くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「妖怪アパートの幽雅な日常」⑩ 香月日輪

2009-04-26 05:41:36 | YA・児童書
読み終わりました。「妖怪アパートの幽雅な日常」⑩(香月日輪・講談社)。
あららー、こういう展開だったの? という中盤に、ただただ驚くばかり。最終巻にして、なんでしょう、起承転結の「転」がころがり出た感じです。
正月を迎え、るり子さんの手料理に舌鼓をうつアパートの住人たち。夕士の親友長谷も加わり、どんちゃん騒ぎ! このまま去年のように今年も続いていくんだな……と思う夕士だったけど、まさか、そんなはずはないでしょう。
長谷の祖父が亡くなったとしらせが来たと思う間もなく、今度は長谷の姉が原因不明の腫瘍のために入院。しかし、その原因は……。
人間の執着や無意識の行動について考えさせられる物語でした。祖父が亡くなったことで起きる様々なトラブルに、夕士は自分と周囲の人たちとの出会いの因縁を感じます。
そして長谷のためならすべてをなげうっても構わないということを自覚するのです。
わたし、「妖怪アパート」のラストをこんなふうに想像していました。クリが成仏して、夕士は妖怪アパートから巣立ち、社会に飛び出していく。うーん、違ってましたねー。
本人すら考えてもいなかった未来にあれよあれよという間に連れていかれたというか。あ、本人の意志はあるから突き進んだというほうが近いでしょうか。
最後は夕士の回想でした。今、彼は「大人」としてアパートの宴会に参加していることがわかります。それは、単に酒が飲めるということだけではなく、より彼らに近い存在になったということじゃないかと思いました。
さて、宴会。
るり子さんの手料理、うまそうです。以前、香月さんのインタビューで、実は料理には全く興味がなく、ここに出てくるものも雑誌の記事を参考に書いていることを知り、ちょっと鼻白む感じがしたのですが……。今回は久々にメモを取りたくなる品が多かったですよ。
夕士の退院を祝う食事。「タコと夏野菜のサラダ」マスタード風味のレモンドレッシングで。枝豆とえのきとタケノコの細切りをのせた「スズキの塩焼き、生姜あん」、スライストマトの上にのった「ゴーヤと緑豆もやしと豚しゃぶのおろし和え」、そうめんつゆで作る特製だれで。鶏の唐揚げはをにんにく、ねぎ、生姜と炒め、仕上げに香醋をかけるのも。おいしそうー。手がかかっていますよね。

妖怪アパート、前巻がなんだか内輪うけのようだったので、この巻はどうだろうと思っていました。おもしろかったです。長谷とともに対決しようとするところも、古本屋と旅立つ決意をするのも。
でも、個人的にこの後日談がほしかったかどうかは疑問が残るのです……。
確かに、これまでの伏線をまとめて、気になるキャラクターのその後を知りたい人には満足のいくラストでしょう。でも、わたしはやっぱり、ヤングアダルト世代ではないな、と感じたのがこの終章なのでした。いや、全体に文句がある訳ではないですよ。でも夕士さぁ、小説のタイトルが「インディとジョーンズ」って、どうなの? 読者はこれで許せるの? わたしは青木先生ばりに頭が固いので、「は?」という感じなのですが。
それに世間はフィクションと信じているんだろうけど、自分の体験をベースにした物語しか書けないのはどうかと。
そこまで本気になって考えることではないのでしょうが、違和感残ってます。
十代のうちに読んでおくべき物語というものが、世の中にはあるのものですが、「妖怪アパートの幽雅な日常」は、その一冊だと思います。夕士はアパートに残りますが、わたしは妖怪アパート卒業ですね。


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1 コメント

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Unknown (ミリオン)
2024-08-17 18:56:28
こんばんは。
嬉しいです。頑張って下さい。今日の朝は、「虎に翼」の第20週を見ました。
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