ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

平成とはどんな時代だったか、その5(最終回)  新時代「令和」を幸せに生きるために

2019年04月01日 | 平成とはどんな時代だったか

  新元号が発表され、平成もあとひと月を切りましたので、私もこのシリーズを今回で終わりにします。

   最初の回で述べたのは、「平成とは昭和のバブルのツケを政府に付け回した時代だった」でした。多くの論者が成長の鈍化を「失われた30年だった」というような言葉で表していました。私はそれよりもっと深刻で、バブルの付け回しが行われ、「将来のリスクが増した」と分析しました。理由はバブル時代を懐かしむ政治家・経済人が踊らぬ経済を躍らせようと、あらん限りの無駄金を注ぎ込み、借金の山を築いたからです。

   私はこれまで何度も「そんなに無理してバブルの頂点を目指して何になるんだ。また破裂しまっせ」とこのブログでも言い続けてきました。成長至上主義には背を向け、実力どおりの経済で十分じゃないか、と思うからです。

   無駄金の規模がいくらになったかは、財政の累積赤字の増加額が示してくれます。巨額の赤字予算を組み、毎年それに補正予算を積み上げ続けたため、政府の累積赤字は平成元年の250兆円が1,300兆円に膨らみました。ということは、30年で1,050兆円も収入以上のカネを使ったということです。その額は年平均で35兆円にもなります。そしてその借金は新時代令和の若い世代が背負いこむことになります。 

  しかしそれだけではありません。2012年4月に就任した黒田日銀総裁は、バズーカ砲を構え、「2年で、2倍の資金供給を行い、2%の物価上昇を実現する」とぶっ放したのですが、実はバズーカの砲口は真上に向かっていて、今砲弾が頭上に落下しつつあります。2年どころかその後6年も連続で砲弾を打ち続け、いよいよ落下速度を増して頭上に迫りつつあるのが現状です。彼は国債を460兆円も買うばかりでなく、日本株をも買い続け、すでに24兆円程度になっています。

  それでも彼は進軍ラッパを吹き続けざるをえません。お気の毒としか言いようがないのですが、砲弾は黒田氏に降り注ぐだけでなく、日本人全員にあまねく降り注ぎます。それをどう防ぐか、それが最終回のテーマです。

   対処案は8年前と全く変わりません。私がネット上のプライベートなサイバーサロンに初めて投稿したのが2010年の夏ごろ、「日本の財政、日本国債は大丈夫か」というのがテーマでした。私の見立ては「ダメでしょう」でした。そしてその年の10月頃にリスクの回避策として提案したのが、世界で一番安全な金融資産である「米国債への投資」でした。そうした提言のまとめが約1年後、11年8月にダイヤモンド社から出版された「証券会社が売りたがらない米国債を買え」です。

   ではそれを真に受けて投資を実行していると今どうなっているかを数字で検証します。出版当時の10年物と30年物の米国債の利率は10年が3.12%、30年債が4.23%で、円レートは81円でした。その後もし極端な円高になっていったとしても、10年債では1ドル65円までは損しない。30年債では1ドル26円まで耐えられるという計算結果を著書でお示ししました。それでも実際に購入されたのはサロンのメンバーの方のうちたった数%だと思われます。その後の私の講演会でのアンケート調査から推測される結果です。

   ではその数%の方の現在の微笑み方をご覧に入れます。2011年8月、10年債あるいは30年債に100万円投資したとすると、

 ・10年債の金利累計は為替差益を含めて約26万円、プラス元本の値上がり益が40万円ですので、合計66万円の利益。率では66%です。

・30年債の金利累計は為替差益を含めて約36万円、プラス元本の値上がり益が70万円ですので、合計106万円の利益。2倍以上です。

  このシミュレーションは投資額100万円で計算していますが、多くの方は100万円よりもかなりの額を投資されていることでしょう。だとすると微笑みの域を超え、満面の笑みですね。これが長期保有の債券の威力です。

