駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇花組『恋スルARENA』

2019年06月27日 | 観劇記/タイトルか行
 横浜アリーナ、2019年6月25日19時(初日)。

 ショルダータイトルは「RIO ASUMI SUPER TIME045」。次の本公演での卒業が発表されている花組トップスター明日海りおのゴージャスでエキサイティングなステージ。新トップ娘役・華優希のお披露目公演。作・演出/齋藤吉正。

 私は0467出身者なんですけれど(笑)、ヨシマサが横浜出身だとは知りませんでした。まあどんな経緯かは存じませんが、初めてのことにチャレンジしていくこと自体は決して悪いことではないと思っていますし、結果的には成功したと言っていい企画だったのではないかとは思いましたので、まあよかったんじゃないでしょうか。まあ何をもって成功というかは謎ですが。あまりのヨコハマ押しはさすがにちょっとアレだったんじゃないかと思わないではないですが。なんか奥歯にものの挟まったような言い方で申し訳ありませんが、なんか私はこの公演をきちんと批評する立場にないような気がしていて、なんかこんな言い方しかできないのでした(とあえて「なんか」を重ねる)。それは自分が特にみりおファンではないから、とかノリノリになるのにテレるタイプなのでコンサートとかが苦手だから、とか全通するファンもかなりたくさんいただけろうけれど1回観ただけだから、とかの理由があって、でもなんか意外にもとても楽しかったので、そう感じた自分にとまどっているからでもあります。
 ノリのいい若い後輩と並んで観たからかもしれないし、その友達のおかげでとても観やすいアリーナ席から観られたからかもしれないし、担組ではなくても組子のことはそれなりにわかるからかもしれないし、卒業を控えた贔屓を持つ身として同じく卒業を控えているみりおとそのファンにシンパシーを感じたからかもしれません。とにかくすごく楽しかったし、笑ったし、泣きました。確かに演目としては『DH』の方が洗練されていたかもしれないけれど、それを踏まえての、より大きな会場を埋めるだけのパワーや魅せ方を得て空間を支配し圧倒するみりおの姿が見られて、感動しました。全然小さいとは思わなかった。スーパースターだなあ、トップオブトップだなあ、ことさらに気負っていないのがまた良くて、あんなに細いのにものすごい運動量ででも息もまったく上がらず歌声もブレず、本当にすごいなと思いました。華ちゃんに対してものすごく優しいのもいいし、おじさんになっちゃうのもたまりませんでした。これはみんなみりおに恋するよね…!と納得できました。それが何よりの収穫でした。
 のちにみりおデザインと知って驚きましたが、コンサートと言えばトンチキ衣装、嫌いじゃない!(笑) またかよのディズニーも長すぎるヨコハマメドレーもオイオイと思いましたが、オープニングアニメがごく短くなっていたのにはヨシマサの成長を感じたし(笑)『あぶ刑事』大好きだったのでそこは点が甘くなるしあきらマイティーがマジいい仕事していたので感心したし、ニューヒロインの華ちゃんが本当に緊張していたけれど本当に可愛かったし底力とポテンシャルを感じたし、大運動会リベンジもどうなることかと思ったけれどめっちゃ微笑ましかったし笑ったしトロフィーが本物なのは太っ腹だと思ったし(劇団も呵責を感じていたのかもしれない、とは思いましたが)、じき雪組がテレビでやるって発表されてるのに「U.S.A」やっちゃうのホントにオイオイって思ったけどキレッキレで素晴らしかったし、パンチある女装も良かったし黒燕尾は麗しかったし「さよならの向こう側」には爆泣きしました。
 くみちゃんえみちゃんにしーちゃんが歌って支えて、あかり姉さんとしょみちゃんが踊って支えて、せのちゃんとハナコちゃんの押し出しが出てきて、頼もしかったです。毎回別箱の花組子が出演する構成なのも、生徒は大変だったろうけどやっぱり出られて嬉しかったろうしファンも嬉しいものでしょう。
 最後の最後にポスターなんかのあの黄色のスーツで出てくるところも憎いなと思いました。このピンクとブルーと黄色の色合いも良くて、今回はプログラム含め色彩設計が見事なのも印象的でした。
 伝説をいくつも紡いで、集大成を迎えようとしているのだなあ…としみじみしました。次の本公演がいい出来であることを切に願っています。

