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郵政民営化のまとめ編1

2005年04月10日 13時54分42秒 | 社会全般
未だに「そもそも論」を持ち出す議員が多い。野田元郵政相も、恐らくこのカラクリについて熟知しているくせに、「技術論に終始している。何故民営化なのかわからない」というコメントを述べていた。無論知らない訳がないのだ(「野田」だけに、駄洒落すみません)。

だが、テレビでの解説でも、番組参加のコメンテーターから、「よくわからない」「民営対官営しか見えてこない」「小泉と抵抗勢力の構図が強調されてるだけ」といった意見も多く聞かれた。この期に及んでもなお、こうした「そもそも論」が出るというのは、やはり明快な説明方法がなかなかないことが原因かもしれない(それほど行政の複雑化したシステムということ)。そこで、説明方法をもう一度考えて書いてみます。

郵政公社の運営構図は今までの記事に書いてきました。参考記事ついても読んでみて下さい。
郵政民営化の考察1考察2考察3考察4考察5
考察6考察7考察8考察9考察10
もはや・・・「そもそも論」の大義国会空洞化現象民営化綱引き合戦
行き詰まり法案の懸念郵政民営化は山場へ平ちゃんの立往生?



国民から集めたお金は郵便局に集まる。貸付原資となる郵貯と簡保ですね。この運用先の主力が、預託金収入と国債等の金利収入である。借り手を見てみましょう。①公庫公団に財政投融資資金として供給される、②国債として国が借金、③自治体が借入、といったところが、収入源の上位ですね。特に大きなウェイトを占めるのは、①と②で、収入の殆どはこれで賄われているといっても過言ではありません。

これらの運営主体を考えてみましょう。①は実質的に政府と同様です。政府が債務保証を付けて借入してますから。②は当然国ですし、③もほぼ国と同様ですね(赤字で財政再建団体に陥れば、国の管理となります)。従って、郵政に金利を払っているのは誰か?結論は国(=政府)です。これはどういうことか?当然国のお金の出所は、全て国民から集められた税金です。つまり、国民が政府に一時預けたお金(=税金)は、①~③のような形をとりながら使われていますが、実質的に『国民の税金で郵政に利息を払っている』のです。郵政は元々国と一体でしたが、国の組織内部に税金を浪費するシステムが長年かけて作られたのです。利息を払えば払うほど、税金は無駄に消えていくことは明白でしょう。国民が郵政に拠出した資金(郵貯、簡保)に付いてくる利息は、郵政で浪費された残りカスから払われているのですよ。国民を1人の人間とすると、自分が払った税金の一部から、郵貯利息を自分に払っているんですよ。これで、「利息が貰えた」と言って喜べる訳がないでしょう。「預けてお金が増えた」というのは全くの幻想です。マクロ的には大幅に減少しており、騙されているようなものです。

もう一度整理しますと、金利負担の原資となるべくお金の流れは、国民→国→公庫公団(国、自治体)→郵政ということになり、今まで郵政がどんなに非効率であっても借り手(公庫公団、国、自治体)が延々と金利を払い続けるので、絶対に困ることなどなかったのです。この構図を変えない限り、郵政自体が困ることなど有り得ない(反対派はこれをもって、「郵政公社は黒字だ、国から人件費を貰ってない」という主張を続ける)のです。しかし、国の借金が限りなく危険水準となっている以上、国→公庫公団(自治体)の部分をこれから相当な覚悟で絞っていかねばなりません。これを本気で実行すると、公庫公団や郵政は倒れます。今まで労せずして金利負担を続けてくれた借り手の借金を減らそう、ということなのですから。主な収益源であった、財政投融資の利息収入3.7兆円が大きく減少すれば、郵政の経営は困窮を極めるようになるでしょう。


もう一点は、郵便事業の将来についてです。今までは一体経営で目立たなかったのと、ほぼ独占的事業として漫然と行われてきました。ですが、事業構造としては、郵貯・簡保で集めたお金の利息収益を、不採算な郵便事業に回すことによって郵便事業が成り立っていたのです。しかし、ネットやメールの発達・普及で、今後郵便需要の減少傾向は否めません。ここ数年来、民間企業の参入やはがき・手紙そのものの減少によって、このトレンドは明らかです。郵便事業が構造的赤字の不採算事業であるということです。ただ、郵便事業そのものは国民生活に必要とされているのですから、これが収益性の高い事業である必要もなく、公益性重視であってもよいのです。その為に全国の郵便事業についてのユニバーサルサービスの維持を掲げているのです。その代わり、それを持続可能にする運営効率化の手法として、郵政民営化があるのです。郵政事業に従事する人員調整(必ずしもリストラということではありません)や経営自由度の確保と自己の経営努力によって、より効率的な運営を行えるように整備するのが目的です。赤字事業であるとしても、できるだけ赤字幅を圧縮することが求められることは当然であり、それが実体化されたのが民営化という手法なのです。

