室橋 岩絵具/和紙・パネル
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、室橋さんの日本画です。
花札にも描かれている紫の菖蒲(しょうぶ)。日本の風景や季節感を象徴する花ですが、こちら作品では凛と咲くその姿が実に丁寧に、そして品よく描かれています。岩絵具ならではのマットで深い色合いがピッタリのモチーフですね。
菖蒲の花びら1枚1枚に、生命を宿らせるようなやわらかさが感じられます。紫と黄色という補色関係にある花と背景の色づかいも見事で、辛子色の背景が、画面全体に落ち着いた和の雰囲気を生み出しています。色の対比はありながらも決して騒がしくなく、むしろ花の気品がより引き立つ構成となっています。
花は画面中央よりやや左寄りに配置されており、左側に広がる余白が、まるで風が吹き抜けたあとの静けさのような余韻を感じさせてくれます。この「間」の美しさこそ、日本画ならではの魅力なのでしょう。右方向に向かって葉が自然に流れていることで、構図に動きと調和が生まれ、見る人の視線が心地よく誘導されていきます。背景の縦方向の筆の流れも、菖蒲のすっと伸びた姿と美しく呼応しており、美しい一枚です。所々に白い縦線が入っているのも、雨が降っている様にも見えて面白いですね!
ぜひ、素材の特性と作家のまなざし、その両方に注目して味わっていただきたい作品です。