今日するな」
 を知っていたので笑ってしまいました。私自身は
「今日できることなら明日の分もしちゃえ」
 ってタイプなんですが。
 一番評価しているのが、信夫さんやダイゴローの存在です。
 つまり、同性愛者は何もはかなげな美少年ややんちゃ少年ばかりじゃなくて、中年親父もマッチョマンもいるんだぜ、ってことをきちんと描いてくれた点です。
 しかも彼らのラブシーン(この文脈でこの言葉を使うとすごーくエッチでイヤだな)がまた色っぽい。そこいらのへなちょこボーイズ・ラブ漫画の描き手と読み手、反省するように。卑屈と偽善と興味本位と的外れのあこがれとで同性愛を扱うのは本当に失礼なことなんだからね。ダイゴローの実家での肩身の狭さが現実です。後にダーリンとなろうとも、初対面ではきっぱり
「安心しろお前は好みじゃない」
 というダイゴローこそが本物です。
 人は本当に、愛し方を教わらないと覚えられないのだけれど(竹宮恵子『風と木の詩』のテーマですな)、不幸にして子供の頃に教わらなかったとしても、周囲の人間に恵まれれば、成長過程でも、大人になってからでも学べます。春佳はまっすぐに育ちました。雅樹もまた春佳を育て、巣立たせたことで(瑞穂やダイゴローや、数々の女たちの助けを得ながら、ですが)真に学んだと言えるでしょう。
 『天国の樹』でシリーズが再開したとき、雅樹がすっかり父親そっくりになっていたのがおかしかったなあ。
 たくさん漫画を読んでいるとよくあることですが、この三人の不思議な家庭像は渡辺多恵子『ファミリー!』のレイフの家を思い起こさせますね。ひところジェイが好きでしたよ。
 九条さんのエピソードなんかもジャニスを思い起こさせます。剽窃だとかオマージュかだとか言いたいのではなく、くり返し語られるモチーフというものがあるということです。佐保子さんがいる天国の花や小鳥と聞くと萩尾望都の『はるかな国の花や小鳥』を思い出してしまうワタシです。
 漫画としてはちょっとモノローグが多いというか、ネームで全部言い過ぎちゃうところがあるのはもったいないですね。でもこの作家の感性が好きです。ラブコメとかすっとんだギャグとかも好きでうまいんだけど、本当はせつなくてドロドロの暗い話が好みなんだろうというところが私と同じです(笑)。
 ただひとつ納得いかないのは、『花盛りの庭』のエンディングかな。じいさんが自殺しようと屋敷に火を放とうと自由だけど、信夫さんを道連れにしていい理由はないと思うぞ。じいさんが正しくないと、雅樹はじいさんを恨んでもよくなるわけで、“物語”としては美しくまとまらなくなるはずなんですが。まとまってしまっているのは何故なんでしょう。納得いかないのって私だけ? (2001.3.8)
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