 終演後は別の席で観ていたみりお担の親友と落ち合い、駅前ホテルのスパで汗を流してからタクシーで15分の彼女の家に行って飼い猫に嫌がられながら朝までヅカトーク(本当に朝4時まで語った…)、いやもっと深い話もたくさんして5時間ほど寝てドトールで朝ごはんして解散して、彼女は昼公演に行き私は帰宅して洗濯してから午後出社したのもいい思い出です。お互い贔屓を見送るので来年は念願のニューヨーク旅行を決行予定です、楽しみです!!!



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大空ゆうひ『BIRTHDAY LIVE 2019~梅雨ノハレマ~』

2019年06月23日 | 観劇記/タイトルた行
 COTTON CLUB、2019年6月22日17時(初日)。

 構成・演出/獅堂ライチ。

 何度か来たことがありますが、フロアにめいっぱいテーブル入れてんじゃないの!?って感じで、入場にも時間がかかるしウェイターは引いた椅子を押しゃしないしオーダーも取りに来ないしオーダーしたドリンクもフードもなかなか出て来ないしでイライラハラハラさせられました。そういう店じゃないんじゃないの!?
 でも、ライブ自体はなかなか素敵でした。女性が多いバンドで、大空さんは身ごろに不思議な飾りのある白のサマードレスみたいなお洋服、下ろした髪に大きなイヤリングが印象的でした。
 ジャズ、シャンソンはまあハマるでしょうし、その流れでの「As Time Goes By」もよかったですが(しかし私はあえての「カサブランカの夜霧に」をリクエストしたのですが)、『銀ちゃんの恋』があんなにジャジーでお洒落なアレンジでしかしノリノリに歌われたのにはテンションが上がりましたし、なんてったって『ルパン三世』ですよ名曲だよねさてはアニメの再放送を見ていたクチだな!? 「♪男には自分の世界がある」とか歌う大空さん、サイコーでした。
 それから中島みゆきの「ファイト」ね! 朗読劇みたいな、というよりもはや短いながらも芝居でしたよねアレは。素晴らしかったです、泣きました。今また響く歌詞ですよね。
 カテコの弾き語りもよかったけれど、そのあとさらにサプライズでバンドが「ハッピーバースデー」の演奏を始めて客席が自然に唱和、大空さんが大テレ、ってのも楽しかったです。良きお誕生日になっていれば、ファンとしても嬉しいです。次の舞台も楽しみにしています。






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朝夏まなと『MANA-HOLIC』

2019年06月23日 | 観劇記/タイトルま行
 ヒューリックホール東京、2019年6月21日19時。

 元宝塚歌劇団宙組トップスターのコンサート第二弾。演出・構成/小林香。この日のシンガーは塚本直の他に吉竹大地、ダンサーは橋田康、中塚皓平、齋藤恕茉、原田真絢。ノンストップ100分。

 前回のコンサートよりかなりダンス押しで、楽しかったです! まぁ様はあいかわらず腕が長くてスタイル抜群で踊りはキレキレで美人で、凜々しくも麗しくもあり、堪能しました。「惑星」に乗って踊ったダンスは、現役時代の黒燕尾の曲だったから…というのもあるけれど、ちょっとモダンバレエっぽい振りをごくシンプルなドレスだけまとって踊るのが本当に美しくて、感動しました。
 とはいえ『AM』の「グレートA」だの「HOT EYES!!」だの、持ち歌(笑)あると強いな、と思いましたし(さすが所属が東宝芸能だけあって、曲の使用許可が取りやすいとかあるのかしらん…)、盛り上がりサイコーでした。『エリザベート』メドレーも定番かもしれませんがやはりよかったです。
 主題歌の振付が覚えやすいものだったのもよかったです。最後の曲を終えてまぁ様が引っ込み、けれど会場には主題歌のカラオケが流れ、そらみんなして歌いながら振りを踊りながらカーテンコールを待ちますよね盛り上がりますよね(笑)。この日1回公演だった宙組子もすっしぃきゃのんゆりかちゃんエビちゃん以下十数名が来ていて、これまた大変な盛り上がりでした。客席降りするまぁ様を目で追って完全に後ろ向いちゃうみんなが愛しかったし、組子の退場時にスポット当ててくれるスタッフさんも、拍手で見送る観客も愛しい、愛しかない空間でしたね。
 これからもいいミュージカル作品を選びつつ、こうしたダンス・コンサートもやっていってくれるといいなと思いました。元は映画館だったというホールですが、コンパクトでいいライブ会場でした。スタンディングはラストだけなのも助かりましたね。楽しかったです!



