モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

話の輪を産む絵画

2025-03-20 22:43:24 | 大人 油絵・アクリル


矢作 油彩

こんにちは!マユカです!今回は矢作さんの作品をご紹介していきたいと思います。

これからの季節にピッタリな、春の空気を感じる1枚。ヨーロッパの雑誌の1ページから選ばれた景色を描かれました。ご本人と同世代くらいのシスターが、春の訪れにウキウキと足取り軽やかに穏やかな坂をくだっているシーンです。春の訪れは画面右上に描かれた花だけではなく、道端の緑が元気に青々としてきている様と、シスターの着ている服が少し厚めでまだ少し肌寒いのだろう、という雰囲気から察せられます。また画像では潰れてしまっていますが、顔に刻まれたシワの細やかさが、シスターの生きてきた年数を表していますね。

こういった細やかな描写は画面の至る所で見られ、例えば建物の石壁等は切り出した岩の模様だけでなく、凹凸によって落ちなくなった汚れなどすら感じるほどリアリティある質感で描かれていますし、カーテンの布らしい、少し固めなしわが付いている所も、ガラス越し特有のグラデーションがあるのも、実物をその場で鑑賞しているかのような臨場感と共に、矢作さんの観察力の高さが伺えます。これだけ描写による説明がしっかりしていると、私がここで説明などしなくても、この絵に描かれている状況を読み取ることが容易でしょう。

絵で説明するというのは、言葉を介さない分誰にでも伝えることができる反面、考え方の違いや価値観によって受け止め方が変わってきてしまう、少し高度なコミュニケーションだと思っています。だからこそ解釈の違いを楽しんだり、人と話すことで絵画に厚みが生まれることもあるわけです。今回の作品は、明るい雰囲気に誰もが捉えやすい要素を掴んでいるため、見ている側に伝わりやすく、解釈がしやすいため、絵画コミュニケーションの取りやすい作品だと感じました。

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画材の性質を活かして

2025-03-18 23:48:19 | 大人 油絵・アクリル


興津 油彩

サヤカです。すっかり春らしい天気になり、お散歩したくなりますね!今回は大人クラスの興津さんの作品をご紹介します。入会してからずっと鉛筆デッサンにこだわって勉強されていた興津さん、初めての油彩にチャレンジされました。

レッサーパンダのかわいらしい視線に惹かれますね。赤いもみじに茶色いレッサーパンダが隠れていて、ややもすれば全体が染まったような色味になり、ごちゃごちゃしてしまうので、色づくりに苦労されました。
色調が似ている題材の時は、油絵具の性質を活かし、絵具の厚み(マチエール)を変えていきます。例えば、もみじの奥の抜けた空や空間は、ほぼ下塗りの薄いおつゆ描きのまま残し、ゴワゴワした被毛は固い筆でがさっと厚めに絵具を置く、顔の白い毛を目立たせる為に生の白はそこ以外使わない、など工夫すると良いでしょう。興津さんはアドバイスに従い、一つ一つクリアしていかれました。様々な工夫のかいあって、似た色でまとまりもありながら、レッサーパンダが主役として目を惹くようになっています。

動物を描く時は、一目見た時の印象を大事にすることで、より生き生きと描くことができるようになります。レッサーパンダの場合、まるまるとした可愛らしい顔、ずんぐりむっくりな胴体などなど、目立つ特徴を大事にすることで、その動物らしさを表現しやすくなります。先入観を捨てて、まず動物の体を観察してみましょう!興津さんが描いたレッサーパンダも、多くの人が想像するほのぼのとした可愛らしさが表現されていますね!

興津さん、続けて油絵に挑戦されるそうです!着彩だけでなく、厚みや筆跡の違いによって印象を変えることができる油絵の表現の幅広さをぜひ楽しんでください!

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思い出に感情を乗せて

2025-03-11 23:42:03 | 大人 油絵・アクリル


穴田 油彩

サヤカです。街ゆく卒業式終わりの高校生を見て懐かしい気持ちになっています。今回は大人クラスの穴田さんの作品をご紹介します。

甥っ子ちゃんと猫を描かれました。叔母さんになった穴田さんの、愛情あふれる優しい眼差しが感じられる作品です。穏やかに眠っている赤ちゃんの可愛らしい横顔と、凛とした猫の表情が対照的で、まるで猫が赤ちゃんを守っているみたいですね。画面を囲むおもちゃがとてもカラフルですが、ナチュラルなトーンの赤ちゃんを主役にする為に、目立ち過ぎてもいけない、かといって子どものおもちゃなのに地味に抑えても合わない…と、とても苦労をされました。その甲斐あって色の明暗をうまく使い分け、影に全く重い色を使っていないのに、どのおもちゃも自然な陰影で描くことができました。物の形をよく観察して描いたことが伝わってきます。
また、赤ちゃんと猫の描き分けにも注目したいです。赤ちゃんは、滑らかな筆使いで乳児らしいぷにぷにした肌の柔らかな雰囲気を表現しています。猫に関しては、筆跡を残して、ふわふわなロングの毛並みを感じさせます。

