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安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

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こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

【管理人よりお知らせ】国鉄再建監理委員会答申「国鉄改革に関する意見-鉄道の未来を拓くために-」の全文ほか2件の歴史的資料を安全問題研究会ホームページに掲載しました

2020-01-05 18:48:47 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人より2点、お知らせです。

1.この正月、道内某所で行われた鉄道系イベントで、国鉄再建監理委員会答申「国鉄改革に関する意見-鉄道の未来を拓くために-」の全文が掲載された鉄道誌を偶然、入手しました。後の国鉄分割民営化につながる「国策」を事実上提言した重要な歴史的資料です。国立公文書館に資料請求をしてみようかと思っていた矢先の発見です。

新年早々、このような形で望んでいた資料が見つかるとは思いませんでした。当ブログ管理人は元来、非科学的なことは信じていませんが、今年も全力でJR北海道問題に取り組め、という神の啓示としか思えません。

そこで、安全問題研究会ホームページに急遽、掲載することにしました。「国鉄分割民営化・JRを検証する」コーナーから見ることができます。直接行きたい場合は以下のリンクから飛んでください。なお、いずれもPDF版のみです。

<重要資料>国鉄再建監理委員会答申「国鉄改革に関する意見-鉄道の未来を拓くために-」全文(1985(昭和60)年7月26日)

緊急座談会「“分割・民営化”の問題点を衝く」

国鉄再建監理委員会“最終答申”を読んで

2.正月に撮影した鉄道動画をYoutube「タブレットのチャンネル」に掲載しました。以下のURLから見ることができます。

200102近鉄けいはんな線 吉田~生駒

なお、すでにyoutubeにアップ済みで、当ブログで未紹介のものについても、併せて紹介しておきます。

070822日高本線下り・東静内~日高三石(携帯動画)

190505函館市電 十字街電停発車

190615 高速貨94レ(新座(タ)行き)新札幌通過

190916成田エクスプレス34号品川発車

190918中央線快速発車

190918かいじ・富士回遊16号立川発車

191111函館市電9600形函館どつく前発車

191111函館市電2000形函館どつく前入線

191111函館市電 函館どつく前~湯の川温泉

191111 4835D五稜郭発車

191111高速貨3067レ五稜郭到着

191111高速貨3067レ五稜郭発車

191112スーパー北斗5号函館~新函館北斗

191112スーパー北斗5号長万部~洞爺

191112スーパー北斗5号洞爺~東室蘭

191126スーパーおおぞら7号新夕張~トマム

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戦後日本新自由主義の元凶、中曽根元首相を「追悼」する 地域から反撃し公共交通再国有化を

2019-12-25 23:48:02 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2020年1月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 11月29日、中曽根康弘元首相が死去した。戦後日本に巨大な「影」を作り出した元凶、中曽根元首相をこのまま安らかになど眠らせるわけにいかない。

 ◎最大の罪 国鉄分割民営化

 中曽根氏が首相就任時、米国にはレーガン政権、英国にはサッチャー政権が登場。国有企業民営化、規制緩和などの新自由主義政策が本格導入された。英国では炭鉱など主要産業の労働組合を解体する大規模な攻撃が始まっていた。

 中曽根元首相は、レーガンやサッチャー同様、こうした政策を日本にも本格導入した。1985年に電電公社(現NTT)、専売公社(現日本たばこ産業)を民営化。通信事業や塩の専売といった市民のための重要な産業を自由化し大企業に売り渡した。

 過酷を極めたのは1987年に行われた国鉄分割民営化だ。全国1社だった国鉄を6地域と貨物、7会社に分割し民営化。この過程で10万人近い国鉄労働者が追い出された。1985年度の国鉄労働者は約31万7千人。分割民営化はその3分の1を解雇するものだった。分割民営化に反対する国労などの組合員は鉄道業務から草むしりなどの業務に転換されることをはじめ、自発的に辞職するよう仕向けられる中、100人以上の労働者が自ら命を絶った。

 優良な資産も抱え、見せかけの赤字に過ぎなかった国鉄を偽装倒産させ、多くの労働者を解雇する。国のお墨付きを得たこの方式はその後、民間にも広がった。国鉄分割民営化は労働者総首切り社会の始まりになった。

 中曽根元首相は「1人も路頭に迷わせない」と言いながら、最終的にどこにも採用されない1047名を生み出した。

 ◎安全、地方を切り捨て

 国鉄労働者の3人に1人を追い出す異常な「改革」は、必然的にあってはならない事故を生んだ。従来より少ない人員で増えた列車本数とスピードアップを同時に実現させようとする過酷な労働強化で、JR西日本では信楽高原鉄道事故(1991年、42人死亡)、福知山線脱線事故(2005年、107人死亡)など大事故が相次いだ。分割民営化当時の国労組合員を思わせる運転士への非人間的日勤教育は強い批判を浴びた。

 JR東日本でも風速規制が緩和され、羽越線事故(2005年)で5人が死亡。北海道でも石勝線列車火災事故(2011年)が起きた。JR北海道発足時、1万3千人だった社員数は2013年時点で6800人。分割民営化で減らした労働者数をさらに半分に減らす「改革」の当然の結末だ。

 JR北海道は2016年11月に自社単独では維持困難な路線として10路線13線区を公表。その営業キロ数はJR北海道全体の半分に及ぶ。労働者も路線も半分に減らすJR北海道。新自由主義的国鉄「改革」の象徴だ。

 国鉄末期に廃線が進んだ北海道では、高校生やお年寄りが学校や病院にも満足に通えない地域が続出している。公共交通の安全も地方も破壊し、労働者を路頭に迷わせ、政治家は平気で公約を破り、嘘をつく。中曽根元首相と新自由主義が日本にもたらした大災厄だ。

 ◎廃線に反対し、地域は立ちあがる

 大手メディアは国鉄分割民営化の中身には一切触れず、中曽根元首相の「功績」と大々的に宣伝する。だが「そう思っている人たちは北海道の現実を見てほしい」(元国労稚内闘争団・田中博さん)との声が上がる。道民が望んでもいない北海道新幹線工事が着々と進みながら、存続を望む生活路線は次々と廃止されていく。「新幹線以外はすべてJRから切り捨て、民間企業か地元自治体でやれというのが国の方針。国は分割民営化の延長線上に廃線を位置づけ、意識的にやってきている」。そう指摘するのは元国労函館闘争団の佐々木勉さんだ。

 しかし、国と道、JR北海道が一体となって道民に押しつけようとした廃線は各地で抵抗に直面している。JRが「バス転換が適当」とした5線区のひとつ、根室本線(富良野~新得)沿線では自治体、地元経済界、労働組合、住民が一体となり災害復旧、廃線阻止を求める闘いが続く。同じ5線区の日高本線(鵡川~様似)沿線では、住民の闘いによって地元・浦河町が最後まで廃線反対を貫いた。日高町村会は密室協議でバス転換同意案を「強行採決」したが、沿線全自治体による早期の同意は見通せない情勢だ。人間も地域も再生産を不可能にする新自由主義に未来はない。最大の罪である国鉄分割民営化を検証し、JR再国有化で公共交通を復活させなければならない。