   でも実は米国債に投資をされた方々は、得したから満面の笑みを浮かべているかと申しますと、そうではありません。実際に投資をされた方々の声がこのブログに届けられているのですが、声の内容はお陰様で「ストレスフリーの幸せな生活に入れた」という声なのです。それもどの方も例外がないことに驚きます。

   平成時代の付け回しによるひどい将来見通しを憂いている方にとって、米国債投資は駆け込み寺以上の「幸せな国への入り口」だったのです。では実際に寄せられた声を私のブログの読者のコメント欄から引用します。お名前はイニシャルにしてあります。

まずはSTさんから14年9月に寄せられた声です。

 引用

林さんのご本やブログに謳われている「ストレスフリー投資」に幸運にも出会えて、人生の過ごし方が本当に変わりました!決して大げさな言い回しでなく、「お金の心配」に向けられていた意識が、毎日の生活の中で見つける細やかなりとも豊かな「幸せ」にちゃんと向くようになり、生き方も幸福度も本当にアップしました。

   20余年の投資人生は、訳もわからず証券会社の担当者と私の欲の二人三脚で、一瞬儲かったらすぐに大損。すると担当者はすげ替えら、損は損切りで気持ちを無理やり整理するさんざんな結果でした。

   確かに若い頃は投資=リスク=利益と思って、私の中の欲に押され、自分で理論的にも数値的にも理解できていない投資先に、無謀にもお金を向けていました。でも、もっと早く林さんに出会えていたら、理解→自信→運用→利益と来る間、ストレスフリーで違った時間の過ごし方が出来たと思います。

  今はおかげさまで私の欲も小さくなり、残存寿命と持っているお金の帳尻さえ合えばそれでいいし、長い田舎暮らしで少しずつ創ってきた快適で安心な環境の中で暮らしを楽しむことが嬉しくって。そこにはもうお金に苦しむ私はいません。今はこの国の愚かな治世者や、いつ来るとも知れないまさかの天変地異に対して、増やすのではなく、今あるお金を守るべく運用したい。それは米国債だと思っています。」

引用終わり

   私にとってとてもありがたい言葉です。今後もこのように幸せになれる方を増やしていくのが私の使命だと思うきっかけになりました。別の方からの投稿も見てみましょう。

引用

  私は70代にさしかかり公務員だった夫と二人暮らしです。2013年このブログに出会い、当時少し持っていた株をすべて売却しました。その時の身軽さ、爽快感は格別なものでした。また円のリスクは感じていたので、同時にドルを購入しました。この間の円安で出た利益で家のミニミニ改修をしたり、家族旅行にも行くことができました。その意味で2013年は私にとっては「投資・資産運用」の転機になりました。感謝申し上げます。

   林様は以前から「70歳を超えたら資産運用などするべきではない」と言われておられたのでこれはしっかり守っております。というか、我が家の場合は貯蓄の取り崩しをしているからです。今日は私(持たざる高齢者)の本音を書いてみます。

  友人達(高齢者)との楽しいおしゃべりの間に出てくる話題は「この先、いつまで寿命があるかもわからないものね。それまでやっていけるかしら」という長生きすることへの不安であり、ホント切ない話です。

  子供に残すより前に自分達の命の終わりにちょうどプラマイナスゼロになることができれば、という私のような高齢者もこのサイトを見ておりますことをちょっとお話しさせて頂きました。いつも林様の文章は楽しく、また道しるべのような気持ちで拝見しております。今後もご教授をお願いいたします。

引用終わり

   UZさんは米国債を買われてもいないのに、この様にコメントされています。それに対する私の返信コメントも、一般の高齢の方にも参考になると思いますので、引用することにします。

 引用

  UZさん、不安をたくさん抱えている高齢者を代表するご意見、ありがとうございます。ご自分は十分な貯えがないと思われている方が、『とてもじゃないが不安で使えない』、よくわかりますね。私がお金は残さず死ぬまでに全部使ってしまえというのは、もちろん貯えの十分な方へのアドバイスです。

