今まで推測を書いてしまいましたが、見方としては大筋あり得そうということのようです。説明方法が悪くて、何を言っているんだか判りにくいと思いますので、もう少し追加して書いてみたいと思います。
安全神話の崩壊する時(追記後)
脱線原因の推測
まず、車の例で考えてみましょう。
右カーブを曲がる時には、車の4輪がどういう状態になるのかということから考えてみます。普通は、左側に荷重がかかり、車体は大きく左に傾こうとします。路面にバンク(線路の場合には、「カント」というらしい)があっても、横Gを受けながら左前輪が最も大きく沈み込もうとしますね。高速になると内側車輪(右側ですね)は浮き上がりが起こりそうになります。通常はサスで姿勢コントロールされ一定以上の沈み込みが防がれています。カーブ走行中にブレーキを強くかけると、前輪に更なる荷重がかかり、グリップを上回る横Gとなるとタイヤは滑りコントロールを失いますね。ですが、線路の場合にはグリップはなく、レールと車輪との摩擦力ということになります。
次にトレーラーのような牽引車両がある場合を考えてみます。牽引している後続車両の重量が、駆動しているトレーラーよりも十分重い場合に、カーブ途中で急ブレーキをかけると、トレーラーの内側車輪は浮き上がることがあります。また、牽引車両が非常に重い場合には、駆動部分の後輪が浮き上がることがあります。牽引車両の慣性力が大き過ぎる場合には、当然横転してしまいます。
今回の事故の先頭車両の簡略化モデルを考えてみます。車両の車輪を4つとし(実際はもっと多いはずですが、簡単に説明する為にそうします)、前方の内側、外側の車輪をそれぞれR1、L1(右、左です)、後方も同じくR2、L2とします。
報道での速度モニター分析では、5両目(だったと思う)が脱線する時の速度が108kmということでしたので、カーブへの進入速度はもっと速いと思われます。なぜなら、ブレーキ後に脱線したとすると、脱線までの短い時間でいくらか減速されている可能性が高いからです。このブレーキングによってどれ位減速されたのかは不明です。しかし、直前の直線部分で遅れを取り戻すために最高速度で走行していたとするならば、恐らく120kmを超える程度でなかったか、と思うのです。この速度でカーブ入り口付近まで到達しており、いきなり急ブレーキはあり得ず、通常の緩徐なブレーキ開始しても大幅に減速出来たとは思えません。
先頭車両がカーブに進入すると、思いのほか横Gがきつく、「尋常ではない」と運転士は感じたのではないでしょうか。恐怖感と言えるかもしれません(車の運転中にも似たような経験をされたことがある人もおられるかも。ひょっとして曲がれないかもしれない、という恐怖ですね)。運転台は何処にあったのかは知りませんが、カントがあったにも係わらず、例えば左側の壁に押し付けられるような強い横Gを感じたら、「ヤバイ」とか先の恐怖感が襲ってきても不思議ではないということです。その為に、慌てて急ブレーキをかけます。これは非常ブレーキだったのか、通常のブレーキを強くかけたのかは定かではありません。ですが、急制動であったと思われます。
これはカーブに進入してからほんの数秒後であったと思います。車輪への荷重を考えてみましょう。カーブに進入直後には、L1、2への大きな荷重シフトが起こり、R1、2へは弱い輪重しかかかっていません。その状態で急制動が行われると、車体は前のめりになり、L1へは更なる荷重がかかり、R1はほとんど輪重を失うくらいであったかもしれません。おまけに、先のトレーラーの例で考えたように、後続車両が非常に重いと、その前方荷重が先頭車両へとかかります。カーブの遠心力で大きな荷重がL2に大きくかかっていたのですが、急制動で2両目からの前方方向への大きな力がかかることによって車輪が持ち上げられL2の輪重が抜けるということになります。カーブ途中であったので、2両目が前に押す力はR2へよりもL2の方に強くかかると考えられるのではないでしょうか(これは1両目と2両目が線路に沿って曲がって配置されていることによるのです)。
これによって、最大の荷重がL1にかけられましたが、L2の持ち上がりは一瞬で、次の瞬間には直ぐに接地すると思うのです。空気バネの正確な構造などは知りませんが、車体の高低を自動的に調整できるような仕組みになっているでしょうから、浮くと車輪は下に降りようとするのではないかと思うのです。この時点でもしもL2が持ち上がったままなら、トレーラーの横転と同じように先頭車両後部はカーブの接線方向へ倒れようとして前側は右に向いたまま車体左側面を下にしながら倒れると思います。ところが、現実は違いますから、L2の浮き上がり時間はほんの一瞬であったと思うのですね。このL2の持ち上がりの時には先頭車両はバランスが大きく崩れ、2両目との連結部分では大きな歪みを生じていたはずです。
