くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「文豪てのひら怪談」東雅夫 編

2010-02-03 05:27:27 | 文芸・エンターテイメント
「てのひら怪談」というコンセプトが好きで、何冊か読みました。でも一冊めがいちばんよかったな。文庫の表紙があんまりなので買ってませんが。
今回は「文豪てのひら怪談」(ポプラ文庫)。東雅夫さんの編集です。
立ち読みしたページがおもしろかったので(小松左京「幽霊)購入したのですが、全部が全部そういう感じでもなくて、もどかしい気もします。
印象に残ったものを何点か。穂村弘「超強力磁石」。きょ、強力すぎるからその磁石! 最初オチが分からなくて、二三度読み返しましたよ。
辻征夫「突然の別れの日に」。辛いです……。母として辛い。わたしは「変身」テーマの作品に興味があるのですが、子供が知らぬ間にほかのものに入れ代わってしまうのは本当に苦しいことだと思うのですよ。
入澤康夫「ユウレイノウタ」は、フレーズが音律をもって耳に残る。これがまた寂寥感のある詩なのですよ。カタカナが何とも言えない。うらぶれていて。
読んだときは気づかなかったのですが、山田野理夫「東北怪談の旅」からも収録されていました。「きりない話」このろくろ首、確か宮城の話だった気が。
菊池寛「光遠の妹」、泉鏡花「人妖」、片山廣子「うまれた家(抄)」もおもしろい。
川端の「掌の小説」からは「心中」。そうでしょうそうでしょう。わたしでもこれを採ります。
膨大な名作の中から「怪談」をよりすぐるわけですが、不思議なことに頭から通して読むよりも読み返す方がおもしろい気がしました。(一読では理解しにくい話もあるので。読みとばしたりもしているからでしょうが)
八百字の小宇宙。拾い読みしても楽しいですよ。