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モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

絵としての演出を

2025-05-31 23:14:08 | 大人 水彩


加藤 透明水彩

岩田です。今回は、加藤さんの作品をご紹介します。

こちら、福島県羽鳥湖高原にあるブリテッィッシュヒルズという施設。パスポートのいらない英国とうたっているだけあって、ウェブサイトを見てもイギリスをまるっと再現した世界が広がっているエリアのようですが、そうした意味でも、しっかり赤いテレホンボックスを描いているのだけど、やはりどこか日本的な風情を感じさせるのがこの絵の面白いところです。

加藤さん、透明水彩をだいぶ自分のものにしてきているようですね。滲みを上手く使いながら色を重ね、透明水彩の特性を理解し描き進めているのが分かります。焦って過度に馴染ませたような感じがまるでありません。

特に今回は、手前の木に対して、後ろにあるグレーの建物をどうやって描くか、そして両者の距離感をどのように出そうかといったところがポイントだったと思います。幹の部分はまだ良いのですが、細かい枝葉の表現をいかにして描くかが最も頭を悩ませたところかもしれません。葉を除けながら建物の色を置いていくのは、さぞかし苦労したと思いますが、おおよそ加藤さんが思い描いたイメージに近づけたのではないでしょうか。

あとはもう少し、色で遊ぶことを楽しんでもらえたらと感じます。
写真を参考にし過ぎると、仕上がった絵が何となくあっさり見えることもあるので、特に緑をより活き活きとした色に、かといってビリジアンを多用し過ぎて絵の具そのままの色にならぬよう、自分なりに「絵」としての演出をしてみましょう。

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日本画講座【描き出し編】

2025-05-30 20:56:10 | 大人 日本画

サトルです。学生・大人クラスは希望者のみ日本画を制作しているのですが、まさかこんなに沢山の方に日本画を描いて頂けるとは思っていませんでした!(壁面に掛けてある描き途中の日本画を数えたら100人程でした!)感激です!ということで今回は日本画講座【描き出し編】です!

まず最初にパネルに和紙を貼りましょう。やり方は普通の水貼り(小原先生の水貼り動画↑はこちら)と基本的には変わらないのですが、日本画では「袋張り」という和紙の張り方をします。水貼りテープを使わず、パネルの側面に糊を塗り、そこに直接和紙を貼り付ける張り方ですね。パネルの側面まで和紙が見える様になって格好いいのと、固着力が強すぎないので絵の具を厚く塗ったりした時に紙が縮むのに合わせて動いてくれます。ミオスでは澱粉糊(でんぷんのり)で貼りましたが、日本画家は生麩糊(しょうふのり)を使います。


墨で骨描き+薄墨濃淡

パネルに和紙が貼れたら、まずは墨でデッサンをしましょう。墨で線を描くことを骨描き(こつがき)と言い、墨でトーンを乗せることを隈取(くまどり)と言います。現代では油絵の様に厚く岩絵具を塗るのが主流なので、骨描きの線は残らないのですが、昭和初期頃までは絵具を薄く塗り墨の濃淡を生かして形や質感を表現していました。


刷毛で地塗り

骨描きと隈取が終わったら次は地塗りです。地塗りで使うのは岩絵具では無く、水干絵具を使います。水干絵具とは胡粉などを染めて作られる絵具で、染めて作られているので色の種類が多く、さらには混色することも出来る便利な絵具です。水干を細かく砕き、膠を数滴入れ、ダマが無くなるまで混ぜます。水を少しずつ加えながらさらに混ぜていき、好みの濃さまで薄めてください。刷毛にたっぷり染み込ませて丁寧に塗り、乾く前に濡れていない乾いた刷毛で軽く撫でるとムラが無くなります。薄く塗って骨描きを透かせたい時は一度画面に水を引いておくと絵具が乾きにくくなって薄く引き伸ばしやすくなります。


背景もしくは下地作り

日本画は伝統的な描き方を重んじますが、時代を重ねる度に「日本画」というジャンルは広がって来ました。地塗りの後、骨描きの線通りに丁寧に塗っていく人もいれば、油絵の様に大胆なベースを塗って描いていく人もいます。ここから先の描き方は皆さんが今まで描いてきた作品の様に自由に描きましょう。

