『鉄コン筋クリート』 マイケル・アリアス監督 ☆☆☆
日本版DVDで鑑賞。原作は未読である。
映像は面白かった。手書きタッチの荒さと緻密さを混ぜ合わせたような独特の美しさ。声優には蒼井優、伊勢谷友介、二宮和也など意外にメジャーな俳優が起用されているが、これも合っていて良かったと思う。特に意外だったのは蛇という悪役の本木雅弘。あれがモックンだったとは最後まで気づかなかった。構図や場面の切り方などもとてもスタイリッシュでクール。ただ独特の癖はあって、これは原作が持っているものなんだろうけれども、たとえばシロ(蒼井優)の奇をてらったようなセリフの数々はかなりわざとらしくて、個人的にはちょっと引いた。
という風に映像面や演出面では非常にハイクオリティのアニメだが、他の部分が物足りなかった。まずアクション面。この映画はバイオレンス・シーンも多く、スタイリッシュなアクション・シーンも見所の一つだと思うが、それにしてはあんまりカタルシスがない。クロとシロ(あと敵の殺し屋達)が空を飛ぶシーンもなぜかそれほど気持ち良くない。宮崎駿や押井守のアニメにはある、あの感覚的快感が希薄なのである。カッコイイんだけど、細かいところで微妙にツボを外している感じだ。大体、なぜ彼らは空を飛べるのかが分からない。そういう観客へのフォローがないのも今ひとつのめりこめない理由かも知れない。それから敵の殺し屋たちは追ってくる時は超人的なのに、なんでああまで最後のつめが甘いのか。それでいつも主人公たちが助かることになる(シロは一度刺されるが)のだが、あれも不自然でテンション下がってしまう。
次にストーリーそのものの魅力にも欠ける。斬新な映像に見合うだけの、はっとするような発想やアイデアがないのである。「街の変化」がテーマの一つになっているが、ねずみが言うように「街が変わっていくことは止められない」、けれども街を変えようとするヤクザ達相手に一応勝利を収めたところでそのテーマはうやむやになり、中途半端なハッピーエンドを迎えてしまう。クロとシロの関係も、一旦離れ離れになったのがまた一緒になったというだけで終わってしまう。クロが持ってないネジをシロが持っている、なんてのも要は二人それぞれに長所があるから助け合おうってだけで、テーマとしては常套だし、それをアクションの中で視覚化してガツンと見せてくれるなんてこともない。こういうところが色々と中途半端なので、最後の青い海ではしゃぐクロとシロのシーンが、見た目の爽快感で流れをうやむやにしようとしているようにさえ見えてしまう。
いちばんのマイナス・ポイントは何と言ってもあのクライマックスの、クロの内面におけるイタチとの戦い=クロ自身のダークサイドとの戦いである。なんだかひとりよがりなイメージ映像の連続で、しかも冗長。自分の中にある闇との葛藤をああいうイメージ映像で見せるという手法も陳腐だし、安直だと思う。
結局ストーリーの中に、街を乗っ取ろうとするヤクザと超人的な少年二人の戦い、という以上のものがない。けれども、ウェルメイドなアクション娯楽映画というにはカタルシスが足りない。残念ながら、見た目(映像)のわりに内容(物語)が貧弱、というのが総合的な印象だった。
日本版DVDで鑑賞。原作は未読である。
映像は面白かった。手書きタッチの荒さと緻密さを混ぜ合わせたような独特の美しさ。声優には蒼井優、伊勢谷友介、二宮和也など意外にメジャーな俳優が起用されているが、これも合っていて良かったと思う。特に意外だったのは蛇という悪役の本木雅弘。あれがモックンだったとは最後まで気づかなかった。構図や場面の切り方などもとてもスタイリッシュでクール。ただ独特の癖はあって、これは原作が持っているものなんだろうけれども、たとえばシロ(蒼井優)の奇をてらったようなセリフの数々はかなりわざとらしくて、個人的にはちょっと引いた。
という風に映像面や演出面では非常にハイクオリティのアニメだが、他の部分が物足りなかった。まずアクション面。この映画はバイオレンス・シーンも多く、スタイリッシュなアクション・シーンも見所の一つだと思うが、それにしてはあんまりカタルシスがない。クロとシロ(あと敵の殺し屋達)が空を飛ぶシーンもなぜかそれほど気持ち良くない。宮崎駿や押井守のアニメにはある、あの感覚的快感が希薄なのである。カッコイイんだけど、細かいところで微妙にツボを外している感じだ。大体、なぜ彼らは空を飛べるのかが分からない。そういう観客へのフォローがないのも今ひとつのめりこめない理由かも知れない。それから敵の殺し屋たちは追ってくる時は超人的なのに、なんでああまで最後のつめが甘いのか。それでいつも主人公たちが助かることになる(シロは一度刺されるが)のだが、あれも不自然でテンション下がってしまう。
次にストーリーそのものの魅力にも欠ける。斬新な映像に見合うだけの、はっとするような発想やアイデアがないのである。「街の変化」がテーマの一つになっているが、ねずみが言うように「街が変わっていくことは止められない」、けれども街を変えようとするヤクザ達相手に一応勝利を収めたところでそのテーマはうやむやになり、中途半端なハッピーエンドを迎えてしまう。クロとシロの関係も、一旦離れ離れになったのがまた一緒になったというだけで終わってしまう。クロが持ってないネジをシロが持っている、なんてのも要は二人それぞれに長所があるから助け合おうってだけで、テーマとしては常套だし、それをアクションの中で視覚化してガツンと見せてくれるなんてこともない。こういうところが色々と中途半端なので、最後の青い海ではしゃぐクロとシロのシーンが、見た目の爽快感で流れをうやむやにしようとしているようにさえ見えてしまう。
いちばんのマイナス・ポイントは何と言ってもあのクライマックスの、クロの内面におけるイタチとの戦い=クロ自身のダークサイドとの戦いである。なんだかひとりよがりなイメージ映像の連続で、しかも冗長。自分の中にある闇との葛藤をああいうイメージ映像で見せるという手法も陳腐だし、安直だと思う。
結局ストーリーの中に、街を乗っ取ろうとするヤクザと超人的な少年二人の戦い、という以上のものがない。けれども、ウェルメイドなアクション娯楽映画というにはカタルシスが足りない。残念ながら、見た目(映像)のわりに内容(物語)が貧弱、というのが総合的な印象だった。
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