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モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

間(ま)に咲く花

2025-06-27 20:55:27 | 大人 日本画


室橋 岩絵具/和紙・パネル


大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、室橋さんの日本画です。

花札にも描かれている紫の菖蒲(しょうぶ)。日本の風景や季節感を象徴する花ですが、こちら作品では凛と咲くその姿が実に丁寧に、そして品よく描かれています。岩絵具ならではのマットで深い色合いがピッタリのモチーフですね。

菖蒲の花びら1枚1枚に、生命を宿らせるようなやわらかさが感じられます。紫と黄色という補色関係にある花と背景の色づかいも見事で、辛子色の背景が、画面全体に落ち着いた和の雰囲気を生み出しています。色の対比はありながらも決して騒がしくなく、むしろ花の気品がより引き立つ構成となっています。
花は画面中央よりやや左寄りに配置されており、左側に広がる余白が、まるで風が吹き抜けたあとの静けさのような余韻を感じさせてくれます。この「間」の美しさこそ、日本画ならではの魅力なのでしょう。右方向に向かって葉が自然に流れていることで、構図に動きと調和が生まれ、見る人の視線が心地よく誘導されていきます。背景の縦方向の筆の流れも、菖蒲のすっと伸びた姿と美しく呼応しており、美しい一枚です。所々に白い縦線が入っているのも、雨が降っている様にも見えて面白いですね!

ぜひ、素材の特性と作家のまなざし、その両方に注目して味わっていただきたい作品です。

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眼差しの先

2025-05-16 21:46:02 | 大人 水彩


室橋 左 透明水彩 / 右 油彩

 

大竹です。明るい時間が随分と長くなってきましたね。何をするにも寒すぎず暑すぎず、丁度良い季節です。
さて、今回ご紹介させて頂くのは、室橋さんによる水彩画と油彩画です。

左の作品は、透明水彩で描かれた古い町並みの風景画です。これまでにも多くの水彩画を制作されている室橋さんらしく、丁寧な筆づかいと繊細な色使いが光る一枚。木造建築の味わい深い質感や、遠くの山並みへと続く空気感の描写が見事で、静かな時間の流れを感じさせてくれます。雨上がりなのでしょうか、濡れた地面が湿気を帯びた空気の匂いまでも作っているようです。吊るされた2つの茶色いボールは杉玉といって、新酒が出来た合図として毎年青い球状の杉が吊るされ、茶色く枯れていく事で酒の熟成具合を知らせていたそうです。なので、酒屋さんが並んでいる事が分かりますね。そうした絵を読み解く要素も面白い1枚です。

右の油彩画のモデルはお孫さん。ルービックキューブを触る指先や表情はしっかりと観察し、子どもらしい赤みを帯びた色で描かれています。特に指は第二の表情とも言えるほど、感情や情緒を表現する事が出来、こちらの作品でも気を使われて描かれているのでしょう。
青い背景は知的なイメージをもたらし、赤い肌やキューブを引き立てています。グレーの服は有彩色を入り交ぜて無機質になりすぎないよう工夫されていますね。油絵ならではの重厚な色合いと質感が、人物の存在感をより一層浮かび上がらせています。作者の愛孫に対する慈愛の眼差しを通じ、我々鑑賞者もその可愛らしい姿を見る事が出来るのでしょう。

技法もテーマも異なる2作品ですが、どちらも室橋さんの誠実なまなざしと、積み重ねてこられた制作の歩みが感じられますね。室橋さんは透明水彩をしばらく描いた後、画材を油彩に変更し『孫シリーズ』を描き始めました。(ちなみに現在は二人目の孫の油彩を一旦お休みし【日本画】にチャレンジしています!)次の作品も楽しみにしております!

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儚げでも力強く咲く花

2024-05-09 23:12:08 | 大人 水彩


室橋 透明水彩

マユカです!今回は室橋さんの水彩画をご紹介していきます。

今回のモチーフは夜に開花するという百合の花。周囲が夜のような黒寄りの濃紺でじんわりと滲むように縁どられており、ふっくらと膨らんだつぼみは花開く時を待っているよう。一足先に咲いた白い花弁はまるで周囲に存在をアピールするかのように美しく映えていますね。室橋さんの透明水彩をご紹介した前回のブログでは、大竹先生が「水彩は慣れるまで沢山描く必要があります」と書いていましたが、見比べると画材の扱いにだいぶこなれた感があります。前回の絵は少々色に振り回されたような印象を受けましたが、今回は前後感や立体感といったリアリティが格段に上がった上、モノトーン系ということもあり使用色数の少なさが落ち着きのあるしっとりした魅力につながり、モチーフとの親和性があったのかなと感じます。

植物と水彩の親和性は、その儚さにあるように思います。花弁を描く際にふんわりと滲むようなタッチで描くことにより、触れたときの柔らかさや散ってしまいそうな脆さを画面から感じることが出来ます。繊細なテクスチャを入れてみるのもよし、水分量を調整して暗い場所はくっきりと、輪郭線を整えて描けば力強さ、見やすさを兼ねることすらできちゃいますよ。水分量の調節一つで絵の雰囲気は大きく変わってきますから、その調節になれるまで枚数をこなせばそれだけ上手くなるのでしょう。