そのような状態で、L2が接地するとどうなるのか。正確には判りませんが、予想を書いてみます。L1に最も大きな荷重となっていた時に、L2が接地することで、L1にかかっていた荷重の一部が再びL2へと移っていきます。このときに限界まで押し込められていたL1の空気バネが戻ろうとして強く働けば、車体は前方向の沈み込みだったのが後部方向へ一気に重心が移っていきます。線路の高低差は判りませんが、左レールが緩い登りになっていれば(多分登りになっているのではないかと思う)、L2への荷重シフトはさらに大きくなるかもしれません。こうして、L1への輪重が減少することで遠心力による横圧が上回り、車輪が上へとせり上がってきます。その瞬間に、L2の駆動力が復活して、FR車のように線路に駆動力が伝わります。そこで、L1はレール頂部へ向かって急速に達し、先頭車両は遠心力で左方向へと倒れるようにしながらジャンプ台の如く接線方向(マンション方向)へと跳んでいったのではないか。車体左右のバランスは、正確には判りませんが、急ブレーキでL1へ最大荷重となった時に、内部の人達が丁度こらえきれず車体左側に飛ばされたとしたら、L1、2への荷重はもっと大きいはずです。そして、横転する確率は高くなります。まるでレースのヨットのように片側へと体重移動が一瞬で起こったら、車体バランスのかなり大きな変動となったはずです。しかし、脱線直後に左側へと飛ばされたのなら、少し意味が違います。これはどうなのかは正確にはわかりません。
あと、急制動が、非常ブレーキであったかどうかですが、これは今の所正確に判っていません。非常ブレーキであれば、車輪のロックが起こるでしょうから、L1の上方向への抜けがどうだったのかは判りません。レール上を滑っていく車輪がレールを乗り越える機序がどういったものかは、思いつきません。しかし、車両の挙動が異常に不安定となり、転覆することがあるようにも思われます。またロックした車輪であっても、上の仮説で、L2への荷重シフトが起こった瞬間に、同じようにL1の輪重急減が起こるような気もしますが、ロックの可能性はよく判りません。
運転士の心理状況としては、報道にあるようにオーバーランでかなりのプレッシャーを感じていたはずで、その遅れを取り戻す為に中間部分の直線などではかなりスピードを出していたのだと思います。また、車掌と「8メートルと報告しよう」ということを話した後で、運転指令室(?、本部みたいな所)からの無線2回の呼び出しに応じなかったということでした。無線とか車内電話の仕組みも知りませんが、別々だとすれば、無線呼出しがまるで「叱責の恐怖を煽るベル」であるかのような、極度の緊張状態を作ったかもしれません。伊丹駅でのオーバーランで、もしかすると「2度と運転出来なくなるかもしれない」とか「遅れたら次の日勤研修がどれほど悲惨なものになるか」ということを考えることで、半ばパニック状態に陥ったかもしれない。しかも、応答しなかった後の2度目の呼び出しでは、「まだ遅れているということなのか?」「大幅な遅れがバレたのか?」というような、葛藤や迷いをもたらしていたのかもしれない。「遅れを取り返してから、指令室に無線応答しよう」と考えたとしても不思議はない、ということだ。
こうして、無線呼出しベルに益々急き立てられるような心理状況で半ばパニック状態だったとしたら、正確な判断力が失われていたかもしれない。カーブ進入前のブレーキングを出来るだけ遅らせて、カーブ奥まで比較的高速で突っ込んで曲がれるはずだと思ったのではないだろうか。きっと事故現場に来る前の塚口駅付近のカーブで、実際に「曲がれた」ので、同じくらいの制限速度のカーブなら「同じ方法でいけるんじゃないか」と思ったかもしれない。しかし、予想以上に列車のスピードが乗っていて、普通の減速では速度を落としきれなかった。前のカーブで”いけた”くらいのタイミングでブレーキをかけたが、曲がり始めてもまだかなりの速度が出ていた。「しまった」と思い、次の瞬間、「曲がりきれない」と思うほどの横Gを受けたはずだ。未だかつて経験のない程の、体が壁に押し付けられる程の横G。その時、ブレーキペダル(それかレバー?)を強く踏んだ。恐怖と、パニック状態に陥った大脳からの命令は、足の筋肉に微妙なコントロールなど到底できうるものではなかった(それともまともに立っていられない程の横Gで、片足で体重を支えきれず、そのせいで強く踏み込んでしまったか?ブレーキがレバーか足のペダルかで大きく違うな)。ブレーキは正確には判っていませんから、あくまで推測です。概ねこのような心理状況であったのではないだろうか?
