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安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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規制緩和が生んだJR事故(国鉄闘争共闘会議パンフレット「国鉄分割民営化20年の検証」掲載)
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核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

JR路線維持 札幌駅前「1の日行動」スピーチ

2021-02-04 23:22:00 | 鉄道・公共交通/交通政策
(当ブログ管理人も参加した2月1日の「1の日行動」の記事が北海道新聞に掲載されました。参考記事:「留萌線減便反対 札幌で署名活動 鉄路存続を求める会」2021.2.2「北海道新聞」)

みなさんこんにちは。2021年最初の、日高線沿線からの訴えです。

今、石狩地方の高教組の先生から「みなさんが通学に使っている列車がある日突然、来なくなったらどうしますか」という問題提起がありました。冗談に聞こえるかもしれませんが、これが本当に起きてしまったのが日高線です。2015年1月、線路の路盤が高波にさらわれ、列車がある日突然来なくなった。沿線住民は災害復旧を求めたのですが、JRが提案してきたのは復旧ではなく廃線でした。5年以上、ずっと私たちは復旧を訴えてきましたがJRはもちろん、地元自治体にも聞く耳を持ってもらえず、日高線は廃線が決まりました。

そんな中、廃線に最後まで反対してきた浦河町長を除く沿線6町長が、バス転換をめぐって「話が違う」「こんなはずじゃなかった」と言っている、という情報が地元の人を通じて入ってきました。この町長たちは今ごろになって一体何を言っているのか。「廃線区間が47.5kmの札沼線(北海道医療大学~新十津川)の沿線4自治体が18億もの転換交付金をJRから確保しているのに、廃線区間の距離がその2倍以上(116.0km)もある日高線のバス転換交付金がたったの25億円でまともな転換バスなんてできると思っているんですか。こんな提案を受け入れたら日高は終わりですよ。まともなバス転換などできず、確実に公共交通空白地帯になります」と私は沿線自治体への申し入れ交渉の際、直接、各町長には申し上げてきました。

そのことをちゃんと申し伝えてきたのに、人の話を聞きもせず、沿線住民にも一切情報を伝えもせず、JRと町長たちだけの密室「ボス交」で非民主主義的にすべてを決めたのは誰ですか! 「話が違う」? 違うわけないじゃないですか! 「何でこんなことになっているんだ」って……それは、あなたたちがそんな内容で合意し、調印したからですよ。あなたたちが合意し、調印したとおりの現実が目の前にある。ただそれだけの話なんです。営業担当者の口車に乗せられて、契約書も見ずに印鑑を押して、後になってからこんなはずじゃなかった、騙されたなどと言い出す。これでは、例えは悪いですがオレオレ詐欺の被害者と同じです。こんな人たちが地元住民の「代表者」の町長かと思うと、涙が出てきます。

今、私のすぐ前に発言された方から、コロナ(で鉄道がひどいことになっている、という内容)の話が出ました。鉄道会社はどこもひどい経営状態になっています。民営化以来一度も赤字になったことがなく、今までボロ儲けに儲けてきた本州3社も、例えばJR東日本ですら4700億円というものすごい赤字を出しています。2020年度の決算では、JR6社全部合計で赤字が1兆円を超えるという事態が起きるかもしれません。

1兆円と聞くと、途方もない額のようにみなさん思われるかもしれません。でも思い出していただきたいのです。旧国鉄は毎年毎年、1兆円の赤字を出していました。それでもローカル線は廃止もされず走っていました。たったひとりの高校生、たったひとりのお年寄りを学校や病院に送り届けるために。そのことに不満を言う人もまったくいなかったわけではないものの、今の時代では考えられないほど少なかった。なぜなら国鉄は公共交通であり、「コモン」(=共有物)だという合意が国民みんなの中にあったからです。

私たちが今、しなければならないのは赤字黒字の議論ではありません。この公共、コモンという考え方、黒字だからではなく公共だから、コモンだからきちんと残していくんだという合意を、国民のみなさんで足下からきちんと議論し、再建していく。そのことなくして鉄道を残し、発展させていくことは決してできないと私は思います。

今日は私からみなさんに報告があります。私企業の利益のために走り、儲からなかったら廃線にする。そうしたJRというあり方を、公共、コモンという新しい形に変えるため、安全問題研究会は今回、JR再国有化法案をみずから作成し公表しました。日本鉄道公団法案という名称で、会のホームページにも載せています。私はこの法案を今の通常国会に提出させるつもりで作りました。このまま国会が無修正で通してくれれば、5年後にはJRの再国有化が成る。利益のために儲からない路線を切り捨てるJRから、公共のために走る日本鉄道公団に、もう一度生まれ変わるための法案です。この法案提出、そして成立に向けて頑張る決意を表明して、私からの訴えを終わります。

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「あるくラジオ」を聞いて~廃線に直面する北海道にとって国鉄闘争は過去ではない

2021-01-14 22:40:09 | 鉄道・公共交通/交通政策
 森健一さんがゲスト主演された「あるくラジオ」第14回放送(1/8)を聴いた。森さんは地元・鹿児島で教員を務める傍ら、国鉄闘争支援に取り組んだ。退職後、各地を取材して当事者の声を拾い上げ、「戦後史の中の国鉄闘争」を出版した。1時間の番組の中には、森さん自身、そして取り組んできた「労働運動半世紀」の歴史が凝縮していた。

 私自身も国鉄闘争支援を続けてきた中で、懐かしい闘争団員の名前も出てきた。すでに鬼籍に入った人も多い一方で、課題は違えどいまだ地域の中心になり、闘いを支えている人がいる。そうした闘争団員の近況を聞けたことは大きな収穫だった。

 国労つぶしが始まる前に、自動車や東芝・日立などの電機、精密機械を中心に民間大手でまず組合つぶしがあったーーと番組では戦後労働運動史を振り返る。そのときに戦後労働運動の牽引車でもあった官公労がもっと民間労働者と連帯できていれば……とも。歴史に「もし」はないと言うが、「官」と「民」、正規と非正規、男性と女性……連帯されるとまずい労働者同士が手を結びそうな局面、ここが「勝負所」という局面で、資本の側はことごとく労働者同士の紐帯を断ち切ることに成功し、分断支配につなげてきた。番組で語られる戦後労働運動史を聴いていると、敗北に至る転換点がいくつもあったのだということに改めて気付かされる。

 だが、物言う労働者を厄介者扱いし、連帯の紐帯を断ち切り、分断支配した企業が一時的成功を収めることはあり得ても、その成功が何十年、何百年もの長きにわたって続くことなどあり得ない。国労をすりつぶして生まれたJR西日本が福知山線事故という最悪の惨劇を起こしたのは2005年のことだ。そこから遅れること6年後の2011年、破局的事態を引き起こした福島第1原発の原子炉が東芝製だったことを、事故から10年を迎える今年、改めて想起しておかなければならない。「こんな設計、こんな企業体質では心配だけれど、上に言ってもたぶん無駄だろう」ーーそんな企業が送り出す製品やサービスが、顧客、利用者を幸せになどできるだろうか。福知山線と福島での2つの事故が、鮮やかに答えてくれている!