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複雑な色を丹念に表現していく

2024-02-17 14:00:08 | 大人 水彩


黒木 透明水彩

岩田です。昨日の室橋さんのブログに続いて、アジサイの透明水彩画のご紹介です。

こちらは黒木さんの描いたアジサイ。大輪の花が咲き誇っている風情ある1枚です。
青やピンク、様々に違う色のアジサイが梅雨の時期に、しっとりと落ち着きのある景色を演出している様が、見ているこちらのすぐ目の前に広がっているようです。

何と言ってもこれだけ沢山の葉を画面いっぱい描くのに、まず時間と労力を費やします。
更に花を1輪1輪丁寧に描くほどに、作品が完成する頃にはどうしても季節外れになってしまうのは仕方のないことです。

手前に鎮座する最も見栄えのする花だけでも、100以上のガクの集合体だと思われますが。手で触るとふわっと柔らかい、そのこんもりとした球形の様を、細部に執拗に拘り過ぎず、バランス良くここまで表現したなあと感心してしまうのです。

葉を描く際も、何度も絵の具を重ね、渋さと鮮やかさが同居する複雑な色を丹念に作り出していきました。透明水彩を描き進めていく度に、色の深みを出し、そのものらしさを表現するための術を着実に身につけていっている黒木さん。

いまチャレンジしている作品も完成が楽しみです。

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旅行の気持ち

2024-02-16 13:59:56 | 大人 水彩


室橋 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、室橋さんの水彩作品です。箱根の登山鉄道モハ2形と、線路沿いに咲いた紫陽花を描かれています。

冬に完成したこちらの作品ですが、慣れない画材は季節を先取りして描き始めたつもりでも、時間が掛かってしまうということがしばしば起こります。室橋さんも透明水彩を始めたばかり。しかも電車のようなカッチリとした乗り物を題材に選ばれたのも初めてでしたので、なかなか苦労されていました。朱色のボディと、周りの緑の色の響き合いが美しいですね。自然物はにじみを多用して柔らかく塗り、反対に人工物(電車)はムラなく均一に塗る事で質感の差も作られています。また、紫陽花は電車よりも手前にありますが、あえて細かく描かない事で、電車にピントが合う様に設定されています。ただ、細かく描かないと言っても、絵全体を見た時は小さな花の集合である紫陽花の形が伝わる程度には描かれています。そのバランスがちょうど良いですね。
水彩の柔らかな雰囲気もあり、優しく穏やかな時間が流れている様に思います。箱根という観光地ということもあり、旅行の時のウキウキした気持ちが思い起こされますね。私も友人と何度が行ったことがあったので、懐かしい気持ちになってしまいました。

水彩は慣れるまで沢山描く必要がありますが、1つ1つを楽しんで制作していって頂けたらと思います。

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五感を刺激する

2023-07-18 12:59:14 | 大人 油絵・アクリル


室橋 油彩

連日の逃げられない暑さ外に出るのも嫌になりますねサヤカです。今回は水曜午前クラスの室橋さんの作品をご紹介します。

室橋さんは、以前小学生クラスに通っていたお孫さんのおばあちゃまです。お孫さんの事を小原先生に聞くと「やんちゃだけど、すごく絵が上手かった」そうで、そんなご家族と同じ絵画教室に通ってくださる勇気?(孫と比較されて、祖母の沽券にも関わりそうな気もしますので)にも感動しました!

初めての油絵ですが、緑のバリエーション豊かな色作りに、ベテランの風格すら感じます。
画面のほとんどが『緑』で構成され、一歩間違えると単純でつまらない印象の絵になる怖さがありますが、室橋さんの『緑』からは、さまざまな自然の表情が伺え、リアルな空気感が描かれています。

季節は初夏といった時期でしょうか?日差しが強くなるにつれて、植物もだんだん緑が濃く鮮やかになっていきますが、春の息吹も残っているように感じられるのは、新芽の若く淡い色調も使われているからです。また、林の幹を一本一本描いていますが、左手前の林の幹と、奥の幹では濃さに差を付け遠近感を出しています。水面に映る景色も手が込んでいて、細かな部分まで丁寧に観察し仕上げていることが伝わってきます。詳細まで妥協しないこの緻密さが、より作品のクオリティを上げているのです。

人の手によって整えられた花壇と木道、奥に自然のままの木々・山々が見える森林公園に訪れたら、思わず深呼吸したくなりますよね。絵の前に立つと、瑞々しいい緑の香り、川のせせらぎまで感じられ、皆さんもこの風景の中を散歩しているような気持になるでしょう。開けた場所を歩く時は吹き抜ける風が気持ちよく、茂った葉が影を作る森の中は木洩れ日が美しく…と森林浴の想像が止まりません。

豊かな色彩から、草の香り・小鳥のさえずり・風・光・気温・湿度など、描くことができない視覚以外の五感まで刺激されます。冒頭で「外に出るのすら嫌」と書きましたが、こんな場所なら喜んで出掛けます!
初挑戦の油彩でここまでこだわれる室橋さんのこれからの作品が楽しみです。

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