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宝塚歌劇花組『花より男子』

2019年06月23日 | 観劇記/タイトルは行
 TBS赤坂ACTシアター、2019年6月19日18時半。

 超絶金持ち名門校・英徳学園はF4と呼ばれる4人の美男子生徒に支配されていた。F4とはすなわち「花の4人組」、眉目秀麗なお坊ちゃま集団である。世界的な大財閥の御曹司で俺様キャラの道明寺司(柚香光)、花沢物産の跡取り息子でクールでミステリアスな花沢類(聖乃あすか)、美作商事の後継者でマダムキラーの美作あきら(優波慧)、日本一の茶道家元の息子でプレイボーイの西門総二郎(希波らいと)。彼らは気に入らない生徒がいればロッカーに赤札と呼ばれる指令カードを貼り、学校中の攻撃の的にしていた。一般庶民でありながら両親の希望で英徳学園に通っていた牧野つくし(城妃美伶)は卒業まで目立たずにいようと努めていたが、友人をかばったためにF4に目をつけられ、赤札の対象となる…
 原作/神尾葉子、脚本・演出/野口幸作、作曲・編曲/青木朝子、長谷川雄大、作曲・編曲・音楽指揮・演奏/宮﨑誠。1992年から集英社「マーガレット」にて連載が開始された累計発行部数6100万部を誇る大ヒット少女漫画をミュージカル化。全2幕。