安全神話の崩壊する時(追記後)
脱線原因の推測
まず、車の例で考えてみましょう。
右カーブを曲がる時には、車の4輪がどういう状態になるのかということから考えてみます。普通は、左側に荷重がかかり、車体は大きく左に傾こうとします。路面にバンク(線路の場合には、「カント」というらしい)があっても、横Gを受けながら左前輪が最も大きく沈み込もうとしますね。高速になると内側車輪(右側ですね)は浮き上がりが起こりそうになります。通常はサスで姿勢コントロールされ一定以上の沈み込みが防がれています。カーブ走行中にブレーキを強くかけると、前輪に更なる荷重がかかり、グリップを上回る横Gとなるとタイヤは滑りコントロールを失いますね。ですが、線路の場合にはグリップはなく、レールと車輪との摩擦力ということになります。
次にトレーラーのような牽引車両がある場合を考えてみます。牽引している後続車両の重量が、駆動しているトレーラーよりも十分重い場合に、カーブ途中で急ブレーキをかけると、トレーラーの内側車輪は浮き上がることがあります。また、牽引車両が非常に重い場合には、駆動部分の後輪が浮き上がることがあります。牽引車両の慣性力が大き過ぎる場合には、当然横転してしまいます。
今回の事故の先頭車両の簡略化モデルを考えてみます。車両の車輪を4つとし(実際はもっと多いはずですが、簡単に説明する為にそうします)、前方の内側、外側の車輪をそれぞれR1、L1(右、左です)、後方も同じくR2、L2とします。
報道での速度モニター分析では、5両目(だったと思う)が脱線する時の速度が108kmということでしたので、カーブへの進入速度はもっと速いと思われます。なぜなら、ブレーキ後に脱線したとすると、脱線までの短い時間でいくらか減速されている可能性が高いからです。このブレーキングによってどれ位減速されたのかは不明です。しかし、直前の直線部分で遅れを取り戻すために最高速度で走行していたとするならば、恐らく120kmを超える程度でなかったか、と思うのです。この速度でカーブ入り口付近まで到達しており、いきなり急ブレーキはあり得ず、通常の緩徐なブレーキ開始しても大幅に減速出来たとは思えません。
先頭車両がカーブに進入すると、思いのほか横Gがきつく、「尋常ではない」と運転士は感じたのではないでしょうか。恐怖感と言えるかもしれません(車の運転中にも似たような経験をされたことがある人もおられるかも。ひょっとして曲がれないかもしれない、という恐怖ですね)。運転台は何処にあったのかは知りませんが、カントがあったにも係わらず、例えば左側の壁に押し付けられるような強い横Gを感じたら、「ヤバイ」とか先の恐怖感が襲ってきても不思議ではないということです。その為に、慌てて急ブレーキをかけます。これは非常ブレーキだったのか、通常のブレーキを強くかけたのかは定かではありません。ですが、急制動であったと思われます。
これはカーブに進入してからほんの数秒後であったと思います。車輪への荷重を考えてみましょう。カーブに進入直後には、L1、2への大きな荷重シフトが起こり、R1、2へは弱い輪重しかかかっていません。その状態で急制動が行われると、車体は前のめりになり、L1へは更なる荷重がかかり、R1はほとんど輪重を失うくらいであったかもしれません。おまけに、先のトレーラーの例で考えたように、後続車両が非常に重いと、その前方荷重が先頭車両へとかかります。カーブの遠心力で大きな荷重がL2に大きくかかっていたのですが、急制動で2両目からの前方方向への大きな力がかかることによって車輪が持ち上げられL2の輪重が抜けるということになります。カーブ途中であったので、2両目が前に押す力はR2へよりもL2の方に強くかかると考えられるのではないでしょうか(これは1両目と2両目が線路に沿って曲がって配置されていることによるのです)。
これによって、最大の荷重がL1にかけられましたが、L2の持ち上がりは一瞬で、次の瞬間には直ぐに接地すると思うのです。空気バネの正確な構造などは知りませんが、車体の高低を自動的に調整できるような仕組みになっているでしょうから、浮くと車輪は下に降りようとするのではないかと思うのです。この時点でもしもL2が持ち上がったままなら、トレーラーの横転と同じように先頭車両後部はカーブの接線方向へ倒れようとして前側は右に向いたまま車体左側面を下にしながら倒れると思います。ところが、現実は違いますから、L2の浮き上がり時間はほんの一瞬であったと思うのですね。このL2の持ち上がりの時には先頭車両はバランスが大きく崩れ、2両目との連結部分では大きな歪みを生じていたはずです。