とはいえ岩絵具の使い方は細かい違いはありますがほぼ共通しています。水干絵具の解説で少し書きましたが、岩絵具は膠(動物性の骨などから取れるゼラチン)を混ぜることで粘着性を出し、紙に定着させます。膠は固形のものと液体のものがあり、固形の物は一晩水につけてもどしてから湯煎して溶かして使います。それを水で薄めて使いますが、膠の種類によって適切な濃さが違うため、使う際にいちいち調べないといけないので大変です。また、冷蔵庫に保管しても1週間ほどしかもたず腐ってしまうので、作り置きができません。


ミオスの岩絵具(今回大人・学生100人+小学生130人が制作したので、写真の岩絵具以外の水干をかなり買い足しました)

岩絵具は名前の通り岩を砕いて作られた絵具です。元は天然の素材のみで作られていて、とても少ない種類の色しかありませんでした。戦後、人工的に色付きの石やガラスを作るのとで色の数が大幅に増え、日本画材店にいくと棚一面に絵具が置いてあります。混色する事ができない絵具なので、細かい色の違いを出したい時、いちいち絵具を買い足して使い分けないと行けないので、とてもお金がかかります……涙。

長くなりましたがまだまだ日本画のことは語り尽くせません。沢山書きたいことがありますが今回はここまでです。また次回のブログで続きを解説させて頂きますので是非ご覧ください!

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のびのび描く楽しさ

2025-05-29 22:20:13 | 学生


心 / 瑞希  共に高1 油彩

マユカです!今回は学生クラスから二枚作品をご紹介していきたいと思います。

2週間前にアップした高校1年生の学生2人の油絵と同じ3月頃にスタートした二人。
ナツメ先生も書いていましたが、二人とも高校受験から解放されてから、「何でも好きなことして良いよ!題材も画材も自由!」と声をかけると、F3号の小さめキャンバスにペットの犬を描いていました。どちらも犬の性格によって雰囲気が違って素敵です。それでは一人ずつ順番にご紹介していきましょう。

まずは心。柴犬のおっとりとした雰囲気が背景のふわふわとした雰囲気とマッチしてなんだか癒されるような一枚です。心は長らくデッサンを描き続けていたため、色のある作品は久々。そのためか、はじめ一色のみで描いていましたが、それではパンの焼き色のような毛並みの色が表現できないと、オレンジ、赤などの暖色や濃い茶色を乗せたり体のラインに沿って筆を動かしふかふかとした質感を追い求めることで、思わず顔を埋めたくなるような質感に仕上げました。ほしたばっかりの布団のように、おひさまの香りがしそうな作品ですね。

瑞希は3匹並んでいる犬たちを描きましたが、モノトーンな毛色の濃淡に苦戦していました。黒い毛並みであれば影と光の当たっている場所のグレー、目の黒が埋もれないようにするにはどうすればいいか...白い毛並みであれば影色をどうすればいいか...など、沢山考えながら絵具を盛り立体的に描き上げました。犬に彩度がないため、ネクタイや壁面に色を使っていますが、犬たちがつけているのは赤や黄色などの暖色、背景の壁は寒色にしているからこそ色がメインの犬を邪魔せず、見やすく仕上がっています。物語が読み取れてしまいそうなほど表情豊かな犬たちが魅力的です。

久々の油彩画、伸び伸びとした筆跡から彼女たちの「楽しい!」が見ている人に伝わるような作品でしたね、学校が変わって学年が上がると、忙しくなって絵を描くことをやめてしまう子も多いからこそ、彼女たちが変わらず自由に作品を作ってくれることが嬉しいです!