 外部版の感想はこちら
 原作漫画の連載当時、メイン読者層だった女子中学生たちはいわゆる一億総中流家庭というか、自分の家はどちらかというとまあまあ裕福でこれからも明るい未来がある…と信じていた世代だったのではないでしょうか。私は連載開始の年に社会人になった世代の人間ですが、その時代の空気感がわかるつもりです。なのでリアル読者の彼女たちにとって、大金持ちのお坊ちゃまの道明寺たちと今どきこんなに貧乏なおうちはさすがにないよと思えるつくし、というのはファンタジーとして立派に成立していて、そしてこの漫画はその設定からスタートしてやっていることは王道、というとても良くできた作品だったので、これだけのメガヒットとなったのだと思います。というか部数だけならおそらくこれが少女漫画最高峰ですよね。『ベルサイユのばら』とか『ポーの一族』とか、もっと古典的でかつ世に高く評価されている作品は他にもたくさんあるかと思いますが、巻数が短いこともあって、超長期連載だった『花男』のコミックス累計発行部数には全然及んでいないはずです。
「花とゆめ」はまたちょっと別にして、「マーガレット」と「Sho-Comi(かつての「少女コミック」)」、つまり女子中学生を読者対象とした月二回刊誌に掲載される漫画というものは世の識者の目に触れることがほぼなく、よって高くあるいは正当に評価されることがほぼないのですが、ヒットすればその層の8割以上が知っているようなものになったりするし、コミックスの部数もそこらのやたら高名なだけで実は売れていないサブカル漫画なんかとは桁がひとつもふたつも違ったりします。ただ、そのブームというかインパクトは一過性のもので、少女たちが成長しその時期を卒業していくと忘れ去られていくものであり、またそれでもいいとされて日々生産されているものだったりします。時代と寝た…というよりむしろ時代を抱く作品なのだ、と私としては言いたいくらいです。
 たとえば『ベルばら』『ポー』最近宝塚歌劇化されたという点では『はいからさんが通る』もですが、それらはいずれも連載当時すでに過去であった時代を舞台にして描かれた作品だったので、そこが『花男』は違うんですね。だから『花男』の宝塚歌劇化発表には私は違和感を持ちました。現代劇というものは宝塚歌劇にはなかなかそぐわないのではないかと危惧したからだし、れいちゃんの主演作が『はいからさん』から続いて2作、漫画原作ものでいいの?と思ったからです。私はまた、宝塚歌劇団はただの2.5次元ミュージカル劇団になってしまってはいけない、とも考えているのです(論法として2.5を下げて言っています、すみません。あまりたくさん観ていないので言及する資格はないのですが、玉石混淆の出来だと思っていることは認めます)。
 さらにこれが連載開始から30年近くたって微妙に古い「現代」の物語になっていること、またお稽古場レポの様子などから漏れ聞こえてくるに、F4がスマホを持っていたりクラスメイトたちがインスタにつくしのスキャンダルを投稿したりと、時代設定が「2019年」に移されているらしいと聞いて、ますます不安になったのでした。
 宝塚歌劇の観客層のボリュームゾーンは決して女子中学生ではなく、アラサーからアラ還くらいまでのマダム(未婚であれ、イメージ的に)なのではないかなと思うので、1992年だろうが2019年だろうが女子高生の恋愛は等しくファンタジーに思えて楽しめるのかもしれませんが、しかしそれでいいのでしょうか。2019年の私立高校で、一部の男子生徒グループが彼らだけ制服も着ず、指名した生徒に暴力を振るわせ、攻撃するようなことが平然と行われていることなどありえません。イヤ残念ながらあるかもしけないけれど、犯罪だと告発されたり、SNS的に炎上したりしてもっと早期に問題解決がなされるはずです。けなげなヒロインが凜々しく立ち向かって云々、なんて解決はありえないし、そこから恋が生まれるなんてこともないでしょう。そして通う生徒のほとんどがいわゆるお金持ち、という学校は確かに存在するでしょうが、学生の、というか一般家庭の平均的な裕福度が今は明らかに30年前より下がっているので、もっと棲み分けがタイトにされているだろうし、平均層からのこういうお金持ちへのドリームも純粋な憧れとか羨望だけではもうなくなっていて、もっとほの暗いものになっているのではないでしょうか。要するに、ドリームもリアリティもファンタジー度合いも、この原作漫画が持っていたものと今の世の中とでは違いすぎていて、安易な変換は無理なのではないか?という危惧です。現代のリアル女子中学生でこの作品の舞台を観る人は限られているかもしれませんが、というか彼女がこの舞台を観るということはその彼女の境遇はおそらく平均的なものとはすでにしてけっこう違うんじゃないかと思えますが、それでも、「は? 何コレ??」となっちゃうんじゃないの?と思ってしまうのです。そんなクオリティにしかならないであろうものを、おそらく次代の花組を背負って立つスターの主演作にもってきちゃうとか、劇団ってホント思慮ないよね…と暗澹たる気持ちになったのです。
 実際、私はまあまあ早くに観た方だと思うのですが、それでも初日以降、「いじめ描写がしんどい」「暴力、犯罪行為がひどい」という感想は聞こえてきていたので、フラットに観ようと心がけつつも、わりと「野口!」と暴れることになるんだろうな、と思いながら赤坂駅に降り立ったのでしした。

