くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「わたしの本の空白は」近藤史恵

2018-08-30 05:57:47 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 タイトルが「わたしの本の空白は」(角川春樹事務所)だったので、ビブリオミステリかと思っていました。
 記憶喪失ものです。主人公「わたし」は病院で目覚め、「三笠南」という名前だと知らされます。記憶を失っているため、バス停の表示みたいだと思ってしまうあたりがおもしろいですね。
 慎也という夫が現れて、義母と義姉のいる家に帰ることになります。
 つっけんどんだけど、クールな中にも配慮をしてくれる義姉祐未。認知症気味で誰かの助けが必要な義母。東京に住むたった一人の妹小雪。
 そして、夢の中に現れる美しい男性。
 ロマンチックサスペンスという感じの作品です。
 自分自身のこと以上に、夢の中の男性のことを思い出したい南ですが、周囲はそれを快く思わない。
 やがて、その男性は慎也の弟の晴哉だと分かるのですが、義母も祐未も慎也も、そのことには触れたがらない……。
 南の思いと切なさ、忘れたかった出来事の重さが苦しいです。
 蛙の王子と、晴哉が自宅で飼っていた蛇は、何かのメタファなんでしょうか。
 渚パートの話が、どこかで進行していく余白のような展開が、やっぱりうまいなぁと思うのでした。

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