矢作 油彩
こんにちは!マユカです!今回は矢作さんの作品をご紹介していきたいと思います。
これからの季節にピッタリな、春の空気を感じる1枚。ヨーロッパの雑誌の1ページから選ばれた景色を描かれました。ご本人と同世代くらいのシスターが、春の訪れにウキウキと足取り軽やかに穏やかな坂をくだっているシーンです。春の訪れは画面右上に描かれた花だけではなく、道端の緑が元気に青々としてきている様と、シスターの着ている服が少し厚めでまだ少し肌寒いのだろう、という雰囲気から察せられます。また画像では潰れてしまっていますが、顔に刻まれたシワの細やかさが、シスターの生きてきた年数を表していますね。
こういった細やかな描写は画面の至る所で見られ、例えば建物の石壁等は切り出した岩の模様だけでなく、凹凸によって落ちなくなった汚れなどすら感じるほどリアリティある質感で描かれていますし、カーテンの布らしい、少し固めなしわが付いている所も、ガラス越し特有のグラデーションがあるのも、実物をその場で鑑賞しているかのような臨場感と共に、矢作さんの観察力の高さが伺えます。これだけ描写による説明がしっかりしていると、私がここで説明などしなくても、この絵に描かれている状況を読み取ることが容易でしょう。
絵で説明するというのは、言葉を介さない分誰にでも伝えることができる反面、考え方の違いや価値観によって受け止め方が変わってきてしまう、少し高度なコミュニケーションだと思っています。だからこそ解釈の違いを楽しんだり、人と話すことで絵画に厚みが生まれることもあるわけです。今回の作品は、明るい雰囲気に誰もが捉えやすい要素を掴んでいるため、見ている側に伝わりやすく、解釈がしやすいため、絵画コミュニケーションの取りやすい作品だと感じました。