いくら大口をたたいても実際に行動を移さなければ、政治家は駄目だ。その意味で安倍晋三首相はたいしたものである。自衛隊の制服組を中心に据えたり、海上保安官出身として初めて、海上保安庁の長官に佐藤雄二海上保安監を抜擢した。尖閣諸島を死守するとの思いがあるからだろう。佐藤氏は海上警備に精通しているといわれ、安倍首相の意向が働いたのだった。日本の官僚組織は、戦後一貫して自衛隊などの制服組を疎んじてきた。それでいて、一旦緩急の場合は、彼らは命を捧げなくてはならないのである。武士の気持ちを知っているからこそ、安倍首相は決断したのでだろう。マスコミはその意義については、一切言及しない。逆に朝日新聞などは、自民党内に異論があると伝えている。三島由紀夫らの楯の会の隊員は、自衛隊に体験入隊することで、日本という国家に目覚めたのである。『文化防衛論』の「あとがき」において、三島はそのときの回顧を書いている。「さて、この三月には、わたしもひそかに十数日参加して、学生諸君と共に、毎日駈け回り、歩き、息を切らし、あるいは落後した。そこで同志的一体感も出来、かれらの考えも入隊以前に比べて、はるかに足が地について来たのみならず、主任教官や助教との関係も家族のようになり、離隊のときは、学生一人々々が助教一人々々と握手して共に泣いた。私が如実に『男の涙』を見たのは、映画や芝居をのぞいては、終戦後これがはじめてであった」。武士の涙を理解できない人間は、武士の上に立つ資格はないのである。
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