 さらに時代は流れ、東芝は今、福島事故の後始末にあえぐ。日立は日本政府のあれだけの後押しがあったにもかかわらず、海外への原発輸出案件はすべて潰えた。シャープは鴻海に買収され日本企業でなくなった。物言う労働者を隔離部屋に収容して辞めるように仕向け、羊のように飼い慣らされた労働者だけを軍隊のように行進させ、服従させた電機メーカーのほとんどは時代の潮流を読めなくなり、市場から淘汰された。

 JRも同じ凋落の流れの上にある。北海道では2016年に「自社単独では維持困難」な10路線13線区が公表され地元に衝撃が走った。それから4年が経ち、JR北海道が廃線、バス転換を相当とした5線区のうちすでに3線区で廃線が決まっている。国労をつぶせるならローカル線などなくなってもいいーーそのようにして始まった国鉄分割民営化が原因で、今、北海道では「本線」の名称を持つ路線まで次々廃線が決まっていこうとしている。

 1時間の番組も終盤にさしかかる頃、リアルタイムで番組を聴いていたリスナーから「このまま赤字のローカル線はなくなっていくしかないのか」という質問が寄せられた。当研究会の回答は、断じてノーである。たかが赤字ごときで鉄道が廃線になる国など、地球上で日本だけだと断言していい。

 これは私だけでなく、民営化推進派だった石井幸孝JR九州初代社長も同じことを主張している(実際、氏が札幌市の講演でそう言っているのを私は自分の耳で聞いた)。鉄道ライター高木聡さんは『政府は(鉄道輸出で)世界に日本の技術を広めるなどという崇高な理想を語る前に、国内の疲弊しきった鉄道システムを再興させることのほうが先決ではないか。利益至上主義で長距離・夜行列車は消え、台風が来るたびに被災したローカル線が復活することなく消えていく。これは途上国以下のレベルである』と酷評している(注1)。この高木さんの批判に筆者は全面的に同意する。日本の鉄道政策がどれだけ異常かは、安全問題研究会リーフレット「こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策」にまとめているのでぜひ見てほしい(注2)。

 JR北海道が、災害で不通となったままの一部区間(東鹿越~新得)の廃線を提案している根室本線を何とか守ろうと日夜奮闘している佐野周二さんの闘いも紹介された。北海道の「10路線13線区」沿線の存続運動関係者はこの5年間でみんな顔見知りになり、筆者も佐野さんからは賀状をいただいた。この区間は、1981年に石勝線が開通するまで札幌と釧路・根室方面を結ぶ唯一の路線で、食堂車を連結した特急気動車や生活物資を積んだ貨物列車が頻繁に行き交った区間だ。石勝線が災害で不通になれば、代替路線として迂回輸送・貨物輸送の任に当たらなければならないことも十分予想される。

 2018年2月から3月にかけて、北海道交通政策課が「北海道交通政策総合指針」案を取りまとめるに当たり、行われたパブリック・コメントで、当研究会は根室本線のこの区間について「石勝線が不通となった場合における貨物輸送の迂回ルートとして維持を明確にすべきである」との意見を提出した。パブコメなど所詮「ガス抜き」に過ぎないと思っていたら、道交通政策課は根室本線のこの区間について「検討にあたっては、道北と道東を結ぶ災害時の代替ルートとして、また、観光列車など新たな観光ルートの可能性といった観点も考慮することが必要である」と、当研究会の意見を一部反映させる記述の修正を行った(注3)。災害時の代替ルートであるとの認識を道に持たせることができたことは、この区間の存続に向け、大きな前進を勝ち取ったと考えている。

 道東・道北地方にとって生命線であるこんな重要路線すら廃線を提案するJR北海道には公共交通事業者としての基本的資質が欠けている。貨物は自社の事業でないから言及する立場にないというのであれば、旅客と貨物を別会社に分割した国の責任を問わなければならない。

 JRは公共交通であり、日本製が買えなくなっても外国製を買えばいい家電製品とは違う。かつて国民の信頼を集め、戦後日本の復興の中心的役割を果たしてきた鉄道を再建するために、どんな方法があるのか。今回、安全問題研究会はこの課題にひとつの回答を示した。以下のURLに、JRグループ再国有化のための法案「日本鉄道公団法案」を載せている(注4)。昨年春くらいからずっと練っていた法案の構想を、年末年始で一気に形にした。国会に議員立法で提出し、可決を目指している。この法案を国会がそのまま可決してくれれば、5年後には再国有化が成る。この法案を、森さん、佐野さんにもぜひ届けたいと思う。

注1)国が推進「オールジャパン鉄道輸出」悲惨な実態(東洋経済)

注2)安全問題研究会リーフレット「こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策」

注3)「北海道交通政策総合指針」案に対する意見募集結果(道交通政策課)
 このリンク先の17ページ目に当研究会が提出した意見が記載されている。これを受け、修正された交通政策総合指針が以下のページ。

 北海道交通政策総合指針(修正後)「鉄道網の展望」  このリンク先の9ページ目に記載の表中、「根室線(富良野~新得間)」が、当研究会の意見を受け修正された記載である。

注4)日本鉄道公団法案

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【重要発表】安全問題研究会がJR再国有化のための法案を決定!会の総力を挙げ成立目指す

2021-01-09 15:21:20 | 鉄道・公共交通/交通政策
 安全問題研究会は、深刻化する一方のJRローカル線の救済を中心に、JRグループ各社がこの30年で抱えるに至ったさまざまな問題の抜本的な解決を図るため、2021年1月4日、JR7社及び旧国鉄が担っていたJR7社以外の事業の一部を、新たに設立する新型公法人に統合再編することを骨子とする「日本鉄道公団法案」を決定しました。

