くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「金曜日の本屋さん」名取佐和子

2018-08-20 05:25:25 | 文芸・エンターテイメント
 この本屋に行けば、自分の読みたい本が必ず見つかると言われる北関東の小さな駅ナカ書店金曜堂。
 大型チェーン店の社長である父親が入院しており、読みたいという本を探している「僕」(倉井史弥)。その本を差し入れても、今一つ反応がよくないことで悩んでいましたが……。
 金曜堂の店長南槇乃は、膨大な本の知識をもつ女性。同じエリアで喫茶を担当している栖川と、オーナーであるヤス。この三人は、近くにある高校で同級生だったといいます。
 彼らの会話や、喫茶コーナーに置かれた蔵書などから、もう一人、今はいない誰かが存在していたことを、アルバイトをはじめた倉井は感じるようになります。
 金曜堂の地下には、計画の後半で頓挫した地下鉄の駅があり、その構内を使って書庫があるのです。
 今では流通していない本もそこにはあります。
 倉井の父が読みたがっていた本などは、まさにこういう場所でないと見つかりませんよね。(「金魚屋古書店」みたい!)
 わたしだったら何がほしいかなー……と妄想してしまいます。(三浦哲郎「お袋の妙薬」でしょうか)

 文庫は四冊で完結します。昨年二冊読んで、三冊めをどこかに置いたまま中断していました。
 でも、四冊めを買ったことだし、ここは図書館で借りてでも読んでしまいたい。
 最近、名取さんの本を続けて読んだので、気持ちが抑えられません。

 槇乃の恋人だったジンの人生は、わたしも以前から報道について考えていたニュースを下敷きにしてあり、何度もうなずきながら読みました。
 作中にはたくさんの書名が登場し、本を愛する人にはたまらない構成です。その本、わたしも持ってますー! と叫びたくなる。
 名取さんの取り上げる本は、わたしの好きな傾向とは結構違います。例えば、三冊め。太宰、「ノルウェイの森」、茨木のり子、「ハルさん」。
 食わず嫌いで村上春樹をほとんど読んでいないわたしですが、この本を取り上げた「書店の森」が胸に迫りました。
 倉井の父の店で働く二茅さんの思い出話です。彼女の実家の書店に、どうしても「ノルウェイの森」の初版がほしいと現れた男性がいました。
 ベストセラーですから、店頭にはあるけれど、初版ではない。この時期に見つかるはずがないと、その男性も思っていたのでしょう。
 でも、そこに、お父さんが本を持ってきた。「ノルウェイの森」初版……。
 もう、じわっときてしまいます。

 さて、本日本棚を整理していましたところ、「金曜日の本屋さん 冬のバニラアイス」がありました。
 ……ん?
 わたしの手元には、読んだばかりのその本(四冊め)が、あるのです。
 三冊めを買ったつもりで、四冊めを二冊買っていたようです……。なんというオチ……。

 あと、「逃がし屋トナカイ」(実業之日本社文庫)も買いましたよー。
 ハードボイルドでびっくりしました。
 子どもの頃特定のコロニーで育ったために「常識」を知らない娘に、つらいものを感じます。