 ケン・ローチ監督の英国映画「家族を想うとき」が今、全国で公開されている。新自由主義が究極まで行き着いた社会での奴隷労働の悲惨さを描き、公開当初段階から「ケン・ローチ監督の最高傑作」との評価が出ている。そのケン・ローチ監督は、サッチャー死去にあたってこう言った。「彼女の告別式を民営化しましょう。入札を行い、一番安い見積もりでやりましょう。それこそ彼女が望んだものですから」。

 「政治家は歴史法廷の被告席に座っている」と生前、自著で中曽根元首相は豪語した。今からでも遅くないから、私たちは中曽根元首相を裁き、有罪を宣告する必要がある。氏の葬儀は分割して行い、お墓も民営化。企業管理とし、赤字になったら廃止にしてはどうだろうか。それこそ中曽根元首相もお望みだろう。

(2019年12月21日 「地域と労働運動」第232号掲載)

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根室本線の災害復旧と存続を求める新得の集い 発言内容

2019-11-30 11:56:41 | 鉄道・公共交通/交通政策
(以下は、2019年11月26日、新得町で開催された「根室本線の災害復旧と存続を求める新得の集い」での発言内容です。)

 みなさんこんばんは。今日は、せっかく札幌から参加しましたので、いくつか発言させていただきます。実は今日、札幌を出るときに雪が積もっていまして、新得はさぞ大雪だろうと思って滑り止め付きの長靴で来たのですが、新得駅に降りてみたらまったく雪がないので拍子抜けしました。

 さて、今すでに何人かの方がお話をされたように、今起きていることは「幹線」の廃止問題であって、決してローカル線問題ではありません。夕張支線や札沼線は別として、5線区の残りは根室本線、留萌本線、日高本線とすべて名称に「本線」が付いています。

 どのような路線が「本線」を名乗れるかについては、昔はちゃんとした基準がありました。国鉄がまだ鉄道院と呼ばれていた時代に、その鉄道院が定めた「国有鉄道線路名称」という告示があります。その線路名称で各路線名を決める際に、本線を名乗れる基準は「支線を持っていること」だったのです。今は各地で廃線が進み、支線を持たない本線があちこちにありますが、昔は全部支線があった。だからこその本線であり、今起きていることは本線、幹線の廃止問題なのです。

 植物、木に例えるなら支線は確かに枝に過ぎないかもしれません。しかし花はすべて枝に咲きます。国鉄分割民営化の時に北海道の鉄道は大量に「枝」が切られました。枝が切られた木には花が咲かなくなります。花も咲かない木なんて立っていても意味がない、だから幹まで切ってしまおうというのが、いま国、道、JR北海道が一体になってやってきていることです。しかし幹まで切れば木は再び枝を伸ばすこともできなくなり、今度こそ完全に死んでしまいます。札幌は確かに木で言えば幹かもしれませんが、北海道という木が美しい花を咲かせるには「枝」が必要です。枝、地方が元気にならなければ札幌も花を見ることはできません。

 今、お花見の問題がずいぶん騒がれているようですが、お花見にあんな莫大なお金が使われるのも、楽しみにしている人がいるからです。花を見たい気持ちに黒字も赤字もありません。であるならば、そのお金のほんの一部でもいいから日本、北海道という木に花を咲かせるための「枝」、地方のお手入れに使うべきではないかと私は思うのです。

 JR日高線を守る会として、日高本線の状況について少し報告したいと思います。バス転換が「多数決」で議決されたのは11/12の町長会議ですが、その直前、11/8の金曜日に急遽、沿線7自治体にバス転換に同意しないよう要請をしました。浦河町長、日高町長には直接要請書を手渡しました。浦河の池田町長は「町長会議のたびに自分だけが反対で針のむしろだが、針のむしろも長く座っていると痛くなくなる」とまったく動じていませんでした。日高町長もバス転換に同意こそしたものの「鉄道時代より良くなったと感じられるようなバス転換の案が出てこない限り同意はしない」と言っています。沿線のすべての自治体がバス転換に同意して、その後に廃止届が出されるというのが札沼線などの前例であり、日高本線もおそらくそうなるでしょう。しかし、バス転換自体に反対の自治体もある中で、100km以上もある長大「本線」の沿線7町すべてが「鉄道時代よりいい」と感じられるようなバス転換の案を作ることが本当にできるのでしょうか。日高町長も「今までよりもこれからのほうがずっと長いんじゃないか」と仰っています。廃止届が出されない限り、列車は走っていなくても法的には線路は残っています。まだまだ頑張れると思いますし、地元の住民団体も、町長方も頑張っています。

 要請行動の際には道新の取材も来たので、私も取材に対しそのように答えました。しかし、町長会議翌日の道新紙面を見ると見出しは「沿線、諦めムード」となっていて愕然とするとともに、はらわたが煮えくりかえりました。今日、この集会の取材にも道新さんは来られていて、だからこそ私は猛省を促す意味で「勝手に諦めムードにするな」とこの際、はっきり言わせてもらいます。地元地域が維持され発展していく。その方向に向かってペンを執ることが地域ジャーナリズムの使命であり、そのことを忘れた地域ジャーナリズムにどんな存在価値があるのでしょうか。道新には反省していただきたいと思います。

 いずれにしても、日高沿線はまだまだ長い闘いが続きます。もう一度、5線区が力を合わせて、8線区も含んだオール北海道で取り組むときだと思います。そのために日高でも、また札幌も頑張ります。よろしくお願いいたします。

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【管理人よりお知らせ】安全問題研究会が行った日高本線問題をめぐる緊急要請(11/8)の要請書をサイトにアップしました

2019-11-27 21:26:24 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人よりお知らせです。

11月8日、安全問題研究会がJR日高線を守る会、JR北海道研究会と連名で行った沿線自治体申入書をアップしました。こちらから見ることができます。

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JR北海道による「自社単独で維持困難」線区公表から3年 北海道JR鉄道路線の現状

2019-11-26 22:20:49 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2019年12月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。なお、管理人の判断で「鉄道・公共交通/交通政策」カテゴリでの掲載としました。)

 JR北海道が、宗谷本線名寄~稚内間など計10路線13区間について、同社単独では「維持が困難」になったことを公表(2016年11月)してから3年が経過した。今月は、JR北海道の現状を報告したい。

 ●抜本的解決にならない「利用促進と豪華列車運行」

 2018年7月、国は、JR会社法(旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律)に基づいて「経営改善に関する監督命令」を出した。「徹底した経営努力によって収支を改善して、 経営自立を図る必要」があり、「関係者による相互の連携及び協力の下で、将来にわたって持続可能な交通体系を構築するとともに、他の輸送機関とも適切に役割を分担して、必要な輸送力の確保に努め」ることを求めるものだ。「特に経営状態の悪い5線区(深川~留萌、北海道医療大学~新十津川、富良野~新得、新夕張~夕張、鵡川~様似)は早急に切り捨てて経営自立せよ」を意味しているが、鉄道はレールがつながっていてこそ意味がある。北海道全体のネットワーク維持を展望せず、短期的な経営自立だけを求めているところにこの監督命令の根本的問題がある。そもそもJRグループが発足した初年度(1987年度)決算において、JR7社の営業収入全体に占めるJR北海道の割合はわずかに2.5%、JR北海道の営業収入は919億円で、この数字は当時の東京駅の収入より少なかったというデータもある。こんな状態の会社に自立を求めることは、事実上、儲からない鉄道事業からの全面撤退を求めるに等しい。