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線から伝わる魅力

2025-05-28 22:20:58 | 小学生 絵画

ナツメです。今回は小学生の線画や実際にデザインの現場などで使うイラストの話を交えながら、「線」という表現について書いてみたいと思います。


小学生の日本画の下描き(低学年5人分の線画)

迷いのない強い線、羨ましいほど魅力的です。迷いのないと書きましたが「でも二重線に見えるけど?」と思った方いらっしゃいますよね?ご説明します。日本画は下書きの紙を、和紙を貼ったパネルの上に置き、カーボン紙を入れて写す為、2回なぞった線が二重になっているだけで自信がない訳ではないのです。
小原先生が言うには、9歳までのほとんどの子が、強い線を引けるそうです。自分を誰かと比較し自分自身(の能力)に疑いを持つようになる10歳くらいから、とたんにこの勢いがなくなるとのことで、思い返せば私もそうだった気がします。

こちらは、アトリエのHPをリニューアルするにあたって、体験申込手順のイラストを新しく差し替えることになり、私が制作したものです。
石膏像たちが体験デッサンをしたり、メールで入会申し込みをしていたりと、普段とはちょっと違うユーモラスな様子を描きました。描き込みの多いデッサン風やペン画風(中央のマルス)など、いくつかのパターンを用意しましたが、最終的には拡大縮小に強いIllustratorで制作するという条件のもと、このシンプルで親しみやすいテイストを選びました。

線画には、視覚情報をすっきり整理できるという大きな利点があります。色や装飾に頼らず、必要な形や構造をまっすぐに伝えられるため、見る人の目線が迷いません。アイコンやインフォグラフィック、説明図などに適しているのもそのためです。また、背景や配色に影響されにくく、白黒印刷にも対応できるため、印刷物でもウェブでも扱いやすいという柔軟性があります。媒体を問わず展開でき、コストや作業時間を抑えられる点でも実用的な表現手段です。

表現としての洗練さも魅力のひとつです。すっきりとした印象を与え、流行に左右されにくいため、ファッションやライフスタイル関連のビジュアルでも多く用いられています。

ただし、簡単そうに見えて、「どこまでを線で表し、何を省くか」の見極めがとても重要になります。線を入れすぎると煩雑に見え、省略しすぎると伝わらない。最小限の情報で最大限の印象を届けるためには、バランス感覚が欠かせません。

線画は、余分な要素をそぎ落としながらも、本質をしっかりと伝える表現です。だからこそ、商業デザインの現場では、使いやすさと美しさを両立できる手法として重宝されています。
シンプルな線でどこまで伝えられるか、みなさんもぜひ一度試してみてください。思っている以上に、線にはたくさんの力が宿っていますよ!

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技術を積んだ卒業制作

2025-05-27 14:27:12 | 学生


瑛太 高3

瑛太さま、お元気ですか?新生活はいかがですか?

サヤカです。今回は学生クラスの作品をご紹介します。こちらの作品の作者は、実は現在一般大学の1年生。(前回の瑛太のブログはこちら)高校3年生の3月、卒業制作としてこのモチーフを選び、仕上げた鉛筆デッサンです。(卒業制作として屍を選ぶところが、ひねくれたというかトンガっているというか、逆に分かりやすいというか…笑)
私もそうでしたが、瑛太も大学が併設されている私立中高でしたので、成績さえ落とさなければ希望する学部に進学できる為、ガツガツ受験勉強に追われることはなく趣味も極められます。大学に入学してから一般入試の人のエピソードを聞くと、受験という体験が人に与える影響の大きさを感じ、もったいないことをしたかなとちょっぴり後悔することもありますが、17歳〜18際の時期に受験に囚われすぎずに自分自身と向き合うこともまた一つの人生経験だったと思います。この時期に感じたことや考えたこと、ミオスという場所で自分の思いを表現することができていたことも、今の選択に活きていることを日々感じます。

瑛太は、趣味を極めるためにアトリエに通っていましたが、基礎的なデッサンに対しても意欲的に取り組み、技術をコツコツと磨いていました。デッサンで培った技術を生かして、油絵やアクリルにも挑戦し、集大成として再びデッサンを選択しました。デッサンで学んだことが他の画材で臨んだ作品で生かされ、その作品たちで学んだことが生きたデッサンになったのではないでしょうか。緻密な描き込みと程よく手を抜く部分によって、バランスの良い画面になっています。

アトリエミオスは美術予備校ではないので、学生クラスの半分が趣味を深めたい人たちです。中高生になって絵を描くことが好き!と自認している人たちは、小さい頃から描いていきた人が大半だと思います。絵を描くことって楽しいですよね。絵を描く理由って何だろうって小難しく考えることもありますが、最終的にはやっぱりそこに辿り着きます。

