バイデンからカマラ・ハリスへの交代で、トランプは一気に焦りはじめましたね。
「ウソツキカマラ」と口汚く罵っている言葉にそれが現れています。そして得意の「You Fired!」、お前は首だ!も相変わらずバイデンとハリスに対して連発していますが、それも焦りの裏返しでしょう。
これらの汚い言葉がうけるのはみずからの岩盤支持層にだけ。そうでない大多数の人には逆効果です。いままでダブル・ヘイタ―と言われていた「バイデンもトランプもヤダ。投票しない」と言っていた人々は、老害二人のうち残ったトランプだけのヘイタ―になったため、一気にハリス支持に雪崩をうって流れ始める可能性があります。そもそもダブル・ヘイタ―の割合は全有権者の3割もいたのですが、その多くがハリスに流れるというだけで雪だるまは膨らみ続け、雪崩になりそうだというのが私の勝手な見立てです。
世論調査のおまとめサイトRealclear Politicsを見ると、平均支持率でハリスがトランプに迫り、差は1%台。調査によってはハリスが上回る結果も出るようになってきました。狙撃直後は殊勝なことを言っていたトランプも、すでにいつものほら吹きトランプに戻っています。
「オレ様が大統領だったらそもそも世界で戦争など起きなかった」とか、大統領になったら「電話一本で戦争をやめさせる」といったホラは相変わらずです。
一方、ハリスの選挙演説の第一声は、「この戦いは犯罪者と検察官の戦いだ」でした。まさにそのとおり。元検察官でカリフォルニア州司法長官まで勤めた弁の立つハリス、さすがにうまいことを言いますね。
私は前回の投稿の最後に「トランプの掲げる政策が矛盾だらけで支離滅裂であることは次回に回します」と申し上げましたが、今回はその検証です。
そもそもトランプの掲げる主な政策は以下のような点です。
- バイデンの作り出したインフレを抑え込む
- 世界からの輸入に対する関税を導入する
- 個人所得税と法人所得税の減税をする
- FRBを脅して利下げをさせる
- 高すぎるドルを安くする
- 不法移民を即時国外追放し、国境を封鎖する
これらの矛盾点を突いていきましょう。
アメリカの輸入赤字は23年の1年で約1兆ドル、150兆円と巨額です。そもそも何故輸入をするのか。理由は国内で作ったら高い製品しか作れず、安い輸入品に頼るからで、それを制限したら物価は確実に上昇しインフレが高進します。
にもかかわらず中国からの輸入品には50%の関税をかけ、その他の国は日本を含め一律10%の関税をかけると叫んでいます。
ほぼ収まりつつあるインフレに対して輸入インフレを自らが作り出して、いったいどうするんだ。
そして今の高金利はそもそもインフレを抑制するのが目的なのに、簡単に利下げしたらそれもインフレ要因となる。もっともトランプに言われなくとも、そろそろFRBは利下げを考えはじめています。FRBが利下げをしたら、「オレ様が圧力をかけたからだ」とお門違いな自慢をするに違いない。
所得税・法人税の減税はアメリカの財政を圧迫します。税収不足は金利上昇につながってしまい、ここにも大きな矛盾がある。だいいちもともとトランプが大統領の時に導入した減税は金持ちに手厚く、自分と金持ち仲間へのお手盛り減税でした。
極めつけはドル高の是正、つまりドル安誘導ですが、それこそインフレの呼び水になります。
ここで笑い話。
そもそもトランプは一期目の就任直後側近に、「おい、ドルは高い方がいいのか、安いほうがいいのか?」という質問をしました。側近は後で「こいつはそんなこともわからない経済音痴なのか」と思ったと語っています。
みなさんは今、円安によるインフレに困っているでしょうから、自分の国の通貨が安い方がいいなどというのは、いかにおバカなことかを身に染みて感じているにちがいないと思います。
私は著書でも投稿でも常々申し上げているように、円安は輸入品価格への影響だけでなく、円建ての自分の給料や将来の年金、そして持家などの不動産価値も実質的に下げるため、いいことなど一つもありません。その昔輸出だけで食べていた時代ならまだしも、貿易赤字が常態になった現在は円安のメリットなどほとんどないのに、政府・日銀と固陋な財界がいまだに円安はよいことだと思っています。株式相場も含め、愚かな思い込みです。
トランプの話に戻します。
移民排斥の矛盾とは。アメリカの失業率は現在4%手前で、4%が完全雇用レベルの失業率と言われるため、雇用は非常にタイトです。移民を減らすと雇用者数全体が減り、それが賃金を上昇させ、インフレが進むことになる。これもまた自己矛盾。
後先を考えずに口から言いたいことをでまかせに言う老いぼれたトランプ。若いハリスにどこまで対抗できるか、じっくり高みの見物といきましょう。
ハリスはトランプの罵詈雑言などいちいち相手にせず、自分こそ大統領にふさわしい人間であると威厳を保ち、愚かなるトランプを軽くあしらうべきだと私は思っています。
政策の中身がまともであるか否かは、異論百出。
経済分析と違い数字で判定できません。
ですので、私からはコメントしづらいというのが本音です。
>市場は円高に向かうなら米国債はまだ買うべきでは無いのでしょうか?長期間の国債ならあまり気にしなくても大丈夫でしょうか?
短期的な相場は予想不可能ですが、長期では円安と見ています。
ですので私は今の長期金利とドル相場は買えるレベルだと思っています。
トランプの矛盾だらけの発言は、無視することです。
株式相場は右往左往するかもしれませんが、債券相場はさほど動きません。
株式投資をされる方は大変ですね。
米大統領選挙の件、解説いただきありがとうございます。先生のおっしゃる通り、ハリス氏が候補になりそうですね。日本のマスコミ報道より先に言い当てられてさすがだと思いました。
米国に限らず、今年行われた英・仏の議会選挙でもまともな選択肢があり、結果としてそれが選ばれたと思っております。米国民の半分が女性で、4割が非白人のようですので、大統領選挙ではその人たちが賢明な選択をしてくれることを期待しております。
それに比べて、日本の政治ではそうしたまともな選択肢が特に経済政策では選挙で示されていないと思います。だからこそ経済はよくならないのかなと思います。
トランプは支離滅裂ながら、市場は円高に向かうなら米国債はまだ買うべきでは無いのでしょうか?長期間の国債ならあまり気にしなくても大丈夫でしょうか?先日、16年ものゼロクーポン債を買ってみました。とにかく長生きしなきゃダメだなと思いました。