画面から穴田さんの愛情をたっぷりと感じます!想い出の場面を絵を描くことで、写真に映しきれない暖かな感情を乗せることができますね。これからも穴田さんの作品を楽しみにしています。

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「アカデミック」を土台に

2025-03-08 19:26:14 | 大人 油絵・アクリル


木附 油彩

岩田です。今回は、木附さんの作品をご紹介します。

こちら、おうちの大切なワンちゃんを描きました。もうぱっと見、その愛情がストレートに伝わってくるというものです。
こちらは、ウエストハイランドホワイトテリアという真っ白で毛足が長い犬種ですが、そのフワッとした質感を丁寧に追って、見事に描いています。

といっても木附さんは、今回が油彩を描くのが初めて。
時間はそれなりにかかったものの、最初からここまで描き切るのは、大変なことだったと思います。本当に頑張りました。白い毛が幾重にも重なって奥行をなしていて、内側が陰になり、表層に近づくに従って光を受けて明るくなる。陰の色も微妙な差異を作りながら、暗くなり過ぎず、実に丁度良い色を置いたものだと感心してしまいます。

ここまで描く力があれば、これからは、主役と背景の関係に主眼を置いてみると良いでしょう。
芝生を見ると、こちらも緻密に描写がなされています。やもすると主役のワンちゃんを脇役が食ってしまうほど、丁寧に描いてるのですが、彩度という面でも、写真を参考にしつつ、でもその通りではなく、脇役が立ちすぎてしまわないように配慮できると更に絵が見やすくなっていきます。とは言え、日本画家の田中一村の絵を見た時に、縦長の画面の一番下にある砂浜を画面中央にある主役の棕櫚の葉より、びっしり緻密に描いていたのには、驚きました!

そんな感じで、確かに絵には決まったルールなんてものは、無いといって良いのですが、前述したような所謂アカデミックな描き方が出来れば、それが土台となり、様々に応用が利くと思って頂くと気楽ですね。

 

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動物の声

2025-03-04 22:38:16 | 大人 油絵・アクリル


小川 油彩

サヤカです!暖かいと思ったら雪が降ったり…不安定な天気に振り回されてしまいますね。今回は、小川さんの作品をご紹介します。

動物を描き続けていらっしゃいますが、今回左の絵のテーマは重く、死んだ母親ゾウを赤ちゃんゾウが起こそうと?している場面。鼻の位置が下半身にあるので、おっぱいを求めているのかもしれません。手前右のゾウは兄弟でしょうか?奥の赤ちゃんゾウより体が大きいからお兄ちゃんなのかな?赤ちゃんゾウよりもお母さんの死を理解しているから、暗く神妙な表情なのかな?と思いを巡らせました。

群れで暮らすゾウは、家族や仲間に対する愛情が強いと聞きます。
その心情を表現する為に、劇場のライティングのように明るい色味を効果的に使いました。光が当たり、彩度の高い色で着彩された赤ちゃんゾウからは、死というテーマとは程遠い鮮やかさを感じます。中心の赤ちゃんゾウをあえて明るくすることで、コントラストが際立ち、より影が持つ意味が深くなっています。

右は、花の蜜を食料にするコウモリ。体が花に埋まってしまって、プリン風呂?みたいな幸せな状況でしょうか?全身が花粉だらけになっていますね。先程の絵と打って変わって動物のコミカルな一面が描かれています。表情もどこか必死さも感じ、可愛らしいですね。黄色、赤色、緑色と強い色が主に使われていますが、周りの明度と彩度を落とし、まとまりのある画面になっています。ハイライトをうまく使い、コウモリと赤い花が作品の主人公として目を惹きます。

今回小川さんが描かれたのは、ゾウに関しては死という触れる機会が少ない場面、コウモリは珍しい花蜜食の食事中の場面でしたが、2作品とも、思わず動物の声をアフレコしたくなるような臨場感ある作品でした!犬や猫といった身近な動物には多くの人が感情移入しやすいと思いますが、見た人にとって知らない動物であっても、気持ちを想像できるのは、小川さんが動物の心情を考え、どのように表現するか考え抜いた結果だと思います。これからも、小川さんの作品を楽しみにしています!