学生クラスは現在、土日のクラスは満席ですが、火曜・木曜クラスは生徒募集中。ぜひ無料体験にご参加ください。学生クラスの詳細はこちら

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幼児クラス新規生徒さん募集中

2025-05-26 23:55:07 | 幼児

小原です。本日は幼児クラスのご紹介です。幼児クラスは現在、年少さんから年長さんの6人のみの在籍ですので講師の目も行き届き、少々難しい課題にもチャレンジさせています。


円筒を多用した四本足で立つ動物 色画用紙・セロテープ

胴体は大きめ(太め)の円筒ですが、紙を巻き過ぎては細くなってしまいます。「どのように押さえたら細くならずにセロテープが付けられるかな?」とクイズをしながらコツを覚えて行ってもらいます。「逆に筒を細くすると固くなるね。固いと長くても丈夫な足になるよ!」「どこにセロテープを付ければ、先生に抑えてもらわなくても足がしっかり貼れるかな?」遊びながら学ぶことがたくさんあります。
足を付ける位置や角度を変えて、それぞれイメージを広げました。年少さんもとっても上手!「一人でできるもん!」と頼もしいので、ほとんど手伝いませんでした。


紙版画 生き物

小学生の自画像版画に触発されて、幼児クラスではテーマが生き物の紙版画を制作しました。ペラペラの胴体ではありますが、手前の足と奥の足の貼る位置を変えて、胴体の厚みが表現されています。「4本共こっちに貼るとどう見える?」「立たなそう」「転びそう」とすぐに答えが出てきます。考えながら作るって楽しいね!


高いタワー 細長い薄手画用紙・セロテープ

薄い紙はそのままでは腰が無くてヘロヘロふにゃふにゃ。「半分に折ると強くなって自立するよ!」と、『L字工』という柱の話から説明・実験して、まずは5枚だけ使って「誰が高くできるかな?」と競争しました。円筒の動物の作り方を覚えている子も多く、「先生、触らないで!自分でやる!」と支える事すら許されません。(笑)セロテープを切る係に徹しました。
実は小学校受験クラスでも同じ課題をやりましたが、こんなにバラエティーに富んだ塔にはなりませんでした。幼児クラスの子は、オリジナリティにあふれているようです。

その後、3~4本の帯を追加投入!「さぁ、上に高くすると立つかな?それとも下を強くした方が良いのかな?」みんな「下!下!だってさっき先生、下が重い方がしっかりするって言ってたもん!東京タワーと同じだって!」すごい!ちゃんと覚えて応用してる!完成後、お母さんのお迎えまでの数十分間は十分持ちこたえる強度がありました。
塔も自立、子どもたちも自立、独り立ちです。美術を通した学びの力を感じます。
幼児クラスはいつでも生徒募集中。ぜひ無料体験にご参加ください。詳しくはこちら

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再スタート

2025-05-24 22:07:48 | 大人 油絵・アクリル


追川 油彩

岩田です。今回は、追川さんの作品をご紹介します。

追川さんが描く絵は、今まで見たほとんどが画面中がカオスになっている記憶があるのですが、今回は、うって変わって凄く落ち着いていている印象の作品だと感じます。モチーフの種類もぐっと少なく、何が描きたいのかが分かり易いところが、とても良いと思います。

手前の水色のアジサイ越しに見える朱味がかった花。ぐったりうな垂れて、枯れているようです。ぼかしてはいますが、活き活き輝いているアジサイと盛期を過ぎた花を対比させているのでしょう。そうした狙いも最小限に留められたモチーフ数に起因して、鑑賞者にストレートに伝わってきます。

こうして絵を見てみると、作者が絵に携わった期間がある程度長いのもあるのですが、ものを描く力があるなと感じさせます。

毎回キャンバスのサイズも大きく、前述したようなモチーフの多さもあって、結局まとまらなかったというような作品も少なからず制作してきたかと思うのですが、こういう感じの小さな画面から、ある意味再スタートしてみるのも良いのかなと思うのです。

いつも面白いアイデアに溢れ、創造力が豊かな作者にとっては、少し物足りなさを感じてしまうかもしれませんが、構図、空間、明彩度といった描く為の必須事項を再認識しながら、現実をはるかに超越した、追川さんらしい壮大なスケールの作品に一歩づつ又戻っていくというプロセスを踏んでみるのも良いかもしれませんね。