 法案の全文等の資料は、公式ホームページから見ることができます。個別の内容を直接見たい方は、以下の直接リンクから飛んでください。声明以外は、すべてPDF版のみです。

1.法案の全文
2.一般及び及び議員向け逐条解説資料
3.法案成立後のイメージ図(JRグループはこう変わる)
4.「日本鉄道公団法案」決定に至るまでのJRグループ事業再建に関する各界各層からの提案に対する当研究会における検討結果について
5.声明
<参考資料>鉄道40年周期説

 今後、当研究会は、各政党にこの法案を提示し、志を同じくするあらゆる勢力と共同して、この法案の成立のため、全力を尽くすことになります。

 以下、法案決定に当たって発表した声明です。当研究会は、政府与党をただ批判するだけの勢力から脱却し、コロナ禍の今こそ、みずから対案を示し、政府与党に提案していきます。

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 安全問題研究会は、本日、JRグループ旅客6社と貨物会社を中心に、日本国有鉄道がかつて担っていた事業の大部分を全国1社制の新型公共企業体に統合再編するための基礎となる「日本鉄道公団法案」を決定した。法案の全文、国会議員及び一般向け逐条解説資料は別に示すとおりである。

 法案は本則59条、附則5条から成っており、JR旅客6社、貨物会社の鉄道7社及びその事務事業、JRバス8社の事務事業、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が保有する整備新幹線財産及び同機構が特例業務勘定をもって実施している旧国鉄業務のすべてを新設する日本鉄道公団に再編統合し、全国1社に戻すことを内容としている。7社に分割されたJR各社を公共企業体に戻すには大きな政治的、社会的、経済的エネルギーが必要と考えられることから、再国有化は1906年の鉄道国有法施行時を参考に、2段階方式で行うこととした。具体的には、経営状態が極めて深刻なJR北海道とJR四国、また物流政策の重要性からJR貨物の株式未公開3社を先行させ、その3年後をめどに残る各社及び関係事業を再国有化する。

 整備新幹線開業に伴ってJRから経営分離された並行在来線第三セクター鉄道も強制的に公団に戻す。国鉄時代の特定地方交通線転換第三セクター鉄道については、すでに開業後30年近く経過し、路線によっては地域に深く定着して国鉄と同様の枠組みに戻ることを望まない地域が出ることも予想されることから、地元関係者が希望する場合に公団線に戻れるよう必要な制度設計を行った。

 この法案が成立し、JRグループの日本鉄道公団への統合再編が実現すれば、JR北海道や四国と本州3社との著しい経営格差、整備新幹線の並行在来線切り捨て、並行在来線第三セクター区間におけるいわゆる「貨物調整金」など会社分割に伴って生じている問題は、すべて一気に解決されることになる。

 本法案の大きな特徴は、旧帝都高速度交通営団(現・東京メトロ)にかつて設置されていた管理委員会や、NHK、日本中央競馬会に設置されている経営委員会などをモデルケースとして、業務運営の基本方針、役員人事や資金調達、運賃決定に至るまで自主的、自律的に決定できる合議制の議決機関「管理委員会」を設置することとしたこと、管理委員会委員(定数15)の3分の2に当たる10人に公選制を導入したことである。全国規模で事業運営を行う公共企業体の管理委員への公選制導入は、我が国では初の試みであろうと思われる。国民が選挙で選任した代表者によって、業務運営上の重要事項の決定すべてが行われる民主主義的経営体の実現に向けた、新時代にふさわしい挑戦である。

 本法案は、JR北海道問題が深刻化する中で、道内のJR問題を考える諸団体、道内外のリニア新幹線問題を考える諸団体と当研究会との間で民主的討議を繰り返すことを通じてその構想が固まった。とりわけ、北海道民が必死に存続を求めてきた生活必需路線が赤字経営を理由に強制的に奪われる一方、地元の誰も望んでいない整備新幹線やリニア中央新幹線が強制的に建設される事態を前にして「路線の新設や改廃をいつ、誰が、どのような手続きを経て決めているのか。そこに市民、有権者の意思は反映されているのか」という問題提起が市民から行われたことは決定的な転機であった。新設する日本鉄道公団に公選制を基礎とする管理委員会制度を導入しようという試みは、利用者や市民の意向を反映しない形での路線の新設・改廃では交通政策としての意味がないという、民主主義国家では当然の問題意識をその出発点としている。

 本法案は、新型コロナウィルスの感染拡大によって、これまで日本の公共交通事業者の経営を支えてきた観光客・通勤客が揃って大幅な減少を余儀なくされ、公共交通事業者の経営が大打撃を受けるという未曾有の情勢の中で各政党に示される。満員電車の運行を当然の前提とした「鉄道事業法体制」は抜本的見直しを迫られており、いま手を打たなければ21世紀は日本の鉄道にとって滅亡の100年となるであろう。

 ポストコロナの新時代を見据えた当研究会の基本的考え方は、2020年10月、日高本線の廃線が合意された際の声明と同時に公表した「コロナ禍、また近年相次ぐ大規模自然災害等による公共交通機関の危機を受け、地方における鉄道路線を維持するため、今後採るべき新しい鉄道政策についての基本的考え方」に示したとおりであり、本法案にはここで示した考え方も最大限取り入れている。

 本法案の提示と、その成立に向けた取り組みは、当研究会にとって発足以来最大の仕事となるであろう。最近の政治情勢を考えると、もとより困難は承知しているが、「鉄道やバスは赤字になれば廃止されるもの」という公共交通に対する日本社会のこれまでの悲観的思想を根底から変え、ポストコロナ時代にふさわしく、かつ国際標準に照らしても遜色のない公共交通を確立する新時代の幕開けとするため、本法案の成立を期さねばならない。

 当研究会は、年明け早々から、本法案を主要政党に示す取り組みを本格化させる。本法案成立のため、会の総力を挙げて取り組むことを表明する。

 2021年1月4日
 安全問題研究会

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【管理人よりお知らせ】1月8日(金)ネットラジオで「国鉄闘争」が取り上げられます。

2021-01-07 21:47:03 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人よりお知らせです。

明日1月8日(金)、ネットラジオ「あるくラジオ」で国鉄闘争(いわゆるJR不採用問題)が取り上げられます。

国鉄が分割民営化されてJRになった際、「改革」に反対したことを理由にJR各社に採用されなかった人たちがいます。その人たちを丹念に取材し続けてきた森健一さんをゲストにお迎えし、33年前の「改革」が何だったのか、そして、今を生きる私たちのこの「生きにくさ」とどのようにつながっているのかを改めて振り返ります。こちらから聴くことができます。