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青色の炎

2025-02-25 22:14:42 | 大人 油絵・アクリル


奥 油彩

サヤカです。始まったばかりだと思っていた2月が早くも終わろうとしています…。今回は大人クラスの奥さんの作品をご紹介します。早描きと定評のある奥さん、過去のブログでも複数の作品を一気にご紹介させていただいていますが、今回は4つの作品たちをご紹介します。

どの作品も青が印象的ですね。青を見ると、沈静、冷たさ…といった落ち着いたイメージが思い浮かぶと思います。しかし、奥さんの作品からは冷静さよりも、どこか内面からメラメラと燃え上がる勢いを感じます。炎の色が、温度が低い時は赤色に、より高い時は青色に見えるのと似た感覚を覚えます。赤色の方が情熱や力強さを感じさせる色なのに、炎になると冷たいイメージを持った青色の方が何倍も熱いなんて何だか不思議ですよね。奥さんは、そのような青色の二面性を作品に美しく投影しています。

過去の作品でも青を使った作品が印象的でしたが、奥さんは青色を意図的に使われているのか、青色の魅力に惹かれて無意識に使われているのか、どちらなのだろうと気になりました!実は青色は、好きな色調査を行った10カ国すべてでいちばんに選ばれた色だそうです。色に関する記事の中には、人々が青色を好むのは、空や海などの身近に感じられる青色は手に取ると「青」ではなかったり、そもそも手に取れないものであったり、触れられない色だから惹かれるのではないかと考察しているものもありました。

色や音楽、人の好みなどなど、根本的にどうしてそれに惹かれるのか言葉で説明できないけど、自分自身を確立させているものって多くありますよね。その内面の曖昧さを表現できるのが創作活動の醍醐味だと感じています。奥さんが青色を選ぶ理由をいつか直接お話しできたらとても嬉しいです!これからも奥さんの作品を楽しみにしています!

参考:
【色彩心理】青の心理【カラーセラピー/ブルー】
https://icpa-colors.com/colory/color-therapy-blue/

国・地域によって異なる”色”の嗜好性〜多言語サイトをつくるときの一工夫〜
https://www.infocubic.co.jp/blog/archives/2724/

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大胆なタッチを意識して

2025-02-21 20:42:40 | 大人 油絵・アクリル


原 油彩

大竹です。今日ご紹介させて頂くのは、原さんの油彩作品です。今回はいつもの緻密な作風を封印し、大胆な荒っぽい筆遣いで制作されています。
ゾウの群れの作品、こちらはアフリカに旅行された方より頂いた写真だそうです。筆跡を残すタッチで煌めく水面が描かれており、モザイクタイルの様な美しさがあります。ゾウのどっしりとした重さも、体に色々な色を乗せる事で表現されていますね。野生動物たちが生き抜いていく自然界は厳しいものですが、こちらの作品ではそんな中での穏やかなひと時をを感じさせてくれます。かといって、ゾウたちに弱々しい印象は無く、美しい景色の中で逞しく生きている様子が伺えます。今回の課題であった思い切りのよい筆使いが活かされていますね!
細かく描く事を抑え、大まかなタッチを意識して描くのは苦労されたかと思いますが、「こんな表現もあるんだ!」「そんなに描かなくてもいいんだ!」といった色々な発見があったかと思います。

こちらはペインティングナイフを多用されました。ゴツゴツと岩が転がる荒れた土地で放牧される、ギリシャ・スキロス島(写真は小原先生の旅行時のもの)の羊たち。その乾いた道をナイフで表現した作品です。硬い道路はふわふわとした質感の羊との対比にもなっていますね。また、羊たちは柔らかな暖色でまとめられているので、生物を触った時の暖かさをも感じさせます。真ん中下でこっちを見つめている羊ちゃんの愛らしさといったら、思わず笑顔になってしまいますね。
道の奥の風景は思い切ってぼかして描かれていますね。それにより、手前の羊達により視線が向かう様になっているのでしょう。こうした思い切りの良さは、大胆であればあるほど作品全体に大きく影響を及ぼしてくれます。ちょっと勇気が要りますが、大雑把なタッチに思えても、離れて見てみると案外いい感じだったり…是非今後の制作にも活かしていって頂けたらと思います。

そういえば、どちらも動物の群れが描かれているのは意図されていたものなのでしょうか?群れシリーズで制作されても面白そうですね!

