アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

審判 (その2)

2009-02-08 22:11:12 | 
(昨日の続き)  この『審判』はカフカが残した三つの長編の一つだが、コンパクトにまとまっていて結末もちゃんとあり、カフカ世界のエッセンスを手っ取り早く味わうには一番適している作品だと思う。ヨーゼフ・Kはある朝わけも分からず逮捕され、裁判所に行ったり弁護士と会ったり色々手を打とうとするが空しく、一年後にやってきた二人の役人の処刑されてしまう。簡単にいうとそれだけの話だ。非常に分かりやすい構成になっ . . . 本文を読む

審判 (その1)

2009-02-07 21:01:43 | 
『審判』 フランツ・カフカ   ☆☆☆☆☆  カフカの『審判』を再読。ミラン・クンデラは『小説の精神』の中でこう書いている。「…カフカとはひとつの巨大な美的革命そのものです。芸術的奇跡そのものです」クンデラはイロニックな作家であり、決して激情家ではない。だから私たちはこの言葉をまったく額面通りに受け取らなければならない。カフカは疑いもなく20世紀文学における最重要人物である。彼の作品は他のあらゆ . . . 本文を読む

名短篇、ここにあり

2009-02-05 19:59:54 | 
『名短篇、ここにあり』 北村薫・宮部みゆき編集   ☆☆★  洒落たタイトルに惹かれて買ってきたアンソロジー。先週末二日で読了。収録作品は以下の通り。 「となりの宇宙人」半村良 「冷たい仕事」黒井千次 「むかしばなし」小松左京 「隠し芸の男」城山三郎 「少女架刑」吉村昭 「あしたの夕刊」吉行淳之介 「穴 -考える人たち」山口瞳 「網」多岐川恭 「少年探偵」戸板康二 「誤訳」松本清張 「考える人 . . . 本文を読む

座頭市あばれ火祭り

2009-02-03 19:25:54 | 映画
『座頭市あばれ火祭り』 三隅研次監督   ☆☆  これは座頭市シリーズの確か20作目だと思うが、はっきり言って駄作である。キャストだけは異様に豪華だ。市の勝新太郎以外に仲代達矢、森雅之、大原麗子、吉行和子、西村晃、ピーター、などなど。最後にチラッとしか出てこない馬子が田中邦衛だったりする。三船敏郎との顔合わせがウリだった前作『座頭市と用心棒』からのプレッシャーだろうか。  まあしかし、いくら豪 . . . 本文を読む

スーパー・ジェネレイション

2009-02-01 17:55:25 | 音楽
『スーパー・ジェネレイション』 雪村いづみ   ☆☆☆☆  ティン・パン・アレーつながりで入手したCDである。雪村いずみというシンガーについては美空ひばりあたりと同世代の歌手という以外、まったく何も知らなかった。ティン・パン・アレーは1970年代頃に活動していた細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆からなる音楽ユニットで、メンツから分かるようにジャズからファンク、ポップス、フォークまであらゆる音楽 . . . 本文を読む