 2018年12月には「公共交通の利用促進のための道民キックオフフォーラム」が道庁主催で開催された。道と道内経済界一体となったJR北海道の利用促進運動だ。注目すべき動きだが、国鉄末期、特定地方交通線整理の際の「乗って残そう○○線」運動で実際にはほとんどの路線が残せなかったことを考えると、鉄道を道路、空港、港湾など他の交通と同じ公共財として位置づけ、赤字でも維持するという根本的政策転換が必要だ。しかし結局、このフォーラムでは最も重要なこの点が提起されなかった。

 豪華列車運行の動きも始まった。東急電鉄の観光専用車両「THE ROYAL EXPRESS」を道内で運行、JR北海道が運行会社から線路使用料を徴収する増収策である。この列車の運行はメディアでも取り上げられ話題になったが、もともとは「観光戦略実行タスクフォース」会議(2018年2月、首相官邸)で国交省が「豪華観光列車で増収」として提案したものである。その意味では国策といえるが、やはり線路使用料だけでは抜本的解決とはいえない。

 このように、現在、国・道・JR北海道から提起されている対策は、その場しのぎの弥縫策ばかりで鉄道政策を抜本的に見直すものとはなっていない。国のJR北海道に対する支援策も、資金ショートの危険が起きる都度、追加的に資金投入を行うにとどまっている。公共事業に対する融資審査に長年従事してきたある政府系金融機関OBは「戦力の逐次投入で犠牲者を増やすだけに終わった旧日本軍のインパール作戦と同じだ」と指摘する。

 ●値上げは運命の分かれ道か

 JR北海道は、2019年10月の消費増税に合わせ平均11%(増税2%分含む)もの大幅な運賃値上げを行った。7月1日、札幌で開催された公聴会では安全問題研究会代表を初め3人の公述人全員が値上げに反対したが、その意見はまったく考慮されず、申請通り認可された。

 値上げ後の新運賃を少し詳しく見よう。「幹線」の7~10km帯ではJR本州3社の200円に対し、JR北海道は290円で45%も高くなった。91~100km帯では本州3社1,690円に対し北海道2,100円(24%割高)。481~500km帯では本州3社8,030円に対し北海道8,800円(9%割高)。乗車距離が長くなるほど1km当たり運賃が低下する「遠距離逓減制」自体は旧国鉄からJR各社に継承されており、逓減率が同じならJR各社間の同じ距離帯を比較して差が出ることはあり得ないから、JR北海道では本州3社と比べ、乗車距離に応じた運賃逓減率が拡大していることを意味する。要するに「乗車距離の長い人ほど安く、短い人ほど高い」運賃体系がいっそうひどくなったということである。一概には言えないが、道外からの出張者や旅行者には乗車距離が長い人が多く、通勤通学の一般道民には乗車距離の短い人が多いことを考慮すると、JR北海道にとって最も大切にすべき一般道民に対し懲罰的な運賃体系ということになる。

 公聴会に出席した島田修JR北海道社長は、値上げに対する批判に対し、驚くことに「通学定期の割引率は今までと同様、高いままに維持している」と反論し理解を求めた。しかし、これは例えるならケーキ1個を500円、2個を1,000円で販売していた店が、1個を1,000円、2個を2,000円に値上げした後、「値上げ後も1個が2個の半額であることに変わりないのだから値上げではない」と言っているのと同じであり、詭弁に過ぎない。

 今回の値上げでは、区間によっては3割も値上げされた区間もある。筆者の知る限り、鉄道運賃でこれほどの大幅引き上げは、国鉄末期の1976年に行われた5割値上げ以来であろう。この前年、国労・動労に結集した労働者がみずからのスト権を賭けて実施したスト権ストでは、国鉄全線で丸8日間にわたってほぼ全線がストップ。その後、貨物部門での深刻な荷主離れに危機感を抱いた国鉄当局は5割値上げに踏み切った。「首都圏のすし詰め状態の国電で通勤しているサラリーマンは交通機関の選択権がない人たちだから、5割くらい値上げしてもどうせ国鉄に乗るだろう」との読みが当時はあったとされるが、結果的にこの読みは外れた。競合私鉄、営団(現在のメトロ)や都営地下鉄、都営バスに乗客は大幅に流れた。その後の国鉄がどのような運命をたどったかは改めて説明するまでもなかろう。分割民営化による国鉄消滅は1987年。5割値上げから11年後のことである。

 もしも歴史が繰り返すなら、今回のJR北海道による最大3割にも及ぶ値上げがこの会社の「命取り」になる可能性は十分にある。北海道には首都圏と違って競合交通機関は地下鉄とバスくらいだから心配がないという声もあるが、それは北海道の地域事情を知らないからである。北海道で鉄道の最大のライバルは「自家用車」だ。ただでさえ有利な車に乗客を奪われる可能性を甘く見てはならない。そう遠くない将来、JR北海道の経営破綻のニュースが流れたとき「今思えばあの大幅値上げが運命の分かれ道だった」との歴史的検証を受けるような転換点になるかもしれないのだ。

 現在、JR北海道は「令和12(注:2030)年度の北海道新幹線の札幌開業を機に……経営自立」を図るという到底実現不可能な目標を「グループ長期経営ビジョン」として掲げている。確かに新幹線自体は間接的なものまで含めると莫大な経済効果を生むかもしれない。しかしその大半は東京~新青森間を持つJR東日本のものになる。新青森~札幌の末端区間しか持たないJR北海道に落ちる効果は限定的なものにとどまらざるを得ない。にもかかわらず、JR北海道の現経営陣がこんな夢物語を平然と開陳できるのは、いざその時を迎えて責任を問われるのが彼ら自身でないから関係がないと考えているか、あるいはその時までにJR北海道という会社が存続している可能性を彼ら自身が信じていないかのどちらかだろう(あるいはその両方かもしれない)。筆者は後者の可能性も十分あると考えている。彼らも自分の後任者が「JR北海道幹部として」札幌駅新幹線ホームでのテープカットに臨めるとはもはや考えていないのではないだろうか。

 ●粘り強い闘いが続く日高、根室本線沿線

 JRが廃線を提案したいわゆる5線区のうち石勝線支線(新夕張~夕張)は今年春にバス転換された。札沼線一部区間(北海道医療大学~新十津川)も来年5月のバス転換が決まっている。札沼線はもともと札幌~石狩沼田を結んでいた(札沼線の名称は当時の名残である)が、1968年、国鉄諮問委員会が「歴史的使命を終えた」として廃止を勧告した83路線のひとつだった(この問題は、後の国鉄再建法につながる前哨戦として「赤字83線問題」と呼ばれるようになる)。これを受ける形で1972年に石狩沼田~新十津川が部分廃止され現在の形になった。今回の部分廃止で残る区間は札幌近郊の桑園~北海道医療大学のみとなる。廃止区間沿線の月形高校が「いじめが原因で札幌の高校に進学できない中学生の受け皿になっているのに、廃止で月形高校への進学の選択肢がなくなる」(地元の教育関係者)との証言もある。路線廃止は最も底辺の弱者にしわ寄せされる。