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神秘の画面

2025-05-23 21:12:39 | 大人 油絵・アクリル


奥 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、奥さんの油彩作品です。奥さんはご自宅でも油絵を制作されており、今まで何度も個展を開かれている意欲的なお方です。それも納得のパワフルさが作品からも伝わってきますね。
上の作品のモデルは、大衆演劇の団長の娘さんだそうです。小さな頃から子役として舞台に立っているそうで、凛とした瞳と柔らかな笑みを湛えた口元が印象的な1枚。華やかな髪飾りと艶やかな黒髪、そして白粉が塗られた肌の強烈なコントラストと、演者の穏やかな表情が合わさり、力強さと柔らかさが同時に存在するような不思議な画面となっています。抽象的に仕上げられた背景は、舞台の照明にも、演者の内面にも、観客の期待にも見えてくるような、様々な姿が浮かび上がってくるようです。

こちらの4枚もそれぞれ違ったモチーフながら、作品を通じて作者の魂の輪郭が浮かび上がってくるような感覚を覚えます。特に左下の作品は、おもちゃで遊ぶ子供の頃の無邪気な性質と、それを懐かしむように大きく咲いた紫陽花は大人の香りを持っているようで、混在する2つの時間が面白いですね。その右隣の作品も、直線で構成された女性の側に2羽の虫がいます。女性とは対照的に丸みを帯びた形で描かれ、どちらも片羽を失っています。この小さな違和感に、思考ごと惹きこまれてしまいそうですね。
心地良い色と形を探るような形跡もあれば、観る者の内面を逆に絵の方が覗いてくるような、静かな畏怖を感じさせる線やモチーフ選びもあり、どれも神秘的な魅力に満ちています。パステルカラーから原色に近い色まで、幅広く使われている青色がそう見せているのでしょうか?

思い切った形や大胆な色使いは、「こんな風に描いても良いんだ!」と見る人の常識を塗り替えるパワーを持っています。全てをありのまま描くのではなく、作者の目を通じた世界が描かれており、作品を鑑賞する我々もその世界を見ているような、そんな気さえしてきませんか?

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かわいいを作るのは難しい?

2025-05-22 23:43:58 | 学生


杏 高3 アクリル

マユカです!今回はアンの作品をご紹介いたします。皆さん、こちら作者の名前、つい最近見たような気がしませんか?そうGW明けにも大竹先生が彼女の作品を4枚紹介しているのです。何しろ週5日アトリエに通っていますので、それは作品もどんどん完成しますよね。家で制作した作品も良く見せてくれるのですが、本当に絵が好きなんだなぁと感じます。

ただ、とても自分に厳しい性格で、かなりしっかりと描けているように見えるこの写真模写も、「うちの子はもっとかわいいのに…。可愛く描くのって難しいんですね。」と言っていました。イラスト以外の写実路線の絵は、『カッコイイ』より断然『カワイイ』方が難しいのです。話が反れますが、今制作中の小学生クラスの日本画の題材で人気の小鳥『シマエナガ』を描いている女の子が多いのですが、みんな全く絵にならず大変苦労しています。ただの白い円になってしまったり、イラストチックになってしまったりと、目や口の大きさやバランスの難しさに四苦八苦しております。平面に描き起こすと光の加減や視点の位置の変化で脳内処理される情報が、一瞬に固定されてしまうため影の入り方や表情で可愛さを表現することが一層難しくなってしまうんですね。

写実的に描いていて、可愛さを上手く表現できないときは意図的に影を消したり、ハイライトを足したりなど調整することで可愛くなったりすることもあります。より一層慎重に描き進めることで、自身の思う「かわいい」の表現を突き詰めることが出来るでしょう。

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白と黒で描く世界

2025-05-21 23:21:23 | 大人 パステル・色鉛筆・他


増井 パステル・チャコール鉛筆・コンテ/グレーのイラストボード

ナツメです。本日は月曜大人クラスの増井さんの作品をご紹介します!グレーのイラストボードに、チャコール鉛筆・パステル・コンテを用いて描かれました。雲間から降り注ぐ光のなかを馬の群れが駆け抜けるという構図で、大自然のスケール感や馬の迫力が伝わってきます!

