くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「調律師」熊谷達也

2014-06-15 05:53:17 | 文芸・エンターテイメント
 熊谷さんは、わたしと同じ高校を卒業された大先輩。そして、この本を読んで、やはり先輩である及川浩治さんのCDを買おうかなと思いました。
 もともとピアノ曲が好きなので、この本もとてもおもしろく読みました。「ピアノのムシ」で調律師という仕事に興味をもったことも大きいでしょうね。
 「調律師」(文藝春秋)。元気鋭のピアニストだった成瀬玲二は、交通事故で妻を失います。さらに、ピアノを弾くときには見えていた色調が、なぜか「匂い」に変化している。つまり、不具合があると異臭を感じるようになるんです。
 その能力は、もともとは妻が持っていたもの。
 このような特殊な能力の持ち主が主人公ですから、悩みながらピアノを弾く女の子とか、全校で「第九」を歌う学校の伴奏者とか、魅力的でした。(「第九」は近くのN中も行事にしてしましたが、もしやそれがモデル?)
 でも、熊谷さんがあとがきに書かれたように、この物語はシフトチェンジをします。成瀬が出張で仙台を訪れた日、東日本大震災が起こるのでした……。
 熊谷さんは、組合の講演会で、この震災と気仙沼(熊谷さんが勤めていた学校があります)のことを描き続けるとおっしゃったそうです。
 岩手・宮城内陸地震からも六年。また、いつ、なにが起こるかわからない。
 成瀬がこだわり続けたものが昇華され、ピアノのやさしい音色が残っているラストが、良かったと思います。

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