 日高本線に関してはつい先日、大きな動きがあった。日高町村会加盟沿線7町(日高、平取、新冠、新ひだか、浦河、様似、えりもの各町)の町長会議が11月12日に開催。(1)全線鉄道で災害復旧、(2)被災していない区間(鵡川~日高門別)を先行して運転再開し残り区間は継続協議、(3)鵡川~様似の全区間バス転換――のうちから1案に絞ることを「多数決ででも決める」としてきた坂下一幸会長(様似町長)の「予告」通り、採決に持ち込まれたのだ。結果は(1)が浦河町(池田拓町長)のみ、(2)がなく(3)が残り6町となり、バス転換同意が決められた。前回(2)を主張していた日高町、(1)を主張していた浦河町に対しては、坂下会長から「バス転換に同意しなかった自治体の区域内には、転換後はバス停を設けない」との執拗な恫喝が加えられたとの証言もある。それでも浦河町長は最後まで反対を貫いた。町長会議直前に安全問題研究会、JR日高線を守る会、JR北海道研究会が連名で行った緊急要請交渉では、池田町長は「針のむしろも長く座り続けていれば痛くなくなる」と孤立をまったく恐れていなかった。

 今後はJR北海道と各町との個別協議に入るが、バス転換や支援金などの提案に全町が合意後、初めて鉄道の廃止届が提出されるというのが過去の廃線手続の前例であり、札沼線でもこうした慎重な手続が行われた。バス転換にそもそも反対の浦河町に加え、「鉄道時代より良くなったと実感できるバス転換案でなければ同意しない」(大鷹千秋・日高町長)と明言している自治体もある。転換後にバス路線を担うとされる道南バスが、乗車率が高い路線まで「運転手不足」を理由に続々と休廃止している現状を見ると、転換バス事業者が見つからない可能性さえあり得る。この意味では、国鉄末期の特定地方交通線整理の時と異なり、鉄道維持を求める側に有利な情勢といえよう。

 「強行採決」後、坂下会長は実質的にはバス転換同意以外の何物でもない(3)を採択しながら、記者会見では「手続を後戻りさせてはならない」が「必ずしも鉄道廃止を容認したものではない」という苦しい説明に終始。メディアからは「矛盾していて意味がわからない」との追及を受けた。地元で鉄路存続運動を続ける「JR日高線を守る会」が発表した声明は、「(坂下会長が)廃止容認でないとしたのは、私たちJR日高線を守る会や、各地の全線復旧を要求するたたかいが影響」「全線復旧の主張を続ける池田町長のブレない姿勢の影響も大きい」とした上で「JR日高線を守る会は全道全国の仲間とともに、鉄路を守り抜くたたかいに引き続き力を注ぎます」としている。JR北海道による「自社単独では維持困難」10路線13線区公表から3年。公共交通としての鉄道維持を求める地元の闘いは、ついに最後まで廃線反対を貫く自治体を生み出すという新しい局面を作り出した。

 鉄道事業法が2002年に改悪された結果、鉄道路線の廃止は国の許可を経ることなく、鉄道会社による届出だけで1年後に可能となった。沿線自治体との間でどのような協議、同意の手続を経るべきかについて同法は何も定めていないが、これはそもそも沿線自治体の同意自体が廃線の要件とされていないためである。しかし実際には、鉄道が持つ公共性や、沿線同意なく廃線を強行した場合において、沿線との関係が悪化することを恐れる鉄道事業者によって改悪前とほぼ同様の手続が行われてきた。一方で、整備新幹線の建設に当たって、いわゆる並行在来線をJRの経営から分離し、第三セクター鉄道へ移行させる場合には、経営分離する区間について「当該区間に関する工事実施計画の認可前に、沿線地方公共団体及びJRの同意を得て確定する」と定めた政府与党合意が存在する。JRから第三セクターへ、単なる線路の譲渡に過ぎない「経営分離」に沿線自治体の同意を必要としながら、それより重大な結果を招く路線廃止に沿線自治体の同意が不要というのは交通政策として整合性も道理も欠いている。九州新幹線長崎ルートの建設認可に先立って、並行在来線の経営分離に同意しない自治体があったため、国とJR九州が並行在来線の事実上の切り捨てに失敗した例もある。こうしたことを考えると、今回、日高本線をめぐって最後まで廃線反対を貫く自治体が現れたことが今後に与える影響は大きいとみられる。

 5線区のうち残る2つ(根室本線・東鹿越~新得、留萌本線・深川~留萌)については協議入りさえしておらず、日高本線もバス転換に向かうため協議のテーブルが用意されると決まったに過ぎない。地元住民にとって死活問題である公共交通をめぐって、廃止を求める国、道、JR北海道と沿線自治体・住民の激しい闘いは今後も続く。当研究会も引き続き当事者として、積極的にこの問題に関わっていくことになる。

(2019年11月25日 「地域と労働運動」第230号掲載)

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日高町村会、日高本線のバス転換同意案を「多数決」で強行採決 浦河町は反対貫く JR日高線を守る会が声明を発表

2019-11-16 10:39:52 | 鉄道・公共交通/交通政策
11月12日、日高町村会は会合を開催、浦河町が反対する中、日高本線のバス転換同意案を「強行採決」した。鉄道のバス転換では、これまで沿線自治体協議会で全自治体の同意を得てから廃止届を提出する手続が曲がりなりにも行われてきた。今回の決定は、こうした過去の前例も覆す反民主主義的暴挙である。

JR日高線を守る会の声明をご紹介する。

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●町長会議は6対1で全線バス転換の方向打ち出す  
●守る会は鉄路守るたたかいを引き続き進めていきます

 11月12日、日高町村会の臨時町長会議が開催されました。『なぜ今、坂下町村会長は多数決をしてまで急ぎ日高線を廃止しバス転換するという方向に突き進もうとしているのか』JR日高線を守る会は坂下町村会長に公開質問状を提出して、多数決でバス転換・鉄路廃止を決めることのないよう要求してきました。

▼バス路線転換に絞るが、鉄路の廃止を容認したものではない
 この日、新ひだか町公民館には多くのテレビ・新聞の取材陣が集結し多数決決定の成り行きを注目しました。午後4時から行われた報道陣の囲み取材で坂下町村会長は次のように会議の結果を報告しました。
『最終的に多数決で決めることになった。その結果バス路線に転換が6町(日高町は一部復旧から全部バスに)、鉄路存続が浦河町1町となり、6対1の多数決でバス路線転換に絞った。しかし、鉄路の廃止を容認したものではない。バス路線についてそれぞれの町がJRと3月をめどに個別協議を行う。それぞれの町が結果的に(交渉が)ダメになる可能性も含まれている。バス路線を最終的に各町が合意できるように取り組んでいく』と坂下氏が説明。
〇バス路線に転換目指してJRとの協議を各町ごとに進めて合意をつくる。
〇しかし鉄路廃止容認ではない。
 この説明が記者団もわかりづらいと質問を繰り返していました。「廃止容認でない」としたのは、私たちJR日高線を守る会や、各地の全線復旧を要求するたたかいが影響を与えたものと思われます。全線復旧の主張を続ける池田町長のブレない姿勢の影響も大きかったでしょう。