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大自然を生きる仕草

2025-02-20 20:38:35 | 大人 油絵・アクリル


松野 油彩

こんにちは、マユカです!今回は松野さんの作品をご紹介していきたいと思います

ゴールデンウィークに自由ヶ丘で個展を計画中の松野さん。今まで描き溜めた作品もたくさんありますし、なにしろ早描きの方なのでどんどん作品が完成され、個展も心配いらずです。いきものが大好きな方で、特に馬をたくさん描かれています。

そのどれもが、動物のしぐさや表情を大切にした描き方をされており、生き物が持つ特有の「らしさ」がたくさん詰まっています。馬の優しく賢い表情や、俊敏でしなやかな体格に走っているときの軽快な様子、羽を目一杯広げて空気抵抗を受け、伸び伸びと飛ぶ姿や、湖畔で毛づくろいをしながら仲良くくつろぐ姿...ただ普通に筆をおくだけではこうは描けません。動物の姿をじっくりを観察した上で、まずは全体的な印象を画面に乗せ、そこから少しずつ筆を小さくしていき、最後に細かく描きこむ…と、デッサンと同じ手法で描き上げていくことでイメージが崩れにくく、全体的に暖かな印象を感じるような仕上がりになっています。松野さんは色選びがとても美しく、背景とマッチした光や影の色によりメインを浮かせることなく目立たせることが出来ています。特に湖畔なんて、モネの描く池のような透明感を想起させますし、自然の包み込むような優しさを画面から感じますね。

この豊かな色彩の重なり方は、小さな画面で見るよりも実際に見た方がより伝わるかと思います。キャンバスの上に自然の空気を感じるような作品、私もアトリエで見ることが出来たのは描き途中の数枚と、時々のお手伝いの際のみなので、個展が開かれた際には是非行きたいです。

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油彩もマスター!?

2025-02-19 23:48:12 | 大人 油絵・アクリル


秦野 油彩

ナツメです。今回は水曜夜間クラスの秦野さんの作品を3つご紹介します!以前はキャンバスボード(表面に布目のような凹凸加工を施したボード)にアクリル絵の具で描かれていた秦野さんですが、近頃は油彩に挑戦されています。

まずは広々としたのどかな空気感が心地よい一枚。川面にはわずかに波が立ち、流れの動きを感じさせます。遠くには太陽に照らされた家々が並び、自然の中に人の暮らしが溶け込んでいる様子が伺えます。
特徴的なのは、色彩の使い分け。一度全体を青で塗り、その上に空や水面の色を重ねることで、微妙なニュアンスが生まれています。空には紫寄り、川にはわずかに緑寄りのトーンを採用することで、画面の統一感の中にも変化が感じられます。また、遠景をぼんやりとさせつつ、手前の草はコントラストを強くすることで、手前から奥への空間の広がりが巧みに表現されています。青の影の扱いも見事で、遠くにいくにつれて明暗差が穏やかになり、遠近感がより一層引き立っています。

二枚目の左の作品は、ご自身で撮影された写真をもとに、緑豊かな街並みとおしゃれなアーチが印象的な馬車道を描かれました。こちらも上の作品と同様青をベースに全体的に寒色寄りになっており、整然とした街の雰囲気が漂います。
どの程度まで細部を描き込むか悩まれていましたが、ラフなタッチを残すことで、画面全体のバランスが保たれています。また、手前の点字ブロックや横断歩道をあえてぼかすことで、視線が自然と車のある奥の空間へと向かうように工夫されています。
影の中にさりげなく入れられた鮮やかな青や赤紫のアクセントも効果的で、静かな画面の中に心地よい緊張感をもたらしています。

三枚目、右の作品はデフォルメの効いたモチーフが楽しい静物画。黒い輪郭線が画面を引き締め、遊び心が感じられるポップな一枚です。
形の省略と強調が絶妙なバランスで組み合わされており、りんごやポット、瓶のフォルムがシンプルながらも存在感を放っています。特にガラス瓶の厚みや光の反射の表現が巧みで、デフォルメされた形の中にもリアルな質感が生きています。
また、背景の青も単なる無機質な空間ではなく、ガサガサとした筆のタッチを残すことで画面全体に活気を与えています。デザイン的な要素と絵画的な表現の融合が見事です。

三つとも色の使い方や構図、質感の表現に工夫が凝らされており、それぞれ異なる魅力を持っています。油彩ならではの絵の具の深みが活かされており、秦野さんの技量の光る作品となりました。

