アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

Night Passage

2009-02-14 22:07:09 | 音楽
『Night Passage』 Weather Report   ☆☆☆☆☆

 ライヴ・アルバム『8:30』の後に出されたアルバムで、スタジオ・アルバムとしては『Heavy Weather』『Mr. Gone』に続くジャコ期3枚目ということになる。次の『Weather Report』がジャコが参加した最後のウェザー作品。

 私は『Mr. Gone』を持っていないので『Heavy Weather』との比較になってしまうが、とっても明朗闊達だった『Heavy Weather』に比べこっちの方が暗い。といっても元気のいい曲や爽やかな曲もちゃんとあり、全体として陰影に富んでいる感じだ。ウェイン・ショーターの持ち味であるオカルトっぽいダークさが出ているのかも知れない。個人的には妖しいムードとハイ・テンションの演奏が同居しているこちらの方が気に入っている。ザヴィヌルの曲が多いが、4ビートの曲が多くなりフュージョンからジャズ寄りになっていること、エリントンのカバーがあること、即興演奏に重点が置かれていることなど、ジャコの嗜好もかなり反映されているような気がする。そして実際、ジャコはますます自由闊達にベースを弾きまくっている。

 一曲目の『Night Passage』は4ビートの曲で、ウェザー・ファンでも好みが別れるようだが私は好きである。穏やかな曲調だがジャコのシャープなビートと終盤の盛り上がりが気持ちいい。『Dream Clock』はスローな曲で、妖しさ満点だ。ショーターのサックスとジャコのフレットレスの絡みが美しい。『Port Of Entry』ではジャコの驚異的なベース・ソロが炸裂する。ちょうど真ん中でテンポが変わり、パーカッションをバックにベースが縦横無尽に駆け回る。凄まじいの一言。演奏が終わって拍手が入る。なんと、ライヴ録音なのである。信じられない。

 『Forlorn』は最初と最後に警報みたいなザヴィヌルのシンセが入る不気味な曲。『Rockin' In Rhythm』と『Fast City』はスピード感と緊張感あふれる軽快な曲で、ウェザーの集中力の高さを見せつけてくれる。『Three Views Of A Secret』はジャコのソロでも聴けるが、やはり清涼感のあるいい曲だ。終盤の盛り上がりはいつ聴いても感動する。個人的にはジャコのソロで聴けるビッグバンド風のアレンジより、ザヴィヌルのシンセが入ったこのウェザー・バージョンの方が好きだ。最後の『Madagascar』はジャコの曲だが、10分以上と長い割りに混沌としたつかみどころのない曲。ダークな雰囲気で即興演奏の割合が大きく、最後にディストーションのかかったベースが入る。演奏後にやはり拍手が入り、ライヴ演奏であることが分かる。

 ジャコ期ラインアップの円熟した演奏が堪能できる名盤だ。ポップさでは『Heavy Weather』に劣るが、複雑玄妙な味わいは増している。


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