いわゆる「グレーデッサン」のような描き方で、よく見るデッサンのように白い紙に鉛筆や木炭で描くのとは異なり、中間の明度(グレー)を持ったボードに白と黒を加えて描いていきました。明るくしたいところには白を、暗くしたいところには黒を置き、中間の明度はあえて塗らずに残すという判断が常に求められる、実はとても考えることが多い描き方です。今回は白と黒の他に、茶色のコンテやパステルも使用しました。

中でも難しいのは「何をどこまで描くか」「白と黒のバランスをどう取るか」という点です。黒で描きすぎると画面が重たく沈んでしまい、白を多用しすぎるとハレーションのようにぼやけてしまいます。そのため、光を感じさせながら奥行きを保つバランス感覚が必要とされます。

まずチャコール鉛筆で馬たちの動きを大きく捉え、その後コンテやパステルで明暗を加えながら密度を調整していきました。個々の馬の動きや立ち位置をきちんと観察しながらも、群れとしてのまとまりを崩さないよう描きこみすぎないことを意識されました。また、手前や中央の馬ほどコントラストを上げ、細かく描くことで群の中での奥行きを表現しています。

雲の隙間から差す光がとても印象的ですが、その白の力強さはグレーのボードを使ったからこそ際立っています。地の色を雲にそのまま活かすことで、白との対比がいっそう引き立ち、眩しさを感じさせる表現へとつながっています。馬の足元も影を丁寧に追うことで遠くへ抜けるような草原を巧みに描写されました。

初めての技法ながら、光の方向、馬の密度、地面の広がりなど、空間を構成する要素がしっかり整理されており、画面全体の秩序を感じます。遠くから見ても群れの迫力が伝わってくる一方、近づくと馬一頭一頭の個性や動きに気づく、見ごたえのある作品となりました。

灰色のキャンバスに白と黒、そして茶色だけで挑むという制限のなかでどれだけ豊かな表現ができるかに挑戦しながら、粘り強く取り組まれた一枚です。

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2つの角度、2倍の楽しみ

2025-05-20 00:09:09 | 大人 パステル・色鉛筆・他


小山 色鉛筆

サヤカです。突然の暑さに体が追いつきませんね。みなさん体調には十分お気をつけください。今回は大人クラスの小山さんの作品をご紹介します。

前回同様、娘さんを色鉛筆で描かれていらっしゃいます。しかし、1枚目から見ると娘さんがどんどん大きくなっているのが分かり、成長の速さに驚いてしまいますね。今回は箒と塵取りを両手に持ち、明らかに掃除はしていませんがとっても楽しそう!大変難しいトリミングをしていますが、小山さんはデッサン力が高いので、腰を落として構えている(踊っている?)ポーズがちゃんと伝わるのです。

ひまわり柄の甚平は、派手な柄ですが主張しすぎない絶妙な塗り加減です。夏の花であるひまわり柄と娘さんの弾ける笑顔の相性がバッチリで印象的です。

ちなみに小山さんはお父さんです。ミオスでは、子どもの絵を描くのはほとんどお父さんだそうです。子どもと一緒に日々密接に過ごす時間はお母さんの方が多いご家庭がほとんどだと思います。小原先生の読みは、教育の責任を負うお母さんは、ただ「うちの子かわいい!」と絵にできないのではないか?というものです。私も同様の考えで、お母さんは子供と自分を同一化しやすく、子供を描くということは自分の一部を描くということに近いのではないでしょうか。一年近く自分の体内にいた存在だから必然なのかもしれません。一方でお父さんは、子供と関わることで父親としての実感や家族というチームへの実感を得ていきます。同じお子さんの姿でも、お父さんとお母さんでは見ている角度が違うのかもしれませんね。子育ての楽しみが2倍あるようで、とても素敵なことだなと思います。

小山さんの作品からは、お子さんの楽しげな声まで聞こえてくるようでこちらまで成長を見守らせていただいている気分です。これからも小山さんの作品を楽しみにしています!

