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【福島原発事故刑事裁判第22回公判】電力の、電力による、電力のための土木学会 これで中立とは笑わせるな!

2018-07-28 09:04:16 | 原発問題/福島原発事故刑事訴訟
福島原発事故をめぐって強制起訴された東京電力旧3役員の刑事訴訟。7月25日(水)の第22回公判の模様を伝える傍聴記についても、福島原発告訴団の了解を得たので、掲載する。次回、第23回公判は7月27日(金)に行われる。

執筆者はこれまでに引き続き、科学ジャーナリスト添田孝史さん。

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●土木学会の津波評価部会は「第三者」なのか?

 7月25日の第22回公判の証人は、電力中央研究所の松山昌史(まつやま・まさふみ)氏だった。

 松山氏は京都大学大学院工学研究科土木工学(修士)を修了し、1990年に電力中央研究所(電中研)に入所。現在は電中研原子力リスク研究センターに所属している。電中研は約700人の研究員をかかえ、収益の85%は電力会社からの給付金だ。

 松山氏は、2009年に東北大学から工学(博士)の学位を取得している。学位論文のタイトルは「沿岸の発電所における津波ハザードとリスク評価手法」。指導教員は今村文彦・東北大教授(第15回公判の証人)である。

 松山氏は、土木学会津波評価部会に1999年の立ち上げ時から幹事として参画。2009年からは幹事長として部会の運営を取り仕切った。

 公判では、検察官役の神山啓史弁護士の質問に松山氏が答える形で、土木学会津波評価部会の動きを中心に検証していった。津波評価部会が、原発の津波想定方法を、どんな過程でまとめていくかを追う中で、様々な段階で電力会社が関与している様子が浮かび上がった。

 また最後に、検察官側から現場検証の求める意見陳述があった。

●電力会社が主役 土木学会の報告書作成過程

 2008年7月31日に、東電の土木調査グループの酒井俊朗グループマネージャーや部下の高尾誠氏は、原子力・立地本部副本部長だった武藤栄氏に、津波対策を進めるよう説明をしていた。これに対し、武藤氏は「波源の信頼性が気になる。第三者、外部有識者にレビューしてもらう」と対策先送りを決める(いわゆる「ちゃぶ台返し」)。そこで、酒井氏が「第三者」として提案したのが土木学会だった。

 では、土木学会の津波評価部会は「第三者」なのだろうか。土木学会津波評価技術をまとめた当時のメンバー構成を見ると、委員・幹事30人のうち13人が電力会社社員、3人が電力中央研究所員、1人が東電設計(東電子会社)だ (注1、グラフ参照)。メンバーに電力会社の関係者が入っていることについて、松山氏は「原発を良くご存知の現場の方に入ってもらっている」と証言したが、電力関係者が過半数を超えている状況では、第三者組織には見えない。



(1)電力会社が全額負担する電力共通研究の仕組みを使って、津波評価部会の議論のもとになるデータを東電子会社の東電設計が中心になって作成
(2)それを電中研や東電が中心になった幹事団が専門家と調整しながら議論する。

 この進め方で、電力会社に都合の悪い結論は出せるのだろうか。

 松山氏は、政府事故調の聴取には、津波想定方法について「事業者(電力会社)に受け入れられるものにしなくてはならなかった」と述べていた(注2)。

 松山氏は、2010年から2011年にかけて、波源モデルの改訂案を幹事団が提案した時の専門家委員の反応について「賛成も反対も、意見が出されなかった」と証言した。幹事らがまとめた案が、粛々と了承されていただけの審議が多かったのではないかと思われる。


●「新しい知見、チェックしていくことが必要」

 土木学会津波評価部会は、2002年に津波想定の方法をまとめた「原子力発電所の津波評価技術」を策定したが、松山氏は「コストも人手もかかるので、改訂は10年に一度ぐらいにしようという同意があった」と述べた。

 神山弁護士の「その間に新しい知見が出たら、電力会社はどうすべきだったのか」という質問に対し、松山氏は「新しい知見は毎年出てくる。いろんな評価を検討材料にあげてチェックしていくことは必要だ」と証言した。これは、東電元幹部が主張する「土木学会任せ」「改訂待ち」の姿勢とは異なっていた。

●裁判官の現場検証を請求

 公判の最後に、検察官役の久保内浩嗣弁護士が、福島第一原発や周辺を「裁判官の五感によって検証する必要があります」と意見を述べた。久保内弁護士は、必要性の根拠に挙げたのが、今村文彦・東北大教授が「1号機から6号機の前面に防潮壁が必要」と証言したこと(第15回公判)や、東電で事故調査報告書のとりまとめを担当した上津原勉氏による「10m盤には配管などが埋まっており、対策は大がかりな工事になって難しいが、可能ではある」という証言(第2回公判)だった。「証言の合理性、信用性を評価するには、現場検証で現地の状況を立体的、全体的に把握することが必要です」と述べた。

注1)委員、幹事の2001年3月当時の名簿のp.7

注2)政府事故調 聴取結果書 2011年7月29日 これのp.10


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