  ただし一方で私は、『70歳を超えたら運用などするべきでない』、とも言っています。これは貯えの多寡によりません。たくさんありすぎて、相場で減らしても十二分に遺産は残るというのであれば別の話ですが。

  ブログのタイトルでもあり、私が最も言いたいことは「ストレスフリーの資産運用」です。高齢の方であればあるほど、特に70歳過ぎてストレスを感じながらの運用に果たして意味があるでしょうか。

  米国債は安全です。しかし為替のリスクは大いにあります。たまたま著書を出版して以来円安に動いているので、お読みになったみなさんはかなり安心していらっしゃると思います。しかし相手は為替相場です。円高になることは大いにありえます。ファンダメンタルズにかかわらず、突然の大幅円高もあるのです。97年には日本中が金融危機であたふたしていましたが、その中で突然ドル円レートが79円台に突入しました。そうしたことが今後絶対にないとは言いきれないのが、投資です。それでも長期保有をしていれば、これまで金利収入は為替変動に勝ち続けてきました。

引用終わり

  UZさんは私のブログでのアドバイスをそのまま実行し、ドル預金の他に何も投資をしていらっしゃらないのですが、幸せな暮らしを実現でき、感謝されています。

  これに対して50歳くらいのNKさんからご自分の将来も見据えて、以下の意見が寄せられました。

引用

林さん、皆さん、 こんにちは。

 高齢者の資産運用については、結局のところ各々の望む人生の在りかたと現実的算用をすり合わせて導き出すものかと思います。

 自分の余命期間に財が足りないようなら、投資をするか、人生の在りかた、つまり幸せの求めかたを変えるしかありません。これは自分次第で、結構どうにもなるものです。あくまでお金は幸せの道具ですから、使ってなんぼの価値。ただ持っているだけで、漠然とした不安に対する安心を得ているだけなら、本末転倒ですね。モヤッとした将来図をハッキリしたかたちに描けると、どんな老後なら自分は受け入れられるかが分かるように思います。その上で余りがあれば使えばいいし、無ければ無いなりに生きます。

心配を背負い込んで、お金に翻弄されるような老後だけにはしないようにと自分に言い聞かせています。もうそれだけはうんざり!そんな不毛な時間はもう残っていません…はい。

 引用終わり

  この投稿に対して私は以下のように意見を述べました。

 引用

「お金は幸せの道具ですから、使ってなんぼの価値」と書かれているNKさんのご意見に私も大賛成です。老後の資金はしっかり増やさないといけないというのは、証券会社の常套句です。増やそうとすればするほどリスクをとることになりストレスを溜め、果ては投資で損失を抱え、大事な老後の資金を失う可能性があります。それよりもUZさんやNKさんのように手元の資金と相談しながら無理のない生活をすることで余計なストレスから解放されることこそ、人生を幸せに送る秘訣だと思います。

引用終わり

  これらはほんの一部の方のご意見ですが、その他にも多くの方々が同じような趣旨でブログのコメント欄に投稿をされています。そうした応援投稿こそ私が2冊目の本を書こうと思ったきっかけを作ってくれました。

   現在最終段階にある新たな著書の内容をかいつまんで申し上げれば、令和時代の日本財政の巨大なリスクに備える有力な手段は米国債への投資であること。そして米国債への投資は単なる投資と違い、大きな安心感を得られ、「ストレスフリーの幸せ投資」でもあることをお伝えしています。

  なお、幸せ投資クラブは入会随時、そして入会金・年会費は無料です(笑)。

 以上、新時代「令和」を幸せに生きるために、でした。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 逆イールドとは、短期債投資... | トップ | 外資よどうもありがとう »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Puffinさんへ (林 敬一)
2019-04-08 15:01:26
コメント欄に投資活動のアップデートをいただき、ありがとうございます。