平日昼間の聴きにくい時間帯ですが、放送後もyoutube映像としてアーカイブが残りますので、リアルタイムで聞き逃した方も、アーカイブから視聴できます。以下、配信元である「あるくラジオ」からのお知らせを転載します。

なお、この番組の放送終了後、当ブログ・安全問題研究会より重要発表がありますので、ご注目ください。

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●「あるくラジオ」第14回放送 2021年1月8日(金)14時〜15時

視聴サイト

●国鉄闘争とは何だったのか?ー森健一さんに聞く

 中曽根元首相が昨年(2020年)101歳で亡くなった。かれが推進したのが「国鉄分割民営化・国鉄職員の大量解雇」だが、中曽根はテレビで「国労つぶし総評つぶし社会党をつぶした」と豪語している。実際、世の中はその通りに進み、今や「新しい憲法を安置する」一歩手前まで来ている。国鉄闘争支援に関わってきた鹿児島の私立高校教師・森健一さん(65歳)は、退職後、全国を飛び回って 「国鉄闘争」の証言と資料を丹念に集め、2020年7月に大著『戦後史のなかの国鉄闘争1987年ー2010年』を著した。ここには不当に解雇され、23年間「歯をくいしばって」たたかい続けてきた国鉄労働者の生きざまが見事に表現されている。本の反響は静かに広がり、労働運動の再生を考える手がかりとしても読まれ ている。今回は次著の取材で上京中の森さんを招き、「国鉄闘争」についてたっぷり伺います。

●パーソナリティ しまひでひろ・ささきゆみ
*今回は、聞き手に「まつばらあきら」も加わります。

●配信スタジオ ビデオプレス
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鉄道・運輸機構理事長が年明け辞任を表明 工事「総崩れ」状況を見ると当然では?

2020-12-27 23:13:46 | 鉄道・公共交通/交通政策
北陸新幹線開業遅れ、改善命令 国交省、鉄道・運輸機構に(共同)

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 国土交通省は22日、北陸新幹線金沢―敦賀(福井県)の開業遅れと建設費増加は管理体制に問題があったとして、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(横浜市)に業務改善命令を出した。国交省が機構に改善命令を出すのは初めて。機構の北村隆志理事長は記者団の取材に「代表者としての責任を明確にする」として、年明けに辞任すると表明した。

 上原淳鉄道局長が22日午後、北村氏を国交省に呼び、命令文書を手渡した。来年1月29日までに改善内容を報告するよう求めている。

 機構は03年、日本鉄道建設公団と運輸施設整備事業団が統合して発足した独立行政法人。
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鉄道機構理事長が辞任表明 初の改善命令受け 北陸新幹線工事遅れ(時事)

 工事の遅延で北陸新幹線金沢―敦賀間の開業が2023年春から1年遅れる問題で、国土交通省は22日、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対し、独立行政法人通則法に基づく業務改善命令を初めて出した。

 これを受け、機構の北村隆志理事長は、年明けにも引責辞任すると表明した。

 国交省は命令で、施工管理体制や沿線自治体との情報共有を強化するよう要請。来年1月29日までに改善策を報告することも求めた。

 北村理事長は記者団の取材に「このような事態に至ったことを重く受け止める。機構の代表者として責任を明確化する」と説明。機構が改善策をまとめる前に辞任する考えを示した。小島滋副理事長も退任する。
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独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)に対し、「北陸新幹線工事の遅れ」を理由に国交省が業務改善命令を出した。業務改善命令は、正面衝突事故を2度も起こした京福電鉄(福井県、現えちぜん鉄道)やJR北海道などに出された例はあるが、鉄道・運輸機構への発出は記事にもあるように初。機構は理事長、副理事長の「2トップ」が年明けに辞任することになった。これも異例中の異例である。

しかし、今や鉄道・運輸機構が手掛けた工事は総崩れ状態にある。この間ずっと整備新幹線問題、リニア問題を追ってきた当研究会の目で見れば、これだけの事態を招いた機構の責任は問われて当然であり、辞任はむしろ遅きに失した感さえある。

北陸新幹線金沢~敦賀間は、2023年の敦賀開業を目指して工事が続いているが、貫通済みのトンネルから亀裂が見つかったことを11月初旬、各メディアがいっせいに報じた(参考記事:北陸新幹線工事、地盤が膨張し割れ目…1400本の固定ボルトが必要 加賀トンネル、完了2割程度(「福井新聞」2020年11月4日付))。さらに重大なのは、機構がこの亀裂の発生を9月段階で把握していたにもかかわらず、11月まで2ヶ月近くも隠蔽していたことである。この亀裂は大規模なもので、1400本ものボルトを追加で打ち込む必要があることから、2023年の敦賀開業は絶望視されている。

このところ、機構が手掛ける工事はあちこちで頓挫している。北海道新幹線札幌延伸工事は、北斗市内で有害物質を含んだ残土置場が満杯になったまま「次」の置場が決まらず、9月から工事中断となっている(参考記事:新幹線工事中断、来年2月末まで 渡島トンネルの一部(「北海道新聞」2020年11月26日付))。九州新幹線西九州ルートについても、フリーゲージトレイン頓挫によって、当初計画になかった武雄温泉~鳥栖間のフル規格格上げに佐賀県が反発し、工事が事実上暗礁に乗り上げている。実態は当ブログ2018年7月25日付記事「フリーゲージトレイン試験とん挫で混迷深める長崎新幹線~規格も決まらない路線に1兆円もの資金投入目指す「世紀の愚策」~」でお伝えしたとおりである。

そして、機構が国からの財政投融資3兆円を受け入れ、JR東海に「又貸し」する形で支援しているリニア新幹線も、大井川の流量減少問題をめぐる静岡県の抵抗で、静岡県内では工事にまったく入れていない実情がある。このように、今や機構が手掛ける現在進行形の新幹線工事(リニア工事含む)は「全滅」状態となっている。

これが古き良き「昭和」の時代なら、札ビラで地元の頬を叩き、デマとねつ造で事業の「有益性」を強調、最後は強制収用など力ずくで押し切れば新幹線は造れたであろうし、いざ造ってしまえば地元は万歳三唱で迎え、ぶつくさと反対していた連中も便利さに負けて結局は使うんだろう、と推進側は高を括っていればよかった。

