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トランプの支持層とは?

2024年01月17日 | アメリカ大統領選24年

 24年大統領選の初戦であるアイオワ州での予備選が終わり、共和党では予想通りトランプが51%で勝利。デサンティスが21%、ヘイリーが19%という結果でした。アメリカ中西部のアイオワ州は農畜産業中心で保守的な白人が多いため、その層を掴んでいるトランプが5割を超えています。民主主義などいらないというトランプ主義者たちが、民主主義の象徴である選挙で投票をするということをしている。道理も何もない、トランプの言う事だけが正義だというおかしな人たちですね。

 そして次の予備選は1月23日のニューハンプシャー州ですが、世論調査では興味ある結果が出ていますが、それは後ほど。

 

 まずトランプという人間のひどさを並べてみます。特に悪質かつ裁判で結果が出ているものは★印を付けます。

 

・大統領在任中、SNS上でのウソ2万件。マスコミによるファクトチェック済。それ以外に口頭でのウソは多すぎてカウント不能。特に前回の選挙を覆そうとする演説は最初から最後まで全部がウソ。

・対トランプ訴訟4千件(16年の選挙の時までは3千件)、その多くは詐欺、名誉棄損など

★ME TOO!と言わせた女性20人程度。なかでも23年5月9日米作家ジーン・キャロルさんが90年代にトランプから性的暴行を受けたとして損害賠償を求めた民事裁判で、NY連邦地裁の陪審は性的暴行と名誉毀損を認める評決を下し、トランプ氏に500万ドルの支払いを命じた。

★トランプの最側近であった弁護士のコーエン氏は、トランプと関係を持ったポルノ女優の口止めに関する罪で禁固3年

★トランプの顧問弁護士だったジュリアーニ元ニューヨーク市長が、2020年大統領選の開票作業をめぐりジョージア州の選挙管理職員が不正を行ったと主張し名誉毀損で訴えられた裁判で、ワシントンの連邦地裁の陪審は、選挙職員2人に計1億4800ドル(約210億円)を支払うよう、ジュリアーニ弁護士に命じた。ジュリアーニ氏はこのため自己破産に至った。

★トランプ寄りの放送局として知られたFOXは、選挙不正に関する名誉棄損で1千億円を払うことになった。それについては、時事ニュース2003年4月の以下の記事を参照ください。「2020年の米大統領選で不正に集計結果が操作された、とする虚偽の報道で名誉を毀損されたとして、投票機器メーカー「ドミニオン・ボーティング・システム」がFOXニュースに損害賠償を求めていた訴訟で、23年4月18日、FOXが7億8750万ドル(約1千億円)を支払うことで和解した。」

 

 このように彼自身だけでなく、彼をサポートしていた弁護士や報道はことごとく禁固刑や莫大な損害賠償の判決が確定しています。また選挙結果を覆そうとする試みに関してトランプが指示したことを認め、州レベルの最高裁は有罪判決を下しています。しかしこの訴訟は連邦最高裁まで行くと、トランプが選んだ保守寄り判事が州の判決を覆す可能性がある。

 

 こうした罪状の張本人であるトランプの支持率が高率を保っているのは何故か。単にアメリカ人はトランプにまんまと乗せられる愚か者だからだという理由では説明できません。

 一つにはキリスト教福音派による支持が指摘されています。福音派とは端的に言うと「聖書の言葉にすべて従う」という一派で熱心な信者が多く、テレビを通じた布教活動で知られています。全人口の4分の1程度を占めると推定されています。

 しかしトランプの行動にはモラルのかけらもなく、宗教人であれば非難こそすれ支持するなどありえないハズ。また福音派とも重なる白人の低所得者層が、トランプを支持していることに対する説明は、「忘れ去られた人々の声を聞き、彼らの希望をかなえる政策を実行したため」と言われています。彼らはトランプが犯罪人であろうがなかろうが、無批判に今年の選挙でもトランプに投票するのは間違いないでしょう。

 

 しかし年が明けてから風向きに変化が生じています。アメリカ事情に詳しいアメリカ在住の評論家、冷泉彰彦氏の1月8日のコメントでは、

「CNN調査によるとニューハンプシャー予備選の事前調査ではトランプ39%に対してヘイリーが32%と猛追している。他の調査も含めた直近の平均値でもトランプ42%、ヘイリー29%(政治サイト「ファイブ・サーティーエイト」による)となっており、昨年までの構図が大きく変化している。

ヘイリーとしては、まずアイオワでの敗戦を最小限にし、あわよくば2位のデサンティスに肉薄しておく、その上で、ニューハンプシャーでトランプに限りなく迫るという戦略です。その勢いを駆って、ニューハンプシャーの翌日に予定されている彼女の地元である、サウスカロライナ予備選でも善戦すれば、全国ニュースが一気に彼女の「旋風」を話題にするという計算をしているはず」と解説しています。

 

 すでに終わったアイオワの結果はまさにこの冷泉氏のシナリオどおりで、ヘイリー氏がデサンティス氏にわずか2ポイント差で肉薄。次のニューハンプシャー次第では有力候補としてその後の台風の目となりうるかもしれません。

 バイデンという頼りない本選の対抗馬より、同じ党内のヘイリー氏がまずはトランプという世界の攪乱要因を取り除いてほしい、それが私のはかない願いです(笑)。

来週のニューハンプシャー州の予備選を待ちましょう。

コメント (2)
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