 …が、なんとびっくり、私は自分のこういう鈍感さを本当に嫌に思いますが、それでもこうしたお金持ちとか貧乏人設定とかは物語のための最低限の設定に私には捉えられて、リアリティがないとかファンタジーとして萌えられないとかは全然思わず、そこから立ち上がるつくしの凜々しさいじらしさすがすがしさと、それに心打たれてうっかりフォーリンラブしちゃってじたばたする道明寺のバカさ可愛さにきゅんきゅんしてしまったのでした。なんてったってしろきみちゃんが絶品でしたし、れいちゃんも本当に上手い。ちゃんとこのキャラクターになっていて、駄目なところも嫌なところもそれなりに見せて、でもやはり彼女が演じることで好感度を持たせているし、決めるときはカッコ良く決めて見せてくれて、さすがスターだな、と唸りました。フェアリーはジャニーズとはまた違うスターオーラとファンタジー力とで、観客を魔法にかけられるのでしょうね。
 チャチさギリギリのセットと駆使される映像も世界観に合っていたと思えましたし、展開がスピーディーなのも現代を舞台にした漫画原作ものっぽいし、多用される暗転に関しても漫画のコマ割り、ページ繰りを想起させて私はいいなと思いました。
 スターの配置も適材適所で、ほのちゃんの花沢類もよかったし、恋仇具合や出番のバランスなんかもちょうどよかったと思いました。ナミケーもさすが上級生で、マダムキラーの色気の表現が上手い! ただ、並ぶのが新世代スター(なんせ脚が破格に長い!)でスタイルお化けの希波くんだったので、見目は分が悪かったかも。希波くんはまだまっすぐやっているだけ、に見えますが、それでもたいしたものだし、大きく育てていただきたいです。
 カガリリの静(華雅りりか)がまた案配が良くて、そうなのよカガリリはおもろい方向ばかりじゃなくて美人枠もちゃんとできるんだからちゃんと起用してよね!と思いましたし、桜子(音くり寿)のおとくりちゃんがまた破壊的に上手いのでした。彼女もどうにかしてあげてほしい…小さすぎるのが難なのだろうか…てかそれでいうと私はしろきみちゃんは上手いんだけどさすがに機を逃した感があるし、顔が四角いのが相手を選ぶよなーとか思っていたんですけれど、華ちゃんも顔は大きいし、デュエダンとか素晴らしくて娘役力は断然しろきみちゃんの方に一日以上の長があるので、これが次期トップコンビでもよかったんじゃないの…?とはこっそり思ってしまいました。れいちゃんとのバランスもよかったけどなー…まあ華ちゃんはこれからメキメキ成長するとは思っていますけれどね、伸びしろしかないんだし。
 それはともかく、そんなわけで道明寺はサイテーのいじめっ子だろうとそこから変わるしフォローもされるんだけれど、F4の尻馬に乗っていじめに荷担するクラスメイトたちの闇はそれこそ現代的な視点で見ると救いも何もあったもんじゃないので、それをタカラジェンヌに演じさせるのにはやはり私はざらりとしました。どんなに脇の下級生だろうとファンは必ずついているんですからね。中堅陣も上手いだけに笑えなくて、けっこうフクザツになりました。これはやはり、作品選定の問題だったろうと思います。以後の課題にしていただきたいです。安易な原作ものはやはりもっと控えて、オリジナル作を書ける作家を育成すべきです。そしてもっと宝塚歌劇でしか描けない愛とドリームとファンタジーを紡いでいってほしいです。今回はやはり、原作漫画の立体化にしか思えませんでした。『はいからさん』よりだいぶショーアップしていて「ミュージカル・ロマンス」になっていたとは思いますが、やはりラブの規模が小さいというか、それこそ庶民的すぎやしませんかねかりにも宝塚歌劇がやるにはさ…と言いたくなってしまうのです。もっとゴージャスに、普遍的に、ワールドワイドに、やってもらいたいのですよ…
 生徒はみんな本当に本当にがんばっているんだから、劇団にはなおさら精進を求めます。






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『ピピン』

2019年06月16日 | 観劇記/タイトルは行
 シアターオーブ、2019年6月15日12時半。

 カリスマ的なリーディングプレイヤー(クリスタル・ケイ)率いる旅芸人一座のショーが始まる。人生という壮大な旅物語、ミステリアスな陰謀、心温まる笑いとロマンス、そして奇想天外なイリュージョン。一座が披露するのは若き王子ピピン(城田優)の物語…
 脚本/ロジャー・O・ハーソン、作詞・作曲/スティーブン・シュワルツ、演出/ダイアン・パウルス、振付/チェット・ウォーカー、サーカス・クリエーション/ジプシー・スナイダー。翻訳/小田島恒志、音楽監督/前嶋康明、訳詞/福田響志。1972年にボブ・フォッシー演出でブロードウェイで初演された舞台が2013年にサーカス・アクトを大胆に取り入れてリバイバル、その日本初演。全2幕。