しかし、従来の国のやり方では今や地元住民はおろか自治体すら納得しない。「こんなに便利に(あるいは速く)なるのに、なぜそんなに反対するのか」と昔のまま思っているなら、推進側はいずれ高い代償を払うことになるだろう。人々の価値観は多様化し、便利にさえなればいい、スピードアップさえすればいいという人ばかりではない。変わっていないのは事業を推進する政治家と官僚だけで、市民意識という意味では時代は変わっていないように見えても着実に変わっている。いつもと違うコロナ禍の年の瀬の風景からは、そんな日本社会の「底流」の変化も透けて見えてくる。

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【転載記事】自死に追いやられた仲間のことを忘れない!〜民営化の旗を振った中曽根康弘氏の国営の葬式

2020-11-01 19:23:36 | 鉄道・公共交通/交通政策
以下の記事は、「レイバーネット日本」に掲載されたもので、執筆者は国労組合員だった久下格さんです。久下さんは、関西出身ですが、上京し国鉄に就職。国労に所属しました。

分割民営化当時、JR本州3社(東日本・東海・西日本)では希望退職への応募者が多すぎ、定員割れでの会社発足となったため、解雇すると決めたはずの国労組合員らを一転して採用せざるを得ない事態となりました。

久下さんも、そのような形でJR東日本に生き残った方です。採用後は国労所属のまま定年まで勤めました。民営化後も、他の組合に所属する労働者との間で不当な差別を受け続けながら、最後まで国労一筋の人生を貫きました。

国策だった国鉄分割民営化に反対した国労組合員らに、どんな残酷な攻撃が仕掛けられたか、内部からの貴重な証言です。こんな残酷な攻撃を伴ってまで強行された国鉄「改革」によって、今も北海道では毎年、赤字路線が消えています。国労組合員へのこの残酷な攻撃は「生産性のない土地に住んでいる者に人権はない」として北海道民にかけられている「生活路線強奪攻撃」と同じなのです。

なお、以下のリンク先(レイバーネット日本)では写真を含む全内容を見ることができます。

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民営化の旗を振った中曽根康弘氏の国営の葬式
久下格(元国鉄労働組合員)

 昨年11月に中曽根康弘氏が死んだとき、朝日新聞の記者から取材を受けた。編集委員のTさんという女性が、わざわざ東京から京都の片田舎まで会いに来てくれたのは、その前年に私が、国鉄分割・民営化のときに車掌の仕事から排除され、本来の仕事から排除されたまま、56歳で死ぬまで30年間働き続けた後輩のことを書いた「品川駅の花壇」という文章を読んでくれていたからだった。その時、彼女は「中曽根康弘氏が亡くなりましたが、どのような感慨をお持ちですか」と私に聞いた。

 中曽根氏が101歳で大往生を遂げたことは大きく報道されており、もちろん私は新聞記事も読んでいたが、実のところ私には、ああ、中曽根氏もついに死んだかという淡い思いは浮かんだけれど、それ以上に大きな感情は湧いていなかった。だから私はT記者から「どのような感慨をおもちですか」と聞かれて少し困ってしまった。「うーん、もちろん死んだという記事は読みましたが、なぜか、そんなに大きな感慨はないですね…」と答えたが、これではT記者の期待したコメントにはならないだろうと、申し訳ない気持ちがした。中曽根氏が国鉄など公営企業の民営化政策の旗を振り、それに反対する国鉄労働組合をつぶすために、国家権力を総動員して攻め込んできたのは1980年代なかば。もう35年まえのことだった。たしかに、中曽根氏はその当時、私たちの人生を大きく狂わせた国家権力の頂点にいた、いわば敵の総大将ではあったが、しかし、私たちは私たちなりにその時代を生き延びて、前を向いて生きてきたのだ。往年の敵の大将が死んだからといって、私の心はもうそんなに揺れなかった。

 北海道や九州で、25年間の解雇撤回闘争を闘った元国労闘争団員のインタビューも新聞に載ったけれど、やはり彼らも「死んでも許せない。憎い。」というようなことは述べていなかった。彼らもまたそれなりに生き延びて、自分たちの人生を前を向いて生きようとしているのだ、と、私には思えた。死んでしまえば、権力者も一介の労働者もない。中曽根は死んだが俺たちはもう少し生きよう…と、私はその時、そう思ったのだった。

 しかし、今から思えば私は甘かったのだ。10月17日に行われた中曽根康弘氏の巨大な葬式の様子を見て、あのとき、私はもっとしっかりした意見をT記者に述べておくべきだったと後悔した。

 「本日ここに、従一位大勲位菊花章頸飾(けいしょく)、元内閣総理大臣、元自由民主党総裁、故中曽根康弘先生の内閣・自由民主党合同葬儀が行われるに当たり、謹んで追悼の辞を捧げます。…」

 コロナ禍のために半年延期された中曽根氏の葬式が、国と自民党の合同葬として東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪で行われ、菅総理大臣の弔辞が厳かに読み上げられた。巨大な祭壇には巨大な遺影とともに、天皇から親授された最高勲章をはじめとする勲章の数々が並べられていた。当初、4千人と計画された参列者はコロナ感染を予防するため大幅に縮小されたが、それでも1400人が参列すると報道されていた。葬儀にかかる費用、1億9千万円は政府と自民党で折半され、9600万円が国費から支出された。

 葬式はけっして死者のためのものではない。それは死者を葬る生者のためにある儀式だ。首都東京のもっとも格式あるホテルで、巨費を投じて行われたいわば国営の葬式は、この国が誰のものであるのか、この国を支配する者たちが、国家をどのような道に導こうとしているかを内外に厳かに宣言する、中曽根康弘氏の後継者たちによる一大セレモニーだった。

 「…先生は次世代に向け、全身全霊を傾けて新しい道を切り開かれました。…行政の肥大化を抑制し、民間の自由な創意を発揮させるとの観点から、日本国有鉄道の分割・民営化や、日本専売公社及び日本電信電話公社の民営化を断行されました。
 また、増税なき財政再建の基本理念の下、行政経費の節減、予算の効率化を図るなど、経費の徹底的な節減合理化と財政の健全化を強力に推し進められました。」

 弔辞のなかで菅首相はこのように述べて、国鉄の分割・民営化を中心とする民営化政策が中曽根康弘氏の最大の功績であったことを誇示し、「改革の精神を受け継ぎ、国政に全力を傾けることをお誓い申し上げて、お別れの言葉といたします。どうか安らかにお眠りください。」と弔辞を締めくくった。

