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「宇宙船レッドシャーク」

 

 市美術館で、5月14日まで「いま・むかし‐おもちゃ大博覧会」というのが行われているそうで、町のあちこちにポスターが貼られています。そのポスターの真ん中メインに大きく載るおもちゃの写真は、昭和30年代のブリキ製ロボット玩具、鉄人28号です。そうです鉄人28号…僕の漫画読み人生の中ではトップ3に入るマイフェバリットの貴重な作品です。僕はこのブリキ製鉄人28号のおもちゃは持ってはいませんでしたが、僕の人生の半分は漫画であると言えるようなものです。僕の半分以上は漫画が作ったようなものです。その代表のひとつが少年科学探偵漫画「鉄人28号」。幼い僕が人生初めて少年漫画にとりつかれ虜になったのがこの「鉄人28号」でしょう。夢中になり虜になったのは当時のモノクロTV放映実写ヒーローものの方が先ですが、心底夢中になって完璧心を捕らわれたのはこの時代の少年ヒーロー漫画です。この頃の「鉄腕アトム」「8‐エイト‐マン」「伊賀の影丸」「電人アロー」「ビッグX」「鉄人28号」…と上げだせばきりがないのですが、幼少の頃の大好きな作家といえばやはり手塚治虫先生と、この「鉄人28号」の作者横山光輝先生でしょう。その次に桑田次郎先生がくるかな。

 今日勤めの帰り、よく行く本屋さんに寄って漫画文庫の棚に、「宇宙船レッドシャーク」全二巻を発見して、一も二もなく手に取るが早いか買い求めました。多分一度は新書版コミックスになっているのでしょうが、僕はまとめたものを見るのはこの文庫版が初めてです。以前、横山先生の作家生活45周年記念出版の愛蔵版当時4200円を、ばんっ、と迷うことなく買ったものに、この「宇宙船レッドシャーク」の第一話がまとめられて掲載されていましたけど。この記念愛蔵版をすぐさま買い求めたのも、「ジャイアントロボ」他ヒーローものの代表作七点の中に「レッドシャーク」があるのを見つけたからです。「ジャイアントロボ」や「魔法使いサリー」の方が実写やアニメでTV放映されているので有名ですが、「レッドシャーク」の方が僕にはずうっと貴重な作品でした。ちなみに文庫版「レッドシャーク」全二巻で1850円です。

 「宇宙船レッドシャーク」は僕が子供の頃の、当時の集英社発行の月間少年漫画雑誌「少年ブック」に連載されて好評を得ていた宇宙科学漫画です。子供の頃の僕はこういう普通の人間がロケットに乗り未知の宇宙に出て行くものよりも、超人の仮面ヒーローが活躍するものの方が好きでした。「レッドシャーク」はいわゆるヒーロー漫画とはちょっと違い、よりリアルさが強い科学漫画で、主人公の普通の人間、一色健二が宇宙飛行士としての訓練を受け、辛い試練を乗り越えて一人前の宇宙飛行士と成るという、どちらかといえば人間ドラマです。それまでの「鉄人28号」や「伊賀の影丸」のような勧善懲悪ものとはちょっと異なりますね。それは少年漫画ですから、宇宙生物と戦ったりとヒーローもの味も盛り込まれていますが、21世紀の未来に向けて、当時の子供達が宇宙パイロットに成りたいという、比較的リアルな夢を与える事を趣旨とした漫画でしたね。物語も、パイロットの卵としてやって来た主人公の少年のような風貌の一色健二も、いろいろな訓練や試練や困難な問題を乗り越えて、ひよこパイロットからひとつの宇宙船の隊長にまで成長して行く。隊長に成っても風貌は少年のままですけど。

 今、買ってきた文庫「レッドシャーク」の1巻の方を見たのですが、一色健二はひよこパイロットからもう第二話で、航空宇宙局の思惑でレッドシャーク号隊長に成っていました。隊長に成るまでの成長物語とは言えませんでした。この第二話のエピソードは僕は憶えていました。同じ頃の雑誌少年連載の「鉄人28号」の最終話近くの物語に、同じ宇宙怪物が出て来ますが、その怪物と混同していました。「レッドシャーク」の他のエピソードは全然憶えていませんでした。第一話も45周年記念愛蔵版で読んだ時、主人公が宇宙飛行士の卵だった事くらいしか憶えていませんでした。僕は子供の頃は毎日雑誌漫画漬けでしたからね。何十年も前の一つの漫画の記憶、憶えてなくて当たり前だと思います。漫画「レッドシャーク」の記憶といえば、鉄人に出て来たおんなじ宇宙生物がおんなじように地球の宇宙船基地を襲う、と思っていましたが、これは記憶違い。地上の街の工場内とか襲うアメーバ状の宇宙生物は鉄人の方のエピソード。これの方は落下隕石に付着して来て、襲った人間に化けてしまう。「レッドシャーク」の方のアメーバ状の怪物は、宇宙空間に浮かんでいるのをレッドシャーク船内に収容して、宇宙船の中で見え隠れしながら、乗組員の人間を襲う。作者横山光輝さんは、同じ怪物を違う二作に登場させましたが、ディティルが違うものにしました。