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木炭デッサンの効用

2025-05-19 10:25:04 | 学生


陽音 中3 木炭デッサン

サトルです。今回は中学生の描いた木炭デッサンの紹介になります。ヘルメットを被った裸の像がマルス、マントを掛けている像がジョルジョです。頭部と体の比率も良く合わせられていますし、石膏像の大きな立体感も感じられます。

元々鉛筆で石膏像を何枚も描いていたので形を取ることや描写力は中学生離れしていたのですが、石膏像の大きい立体感や光が当たって起こる、明るい所から暗い所へのグラデーションがうまく出せませんでした。木炭を使うことでその弱点を克服し、二枚目に描いたジョルジョはボリューム感をよく出し見事に仕上げました。

木炭は黒くて描きづらそう……と敬遠しがちだと思うので、ここで木炭デッサンのコツを紹介しようと思います。

木炭の最大の特徴は「強い黒が塗りやすく、消しやすい」ことです。木炭を画面に塗ると、筆圧の関係なく真っ黒い線がでてきます。これが木炭の難しいところで、単純な塗り重ねで色の濃さの調節が出来ないため、食パンや練りゴムで木炭の粉を取ったりしてグレートーンに調節しなくてはなりません。食パンや練りゴムの他にも、擦筆(さっぴつ)・スポンジなどは、小さな面積や少しだけ色を明るくしたい時の微調整に使えますし、ガーゼや手のひらで大きい範囲を一気に擦ることも可能です。(陽音のジョルジョの体の部分は、このようなテクニックを積み重ね使い分け上手く描けています。)一度大きく光と影を塗り分け大まかに整えてから、練りゴムなどで光側に白い線を引くように木炭を取っていく。木炭デッサンはこのようなプロセスを踏むことで効率よく大きなボリューム感と細部の質感を両立させることができます。

少しトーンの調整に慣れが必要な木炭ですが、鉛筆に比べて圧倒的に早く広い範囲を塗る事が出来ます。僕はクロッキーや大きいデッサンを描く時は木炭で大きく色を乗せて細かい所を鉛筆で描いています。人によっては鉛筆より木炭の方が得意なこともあるので、石膏デッサンなどの大きい作品のときに挑戦してみると新しい発見があるかもしれませんね。

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プリミティブ・パワー

2025-05-17 23:32:16 | 学生

岩田です。今回は、桂吾の作品をご紹介します。
いつも力強く、プリミティブな印象が魅力的な作品を描く作者。自由な発想で脳内にある彼独自の世界を2次元に落とし込んでいます。

1枚目は、北京の銀河SOHOがモチーフ。建築家のザハ・ハディド氏は、実現化されなかった新国立競技場をデザインした建築家としても有名。彼の書いた解説文には、4つの建築物が3次元的に連なった有機的な建物として記されています。
こちらの絵では、月夜をバックにした天守閣を彷彿とさせるダイナミックな情景が描大胆に描かれています。見方によっては、巨大なアリ塚のようにも見えてくる何とも面白い作品です。

2枚目は、鉛筆のみで描いた作品。モノトーンの世界が古い時代を起草させるようです。
舞台がニューヨーク証券取引所とありますが、蒸気機関や歯車といった産業革命期の世界と未来的なイメージが融合した、いわばレトロフューチャー、またはスチームパンク的な印象を感じさせる1枚です。

近代的な建築物も彼の手にかかれば、有機的な線描と相まって、三内丸山遺跡にあったであろう縄文時代の巨大なやぐらのようにも見えてくる不思議。何千年の時代を超越し、見ているこちらが、まるでタイムマシーンに乗って旅をしているような感覚さえ湧き上がってくるのです。

こちらのタイトルは、表象というだけあって、感覚的、直感的に描かれた作品。太極図を中心にしたレインボーワールドに様々なアイコンや文字、数式のようなものが浮遊しています。

今この瞬間には認知していないけれど、記憶の中に刻まれた多種多様なイメージをかき集め、とても面白い世界を作り上げています。作者自身は、けして意識はしていないけれど、どこかパウル・クレーを彷彿とさせる、実に魅力的な作品です。

敢えて桂吾の作品を一言で言い表すならば、「プリミティブ・パワー」といった言葉が良く似合うのではないかと思います。

絵の魅力の一つは、自由な世界を構築できることです。モノを見て描き写すことも練習しつつ、彼のような柔軟な発想で、皆さんも描くことを楽しんでいってくださいね。

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眼差しの先

2025-05-16 21:46:02 | 大人 水彩


室橋 左 透明水彩 / 右 油彩

 