国債を引き受け先となっていることが一部で問題視されていますが、単純にそういう訳ではないでしょう。今までは緩衝的役割を果たして来ており、引き受け自体は問題ないですね。引き受け先の自由度が低かった(個人が少額で購入したりできなかった)のですが、国債発行増加を見越して債券購入環境の整備が進み、個人向け国債にかなりの資金が向かうようになりました。今後は海外市場でも売買されるでしょう。郵政の保有する国債は約150兆円くらいで、全体の4分の1程度で、この半分が個人国債に回ったとしても、特に問題はないでしょう。個人金融資産1400兆円として、このうち高々5%程度ですから。だが、これには落とし穴があるのだ。

あなたが百万円を持っており、投資先を考えることにしよう。もしも、郵貯に預けると利息は0.06%くらいですから、利息は6百円。ところが同額の国債を買うと、利回り約1.6%として16000円です。この差額、15400円は何処へいったか?勿論郵政公社が使っているんですよ。この差額分が郵政に飲み込まれているんですよ。これが約150兆円分積み重なっているんですから。これがどういうことかわかりますか?郵政を肥えさせる為に使われ続けてきたんですよ(簡保分約50兆円もあるので全てではないにせよ、かなりの部分は使われる)。このシステムは、財投資金である預託金にも同じ現象が見られるのですよ。あなたが郵貯に預けた百万円は、公庫公団に貸付られ、その利払い分(同じ位の貸付金利ですので、16000円)は国民の納めた税金が大量に投入されている公庫公団から郵政に支払われるが、あなたの手元には6百円となって返ってくるんですよ。郵政はどの時代にも利ザヤを確実にとってきており、2%程度のサヤがあれば、巨額資金経営によって十分なのです。

先に書いた金利負担のお金の流れで言うと、国民が直接国債を買うと、国民→国→国民となります。
例えば国民Aと国民Bの2人がいて、Aは所得税(税金)を払うが資産がない、Bは所得がないから所得税を払わないが百万円持ってる高齢者だとしよう。すると、金利負担分の金の流れは、国民A→国→国民Bとなって、所得(お金)移転が自動的に行われる。今までは、途中に公庫公団や郵政が介在して、消えていった(必然的に搾取された)お金です。


これらのようなカラクリを理解してもらえれば、多くの国民が民営化を支持してくれると思います。
誰か簡潔に説明してもらえんかね?


救急救命士の除細動事件

2005年04月10日 00時36分27秒 | 法と医療
以前に書いた記事に関連する事件がありました。これについて考えてみたいと思います。
参考記事:
救急救命士の気管内挿管事件
人権擁護法案はどうなるか4

事件は次のようなものでした。
YOMIURI ON-LINE / 社会


一部抜粋します。

同本部によると、救命士は3月25日午前0時ごろ、119番通報を受け、同市の70代の男性患者を市内の病院に搬送。救急車内で除細動を試みようとしたが、除細動器が作動しなかった。病院に到着後、当直医が別の救急患者の対応に追われていたことから、自らの判断で、医師だけが使用を認められている救急室内の除細動器を使用した。
その後、当直医も除細動を行い、男性の心肺機能はいったん回復したが、翌26日未明に亡くなった。 救急救命士法は、救急車などで搬送する前と搬送時以外、救急救命処置を禁じている。救命士は「違法性は分かっていたが、助けたい一心でやってしまった」と話しているという。


この事件を受けて、消防長は「処分も検討したい」とのことであるが、まずは上級庁の判断を待つべきであると思います。これをいきなり処分ということになると、現場の人間は非常に厳しいのではないかとも思います。総務省消防庁も他の省庁(厚生労働省や法務省でしょうか)の意見を確認して、慎重に対応するべきです。現時点では、消防庁は「一概に違法とは言えないのではないか」との見解を示しています。

救急救命士法を再掲します。

第四十三条  
救急救命士は、保健師助産師看護師法 (昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項 及び第三十二条 の規定にかかわらず、診療の補助として救急救命処置を行うことを業とすることができる。

