60~90年代名作漫画(昭和漫画主体・ごくタマに新しい漫画)の紹介と感想。懐古・郷愁。自史。映画・小説・ポピュラー音楽。
Kenの漫画読み日記。
●漫画&映画・・ 「丹下左膳」
2004年公開豊川悦司版の映画、「丹下左膳 - 百万両の壷」をDVDで見ました。僕は面白かったです。主演の豊川悦司扮する、日本時代劇史中の代表的ヒーローの一人、丹下左膳もトヨエツ版としてそれなりになかなか良かったと思います。丹下左膳は、今の人たちには知らない人もかなり多いでしょうけど、昔の人なら知らない人は居ないというくらいの、時代劇のアウトロー的無頼のヒーローですよね。でも、2004年に日本テレビ系列で、人気俳優、中村獅童主演でTV放送されているから、今の若い人達でも知ってる人はけっこう知ってるかも。このTV放送版の方も、お話は同じ、こけ猿の壷エピソードだったようです。2004年映画版「丹下左膳」は、往年の名監督と誉れ高い、山中貞夫監督の1935年の「丹下左膳余話 - 百万両の壷」の完全リメイク作品なんだそうです。勿論、僕はこの山中貞夫監督版は見ていない、どころか他の全山中貞夫監督作品も、多分見たこと無いと思います。
丹下左膳は、片目片腕で酔っ払いの、見た目不気味な無頼漢だが、正義の味方という、昔のヒーローとしては正統派では全然無い、変化球的なヒーロー像ですよね。
「丹下左膳」というとね、漫画では、思い出すのは、小沢さとるさんの作画の週間少年キング連載版。60年代後半の連載で、後に秋田サンデーコミックスで全2巻にまとめられて刊行された。この少年キング連載に合わせて、TBS系列で30分番組として、松山英太郎さん主演でTV放送された。いや、TV放送に合わせての、少年漫画誌での連載だったのかも、知れませんが。この分のTV放映版は、明らかに子供向けの番組作りでした。松山英太郎版左膳は、30分ワクの1967年10月から68年の4月までの放送となってます。僕も子供時分に見ているんですけど、そうはっきりとは記憶してないです。少年キング漫画版は、小沢さとる先生作画の時代劇活劇漫画で、連載を読んだ記憶ははっきりしていますが、ストーリーまでは覚えていません。「丹下左膳」のお話というのは、時代劇小説家、林不忘さんの原作に基づく何作かの定番エピソードがあるのですが、一番有名で、一番映画化ドラマ化されているお話が、「こけ猿の壷の巻」エピソードです。だから多分、この60年代後半漫画版もそれだったんじゃあないかなあ(?)と。はっきりとは解らないんですけど‥。
小説家、林不忘先生は、1900年生まれで、没年が1935年ですから、もう随分昔の作家さんですね。いろいろなペンネームを使い分けて文壇で活躍された、主に大衆小説で人気を博した戦前の作家さんです。戦前というよりも、昭和初期といった方が相応しいかもしれない。享年35歳は、若死にした人気作家だったんですね。文豪林不忘の一番有名な小説は、やはりこの「丹下左膳」でしょう。10年位前か、テレビ東京系で放映されてた、杉良太郎、萬田久子主演の時代劇、「喧嘩屋右近」は、林不忘さんの時代劇小説「魔像」が原作ですよね。余談ですが昔懐かしい貸本時代に、日の丸文庫出版の時代劇アンソロジー集「魔像」という本があった。僕は幼少期ですけど。平田弘史や臣新蔵が懐かしい。まあ、それはいいんですけど。60年代後半の小沢さとる版の他にも、漫画「丹下左膳」は多分いっぱいあるんだろうと思います。情けないですけど、僕は他には、昔、手塚治虫版があったのくらいしか知りません。
