くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「これが九州方言の底力!」

2010-02-13 06:07:18 | 言語
もうかなり前のことなのですが、某バレーボール雑誌で、原秀治さんが鹿児島の言葉について語っていました。おぼろな記憶で間違っているかもしれませんが、「貝を買ってきて」を「けーをこけけけ」というと言うときいて、九州の言葉って不思議だなーと思ったわけです。
それから福岡出身の笠間さんが、たいへん慌てるという意味の「すこたえる」を標準語と信じていたと言っていたことも覚えています。
なにしろ神戸までしか行ったことがないので、九州のイメージはメディアによるものしか分からないのです。ただ、この本にもよく出てきますが「方言集圏論」のため、東北と九州では似たような言葉を使うことも多いようです。
この本て、どの本かといいますと。「これが九州方言の底力!」(大修館書店)でございます。
九州ぽくいうと、「ごわす」?
ところで、「ばい」と「たい」の違いがわかりますか。例えば、「あれが犯人ばい」と「あれが犯人たい」は、標準語に直すとどちらも「あの人が犯人だよ」というようになりますが、話し手が聞き手の知識を推し量り、その事実を知っているかどうかがポイントになっているのだそうです。「犯人ばい」=「あなたは知らないよね。教えるからね」。「犯人たい」=「おそらく間違いない。確信しているから」みたいなニュアンス?
東北では(というよりうちの辺りでは)「犯人だっちゃ」「犯人だべ」という二つの語尾がありますが、言われてみると、やっぱりそういう違いがあるような気がしないでもないです。「だっちゃ?(↑)」「だっちゃ(→)」「だべ(→)」「だべ?(↑)」の順で語意が強まる、かな。うーん、国語学的ですね。
日本の中心だった京都から周辺に広まっていく言葉。新しい言葉が中央を席巻しても、古い言葉は地方で生き残っている。九州ではそれが顕著で、下二段活用の言葉や古語が音便化したものが数多くあるというのです。
ふーん。でもこう文法的な説明が多いと、読者はつらいかもなー。国文科の学生でも「活用の種類」と「活用形」の区別がつかない人は結構いるのですよ。
そう思いながら読んでいたら、九州弁で「孫にお菓子をくれる」というのは、「あげる」の意味だということが書いてありました。えーっ。そりゃ逆の意味にとられても仕方ないのでは? と思ったのですが。
東北弁でも「孫にお菓子をける」というのは、「くれる」から転化したものだと書いてある……。
そ、そうか……。「ける」は「くれる」か。 とすると、「けでやる」は「くれてやる」だ。た、確かに。
自分の使っている言葉の特徴を、文法的に考えたことがあまりなかったので、妙な気分です。
他にも、この辺では蜂を「スガリ」というのですが、九州では蟻をそう言うとか。「ラーフル」って、九州出身だった大学の先生が使ってたなとか。あと、大阪の大学に行っていた友人から「九州では<かわいそう>を<ぐーらひか>というらしいよ!」と聞いたことがあったのですか、「ぐらしー」とか「ぐらしか」とかいう言葉の語源は「業らしい」なんだそうです。へーっ。
あとはアクセントの話題がありましたが、宮城は北部と仙台と南部でアクセントが違うようにわたしは思います。地図によると、ちょうど中央あたりで「東京式アクセント」と「無アクセント」に別れるらしいです。
遠く離れた九州の方言について読みながら、一方で地元東北の言葉も考える。おもしろいですね。
帯の惹句を紹介します。「だごむしゃんよか! ぬっか! 楽しかっちょる! こげな言いかた、共通語ではしきらんめえ! ああたもかたりい、九州方言の世界へ」。この本を読み通せば意味はバッチリつかめるようになります。
驚いた部分の意味をあげると、「ぬっか=あつい」「しきらんめえ=できないでしょう」だそうです。