 ここに横山先生の偉大な事を発見しました。宇宙船内に入って来た宇宙生物がロケット内に神出鬼没に現れ、襲った人間の体内に卵を産み付ける。そして、一ロケット内という閉じられた空間内の何処から襲われるか知れない恐怖。これは1965年の日本漫画作品です。同じじゃないですか!あの70年代末頃の第一作、米SF映画「エイリアン」と。姿形は全然違う怪物ですが、お話の外郭はまるで同じ。しかも横山先生の作品の方が15年早い発表。すごいですよね、SF作家横山光輝さんは。今でこそ、米SF映画などにこういう閉ざされた空間お化け屋敷式スリラーは、もう沢山ありますが、60年代には見られなかったスリラー形式です。こういうタイプの物語立案先駆者横山光輝さん!ですよね。すごい才能!

 この第二話エピソードのタイトルは「ガニメドの巻」となっていますが、今読んだ限りでは、何処にもガニメドって出て来ないんですよね。ガニメデなら確か木星の衛星ですが、この回でレッドシャークの行くところは銀河系内のB座標という宇宙だし。ガニメドって何だ?という疑問は残ります。勿論まだ第二巻は未読です。この「宇宙船レッドシャーク」は雑誌少年ブックに65年から67年まで二年間連載されて、当時の少年達に宇宙冒険の夢を与えて好評のSF漫画でした。当時の少年雑誌の看板漫画というのは、本誌に少しのページでカラー掲載されて、B6版の別冊付録に続きました。「宇宙船レッドシャーク」も最後までその形式で連載された、横山さんの中期の一方の代表作です。

 僕の子供時代の話になりますが、この「宇宙船レッドシャーク」のような主人公が超人ではない普通の人間のSF作品は、空想科学でもリアル味が強い。当時の子供達はより実現性の強いこの物語に、自分が大人に成って、あるいはもう少し先の自分の子供達の時代に、宇宙旅行という夢を見たのだと思います。でも僕はどーもこういうリアル性の強いSF漫画には今ひとつ没入出来なかった。僕が夢を馳せたのは主人公が超人のSF漫画です。どちらかというと、幼稚ぃお話のSF。まあ勧善懲悪ものの超人活躍漫画。こっちが大好きで、永遠に絶対なれっこない超人ヒーローに憧れ続けて、もう少年のかなりな年齢まで超人に成って悪人達をやっつけたいと思っていました。まあ、平たく言えば子供の僕は馬鹿なガキだったんですね。今思うに、かなり頭の悪いガキだったんでしょうね。子供の頃の僕は、いつか宇宙人が来て、僕に超能力を与えてくれて、正義の使命を言うに違いないと信じていました。だからよく平屋の家の屋根に上って、宇宙人が降りて来るのを待っていました。時には座禅を組んだりして。ああ、言うのも恥ずかしい最低パー少年でしたね。本当に頭の悪いガキでした。ちなみにウルトラマンみたいな巨大ヒーローにはなりたくはなかった。あくまで等身大ヒーローになりたかった。仮面ライダーもサイボーグ009も良かったのですが、ああいうのは改造されるからあんまし気が進まなかったなあ。自分がなるのが。改造手術が痛そうで。僕は小学生の頃ずううーっと鉛筆描き漫画を毎日描いていましたが、宇宙人に超能力を与えられた少年が悪に立ち向かう話を、いっぱい描いていました。まあ、子供の頃から自分は全然苦労せずに楽して他人より優位に立ちたいと考える、大甘なガキだったんでしょうね。自分がいかに頭の悪い子供だったかという恥ずかしい昔々のエピソードでした。

 先程、TVでPRIDEミドル級一回戦を見ました。手に汗握る戦いばかりでした。すごいな、PRIDEファイター達。僕の好きな柔道中量級王吉田秀彦は接戦の末、惜しくも絶対王者ヴァンダレイシウバに負けました。僅差判定。延長戦があれば勝ってたかも、とか思いました。大変ですね格闘家も。


 昼間聞いていたラジオのボーダフォンのCMで、木村カエラの歌をバックに木村カエラさんの喋りがありました。何か雑誌に木村カエラは、女子高生のカリスマ、とありました。少子化が深刻な問題と言われる今ですが、若い人達も少年少女も居る事はいっぱい居るんでしょうね。何だか何処もかしこも過疎の村状態の如きイメージをつい持ったりしますけど、集まれば若年層といえどかなり居るんでしょうからね。ただ、それを老年齢層が追い越しつつありもう追い越してしまったのか、長寿大国だから、爺さん婆さんばかりになってしまいつつあるという、若者離れ過疎村の全国化みたいなイメージをついもってしまうという、自分もその逆ピラミッドを描く人口構成図の頭部分に組み込まれていきつつあるという、自分ら個人も国も深刻な問題状態ですね。何か少子化時代の女子高生のカリスマなんて聞くと、つい、昔のアフリカの片隅の少数部族の長老なんてものをイメージしてしまう僕です。

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