この手塚治虫版は講談社の手塚治虫全集全400巻の中にも収録されましたが、初出掲載は何と、1955年の集英社の漫画誌「おもしろブック」です。ものすごい古い。無論、僕は見た事もありません。全集版でも知りません。これも原作エピソードの中の一つ、「けん雲こん竜の巻」という、宝刀をめぐるお話のようですね。あ、そういえば、2004年トヨエツ版映画の冒頭、ちらっと、丹下左膳がどうして片目片腕になるのか?のエピソードが入っているんですが、二十人から居る敵剣客達と太刀舞う丹下左膳の背中に、一本の刀があるんですね、後生大事に高価そうな布でくるまれた刀が。あれが、けん雲こん竜という宝刀ではないのかな(?)。けん雲こん竜の巻のエピソードを知らないので、当てずっぽうな推測ですけど。豊川悦司の丹下左膳は、ちゃきちゃきの江戸っ子風な明るい浪人、でしたね。昔は可愛いアイドルだった荻野目慶子も、女房役の勝気な、櫛巻お藤をよく演じています。喧嘩ばかりしてるけど本当は仲の良い江戸の下町夫婦のような。元々、丹下左膳というキャラクターは姿こそグロテスクですが、明るく陽気できっぷのいい、ユーモラスなおっさんの浪人でしたね。
少年時代に見たTV番組で印象深く記憶にあるのが、緒方拳が扮した丹下左膳。この左膳の記憶にある印象はやたら汚かったという格好。何だかいつも汚れていたという印象がある。殺陣シーンが雨の中とかで必死で刀を振り回して戦っていたような、あやふやなイメージの記憶が‥。何時の間にか放送が終わっていたので、後に、てっきり人気が無くて放送打ち切りになったものだと思っていたが、調べたらちゃんとワンクール13回は放送されているらしい。何か、子供時代、緒方拳の前に見ている別の丹下左膳のあやふやな記憶のイメージで、酒に酔っ払ってふらふらしながら酔拳みたいにして殺陣をやっている、左膳のおぼろなイメージ記憶がある。丹下左膳はいつも腰に提げたひょうたんの酒をあおっていた。丹下左膳物語の時代設定は、八代将軍徳川吉宗の時代で、映画によっては大岡越前守も出ているようですね。
(個性派俳優緒方拳さんの丹下左膳の主題歌は、第1回レコード大賞受賞者の水原弘さんが歌っていて、今でもメロディーも一番の歌詞も憶えている程、シビレルカッコイイ歌でした。最後の決め、♪姓は~丹下~、名はさあ~ぜえ~んー。)
僕は漫画版「丹下左膳」は小沢さとる作画版を、少年キング連載時で読んだことしかなく、再読していないので、子供時代の記憶だけしかないのですが、その中でも印象に残り記憶にあるワンシーンは、三重塔か五重塔で敵と戦い、落ちそうになって屋根の端に片手でぶら下がる左膳。口に刀をくわえて、片手一本で屋根に這い上がる左膳を見て、敵剣客の一人が言うセリフ。「恐ろしい腕だ。あれで両手があったら、ゾッとするぜ‥」とか何とか言う。このシーンは何かカッコよくて憶えています。相当昔の記憶だから細部は違うかも知れないけど。
漫画家小沢さとるさんというと、横山光輝の弟子筋というより、横山光輝の弟分という扱いで語られることが多いですね。少年漫画で活躍した時代がほぼ同じですから。僕の子供時代では、潜水艦漫画が有名でした。やはり代表作は当時の少年サンデーに連載された「サブマリン707」「青の6号」でしょうか。月刊少年誌「少年」には海洋冒険漫画「少年台風」が連載されていた。子供の時の僕はこういった船や潜水艦の漫画に興味がなく、「サブマリン707」も「少年台風」も読み飛ばしてました。「青の6号」は読んでいたような記憶がある。小沢さとる作品で、僕が好きだったものは、月刊少年誌「ぼくら」のSF探偵漫画「サイピート」や、同じく月刊誌「まんが王」の忍者漫画「二つ伊賀」とかかな。あと、冒険王か、まんが王に連載された、「冒険日本号」とか、ね。