きれいさっぱりですか。
偶然とは言え平成から令和への節目の出来事として、個人の歴史に刻まれるような出来事ですね。

私の場合は「平成とはどんな時代だったか」の最終回は、もちろん新元号の発表に合わせていましたが、Puffinさんの場合は相手が相場なので、節目のタイミングを見計らっても、ピッタリくるとは限りませんから、偶然性が大きいですね。

これまでPuffinさんの相場観は大きな節目に対して実に的確に捉えていらっしゃるので、読者のみなさんの注目度も高いと思います。

そして重要な点はPuffinさんの注目ポイントと私の注目ポイントの一致でしょう。
もちろん、このブログの読者の方々の注目ポイントも日本政府の債務膨張と日銀の資産膨張にあることと思います。それがおかしいと確信された方は、きっと徐々にご自分のポートフォリオをしっかりと見直しおされていることと思いますので、その日が来てから慌てることはないと思います。

Puffinさんの書かれている

>この国が再び焦土と化すような大恐慌が訪れると思いますが、それまでは米国株と米国債を購入し続け、資産を外国通貨に替えて避難させておくことで「ノアの箱舟」としよう、という目論見です。

「ノアの箱舟」、いい表現ですね。大賛成です!

そして一言添えさせていただくと、

「このノアの箱舟の保険は掛け捨てではなく、たとえ何事も起こらなくても、しっかりと育つ」ことです。

債券は金利を生み、アメリカ企業の成長株は、文字通り成長し花を咲かせます。


返信する
御報告 (Puffin)
2019-04-02 22:48:06
全く偶然ですが、このスレッドが立ち上がった4月1日、今まで保有していた日本株式を全て売却完了しました。

株式の短期売買は昨年9月で終了していましたが、長期保有に関しては下げ相場に強い株主優待銘柄を中心に13銘柄保有していました。2008年リーマンショック時の大暴落で誰もがパニック売りに走っている時に一人買い向かって、ほぼ大底の状態で購入したものばかりで、全てが買値の数倍以上の含み益、中には10倍を超える含み益を持ったものまでありましたが、全てきれいさっぱり売り切りました。
戦いは侵攻時よりも撤退線の時こそ難しい、とよく言われますが、その通り、売り切るまでに半年かかりました。経済情勢を睨みながら半年間指値を出し直しつつ、やっと新元号の発表によるご祝儀相場の今日、売却完遂しました。

日本株を完全売却した最大の理由は、林先生と同じく、日銀による日本株式の大量保有、です。
「異次元の金融緩和」でも一向に日本が成長軌道に乗らないために日銀は、ETFに始まって個別株式まで買い集めた結果、時価総額の4%超、25兆円以上を保有するまでになり、その存在感は「池の中のクジラ」と化してしまいました。日銀が上位10位以内の大株主になった上場企業が全体の4割弱にあたる1446社にのぼるうえ、東京ドーム、サッポロホールディングスなど5社では日銀が実質的な筆頭株主に躍り出たそうです。
日銀が実際に行っている国債の中央銀行による買い入れですら「財政ファイナンス」として国際的に禁じ手とされているのに、償還時期を迎えれば消滅する債券と違って、株式は売却しない限り無くなりません。いつになるのかは別として、最終的には必ず市場にこれら25兆円超の株式が出てくるので、その時は想像を絶する状態になる、と思っています。

その時が来るまで、国内株式の売買は封印します。
この国が再び焦土と化すような大恐慌が訪れると思いますが、それまでは米国株と米国債を購入し続け、資産を外国通貨に替えて避難させておくことで「ノアの箱舟」としよう、という目論見です。

なあに、世界核戦争で地球が割れてこの世が終わるわけでなし、例え日本経済が完全に破綻しても人間が生き残る限り社会は再生されるでしょう。
それまではじっと我慢の子でいます。
返信する

コメントを投稿

平成とはどんな時代だったか」カテゴリの最新記事