4冬将軍ガル
北へ向かってすすんでいくと冷たい風がウオーン、ウオーンとうなりながらぶつかってきました。たくやの歯はガチガチ鳴っています。
むこうに灰色の大きな風がどっかり浮かんでいます。
「冬将軍のガルだ。つむじ、やっつけてしまえ」
リムがいうと、つむじはもどってきてしまいました。
「ガルは苦手だ。おれ、帰る」
「つむじの弱虫、帰れ、帰れ」
たくやがどなりつけると、つむじはゆうかんにガルの前にすすみでました。
「やい、ガル。春風のたまごをどこにやった」
「へっ、へっ、へっ、春風たまごは凍らせて、つくば山の雪の中に埋めてやったわい」
「なんだと?春風を返せ」
つむじはグルグル回りはじめました。ガルをまきこんでゴウゴウ音をたてて回ります。
「ワツ、ワッ、止めてくれ、目が回る」
「春風を返すまで止まらないぞ」
「返すものか、お前も凍らせてやる!」
ガルは大きな口を開けて、白いいきをはくと、つむじはちじんでカカチカチに凍ってしまいました。
5春風のたまごさがし
「逃げるんだ! ぼくらも息をはきかけられたら凍ってしまう」
リムはたくやを引っぱって下にいき、雪の積もったつくば山の上におろしました。
「たくや、春風のたまごを掘り出すんだ。春風が全部出てくれば、ガルはいなくなるから」
「でも、つむじが……」
「だいじょうぶ、つむじの氷もとけるよ。さあ、早く掘るんだ。ぼくは手伝えないけど、おうえんするよ」
雪が横からふってきて、たくやのほおをはりのようにつきさします。たくやはむちゅうで雪をかきわけました。しもやけの手はジンジンと痛く、ひびわれて血がにじんできました。
「スコップをもってくればよかった。無理だよ、リム。こんなに広いところ、ぼくひとりでさがすなんて……」
たくやはべそをかきました。
「あきらめないで、きっとさがし出せる。きみは、恐竜の化石さがしが得意なんだろう」
「でも、化石は出てこなかったよ」
「春風のたまごならみつけられる。春風が出てきたら、お母さんの病気もよくなるから」
リムはたくやのまわりをとびまわってはげましました。
「お母さんのこと、どうして知っているの?」
「冬の間、きみのことずっとみていたんだ。でも、冬だけじゃなくて、お母さんのおなかにいたときからきみのことをずっとみて、守って下さっているお方がいるんだよ」
「えっ、それはだれ?」
「神さまだよ。神さまはぼくたち風や人間を造って下さったんだからね」
リムは体をテントのように広げて、たくやに雪がかからないようにおおいました。
たくやは、両手にはあっと息をふきかけて、もういちど雪をかきわけました。体のしんが凍りつきそうです。
たくやは、お母さんのおなかにいたときから見守って下さっている神さまのことを考えていました。
(神さまは、いまもぼくのことみてくださっているんだ)
「神さま、春風のたまごをみつけられるようにして下さい」
たくやは、祈りながら雪をかきわけました。
つづく