駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『新・近松心中物語』

2009年12月16日 | 観劇記/タイトルさ行
 日生劇場、2004年3月17日ソワレ。
 大坂新町の古道具商の婿養子・笠屋与兵衛(田辺誠一)は生まれながらに気弱な男。姑に叱られて家を飛び出し廓に居続けるありさま。しかし女房・お亀(須藤理彩)の与兵衛への愛情は募るばかりだった。一方、幼なじみの飛脚屋亀屋の養子・忠兵衛(阿部寛)は拾い物を届けに遊郭にやってきて、遊女・梅川(寺島しのぶ)と偶然出会う…脚本/秋元松代、演出/蜷川幸雄、音楽/宇崎竜童。1979年の初演から通算1000回以上の上演を誇る舞台の新バージョン。紅白でも歌われた主題歌のリニューアル歌唱は森山良子。

 宝塚歌劇団『心中・恋の大和路』(私が観たのはOG公演ですが)でも思ったのですが、何故書き換えで取り上げられるのはいつも『冥土の飛脚』で『曾根崎心中』ではないのでしょうね? 『曾根崎~』の方の物語をよく知らないのですが。それはともかく、『心中・~』を観たときにはちょっと行動に納得できないキャラクターがいた記憶があるのですが、今回はそんなことはありませんでした。おもしろく観ました。
 絶賛されている梅川役ですが、キャラクターとしては個人的にはお亀の方が好きです。お金持ちのお嬢さんで、幼なじみの従兄弟がずっとずっと好きでやっと夫婦になれて、彼が情けなくても気が弱くても好きで好きで、やきもち焼きでおてんばで元気でまっすぐな女の子。演技も的確でよかったと思います。
 ちょっとだけひっかかったのは、特に阿部寛と田辺誠一の台詞のしゃべり方というか、発声というかです。もろに芝居口調なんですよね。
 時代劇だし、大阪言葉だし、テレビドラマでやっているようなナチュラルな今風のしゃべり方をしたら変だっていうのはわかるのですが、それにしても大仰で芝居かがっていたと思いました。今時、舞台でもこういう口調ってあまり観ない気がしたので…それとも明治座とか新橋演舞場にかかるような芝居はこういうものが主流なんでしょうか(今回は日生劇場でしたが)。
 でも、ゆるやかに膝を曲げて所作も美しく、いかにも京・大阪の(実際にはその近郊の田舎生まれなのでしょうが)優男ふたり、という感じなのは良かったです。

 忠兵衛梅川の心中で泣かせるんだったらその前の場の笑いはどうなんだろう、という気もしなくもないのですが、多分これがずっと続いてきた日本の大衆芸能の形、エンターテインメントのあり方なんだろうな、とも思います。涙も笑いもとる、という。
 寺島しのぶは旧バージョンでお亀役もやったことがあるし、母親の富司純子も梅川を演じたことがある、歴史ある舞台ではあったのでした。
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マシュー・ボーン『くるみ割り人形』

2009年12月16日 | 観劇記/タイトルか行
 東京国際フォーラム、2004年3月10日ソワレ。
 クリスマス・イヴ。意地悪なドロス博士夫妻(この日はダレン・フォースロップ、アナベル・ダリング)が営む孤児院で、孤児たちがクリスマスの飾り付けをしている。役人たちがプレゼントを持って視察に来るが、博士のわがままな娘シュガー(ノイ・トルマー)と息子フリッツ(フィリップ・ウイリンガム)が横取りしてしまう。孤児のひとりであるクララ(ケリー・ビギン)は、おこぼれの中からくるみ割り人形(このときはもちろん人形。のちにジェームズ・リース)を見つけるが…演出/マシュー・ボーン、ロバート・ノーブル、音楽はもちろんピョートル・イリイチ・チャイコフスキー。2002年にアドベンチャーズ・イン・モーション・ピクチャーズからニュー・アドベンチャーズに改名、1992年初演版をリクリエイトした舞台。

 だから「マシュー・ボーン『くるみ割り人形』」と表記するより「ニュー・アドベンチャーズ『Nutcracker!』」と表記するのが正しいのでしょう、本当は。
 チャイコフスキーのミーハーファンなのでCDは愛聴していますが、バレエ版は実はあんまり好きじゃないというか、おもしろく観た経験がなかったんですね。とはいえ『白鳥の湖』がアレでしたから、さてどう来るかと楽しみにしていました。
 ものすごく展開が早くてアップテンポな舞台で、振りも速くてめまぐるしい、まさに子供の夢のおもちゃ箱のような作品に仕上がっていました。ラストもしっかりハッピーエンド。でも早すぎてホントの子供にはついていけなかったかもしれません。せっかくのパ・ド・ドゥもゆっくり目だったクララとくるみ割り人形のものですら、アダージョとは言い難かったです。しっとり好みにはつらい…でも楽しかったです。