 中曽根康弘氏の巨大な葬式の様子が報道されたとき、私は、今から35年前に行われたある国労組合員の葬式を思い出さずにはいられなかった。1985年、31歳の私は働いていた駅から引き剥がされて、国鉄当局が作った隔離職場に収容されていたが、元の職場の山手線の駅で働いていた仲間の葬式のことだ。当時、中曽根政権下では国鉄当局による凄まじい組合攻撃が吹き荒れていた。行方不明の売上金3万円を横領したと疑われた気の優しいS先輩は、身に覚えがないといくら弁明しても受け入れられず、出札の仕事から外され、連日、監禁されて事情聴取と称する取り調べを受けた。監禁を解かれるためには「横領を認める」しかS氏には道がなかった。「いくら言っても信じてくれない。疲れた」という弱々しい一言だけを残してS氏は自殺したのだった。当局は当時、隙があれば、どんな手を使っても国労組合員を恫喝し、屈服させ、切り崩そうと躍起になっていた。

 自死した者の葬式は、生き残った者には耐えがたいものだが、国労はS氏の葬式を組合の手で行うことを決めた。小さな葬式だった。山手線の駅を組織する国労新橋支部は、通夜と告別式の両日、黒い喪章を制服につけて勤務する「喪章闘争」を組合員に指令した。当局の切り崩しで喪章をつけられない駅も多かったが、まだ過半数を組織している駅では切り崩しを跳ね返して、喪章をつけて働いた職場もあった。

 仲間が殺されたのだ。私たちは負けるわけにはいかなかった。

 組合の手で行われた葬式に、S氏に対して連日の「事情聴取」を繰り返した責任者である駅長と首席助役が来た。「何をしに来た。お前たちが殺したのだ。あやまれ」と組合員に追及されて、彼らは早々に引き揚げたのだが、後日、「管理者に暴言を浴びせた」という理由で、追及の先頭に立った何人かに処分が発令された。

 国鉄の分割・民営化と国労解体攻撃のなかでは、100人とも200人とも言われる労働者が自死している。全国にはたくさんのS氏がいた。中曽根康弘氏の「功績」である「国鉄分割・民営化」と「戦後政治の総決算」が、このようなことを通じて達成されたことを、私は死ぬまで忘れない。

 「民営化の旗を振った中曽根の葬式が国営なんて笑い話ね」と言ったのはある友人だが、本当にその通りだ。コロナ禍で人びとが困窮し、明日の暮らしさえおぼつかない中で、人びとの困難をあざ笑うように、支配する者は1億9千万円をかけた葬式を挙行して人びとを睥睨している。

 「行政経費の節減、予算の効率化を図るなど、経費の徹底的な節減合理化と財政の健全化を強力に推し進められました。」

 菅首相が弔辞の中で述べた「行政改革の理念」は支配階級には適用されないのだ。

 『国鉄労使国賊論』という本がベストセラーになり、国鉄の赤字が国家を破綻させかねないという宣伝が国中を覆っていたとき、中曽根氏の肝いりでつくられた臨時行政調査会は「増税なき財政再建」という旗を振って公営企業の解体を迫っていた。あの時の約束はどうなったのか? 確かに法人税は引き下げられて大企業の税負担は軽減されてきたが、人びとの反対を押し切って導入された3%の消費税は今や10%となり、そして「増税なき財政再建」の旗を振っていた当の本人たちは、今や「消費税をさらに引き上げねばならない」と公言してはばからないでいる。要するに彼らは、自分たちにかかる税が引き下げられればよかったのだ。国家を破綻させると宣伝された25兆円の国鉄累積赤字は、「国民負担」という名目で国家の帳簿に赤く書き込まれて、1千兆円といわれる「国家債務」のなかに紛れ込まされてしまった。いったい、すでに40年間以上続いている「国家財政危機」の宣伝は果たして本当なのだろうか? 市井の人びとから奪い取り、富める者たちがさらに富んでいくための壮大なプロパガンダだったのではないのか?

 われわれが中曽根氏との争いに敗れ、国鉄が解体され、国鉄労働組合が少数に追い込まれた80年代なかば以降、彼らは「国家を危機にさらす敵」を次々につくりだしては、人びとをけしかけて社会を荒廃させてきた。公務員バッシング、「在日特権」バッシング、生活保護バッシング…。そして中国や朝鮮・韓国への排外的宣伝。残念ながら、われわれは、社会に存在する紐帯を次々と破壊し、社会のすべてを市場経済にゆだねる新自由主義と呼ばれる手法を止めることができないでいる。

 鈍色(にびいろ)の外套を身にまとい兵帽をかぶった数百人の兵士が、長く続く葬祭場への道の両側に整列している写真を見て私は戦慄した。ネットメディアだけが伝え、大手マスコミは伝えることのなかったその光景は、まるでSFの世界の帝国のありさまにも見えたが、それはけっして架空ではない2020年の日本国の姿だった。中曽根氏の葬式を警護していた兵士たちは、いったい誰を威圧し、誰から誰を守ろうとしていたのか。私は、今はまだ武器を持たぬ兵列の肩に小銃が担われる日が来ることを心底恐れる。

 目端の利く者は次々と中曽根氏の引いた路線にすり寄っていく。しかし、私はいつも穏やかに笑っていたS先輩を殺した中曽根康弘氏と、後継者たちのやり口を決して忘れないでおこう。私は、兵列に守られた1億9千万円の中曽根氏の葬式に、自死に追いやられた仲間の悔しさを思い、皆が涙したあの小さな葬式の記憶を対峙させよう。

 架空の「敵」に向かって人びとが扇動され、人びとが人びとを追いつめる荒廃した社会はいつか終わる。すべての人びとが、助け合い手を繋ぎ、穏やかに暮らせる日が来る。仲間を信じて、仲間と共に生きようとする人々がいるかぎりその日は必ず来る。

 私は私自身を鼓舞している。

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<安全問題研究会声明>JR北海道・日高本線廃止決定を受けて 新自由主義を乗り越え、持続可能な鉄道を再建するために