大竹です。明るい時間が随分と長くなってきましたね。何をするにも寒すぎず暑すぎず、丁度良い季節です。
さて、今回ご紹介させて頂くのは、室橋さんによる水彩画と油彩画です。

左の作品は、透明水彩で描かれた古い町並みの風景画です。これまでにも多くの水彩画を制作されている室橋さんらしく、丁寧な筆づかいと繊細な色使いが光る一枚。木造建築の味わい深い質感や、遠くの山並みへと続く空気感の描写が見事で、静かな時間の流れを感じさせてくれます。雨上がりなのでしょうか、濡れた地面が湿気を帯びた空気の匂いまでも作っているようです。吊るされた2つの茶色いボールは杉玉といって、新酒が出来た合図として毎年青い球状の杉が吊るされ、茶色く枯れていく事で酒の熟成具合を知らせていたそうです。なので、酒屋さんが並んでいる事が分かりますね。そうした絵を読み解く要素も面白い1枚です。

右の油彩画のモデルはお孫さん。ルービックキューブを触る指先や表情はしっかりと観察し、子どもらしい赤みを帯びた色で描かれています。特に指は第二の表情とも言えるほど、感情や情緒を表現する事が出来、こちらの作品でも気を使われて描かれているのでしょう。
青い背景は知的なイメージをもたらし、赤い肌やキューブを引き立てています。グレーの服は有彩色を入り交ぜて無機質になりすぎないよう工夫されていますね。油絵ならではの重厚な色合いと質感が、人物の存在感をより一層浮かび上がらせています。作者の愛孫に対する慈愛の眼差しを通じ、我々鑑賞者もその可愛らしい姿を見る事が出来るのでしょう。

技法もテーマも異なる2作品ですが、どちらも室橋さんの誠実なまなざしと、積み重ねてこられた制作の歩みが感じられますね。室橋さんは透明水彩をしばらく描いた後、画材を油彩に変更し『孫シリーズ』を描き始めました。(ちなみに現在は二人目の孫の油彩を一旦お休みし【日本画】にチャレンジしています!)次の作品も楽しみにしております!

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丁寧さは仕上げの魔法

2025-05-15 20:01:52 | 学生


浩子 油彩 / 聖菜 水彩  共に中3

マユカです!今回は中学3年生二人の作品をご紹介していきたいと思います。
少しファンタジーな世界観を感じるようなベニテングダケの油絵と、自分でモチーフを組んだ静物の水彩画です。浩子も聖菜も丁寧な塗りと色使いからきちんと描こうという誠実さが表れていますね。それでは一人ずつご紹介していきたいと思います

まずは浩子、白雪姫の森の中のような雰囲気のある1枚で、奥の方はぼんやりさせ、手前の描き込みにしっかりピントを合わせる手法や、キノコ以外の色味を少し抑えめにすることで赤色がビビットに見えるような色彩のバランスなど、画面の調整がとてもうまいですね。白の斑点部分は少し絵具を多めに乗せ、立体感が強く出るようになっています。どこか異世界のような空気感が強く伝わってくるため、神秘的なイメージを受けますね。この色調を映えさせる白っぽい額に入れ飾りたくなるような作品です。

お次に聖菜。水彩絵の具ですが青色が綺麗に発色しており、慎重に塗り進めて行ったのが分かります。水彩絵の具は塗り重ねすぎると色がくすんでしまって少しぼんやりとした仕上がりになってしまうのですが、聖菜の作品は全体的に鮮やかに仕上がっていますね。
布、レンガ、ガラス、そしてぬいぐるみ...と、素材の描きわけができており、触れたときにどんな触感なのか伝わってくるようです。ハイライトの入れ方や影の濃さ、シルエットも含め、モチーフと真摯に向き合い、らしさを表現しようと工夫したことが見て取れます。

最初から丁寧に描き進めることで、仕上げの工程が少なくなるだけでなく、調整もしやすくなり、完成した時に美しい画面になる確率が高いです。その分時間はかかってしまいますが、時には考えながら筆を進めるのもいいかもしれません。

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