▼JR=海岸復旧で廃線ありきの姿
 重大な問題が明らかになりました。記者から「バス転換の協議に入ったとき、護岸の復旧はどうするのか」と質問されて、JRの綿貫常務取締役は「護岸については道と一緒に色んな調査をしている。工法や、どういう範囲でできるのか話し合って進めていきたい」と述べたことです。JRは災害復旧で国の制度を使って直ちに工事すべきだったのに一切やらず、バス転換の方向が見えたら「進めていきたい」と言うなど、その廃線ありきの無責任な姿勢が浮き彫りになりました。

▼密室協議変える気なし
 また、記者から「町村会の議事録を公開しないのか」という質問に、「会議中罵声をあびている町長もいて面白おかしく書かれても困る」「議事録が公開されて、自由に発言できなくなると困る」など、民主主義とは異質な、会議の水準も地方自治の理解も疑われる説明に終わっていました。

▼バス転換協議はJRと道、国の責任を帳消しにする
 日高線の維持困難路線の問題は、「地方の問題」ではなく、JR北海道の経営危機の問題であり国の政策の失敗によるものです。国の政策の失敗は、国が責任を取るべきであり、地方の路線を廃止して「解決したことにする」べきものではありません。人口減少や不採算を理由にすれば、広大な北海道で公共インフラは何も維持できないことになり、地方住民の生活は成り立たなくなります。今回のバス転換協議はJRの護岸復旧工事一切やらなかった責任も道の海岸国土保全義務の責任も帳消しにする効果があります。

▼JR日高線を守る会の存在は増々重く
 温室効果ガスの排出削減対策で注目される鉄道、高齢者の運転免許証を自主返納で必要とされる鉄道、インバウンド増大に絶大な力を発揮する鉄道。今こそ鉄道の優位性を直視すべきです。何よりも鉄路を廃止した地域の衰退は確実で、そうなればバス事業者もやがては撤退縮小していきます。
 JR日高線を守る会は全道全国の仲間とともに、鉄路を守り抜くたたかいに引き続き力を注ぎます。

2019年11月13日
JR日高線を守る会

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JR日高本線問題に関し、「JR日高線を守る会」が日高町村会長充て公開質問状を送付

2019-10-31 19:32:28 | 鉄道・公共交通/交通政策
11月12日にも予定されている「日高町村会」の次回会合に向けて、「JR日高線を守る会」が日高町村会長充て公開質問状を送付しました。その内容をご紹介します。

JR日高線を守る会ブログ(2019年10月29日付記事)より

公 開 質 問 状

 2015年1月にJR日高本線が高波被害により運休してから4年9ヶ月が経ち、次回臨時町長会議で日高線の行方が多数決決定されると報道されています。しかし、そもそも日高線を含む今日のJR北海道の維持困難路線の問題は、「地方の問題」ではなく、JR北海道の経営危機の問題であり、32年前の国鉄分割民営化に端を発する国の政策の失敗によるものです。即ち、経営安定基金の運用益で赤字経営を補うという分割民営化時のスキームが破たんし、運用益の不足額が4600億円にものぼり経営を圧迫したことが、今日の問題の本質です。

 国の政策の失敗は、国が責任を取るべきであり、こうした歴史的経緯を考えても、地方の路線を廃止して「解決したことにする」べきものではありません。またJR北海道が廃止を提案しようとも、住民や地域はあきらめるわけにはいきません。人口減少や不採算を理由にすれば、広大な北海道で公共インフラは何も維持できないことになり、地方住民の生活は成り立たなくなります。

 私たちJR日高線を守る会は、この基本スタンスの下にJR日高線の一日も早い復旧を願い、国と北海道とJR北海道の地域公共交通を守る意志と良識を期待しつつ、自治体の首長のみなさん、地域のみなさんと力を合わせながら、講演会、学習会、懇談会、駅清掃などのあらゆる機会を通して、啓発と運動を進めてきました。

 しかし、ここへ来て、日高町村会はバス転換を多数決で決すると言います。住民の生活や地域の未来を左右する重要な問題であるにもかかわらず、これまで会議も一貫して非公開であり、住民に対してバス転換の内容も何ら具体的に明らかにされていない中、私たちJR日高線を守る会は、なぜ今鉄路の復旧を諦めて急ぎバス転換を決定する必要があるのか、という疑問を禁じ得ません。つきましては、以下の通り質問いたしますので、ご回答の程宜しくお願いいたします。



一.坂下町村会長は、「1町2億円」の地元負担をすると「町がつぶれる」という趣旨の発言をされて、このことを日高線をあきらめる理由の一つとされていますが、他の維持困難路線の沿線自治体は、日高線のように億単位の地元負担を求められてはいません。にもかかわらず、それら維持困難路線の当面の存続は決定しており、このような多額の負担を求められた日高線だけが差別的取り扱いを受けていると言えます。この差別的取扱いへの抗議も言及もなしに、なぜ坂下町村会長は「1町2億円」を根拠に廃止やむなしとお考えなのでしょうか。なぜ億単位の負担を求められない他路線が存続し、日高線だけが「1町2億円」を理由に鉄路をあきらめなければならないのでしょうか。理由をお聞かせ下さい。

二.坂下町村会長は、「長くなればなるほど、困っている人に誰も手をさしのべず、待っていていいのかと切羽詰まっている状態」と発言されて、このことを理由の一つとして早期にバス転換すべきとされていますが、これは当事者たる「困っている人」に直接お話をお聞きになってのご意見でしょうか。私たち「JR日高線を守る会」は、当事者たる「困っている人」から、「当面は今の代行バスの利便性を高めながら、長期的には日高線を復旧してほしい」「やはり所要時間も短く、車内も広くて揺れも少ない快適な列車が必要。」という声を聞いております。車椅子の方や、リウマチで通院される方、高齢で免許を返納される方々にとって、速達性・快適性にすぐれた鉄道の利便性は、バスで代替することができないものです。地域にも様々な意見があることは承知していますが、鉄道の存続に死活的な利益を有する交通弱者の方々の声を、町村会長として今一度聞いて頂くことはできないでしょうか。

 また、上記のご発言は、バス転換すればより便利で快適になるという前提でのお話かと存じますが、上記交通弱者の方々にとって、現行の代行バスより代替バスの方がより便利で快適になるという根拠を、具体的にお聞かせ下さい。

三.10月24日(水)北海道新聞3面掲載記事「旧JR代替バス存続危機 天北宗谷岬線」に報道されたように、鉄路が廃止になりバス転換された地域は、乗客減少や減便、基金や補助金の減少など、どこも同様の問題に喘いでいます。また、ここ日高でも、道南バスのペガサス号が減便になったり、空港行きのバスの経路が変更になって苫小牧への通院が著しく困難になるなど、すでに同様の問題が起きている現実があります。こうした中で、なぜ今、坂下町村会長は多数決をしてまで急ぎ日高線を廃止しバス転換するという困難に自ら突き進もうとしているのでしょうか。理由をお聞かせください。また、バス転換後の各地の疲弊についてもご意見をお聞かせ下さい。