 前作もそうでしたが、
「あの名曲がこんな使われ方を! でもピッタリ!! ビックリ!!!」
 と今回も思わせられました。だって「花のワルツ」が「ペロペロ踊り」に…!(笑)ちなみにお気に入りのキャラクターはリコリスでした(この日の女性は友谷真実)。かわええ!

 しかしもしかしたらこの作品のプリマはプリンセス・シュガー役なのでは…二幕はほとんど踊りっぱなしでした。最後の場はさすがにバテている感じで大変そうでしたが…この日のノイ・トルマーはタイ出身ということで、エキゾチックな顔立ちがいかにも「意地悪ないじめ役、ザッツ・イライザ!」という感じで良かったです。
 日本人キャストもふたりいましたが、孤児院のシーンではどうしてもアジア系の顔立ちが悪目立ちしている気がしました。夢の国へ行ってしまえばそれも個性なんですけれど。
 それと、西洋ではメガネキャラってどういうニュアンスがあるのでしょうね? 孤児院では壊されたくるみ割り人形を修理してくれる優等生?秀才?&夢の世界では道案内のキューピッド。常人とはちがう、三枚目だったり神性を持った者だったりという感じで描かれているのでしょうか。
 でもまあとにかくバレエにはやや小さい劇場を本当にところ狭しと展開する、楽しい舞台でした。

 ちょっと気になったのが、ポスターやパンフレットに使われている意匠というかデザインです。スノードームというんでしたっけ、スノーボールかな?ひっくり返すと中で雪が舞っているように見える、あの置き物飾りの中で、パジャマのズボンだけを穿いて上半身は裸の男性が宙を舞っている、あの絵だか写真だかです。あの人物はくるみ割り人形なんでしょうかねえ…でも、確かに彼はタイトルロールではあるんだけれど、原作でも実はあまり大きな役ではないし、今回もそう言っていいと思うのですよね。
 これはあくまでクララの物語なわけです。
 だいたい舞台でパジャマを着ているのはキューピッドだし。『白鳥の湖』が当たったから、女性客を呼ぶために、男性の像を使った…というのは深読みしすぎかしらん?
 あと、仕方がないのでしょうが、多分このクララの相手となる孤児は少年なんだと思うので、胸毛をどうにかする訳にはいかなかったんでしょうか…イエ、私は嫌いではないですけどね…ははは。
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南Q太『あたしの女に手を出すな』

2009年12月16日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名ま行
 飛鳥新社

 短編集。
「キスのとき舌入れないでって言われてすごく悲しかった」
 と泣く女の子のお話『しゃんしゃん』なんかが好きです。
 巻末の『あそびにいこうよ』は4ページずつの連載なんですが、自分でもこんな感じのものが描きたくて玉砕したことがありますよ…
 エッチなシーンを描くのに体のデッサンが変な漫画家って嫌ですね。この人の絵はめちゃくちゃうまいとかじゃないけれど、デッサンはちゃんとしているし、男の体も女の体もいろっぽい。すごーくしょうもないこだわり方で申し訳ありませんが、お腹とか脚のつけ根の描き方とかがすごーくそそられます。すみません。
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岡崎京子 『pink』

2009年12月16日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名あ行
 マガジンハウスマグコミックス

 OLのユミはピンク色が大好きでワニを飼っていてホテトルのバイトをしている。父の後妻は嫌いだが、その連れ子の妹ケイコとは仲良しだ。義母のツバメで作家志望の大学生ハルヲと知り合い…“愛”と“資本主義”をめぐる冒険と日常のお話。

 この人の作品で最初に読んだのがこれでした。幸福な出会いでしたね。
 普通だと、こういうオチが嫌いなんです。ハッピーエンドの一歩手前にその崩壊をぶつけて突き放して終わりっていうやつ。でもそれがこの作品ではありかなとも思えます。ユミやハルヲみたいなある種の意味でまっとうな人々が幸せになりきれない今の世の中の方が間違ってるんだぜ、というメッセージを感じるからです。違うかな?
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