生かされて

乳癌闘病記、エッセイ、詩、童話、小説を通して生かされている喜びを綴っていきます。 by土筆文香(つくしふみか)

クリスマスの赤い星(その4・最終回)

2007-11-29 14:02:21 | 童話
クリスマスの赤い星(4)


六)かいばおけのイエスさま

少年を先頭に小屋の中に入ると、プーンとくさいにおいが鼻をつきました。うすぐらい小屋のまん中にかいばおけがあって、その中に布につつまれた赤ちゃんがねむっていました。
 コウタとエリは赤ちゃんの顔をのぞきこみました。なんて小さいのでしょう。なんてかわいいのでしょう。
 
赤ちゃんの体をつつむ布はうすく、ほし草がチクチクはだをさしているように思えました。
「イエスさまはこんなところで生まれ、こんなベッドに寝かされているんだね」
コウタの心はイエスさまを思って悲しみでいっぱいになりました。
「イエスさまのベッドはふかふかじゃないのね。やわらかいおふとんをしいてあげたい……」
エリは、イエスさまが気持ちよくねむれるように願いました。

少年がかいばおけの前にひざまずいて祈りはじめました。
コウタとエリもひざまずきました。
「イエスさま、こんなところに生まれてきて下さったのですね。干し草がチクチクしませんように」
「イエスさま、わたしのために生まれてきて下さったのですね。このかいばおけが、あたたかくてやわらかなベッドになりますように」

ふたりは祈ってから、そっと目を開けました。イエスさまをつつむ布のまわりにフワフワしたものがあるのに気づきました。それは、水色とピンクと黄色の三色の綿でした。

「ありがとう。イエスがよくねむれるようにやわらかくてあたたかいものでつつんでくれたのね」
お母さんのマリヤがほほえみました。
「あれがきっとぼくたち3人の心なんだよ」
少年がいいました。

そのとき、イエスさまが目を開けてコウタとエリと少年を順にみつめました。
「イエスさまは、わたしたちのプレゼントを喜んで下さっているのね」
エリがニッコリ笑いかけると、赤ちゃんイエスさまが笑ったような気がしました。

小屋の外へ出ると、赤い星がさっきの倍くらいの大きさになっています。光がどんどん強くなり、まぶしくて目を開けてられなくなりました。
「きっと家に帰らせてくれるんだ」
コウタはエリの手をぎゅっとにぎりました。
「さ・よ・う・な・らー」
羊飼いの少年の声がだんだん遠のいていきました。

七)ふたりだけのひみつ

「ただいま。おそくなってゴメンネ。ケーキ買ってきたわ」
お母さんの声がして、目を開けるとふたりはリビングのツリーの前に立っていました。電気もテレビもついています。
お父さんも帰ってきて、家族4人でクリスマスのおいわいをしました。

「ねえ、わたしのいろえんぴつ、ふたりで使おう」
「ぼくのなわとび、こうたいで使おう」
ふたりは、今日のできごとをふたりだけのひみつにしようとやくそくして、2かいにかけ上がっていきました。

          
   おわり

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