生かされて

乳癌闘病記、エッセイ、詩、童話、小説を通して生かされている喜びを綴っていきます。 by土筆文香(つくしふみか)

谷間の百合

2006-03-11 18:07:02 | 日記

 昨日、実家から戻ってきました。末期癌の父の入るホスピスを見学に行ってきたのです。
父の状態はいまのところ小康を保っており、先日の暖かい日には母と近所に散歩に出かけたほどですが、いつ悪くなるかわからないので、ホスピスを探しておくように主治医から言われていました。ホスピスはベッド数が少なく、前もって予約をしていても待たされるので、早目に決めておくようにとのアドバイスを受けていました。

幸い実家は都内で駅にも近いので、緩和ケアーをしている病院は、1時間以内で行ける範囲に絞っても4.5軒あります。緩和ケアーを行っている病院が1軒もないという県もあるそうなので、もっとそういう病院がたくさんできるようにと望んでいます。

 父と母は2人暮らしで、母は体が弱いので、在宅看護は無理です。それで、できるだけいいところに入ってもらいたいと思い、見学することにしたのです。
 9日には母と妹と3人で1箇所に行き、10日は妹と3箇所をまわるつもりでした。でも、9日に行ったところがとても良かったので、10日は1箇所だけ見て、後でどちらかを選択することにしました。

 3人で出かけたことで(買い物に行くといったのですが)父は疑いを持ってしまいました。そして、余命が短いことをうすうす感づいているようで、いらいらし、とても暗い顔をしていました。そんな父を見るのがつらかったです。

 行きの電車の中で「生と死を支える」柏木哲夫著(朝日新聞社)を読みました。医師が患者の気持ちを思いやり、患者の意志を大切にし、患者が望まない治療はしない。患者と患者の家族の精神的ケアをする。と書かれているのを読んで、このような理想的なホスピスがあればいいのに……。と思いながら見学にいきました。
 すると、見学した2箇所とも、その本に書かれているようなケアーを行っていることがわかり、心から感謝しました。 

 今朝読んだ旧約聖書1日1章(榎本保朗著))の詩編46篇のところに書かれていた文を紹介します。

讃美歌512番に「君は谷に百合、明日の星」という言葉があるが、本当に涙の谷を過ぎなければならないような、死の陰を通らなければならないようなことが人生にはある。しかし、その谷にこそ咲いている百合があり、それを見つけるかどうかということが、大きな問題なのである。それを見つけた人は、もはや谷が谷でなくなってしまう。あるいは夜明けの暗闇の中で、明けの明星を見つけた人は、そのところで大きな光を見いだすのである。


「神はわれらの避け所、また力。苦しむとき、そこにある助け。(詩編46-1)」)


今、わたしは暗い谷を歩いているような気持ちです。でも、神さまは谷間に百合の花を咲かせて下さっています。百合の花を見つけたとき、そこは暗い谷ではなくなるのですね。今回、谷間にたくさん百合の花を見つけました。父にも百合の花が見えるようになりますように。 


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