四.前回の臨時町長会議終了後の記者会見にて、坂下町村会長は、多数決に参加しない自治体については「離脱もあり得る」と発言されましたが、「離脱」とは具体的にどのようなことを指しているのでしょうか。また、10月18日の道新日高版記事「浦河町長が退席示唆」にあるように、「次回、浦河町が採決を退席するなら、それ以降の協議から離脱してもらう」との趣旨の発言があったと報道されていますが、これは事実でしょうか。事実とすれば、どのような意図からのご発言でしょうか。

五.上記三と四に述べた事柄(多数決の決定の検討と、「離脱」に関する発言)を確認するために、7月22日と9月24日に行われた臨時町長会議の議事録を開示して下さい。議事録が存在しなければ、会議録や発言録やメモ、録音データなど、各々の発言の主旨が分かるものであれば何でも構いません。可能であれば、上記2日程以外の全ての日高線に関する会議の議事録(なければ発言録や録音データその他何でも)の開示をお願いしたいと思います。

六.日高線の今後に関してこれまで多数回にわたって行われた町村会会議は、今後の住民の生活や地域の未来を左右する重要な議論の場であったため、私たち守る会をはじめ議長会や報道機関などからも公開の要請がなされてきましたが、住民や報道機関による傍聴も取材も許可されず、全て非公開で行われてきました。会議後に短時間のぶら下がり会見は行われましたが、私たちが必要な内容を理解するには不十分なものであり、これをもって行政の説明責任が果たされたとは言えないのではないかと思います。これらの会議は、なぜ一貫して非公開だったのでしょうか。理由をお聞かせ下さい。

七.坂下町村会長は、多数決でバス転換を決定されようとしておりますが、今後以下の問題についてどのように対応するご予定でしょうか。8月27日に私たち守る会が申入れにうかがった際には、(バス転換について)「まだ何も決まっていない」と仰っていましたが、以下の内容は、少なくとも多数決決定がなされる場合にはそれに先立って事前に住民に明らかにされてしかるべきものだと思いますので、それぞれの項目について具体的にお聞かせください。

(1) 大型バス運転手(大型二種免許保有者)の不足
(2) 18年後または基金が底をついた後どうするのか
(3) 現便数の確保
(4) 経路変更される箇所およびその周辺住民の同意
(5) 運賃、定期代の上昇
(6) 各町負担の増加

八.大狩部の被災箇所について、JR北海道は護岸責任を放棄し、北海道は「(海岸法施行規則により)鉄道海岸だから護岸ができない。廃線にして公共海岸になれば道が護岸可能」という趣旨の発言をして、事実上日高線の廃止を地元に迫っている状況ですが、なぜ日高町村会はこれに抗議や申し立てをせずに、急ぎ多数決で廃止を決定しようとされているのでしょうか。そもそも海岸法は、国鉄時代の昭和31年に施行された法律であり、国鉄分割民営化までは護岸は国の予算で行われており、「お金がないので直せない」という事態は想定されておりません。即ち、今回のような状況は法の想定外であり、これは法の不備であります。こうした法の不備は、本来であれば政治行政が力を合わせて補うべきものであるところ(※実際、2015年に、道・JR北海道・国の三者間で10億円ずつ負担するという合意がまとまりかけたことがあった)、北海道は当該法(施行規則)を楯にして本来行うべき護岸を行わずに放置することによって、漁業者の被害を長期間継続せしめ、あろうことか結果として地元に廃線を迫ることになっています。このように、機械的・形式的に法を当てはめて本来行うべき護岸を怠り、漁業者の被害を放置し地元に廃線を迫るような振る舞いは、法の悪用というべきものであり、「この法律は、津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護することとともに、海岸環境の整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用を図り、もって国土の保全に資することを目的とする」という本来の海岸法の趣旨にも悖るものです。国土保全は本来国や道の責任であり、本来道の行うべきは、速やかに護岸を行うことによって、漁業者の不利益を速やかに除去するとともに日高線の復旧に尽力することではないかと考えますが、町村会は道に対してこの事実を指摘し抗議したことはあったのでしょうか。もしなかったのであれば、今後速やかに抗議すべきではないでしょうか。ご意見をお聞かせ下さい。

九.日本を訪れるインバウンドは増加を続け、来年開催予定の東京オリンピックを契機として道内にも多くの外国人観光客が訪れることが予想されます。京都や東京などへのインバウンドの一極集中とその地方分散が課題となる中、地方は人口減少時代の交流人口増加へ向けて、地域の観光力を磨き上げることが求められています。日高には、襟裳岬、アポイ岳ジオパーク、アイヌ文化、二十間道路、牧場風景、美味しい海産物等々、インバウンドを呼び込む魅力あふれるコンテンツがあふれており、千歳空港に近いロケーションを利用してインバウンドを引き込むために、日高線は必要不可欠なピースだと私たちは考えています。鉄道は、特に外国人観光客にとって信頼性の高い公共交通機関であり、路線バスは忌避される傾向にある、とも現役のツアーコンダクターの方にうかがったことがあります。また、日高線の車窓から見えるオーシャンビューや牧場風景は全国屈指の風光明媚さであり、日高線それ自体が観光資源であり地域の宝であると言えます。このような状況で日高線を廃止するとすれば、今後どのように日高の観光振興をはかっていくおつもりでしょうか。具体的にお聞かせ願えれば幸いです。

なお、ご回答はメールまたはFAX、文書で送付くださいますようお願い申し上げます。郵送でご返信頂ける場合は、同封の返信用封筒をご利用のうえ、11月5日(火)までに着くようにご投函をお願いいたします。

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日高本線存続に向け、7団体が共同で緊急集会

2019-09-05 06:48:34 | 鉄道・公共交通/交通政策
日高線存続へ7市民団体が緊急集会 札幌(北海道)

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 JR日高線鵡川―様似間の存続を求める市民団体による緊急集会が3日、札幌市内で開かれた。集まった86人が鉄路存続に向け活動の活性化を確認した。

 JR日高線を守る会、北の鉄路存続を求める会など道内七つの市民団体が初めて共同開催した。

 会場ではJR日高線を守る会の真壁悦夫事務局長が「バスの運転手不足が言われる中で、バス転換ありきの議論はありえない。最後まで戦い抜く必要がある」とあいさつ。JR北海道研究会の小田清・北海学園大名誉教授(地域開発政策論)は「鉄道は地方でもサービスを平等に受けられるもの。地方が育たなければ札幌もだめになる」と訴えた。

 鵡川―様似間について、沿線7町は早ければ24日に町長会議を開き、《1》全線復旧《2》鵡川―日高門別間の復旧、残りをバス転換《3》全線バス転換―のいずれかの方向性を出すとしている。(石垣総静)
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JR北海道が「維持困難」とした10路線13線区のうち、国にも道にも見捨てられ、孤立無援の中で廃線ありきの議論が続いている5線区。そのうち日高本線について、9月24日に予定されている沿線自治体町長会議でこれまでの(1)全線復旧、(2)全線バス転換、(3)一部転換の3案を、「1案に絞り込む」との報道されている。

