ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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日本国債のダウングレード、世界の見方

2011年08月25日 | 資産運用 
NYでほっと一息のつもりが米国債のダウングレード騒動があり、気分的には私もダウン気味。ただこれほど米国債が話題になったタイミングで出版できるなんて、話題性は抜群です。

その中で出版に続き、ダイヤモンド社が自社のオンラインサイトで、来週私に5回シリーズのコラム執筆の機会を設けてくれました。月曜日から金曜日の毎日です。執筆陣は有名な評論家やエコノミスト、教授などのため、ちょっとおじけずいています、なーんちゃって、喜び勇んで書き進めています。

ですので、ブログの書き込みが減っていましたが、ほぼ目途がついたので、再開させていただきます。今日の話題は日本国債のダウングレードです。世界はこれをどうみているのか、お伝えしていきます。


  今回のMoody’sのダウングレード、Aa2→Aa3は、これで他の格付け機関とレベルがそろったことになる動きです。ただしMoody’sは今後を「安定的」としましたが、その他の2社(S&Pとフィッチ)は今後を下向き方向で見ています。実はこのレーティング、中国と同じになりました。しかも中国は今後上向きとされているので、ちょっと悔しいですね。日本と中国、GDPの大きさのクロスが、格付けでも起きています。

  8月5日、米国債のダウングレード後の米国債は大きく買われましたが、今回日本国債はあまりうごきませんでした。どちらもダウングレードに対する債券市場の反応は、「たいしたことないよ、だからどうしたの」というものでした。
一方株式市場ですが、アメリカはその後数日間ジェットコースターになり、戻りはしましたが余震が続きました。日本株もそのミニ版になるかもしれませんが、史上初のアメリカの経験があの程度かということを見ていますし、日本では国債に対する信仰心が篤く、さほど大きなインパクトがあるとは思えません。
では、海外のメディアは今回のダウングレードをどう見ているか?

ウォールストリート・ジャーナル、フィナンシャルタイムス、ブルームバーグを見てみました。彼らの反応はMoody’sの発表をおおむね肯定し、以下のような捉え方です。
・日本政府の累積債務はGDP対比で200%と、先進国中最悪。米国は75%
・歳出の半分を国債発行でまかなうのは異常
・金利の低さが大きな助けになっている
・今後数年はMoody’sは、国債消化に支障はないと考えている見方に異論なし

  では債券市場の中で、プロだけの取引市場であるCDS市場(デフォルトに保険を掛ける)の動きを見てみましょう。

  先週は、日本国債の5年物保険料は年率1.05%前後でした。それが24日には1.12%に上昇しています。5年物国債の金利が0.33くらいなので、国債を買って保険をかけるとリターンはマイナス1%以上になってしまい、投資は間尺に合いません。要するにプロだけの市場と、債券の一般市場の見方が大きく異なっているということです。
  この保険期間の5年間というのは、結構きわどい年限なのです。Moody’sは「今後数年は国債によるファイナンスに危機的状況はこないだろう」としています。数年というのは4年なのか5年なのか6年なのか、実にビミョウです。CDSの市場はそうしたことを細かく見ていますので、1%を超えてきている事実は、今後に陰を落とすレベルです。ちなみに米国債の保険料は、ダウングレード前後で結局変わらず、0.5%前後をキープしています。CDSの市場は日本国債の先行きを占う最も大事な指標ですので、このブログでは動きをみなさんにお伝えしていきます。

  このあとは、このところ非常に大きな話題となった格付けについてみなさんにもう少し詳しいお話を差し上げることにします。
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