今回の参議院選挙の経済政策の争点は、アベノミクスをめぐってだが、ちょっと視点を変えれば、従来の日本のシステムを破棄すべきか、それとも、少しばかり修繕すればいいかの違いなのである。みんなの党や日本維新の会、民主党の保守派の主張は、いうまでもなく前者である。これに対して自民党の大半は後者なのである。民主党の大部分と社民党、日本共産党は自民党に近いはずだが、反対のための反対をしており、立場が不明瞭である。そうした区分けをしたのは、1999年発行の『メディアと政治ー日米メディア・ダイアローグ』で編者となったクレイ・チャンドラーであった。すでにその当時から、マサチューセッツ工科大学のポール・クルーグマン教授らが、新自由主義の処方箋である構造改革に異を唱えていたのである。新自由主義の言い分は、規制緩和であり、終身雇用制度の廃止であった。そして、市場を積極的に開放することが不可欠とされた。そうした痛みをともなう改革を批判したのが、クルーグマンである。ケインズ型の経済政策に戻ることを主張し、政府支出を増やし、減税をし、金融政策でできることは何でもするのである。アベノミクスは明らかにクルーグマンに近い。それがうまくいっているから、日本経済は復調しつつあるのだ。安倍首相は今後もクルーグマンの路線を目指すべきだろう。三本目の矢にこだわらずに、一本目と二本目を大事にすればいいのだ。成長戦略に名を借りた構造改革は、後回しでいいのである。
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