そうした情勢を受けて、廃線を阻止するため、9月3日、札幌市内で集会が開催。緊急の呼びかけにもかかわらず、100人の会場が埋まった。当研究会代表が、「JR日高線を守る会」として発言を行った。その内容を以下、紹介する。

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 お疲れ様です。

 いわゆる維持困難線区の中で、日高本線――あえて「本線」であることを私は強調したいと思いますが、いま最も切迫した情勢にあるのがこの日高本線です。廃線が提案されている鵡川~様似で116km、苫小牧~様似の全線だと146.5kmもあります。九州でいえば、福岡市(博多駅)~長崎市(長崎駅)までが153.9kmですからほぼ同じ距離です。日高本線をなくすというのは、九州の人に向かって、福岡市から佐賀県を通って長崎まで、各駅停車の路線バスで行けというのと同じです。そんなやり方はまともな先進国の交通政策ではないということを、まず初めに強調したいと思います。

 2015年1月に不通になってから4年間以上経ち、静内高校など地元の学校では鉄道で通学した経験を持つ現役生徒がすでにいなくなっています。「列車が走らなくなると、優秀な生徒を集められなくなる。ますます地域の衰退に拍車がかかる」という校長先生の危惧が現実のものになりつつあります。鉄道で日帰りできた地域へ、代行バスでは泊まりがけになることで、行くのをあきらめた障がい者の方もいます。

 「たかが移動くらいで」というのは交通強者の発想です。先の参院選では、重度の障がいのある人でも、有権者の付託を受けて国会議員になれることが証明されました。「お前たちは少数派なのだから多数派の言うことを聞け」は民主主義ではありません。1人の弱者を守れない社会が一般市民を守ることができるとは私は思いません。多数派こそ1人の弱者に寄り添う社会、それを作ることができるかどうかが、今まさにこの日高沿線で試されているのです。沿線自治体協議会も、町村会やJRとの協議の場もすべて非公開。住民はおろか地元議員すら会場に入れないという密室状態で行われています。日高では民主主義が死につつあります。

 国鉄末期の特定地方交通線対策協議会では、自治体はもちろん、病院などの関係者、PTAなどの学校関係者も参加した場で話し合いが行われました。今の日高とは対照的です。協議が2年間まとまらなければ国鉄が勝手に廃止届を出してしまう。そんな時間的制約の中で、第三セクター鉄道、あるいはバス転換、各地でその地域の実情に見合う結論が出されました。83線区のうち約4割、38線区が第三セクター鉄道に転換した中で、国鉄分割民営化から32年経った今も廃止がわずか5線区だけというのは驚くべきことだと思います。第三セクター鉄道をみんなで支え、盛り上げ、存続させていこうという動きを作ることができたのも、みんなで徹底的に話し合い、民主的に導き出した結論だったからではないでしょうか。

 私たち、JR日高線を守る会は8月27日、日高町村会に申し入れをしました。私たちは町村会に結論を白紙委任したわけではない――申し入れ書にはそんな私たちの鉄路を守る決意が書き込まれています。浦河の池田町長は頑張っています。池田町長がいつまでも折れないから、バス転換を町村会で多数決で決めようという動きが毎回のように浮かんでは消えるというのが今の日高線をめぐる情勢です。多数決という暴挙を許してはなりません。もう一度繰り返しますが民主主義とは少数派が多数派に従うことではありません。最も困っている1人に寄り添うことが民主主義なのです。地動説を唱えているのは当時、世界でガリレオ1人でしたが、今、世界中の誰もが地動説が正しいことを知っています。100年後「やっぱりあなたたちのほうが正しかった」と言われるように頑張らなければいけない。そのためにも今が踏ん張りどころだと私は思っています。

 今日この集会で、日高沿線自治体に対するFAX行動などが提起されると聞いています。たとえ町村会で多数決による強行採決が行われたとしても悲観することはありません。整備新幹線の開業にあたって、並行在来線が第三セクター鉄道としてJRから切り離されるときも、沿線自治体の首長全員が同意書に印を押しています。整備新幹線建設に関する政府与党合意で『具体的なJRからの経営分離区間については、……沿線地方公共団体及びJRの同意を得て確定する』と決められているからです。九州新幹線長崎ルートでは、沿線自治体のうち鹿島市、江北町が在来線切り離しに「不同意」を表明したため、第三セクター鉄道として並行在来線を「厄介払い」しようとしたJR九州の野望を阻止しました。路線を廃止するときの地元同意の手続をどのようにすべきか定めた法律や文書はありません。法律上、地元同意は廃線の条件ではないからです。しかし、JRから第三セクター鉄道に変わるだけで、線路が残るときでさえ沿線自治体の首長全員が同意書に印鑑を押しています。線路が完全になくなってしまう廃線がこれより軽い手続でよいなどということは、常識的に考えてあり得ません。先日、地元が廃線に同意した札沼線沿線を見ても、沿線4町の町長全員が同意書に印鑑を押しています。ひとりでも印鑑を押さない首長がいれば地元同意とはならないと考えるべきです。池田町長をみんなで支え、盛り立てる。もう1人くらい廃線反対の首長を沿線に送り出す。そうすることで、廃線はいくらでも阻止できると私は考えます。町村会で採決されても、闘いはむしろこれからです。単に廃線を阻止するだけでは足りません。私は、死につつある日高の民主主義をこの闘いを通じて取り戻したいと思います。

 もうひとつ、重要な問題を指摘しておかなければなりません。今日の集会、冒頭からみなさん異口同音にバス、トラックなど大型車のドライバー不足の問題を指摘していますがそのことについてです。実は、今から11年も前の2008年、「輸送の安全向上のための優良な労働力(トラックドライバー)確保対策の検討」という報告書を、他ならぬ国交省自動車交通局貨物課が取りまとめています。運転手の低賃金、重労働に対し、このまま国が何の手も打たなければ2015年には全国でトラックドライバーが14万人も不足するという試算結果がこの報告書では示されています。国交省は少なくとも2008年段階で、いずれこのような事態が起きることを知っていたにもかかわらず何もしませんでした。トラック物流に新規参入しやすくする規制緩和をしたのは国です。その結果過当競争が起き、トラック運賃も、運送会社の売り上げも利益も、その結果としてドライバーの賃金も、すべてダダ下がりになっていくのを傍観したまま何もせず、指摘されたとおりにドライバー不足という結果を招いた国交省。一事が万事、その場しのぎ、その日暮らしで行き当たりばったりの交通政策しか取れなかったからこそJR北海道問題もこれだけ大きくなったのです。そんな怠惰の限りを尽くしてきた国交省に私たち道民が「お前たちの地元路線は廃線だ」などと言われる筋合いはこれっぽっちもない。我々に廃線などという前に国交省にこそ反省してもらいたいと思いますし、私は国交省の責任を追及すべきだと思います。

 日高本線、そして維持困難10路線13線区、残るすべての路線を守るため、私は最後のひとりになっても頑張り抜く決意です。今日この場にいらっしゃるみなさんも同じ決意を固められていることと思います。ともに頑張りましょう。

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【管理人よりお知らせ】安全問題研究会が行った国交省要請行動及び都内でのJR北海道問題に関する報告を掲載しました