2  前項の規定は、第九条第一項の規定により救急救命士の名称の使用の停止を命ぜられている者については、適用しない。

第四十四条  
救急救命士は、医師の具体的な指示を受けなければ、厚生労働省令で定める救急救命処置を行ってはならない。

2  救急救命士は、救急用自動車その他の重度傷病者を搬送するためのものであって厚生労働省令で定めるもの(以下この項及び第五十三条第二号において「救急用自動車等」という。)以外の場所においてその業務を行ってはならない。ただし、病院又は診療所への搬送のため重度傷病者を救急用自動車等に乗せるまでの間において救急救命処置を行うことが必要と認められる場合は、この限りでない。


上記第44条の厚生労働省令とは、次の通り。

救急救命士法施行規則

第二十一条  
法第四十四条第一項 の厚生労働省令で定める救急救命処置は、重度傷病者(その症状が著しく悪化するおそれがあり、又はその生命が危険な状態にある傷病者をいう。以下次条において同じ。)のうち心肺機能停止状態の患者に対するものであって、次に掲げるものとする。
一  削除
二  厚生労働大臣の指定する薬剤を用いた静脈路確保のための輸液
三  厚生労働大臣の指定する器具による気道確保


以前にも書きましたが、救急救命士が行う除細動は、施行規則第21条第1項に示されるように、既に法改正によって「業」とはなっていません(以前は、除細動が書かれていました)。救急救命士の「業」を病院内で行うのは違法と考えられますが、「業」から除外された除細動という行為は適用外と考えられるのではないでしょうか。よって、第44条第2項規定に定義される救急救命士の業務に係る場所の規定は、今回違法性を有するとは言えないのではないかと考えます。


次に、除細動という行為は、たぶん医行為と考えられますが(若しくは医行為でないと判断しても可です)、少なくとも医業ではないと判断するならば、医師法第17条違反とはなりません。これは、一般人が緊急時に当該行為を行うことは違法性を問われないことの根拠となると私は考えます(行政や司法はどのように判断するのか不明ですが)。よって、医師法違反は問われないと判断することでよいと思います。

また、仮に医業であると仮定して(この場合、一般人が当該行為を行うことは、緊急避難による違法性阻却により法令違反を問われないと考えられます)、医師法違反に該当すると判断されます。しかし、病院内に到着後、心肺停止状態の場合には、一刻も早く(これは1秒を争うレベルの”早く”と考えられます)除細動及び心肺蘇生(心マッサージ・人工呼吸等)を行う以外にありません。従いまして、ドクターコールをした結果、その現場に医師が現れることができず、眼前に行うべき処置が確定的な患者がいるのに無為に時間が経過するのを待つことは、患者の不利益が限りなく増大していくことは確実であり、蘇生率は低下することは容易に推測されます。この状況を緊急避難と判断するか否かによると思います。私は、緊急避難における違法性阻却事由に該当すると思います。この行為について違法と判断し、送検や処分というのはあまりに過酷と思います。人命救助を考える時、それ以外に方法がないことは判っており、これを行わずして放置するに忍びないという隊員の心情は、推察するに余りあると思われます。刑事罰等の処罰をもって、この心情に応えるのは、社会的に何ら利益は無いように思います。

救急救命隊(或いは消防署、広くは消防庁全体でしょうか)の問題点としては、除細動器は一刻を争う場合に確実な作動が確保されなければ、車載している意味が無くなってしまいますから、常にその正確な作動を確認しておくことが重要です。バッテリー切れ、断線、ヒューズ(あるかどうか不明ですが)等の諸要因により作動不能となり得るので、日々点検業務を行い(チェックリストを貼って毎日記名するとかでもいいでしょう、トイレ清掃時間とか点検時間にチェックするのと同じようなものですね)、出動時にはスイッチオンにして必ずチャージされるか確認するとか、バッテリー予備を常備するとか、そういった対策を考えることの方が重要であると思います。救急救命隊の実際の運用状況は全く判りませんが、そいうった機器の点検整備等に配慮し、対策を立てることで、今後に役立てて欲しいと思います。


恐らく現場到着時に除細動器の不作動により、隊員達の心理として「後悔」や「申し訳なさ」といったことがあったことも、病院到着時に早急に除細動を実施したことに大きく影響したのではないかと思われます。関係省庁においては、こうしたことを十分検討して、隊員たちへの処分等の判断をして頂きたいと思います。