「カシコギ」(チョ・チャンイン著 サンマーク出版)を読みました。感動で胸がいっぱいです。白血病の少年とその父親の小説ですが、内容を知らないで図書館から借りてきました。
同じ著者の「スンウ」(フォレストブックス)という本を読んで、とても良かったので借りてきたのです。乳癌になってから、死に瀕するような病気の人がでてくる本やドラマを意識的に避けていました。「1リットルの涙」も見ることができません。自分の身に起こるのではないかと思ってつらくなるからです。
何度も途中で読むのをやめようと思いつつ、泣きながら最後まで一気に読んでしまいました。
カシコギというのは不思議な習性をもつ淡水魚の名前です。この魚のオスは、メスが産み捨てた稚魚を必死に育て、子が成長していくと自らは死んでしまうのだそうです。「カシコギ」は物語の内容を暗示させる題名です。2000年に韓国で出版され、160万部も売れ、映画にまでなっているそうです。
タウムの母親が家を出ていき、タウムは父親のチョンに育てられます。タウムは白血病におかされます。タウムの病気が骨髄移植しないかぎり治らないと知ったとき、チョンは犠牲的な愛を示します。
タウムの入院しているベッドサイドの壁に貼ってあったという言葉に心打たれました。
「あなたが虚(むな)しく過ごしたきょうという日は、
きのう死んでいった者があれほど生きたいと願ったあした」(56ページ)
人は、‘生きたい’とどれだけ願っても、たといそのためにどれだけの財を投じても、一日でも寿命を延ばすことはできません。乳癌になる前は、‘生きたい’と願うのに死んでいく人たちの心境を思いやることはほとんどありませんでした。でも、今は違います。闘病中の父のことも考え合わせると、今この時も‘生きたい’と願うのに死んでいく命があるのだなあと思わされます。
限りある命。与えられているきょう。きょうという日を虚しく過ごさないようにしたいです。