そのような状態で、L2が接地するとどうなるのか。正確には判りませんが、予想を書いてみます。L1に最も大きな荷重となっていた時に、L2が接地することで、L1にかかっていた荷重の一部が再びL2へと移っていきます。このときに限界まで押し込められていたL1の空気バネが戻ろうとして強く働けば、車体は前方向の沈み込みだったのが後部方向へ一気に重心が移っていきます。線路の高低差は判りませんが、左レールが緩い登りになっていれば(多分登りになっているのではないかと思う)、L2への荷重シフトはさらに大きくなるかもしれません。こうして、L1への輪重が減少することで遠心力による横圧が上回り、車輪が上へとせり上がってきます。その瞬間に、L2の駆動力が復活して、FR車のように線路に駆動力が伝わります。そこで、L1はレール頂部へ向かって急速に達し、先頭車両は遠心力で左方向へと倒れるようにしながらジャンプ台の如く接線方向(マンション方向)へと跳んでいったのではないか。車体左右のバランスは、正確には判りませんが、急ブレーキでL1へ最大荷重となった時に、内部の人達が丁度こらえきれず車体左側に飛ばされたとしたら、L1、2への荷重はもっと大きいはずです。そして、横転する確率は高くなります。まるでレースのヨットのように片側へと体重移動が一瞬で起こったら、車体バランスのかなり大きな変動となったはずです。しかし、脱線直後に左側へと飛ばされたのなら、少し意味が違います。これはどうなのかは正確にはわかりません。
あと、急制動が、非常ブレーキであったかどうかですが、これは今の所正確に判っていません。非常ブレーキであれば、車輪のロックが起こるでしょうから、L1の上方向への抜けがどうだったのかは判りません。レール上を滑っていく車輪がレールを乗り越える機序がどういったものかは、思いつきません。しかし、車両の挙動が異常に不安定となり、転覆することがあるようにも思われます。またロックした車輪であっても、上の仮説で、L2への荷重シフトが起こった瞬間に、同じようにL1の輪重急減が起こるような気もしますが、ロックの可能性はよく判りません。
運転士の心理状況としては、報道にあるようにオーバーランでかなりのプレッシャーを感じていたはずで、その遅れを取り戻す為に中間部分の直線などではかなりスピードを出していたのだと思います。また、車掌と「8メートルと報告しよう」ということを話した後で、運転指令室(?、本部みたいな所)からの無線2回の呼び出しに応じなかったということでした。無線とか車内電話の仕組みも知りませんが、別々だとすれば、無線呼出しがまるで「叱責の恐怖を煽るベル」であるかのような、極度の緊張状態を作ったかもしれません。伊丹駅でのオーバーランで、もしかすると「2度と運転出来なくなるかもしれない」とか「遅れたら次の日勤研修がどれほど悲惨なものになるか」ということを考えることで、半ばパニック状態に陥ったかもしれない。しかも、応答しなかった後の2度目の呼び出しでは、「まだ遅れているということなのか?」「大幅な遅れがバレたのか?」というような、葛藤や迷いをもたらしていたのかもしれない。「遅れを取り返してから、指令室に無線応答しよう」と考えたとしても不思議はない、ということだ。
こうして、無線呼出しベルに益々急き立てられるような心理状況で半ばパニック状態だったとしたら、正確な判断力が失われていたかもしれない。カーブ進入前のブレーキングを出来るだけ遅らせて、カーブ奥まで比較的高速で突っ込んで曲がれるはずだと思ったのではないだろうか。きっと事故現場に来る前の塚口駅付近のカーブで、実際に「曲がれた」ので、同じくらいの制限速度のカーブなら「同じ方法でいけるんじゃないか」と思ったかもしれない。しかし、予想以上に列車のスピードが乗っていて、普通の減速では速度を落としきれなかった。前のカーブで”いけた”くらいのタイミングでブレーキをかけたが、曲がり始めてもまだかなりの速度が出ていた。「しまった」と思い、次の瞬間、「曲がりきれない」と思うほどの横Gを受けたはずだ。未だかつて経験のない程の、体が壁に押し付けられる程の横G。その時、ブレーキペダル(それかレバー?)を強く踏んだ。恐怖と、パニック状態に陥った大脳からの命令は、足の筋肉に微妙なコントロールなど到底できうるものではなかった(それともまともに立っていられない程の横Gで、片足で体重を支えきれず、そのせいで強く踏み込んでしまったか?ブレーキがレバーか足のペダルかで大きく違うな)。ブレーキは正確には判っていませんから、あくまで推測です。概ねこのような心理状況であったのではないだろうか?