2020-10-27 22:32:18 | 鉄道・公共交通/交通政策
 JR北海道が2016年11月に「自社単独では維持困難」な10路線13線区を公表し、全国に大きな衝撃をもたらしてからまもなく4年が経過する。JR会社法に基づく国土交通大臣の監督命令を受けたJR北海道は、とりわけ「重要度が低い」とした5線区について、事業「再生」に名を借りた事実上廃線ありきの強硬姿勢で地元との協議に臨んできた。国鉄末期、国鉄再建法で規定された特定地方交通線対策協議会に見られるような、地元住民を交えた民主的な協議体制が結局は最後まで作られないまま、住民を排除したJR北海道と自治体との間の密室「協議」だけで地元住民の重要な生活路線が次々と奪われてきた。このような非民主主義的な廃線協議のあり方に対し、当研究会は強い怒りをもって抗議する。

 10月23日、JR北海道と日高本線地元7町との間で廃線を前提とした調印式が行われた。鵡川から様似まで、116.0kmにも及ぶ長大区間は2015年1月の高波災害で被災後、地元住民が5年半もの長きにわたって復旧を求める活動を続けてきたが、ついにそれも実らず廃線となる。本線の名称を持つ路線の廃止は国鉄末期の名寄本線以来、2例目という不名誉なものである。

 一方で、2019年11月に行われた地元7町の協議では、浦河町が最後まで反対の姿勢を貫いた結果、全町一致での廃線合意を「演出」しようとしたJR北海道のもくろみは挫かれた。国鉄分割民営化と前後して、30年近く前に闘いに踏み出した当研究会の長い歴史を振り返っても、被災して不通となった鉄道路線の復旧を求める運動が5年半にもわたって継続した例はない。これほど長く粘り強い闘いが継続したこと、そこから廃線に最後まで反対を貫く自治体が生み出されたことは、敗北の中にあって手にした巨大な成果であり希望である。「JR日高線を守る会」「JR問題を考える苫小牧の会」とともにこの闘いに主体的に関わり、路線復旧と維持を訴え続けてきたことは当研究会の誇りである。

 しかしながら、これほど長大でかつ本線の名称を持つ重要路線が、地元住民のこれほどの努力によっても維持できなかったことは、日本における既存の法制度が根本的に誤っていることを余すところなく示している。今回、日高本線の廃止決定と時期をほぼ同じくして、国鉄分割民営化推進の張本人である中曽根康弘元首相の国葬が、1億もの巨費をかけて強行されたことは歴史の皮肉と言うほかない。中曽根元首相が強行した国鉄分割民営化の亡霊は、北海道では今なお毎日、住民を襲い続けているのだ。

  国鉄分割民営化が産み落とした鉄道事業法は、日本のすべての鉄道事業者に事業収支見積書の提出を求め、これを基に「事業の計画が経営上適切なものであること」が認められなければ鉄道事業免許を与えないと規定する。やや極端な表現になるが、息もできないようなぎゅうぎゅう詰めの16両編成の満員電車を3分間隔で運転して利益を上げること、それができなければ鉄道事業から撤退することを、地方含むすべての鉄道事業者に要求しているのが鉄道事業法なのである。

 今年になって発生した新型コロナウィルスの感染拡大を防止するためには、人の密集を回避することが欠かせないが、こうした事態が長く続けば、大都市部の大手私鉄ですら生き残りは困難となる。鉄道事業法及びこれに基づく公共交通諸制度がその前提としていた条件が大きく崩れた今、このような極端に新自由主義的な法制度を放置するならば、21世紀は日本にとって鉄道滅亡の100年となるであろう。

 当研究会は、JR北海道が提起した廃線への動きに抵抗しつつ、ホームページやブログでの情報発信、集会や講演会での発言、ラジオ番組出演、運輸審議会主催のJR北海道運賃値上げに関する公聴会における公述人としての意見陳述などを通じてこうした諸制度の抜本的見直しを訴え続けてきた。結果として、他の交通分野と比べ鉄道だけインフラ部分を民間企業が保有し維持管理しなければならないことの不公平性や上下分離の必要性等に関しては訴えが一定程度浸透してきた。だが、新自由主義的諸制度の抜本的改革につながる政財官界の動きはついに表面化しないままこの日を迎えるに至った。

 当研究会は、公共交通の分野における日本社会の人材払底が最終段階に来ていることを改めて強く認識した。残念ながら日本の政財官界は、窮地に陥っている公共交通を持続可能な諸制度の下に置くための抜本改革を行う意思、能力のいずれをも欠いていると判断せざるを得ない。しかし、だからといって当研究会は、このまま何の手当もされず鉄道が死を迎えるのを座してただ待つこともできない。

 こうした認識の下、当研究会は、鉄道を持続可能な諸制度の下に置くための抜本的改革のためには、みずからその方策をまとめ、政財官界に提案する以外に道はないと判断した。当研究会が目指す抜本的改革の方向性は、別紙「コロナ禍、また近年相次ぐ大規模自然災害等による公共交通機関の危機を受け、地方における鉄道路線を維持するため、今後採るべき新しい鉄道政策についての基本的考え方(案)」に示したとおりである。JRグループ各社の再国有化、地方路線の廃線促進法としてしか機能していない鉄道事業法の全面廃止とこれに代わって地方路線の維持発展に資するための「地方鉄道振興基本法」の制定、上下分離の導入と国または自治体による線路保有・維持・復旧の義務化、鉄道運営における独立採算制の全面禁止を柱とする当研究会の提案は、公共交通に対する日本社会のこれまでの観念を根本から変え、ポストコロナ時代にふさわしく、かつ国際標準に照らしても遜色のない公共交通を確立する新時代の幕開けを告げるものになると確信する。

 当研究会は、この基本的考え方に基づく抜本的改革のための法律案を、みずからの手で作成し、早ければ年明けにも各政党に示したいと考える。既存の制度が不満なら、みずから対案を示し実現を目指す。破壊された公共交通復活のための政策提言とその実現に、当研究会は残りの人生をかけて取り組むことを宣言する。

 2020年10月23日
 安全問題研究会

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札幌市中心部に中曽根「国葬」批判の立て看板登場

2020-10-19 23:01:11 | 鉄道・公共交通/交通政策
中曽根康弘元首相の豪華「1億円国葬」の翌18日、札幌市中心部・大通公園で「さようなら原発北海道集会」が開催。終了後引き続き、野党共闘に取り組む各政党の街宣活動が行われた。

その大通公園のど真ん中に登場した立て看板。「国鉄職員200人を自殺に追い込んだのは中曽根康弘です」と堂々書かれている。週末、道行く人々の興味を引いていた。

北海道では、つい先日も日高本線の廃止が決定的になった。対象は鵡川~様似、116.0kmもの長大区間だ。「本線」の名称を持つ路線の廃止は国鉄末期の名寄本線以来となる。毎年のようにローカル線が消えていく北海道では、国鉄分割民営化の悪夢は今なお続いている。