2019-08-07 01:06:46 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人よりお知らせです。

安全問題研究会は、去る7月26日(金)、国交省に対し、リニア新幹線問題、JR北海道の維持困難線区問題に関する要請行動を実施しました。この際の要請書(PDFファイル)を安全問題研究会サイトに掲載しました。

また、28日(日)には都内でJR北海道問題に関する報告を行いました。この際の報告資料「JR北海道問題の現状」(PDFファイル)もサイトに掲載しましたので、ご覧ください。

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安全問題研究会、JR北海道の運賃値上げ公聴会で反対公述 変化の兆し出始めた世論

2019-07-27 00:33:53 | 鉄道・公共交通/交通政策
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2019年8月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。なお、管理人の判断で「鉄道・公共交通/交通政策」カテゴリでの掲載としました。)

 JR北海道が5月に行った平均11%、最大3割にも及ぶ鉄道旅客運賃・料金の上限変更認可申請に関し、国土交通省運輸審議会が7月1日に実施した公聴会で、安全問題研究会代表が一般公述人の1人として反対の公述を行った。公述内容は、本誌前号に掲載した公述書のとおりであり、当研究会代表は、JRグループ各社間に巨大な格差が存在し、その格差が拡大するままに放置され、何らの是正措置も講じられないまま北海道民だけに負担が押しつけられようとしていること、北海道産農産物の輸送に鉄道が大きな役割を果たしていることを中心に現状のままの値上げは認められないことを表明した。他に2名の一般公述人も値上げ反対を表明。公述人全員が値上げに反対する異例の事態となった。

 ●「鉄道再生のための改革」と強弁する島田社長

「JR北海道の経営が苦境に追い込まれた根本原因は、そもそも旧国鉄を地域ごとのJRグループ各社に分割した際の切り分け方にある。JRグループ各社の企業努力を超える格差が厳然と存在し、またその拡大が続いているこの間の社会経済情勢の変化を踏まえると、企業努力の範囲を超える格差に関してはその是正のための制度を導入することこそ国として、今行うべき政策である」とした当研究会代表の公述に対し、島田社長は「国鉄という全国1社の巨大組織が非効率を生み経営破綻につながった。適正な経営規模の下、地域ごとの自立的経営を行い、鉄道の再生をめざすのが国鉄改革の精神だった」と色をなして反論してきた。しかし、島田社長のこの苦し紛れの強弁にこそ国とJR北海道の最大の弱点が現れている。国鉄改革の失敗を指摘されることを彼らは何よりも恐れているのだ。

 32年前に国民の強い反対を受けながら、分割民営化推進派が根拠なく繰り返してきた空虚な主張を一字一句なぞっただけの強弁で、JR北海道は実際、この日の会場を埋め尽くした報道関係者や傍聴者を納得させることができなかった。ほとんどの報道機関が公聴会後、値上げに対し批判的な論調だったことは、当研究会の主張の正しさを裏付けるとともに公述の成功を物語っている。

 32年の時を経て、JRグループをめぐる情勢は根本的に変化している。新幹線が新潟、盛岡、博多までしか走っていなかった時代の認識のまま、JR北海道の危機をその場しのぎの対処で乗り切ることなど不可能だ。実際、新幹線のダイヤに余裕のある北海道・九州でほぼ同時に「貨物新幹線」の運転構想が表面化した。既存のJR旅客6社+貨物という枠組みの中では対応が難しく、JR再編の呼び水になりそうな動きも出始めている。

 日本の鉄道の歴史を俯瞰すると、見えてくる事実がある。1872年、資本家が資金を集め、民間主導で開通した日本の鉄道は、1906年に国有化。戦後に入り、1949年に公共企業体(国鉄)となり、1987年に現在のJRグループとして民営化した。民間による開業から国有化までが34年、国有化から公共企業体化するまでが43年、公共企業体化から民営化までに38年。おおむね35~40年で経営形態を変えている。制度を小幅に手直ししながら、鉄道の経営形態を維持できる期間としてはこのくらいが限界なのだろう。JRグループも発足から32年を迎え、そろそろこの限界に差し掛かりつつある。JRグループも経営形態の変更を議論すべき時期に来ている。その議論は分割された会社の統一が中心となるべきだ。

 ところが、こうしたJR再編の主張に対し、反対している人物がいる。葛西敬之JR東海会長だ。1年近く前になるが、「日経ビジネス」誌でのインタビューで葛西会長は「日本中に道路ができた今、鉄道を道路に転換しなければならない」と廃線を公然と容認。「経済原則に反するから全国を1本に戻そうということにはならない」とし、北海道を救済しないのかとする同誌記者の質問を「愚問」と決めつけた。

 葛西会長は、安倍首相と昵懇の関係で知られる「アベ友」だ。国から3兆円もの資金援助を受け、環境破壊、税金垂れ流しのリニア新幹線を推進しながら、JR北海道はおろか、自社の在来線すら「お荷物」扱いし見向きもしない。

 JR北海道の鉄道を廃線から守るためには葛西社長の打倒が必要だ。それは、1人もJR職場に戻れなかった被解雇者1047名への責任を果たすことでもある。

 ●変化の兆し出始めた世論

 当研究会は、JR北海道による「維持困難線区」公表後も、ぶれることなく一貫してJRグループの再編を訴えてきた。国鉄「改革」で3分の1の路線を失った北海道が、このまま何の手も打たれずさらに半分の路線を失うことなど断じてあってはならない。その信念の下、5線区(廃止対象)に位置づけられた日高本線沿線を中心に講演回数は8回に及んだ。国土交通省、総務省に対する要請・申し入れ3回、国会議員を通じた質問主意書提出3回に加え、「JR日高線を守る会」「JR問題を考える苫小牧の会」などと連携した署名や駅清掃、キャラバンなどあらゆる行動を続けてきた。この春からは、代表のメディア出演(インターネットラジオ、コミュニティFM放送)によって市民に直接政策を訴える活動も行った。

 当研究会代表を初めとする一般公述人の奮闘によって、次第に世論の風向きにも変化が現れ始めた。野放図な廃線・値上げ容認論はなお残るものの一時の勢いを失い、新自由主義者らは焦りを深めつつある。代わって国鉄分割の不当性や北海道単独での経営の困難さを指摘し、JR再編や再国有化、上下分離の導入を求める声が強まっている。巨大な利益を上げながら人員削減を強行し、年末年始や大型連休など繁忙期のたびにトラブルを引き起こすJR東日本、新幹線車内で犯罪が相次いでいるのに抜本的な対策もしないままリニア建設に突き進むJR東海、尼崎事故現場を一般市民の目から隠しつつ、加害の歴史を抹殺するJR西日本――彼らにこれ以上私たちの公共交通を委ね続けることはもはやできない。

 当研究会は、国鉄改革の失敗を認め、直ちにJR再編に着手するよう、国に対して強く求める。粘り強くあるべき交通政策を訴え続け、いよいよ世論を動かし始めたみずからの活動に自信を持ち、公共交通の復権というあるべき道を、ぶれることなく、まっしぐらに進む決意をこの機に改めて表明する。

(黒鉄好・2019年7月21日)

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