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【訃報】木村太郎衆院議員、死去

2017-07-26 00:47:10 | 鉄道・公共交通/交通政策
<訃報>木村太郎さん52歳=自民党衆院議員(毎日)

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 木村太郎さん52歳(きむら・たろう=自民党衆院議員)25日、膵臓(すいぞう)がんのため死去。葬儀の日程は未定。喪主は妻真紀子(まきこ)さん。連絡先は東京都千代田区永田町2の1の2の衆院第2議員会館809号室。

 東洋大法学部卒業後、青森県議などを経て、1996年の衆院選で旧新進党から青森4区に出馬して初当選し、当選7回。自民党移籍後、農水政務官、防衛庁副長官などを歴任し、第2次安倍内閣では首相補佐官を務めた。
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木村太郎衆院議員の突然の訃報に改めて驚かされた。52歳の若さであまりに早すぎる。

自民党議員ということで、当ブログと信条・政策上の一致点はほとんどない。むしろ正反対といってもいいが、当ブログとしては、死去に当たり、彼の生前の功績にひとつだけ触れておきたい。

民主党政権(菅政権)当時の2010年10月、第176回臨時国会で、木村議員が国による並行在来線への財政支援に関する質問主意書を提出している。内容は、東北新幹線の新青森延伸に当たり、並行在来線(東北本線)を分離する第三セクター「青い森鉄道」に対する支援策が不十分だとして、その拡充を求めるものだった。これに対する政府答弁書は、具体性のない、きわめて曖昧な内容に終始している。

しかし、この木村議員による問題提起は結果的に国を動かした。「貨物調整金について」と題する国土交通省資料によれば、木村議員がこの質問をした半年後の2011(平成23)年度から、並行在来線運営会社がJR貨物に対する線路使用料を引き上げた場合に、その引き上げられた額を補てんする「貨物調整金」制度が拡充されている。それまでは列車1本当たりで定められていた貨物調整金が、車両1両当たりで定める方法に変更されたのである。

これにより、1列車当たりの編成両数が多い貨物列車ほど、鉄道・運輸機構からJR貨物に支払われる貨物調整金の額が増えるため、並行在来線運営会社はJR貨物に対して、従来より高い線路使用料を設定できるようになった。結果的に、経営難に陥ると考えられていた並行在来線運営第三セクター会社の経営状態が、幾分安定化するようになったのである。

この貨物調整金見直しは、あくまでJR7社体制の骨格を維持したまま行われた小手先の微修正に過ぎないといわれれば、確かにその通りだろう。しかし、当時の自民党は野党であり、法制度を変えられる立場になかった。その中にあって、質問の形で問題提起をすることによって、整備新幹線開業に伴う並行在来線沿線住民の不利益を少しでも減らせるように政権与党に働きかけ、それを実現させたのである。木村議員のこの問題提起がなければ、貨物調整金は見直されなかったか、見直されたとしてもその時期はかなり遅れることになっただろう。

複雑に利害関係が入り組む現在、社会は一気には変わらない。抜本的な改革が行われないなら意味がないと、投げて何もしないのではなく、少しでも現状を前進させるために、小手先の微修正であったとしても、政府与党を譲歩させ、そこから引き出せるものがあるならば、最大限それを目指して活動するのが野党議員としてのあるべき姿である。

この質問が行われた2010年当時は、衆参ねじれ国会の下で不安定な政権与党が野党へ譲歩しなければならない状況にあった。不安定な与党と巨大な野党という状況は、野党が与党に譲歩を迫り、要求を受け入れさせるチャンスの時期ともいえる。これに対し、巨大な与党に弱小野党という現在の状況は当時と異なっており、野党議員にできることは限られている。だが「少ないながらも、自分たちの背後にも選んでくれた国民・有権者がいる」と、自分の仕事に誇りを持ち、国民が政治に対して求めるものをしっかりと捉え、腐らず地道に問題提起をすれば、政府与党による政策の修正を勝ち取ることができる。木村議員のこうした活動は、当ブログ管理人も大いに参考にさせてもらっている。

暴言・失言や不祥事の相次ぐ自民党議員の中で、木村議員はこうした日の当たらない、地道な活動もいとわずできる人だった。政治上のスタンス、信条・政策は当ブログと対極の人だが、52歳の若さで失うにはあまりにも惜しい人材だ。改めて、当ブログからも哀悼の意を表したい。

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