道民が存続を望んでいた鉄路は無理やり剥がされ、要らないと拒否したはずの核のごみは押しつけられる。これはいったい誰のせいなのか。元凶をたどっていくと、両方とも中曽根康弘だ。

今、国立大学法人への弔意の強制をするなと、各地で反対の声が上がっている。もちろんそれは大切なことだが、強制以前に私はこんな男を追悼すること自体に反対である。

新自由主義を推進し、英国を壊した鉄の女・サッチャーの葬儀で映画監督のケン・ローチは言った。「彼女の葬儀は民営化しよう。それこそ彼女のお望みだから」と。いま私は同じことを言いたい。「中曽根のお墓は民営化しよう」と。お墓が赤字になったら廃止すればいいのだ。北海道民がどんなに望んでも存続できなかった鉄道路線と道連れに、人柱にでもなればいい。

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【管理人よりお知らせ】浦河町で「日高線の今とこれからを考える。」トークイベントを開催~当ブログ管理人が配布したレジュメを公開しました

2020-10-04 23:49:27 | 鉄道・公共交通/交通政策
管理人よりお知らせです。

沿線自治体7町のうち6町までがバス転換に同意した日高線は、廃止の流れが確定的になりつつあります。しかし、博多から長崎までに匹敵するような大規模幹線を、赤字だからといってこのまま廃止していいのでしょうか。2020年10月3日、「日高線の今とこれからを考える」プロジェクトの主催によるトークイベントが浦河町で開催。当研究会もパネラーとして意見を述べました。

日本の鉄道事業法は、首都圏の大手私鉄のような「息もできないような満員電車を3分間隔で運転して利益を上げろ、それが無理なら鉄道経営はやめろ」というスキームを、事実上ローカル線にも強要する欠陥法です。当研究会は現行の鉄道事業法は廃止し、ローカル線を維持できる抜本的法制度体系に移行すべきと考えています。

今回のイベントでは、廃止が確定的になった日高線を、新幹線や大規模都市鉄道しか想定していない欠陥法としての鉄道事業法のスキームからあえて降ろし、観光鉄道(特定目的鉄道)または法律上は鉄道事業の位置づけでない遊覧鉄道として残す道を探るためのヒントを提供する方針でトークをしました。当日使用したレジュメ「日高線を失いつつある今、沿線のみなさんに訴えたいこと」及びイベントのチラシを安全問題研究会公式ホームページに掲載しました。

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リニア中央新幹線「2027年開業、事実上の延期」報道について

2020-07-12 19:08:38 | 鉄道・公共交通/交通政策
JR東海、リニア延期事実上表明 静岡拒否「27年開業難しい」(共同)

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 JR東海は3日、静岡県との対立で準備工事着手が遅れているリニア中央新幹線について、県が着工を認めないとの見解を示したことを受け「残念ながら(東京・品川―名古屋間の)2027年開業は難しい」として、開業延期を事実上表明した。JR東海は今後、リニア計画を認可した国土交通省と協議し、計画見直しについて詳細を詰める方針だ。ただ県の同意を得るための期間は依然不透明で、計画は37年にも予定している大阪までの延伸を含め大幅に狂う可能性が出てきた。

 両者はリニアの南アルプストンネル建設を巡って、水資源の問題で意見が対立している。
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莫大な税金の無駄遣いであり、建設しても問題しか引き起こさないリニア中央新幹線について、安全問題研究会は事業認可以前から一貫して反対の立場をとり続けてきた。今回、大井川からの水問題が原因でJR東海が計画していた2027年の開業が絶望的になったことに関して、当研究会は歓迎を表明する。延期ではなく事業自体、ぜひ中止してもらいたい。

報道では、静岡県が水問題で反対し続けていることが延期理由であるかの如く報道され、静岡県が一方的に「悪者」に仕立てられようとしている。しかし実際はそうではなく、2027年の開業を危ぶむ声は2018年頃から徐々に出始めていた(参考記事:リニア新幹線「2027年開業」が難しすぎる理由/東洋経済オンライン)。静岡工区だけでなく、あらゆる工区が問題だらけのプロジェクトなのである。

JR東海もそのことに気付いていたが、問題を隠し続けてきた。今回、JR東海も隠しきれない形で問題が顕在化したに過ぎない。その上、リニア開通で駅ができるわけでもなく、水問題という不利益だけを押しつけられる静岡県の存在が、「中央対地方」というメディア的にわかりやすい構図に落とし込まれたことで、報道しやすくなったのだ。

静岡工区だけが問題なのではないことは、この問題を一貫して追及してきたジャーナリスト樫田秀樹さん(「悪夢の超特急 リニア中央新幹線」著者)が、最新の記事で次のように伝えている。

リニア、川勝平太静岡県知事と金子慎JR東海社長の対談が実現。知事は「準備工事再開」を認めず。でも、それに関係なく、すでにリニアの2027年開通は無理なことは判っている。(樫田秀樹さんのブログ「記事の裏だって伝えたい」)

リニア中央新幹線が事業認可された直後の2014年10月、樫田さんが都内で講演した際の音声もYoutube「安全問題研究会チャンネル」にアップしているので、ぜひ聴いてほしい。(「本当に建設でいいの?危なすぎるリニア新幹線ホントの話/ジャーナリスト樫田秀樹さん」、2014年10月25日)

また、6月27日のTBS「報道特集」がこの問題の経緯や、静岡県民が過去、水涸れと闘ってきた歴史を持つことなど詳細に伝えている。当ブログ管理人も視聴した環境保護団体「FoE Japan」の公開オンラインセミナー「リニアは止められる? 大井川をめぐる静岡県とJR東海の対立とは」でもこの問題を伝えている。こうした報道を見れば、静岡県が一方的に「ごねている」わけではないことが理解できるだろう。

国策のために、「ごく一部」の住民の命や生活くらい奪われてもいいという時代は、すでに昭和とともに終わっている。沖縄の基地問題も、福島の原発事故も、住民の闘いは決して「ごく一部」なのではない。「ごねている」「カネをもらっているくせに」などと主張している連中は恥を知るべきだし、せめて自分がそう主張できるのは犠牲を押しつける「強者」の側にいるからだという自覚くらいは持ってもらいたいと思う。

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