 一緒に観た友達が『キャンディード』に似ている、と言っていましたが、確かに若者の自分探しの旅で、身近でささやかな愛とつましい暮らしを選んで終わる青い鳥めいたオチ、という点で同じ話かもしれません。あれもヴォルテールが語る劇中劇みたいな構造を取っていましたしね。
 旅に出て戦争に参加したり祖母を訪ねたり革命を起こしたりしてみたあげくでないとそんな簡単なことにも気づけないのかね男って馬鹿ね、としか言いようがない気持ちにもなりますが、まあ男性創作世界では普遍的なテーマのひとつなのでしょう。そんなわけでストーリーはごく単純ですが、それを今回はサーカス・アクロバットやパフォーマンスで見せるミュージカル、に仕立てているので、それが見どころであり、それは確かに素晴らしくて堪能しました。『オーシャンズ11』のマジックなんかより断然ちゃんとしてましたしね!(^^;)
 ザ・プレイヤーズたちだけでなくメインキャストもガンガン身体を張っていて、特にピピンの祖母バーサ(この日は前田美波里、中尾ミエとのダブルキャスト)のパフォーマンスは素晴らしすぎました。もちろん組んでいる男性がすごいのだろうけれど、当人もすごいよぶっちゃけ役者の仕事を越えてるよ、でもやっちゃうんだよねできちゃうんだよねすごい…!
 お目当てのきりやんはピピンの義母ファストラーダ(霧矢大夢)。ちょっと背中が硬いようにも見えましたが、大きなソロナンバーをそれはそれは鮮やかに歌い踊り、ミュージカル・スターっぷりを見せつけてくれました。すごい!
 宮澤エマちゃんも上手いので、でもキャサリンはあまり出番がなくて残念でした。父チャールズの今井清隆もほぼ1幕だけの出番でしたしね。でも、贅沢ではありました。上手い人しかいなかったので。
 リーディングプレイヤーは初演は男性でイメージはチャールズ・マンソンだったりするそうですが、狂言回しのような道化のような神のような悪魔のような、なキャラクターでしたね。ピピンを励ましたり導いたり、脅したり誘惑したり。ミュージカル初舞台のクリスタル・ケイの起用が効いていると思いましたが、それは日本人の平均的な容姿に慣れてしまった者からの差別的な視線になるのかなあ…ただそれで言うと城田くんがピピンなのも良くて、彼は他の舞台では背が高すぎて悪目立ちしてしまうところがあると私は思っているのですが、この舞台では中身はともかく(王子らしからぬフツーの若者、というキャラクターなので)王子っぽさとか主人公感が表現できていて、いいなと感じたのでした。
 ピピンがキャサリンとの暮らしを選ぶことはリーディングプレイヤーにはある意味で意外というか期待外れだったらしく、彼女は次にキャサリンの幼い息子テオに手を差し伸べて、物語は終わります。これも1998年に加えられた結末で初演にはなかったそうな。パフォーマンスには圧倒されたもののストーリーとしてはよくあるものだしちょっと退屈かな…と思って観ていた私でしたが、これにはぞぞっとさせられて、暗転に盛大な拍手を送っていました。人間は神から、あるいは悪魔から逃れられない。歴史は繰り返す。ピピンは父カール大帝(いわゆるシャルルマーニュ)と違う生き方を選んだ、けれどその息子は…という恐ろしさ、愚かさ、それでも…という一縷の希望。そんなものを感じました。
 リピーターが盛り上げたりもしているのでしょうが、私は基本的にはノリの悪い客で、おもしろいかどうかもわからないのに冒頭から騒げないし、客席参加もご唱和くださいも苦手だしなんなら手拍子もほとんどしませんでしたが、それでも楽しく観ました。こういう舞台もウケるといいな、とは思っています。私はもう少し芝居寄りのものが好きだ、というだけの話です。
 お衣裳(及川千春)、よかったなあ。あと楽曲が本当に良かったです。日本のオリジナル・ミュージカルには作曲家がまだまだ足りないな、と感じました。サントラが欲しいです。
 休日のヒカリエの混みっぷりには辟易しましたが、楽しかったです。



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