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彫る=掘る

2025-02-15 22:34:14 | 大人 油絵・アクリル


松尾 油彩/和紙/木製パネル

岩田です。本日は、松尾さんの作品をご紹介します。
いつも様々な手法で描くことを楽しんでいる松尾さんですが、今回の作品も、野心的な試みが新鮮に映ります。支持体に色々なアイデアを行う上ではキャンバスではなく、木のパネルを支持体に使うことは欠かせません。

今回は、モノトーンを使った3作ですが、それぞれにまた、モチーフや手法を変えているのです。右手は、白と黒のみで描いた作品。合掌のポーズの回りが渦を巻き、念のようなものが上昇しているイメージでしょうか。

中央と左手は、猫をメインのモチーフの据えた作品。猫の柄を菱形や矩形の色面で塗り分け、グラフィック的なイメージを与えています。白地の上の有彩色の表現は、先ず金属のメッシュを画面に貼り付け、その上から絵の具を付けた筆で色を置くことで、ランダム且つ偶然に現れる絵の具の風合いを活かしています。

特に左手の作品は、絵の具を塗り重ねて何層か作った上で、刀で彫っていきながら下の層を見せていくというテクニックを使い、オリジナルの絵画表現を展開しています。
一番上の層、つまり白地に描かれた何気ない横向きの猫は、何となく日常を感じさせてくれる存在でありながら、前述した柄は、どこかデジタライズされたような印象。ところが刀で彫り進めていくうちに、古代のギリシャ陶器とおぼしき赤茶色の肌と黒絵が表れてきたのです。そして、そこにも神話に出てくるような人物と共に猫が描かれています。

松尾さんならではの時代や空間をまたぎ、それらを対比させたような何とも面白い表現であると共に、彫っていくという作業が、土の中から古いものを発掘していくような作業を起草させてくれるのでした。

追伸 約2年前に動画を撮っておきながら、少し間を空けてからアップしようとそのままになっていた松尾さんの作品を、今!公開します!(松尾さん遅くなってごめんなさい。)久し振りに私の語りをYouTubeでご視聴くだされば嬉しいです。こちら

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実は難しい引き立て方

2025-02-13 23:28:33 | 大人 油絵・アクリル


加瀬 油彩

マユカです!今回は加瀬さんの作品をご紹介いたします!

動物が大好きな加瀬さん。飾りを付けたツリーとふわふわでかわいらしいワンちゃんを描かれました。被っているのは手編みのニットでしょうか。クリスマスの寒い時期ですから、暖かそうな格好のワンちゃんに心がほっこりとします。色の使い方が描きこみ量に合わせてあり、暖色+手前+しっかり描きこんであることで「この子を見せたかったんだな」と誰が見ても理解できますし、背景のクリスマスツリーに少しだけ、それも抽象的に同じ色の装飾を乗せ、まとまりのある印象を作りながら脇役として立たせることができているため、メインを邪魔しない程度にきらびやかで、それでいながら、目立ち過ぎず…というように、絶妙なラインで調整された描き方をされています。全体的にどこか絵本のようで、優しい印象のある仕上がりがとても素敵です。

描かれている途中、ワンちゃんはどんどん良くなっていく中、実は背景のクリスマスツリーの処理がなかなか捗りませんでした。背景に対して「処理」と書きましたが、加瀬さんの様に主役を特に引き立たせたい場合、背景は描き過ぎてはいけません。状況や季節を説明するための物であっても、制作するのではなく処理する感覚で十分なのです。長い時間をかけて制作していると、どうしても「自分はこれが何であるかわかっているけれど、他の人が見たときに分かってくれるだろうか」なんてことを考えてしまい、分かりやすいように描きこみたくなってしまうものですが、意外と抽象的な描き方をしても何があるのかはわかりますし、雰囲気や意図は伝わってくるものなのです。

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光が照らす神域

2025-02-12 23:31:28 | 大人 油絵・アクリル


大塚 油彩

最近の趣味は蕎麦打ちです、ナツメです。月曜大人クラスより大塚さんの油彩をご紹介します!

水の中に立つ鳥居の存在感と、水の中に入り祈る巫女。実際にある水の鳥居写真をもとに、大塚さんのオリジナルで巫女を加えたことで、より美しく、神秘的な光景になりました。
この池のもつ深遠さを表現するために水面の反射を控え、画面下部に水の広がりだけを見せることで、まるで底の見えない神聖な領域のような雰囲気に。さらにローポジション・ローアングルで構えることで、頭上に広がる木々の迫力を強調しつつ、鳥居の荘厳さも際立たせています。
また色の使い方も絶妙で、広がる木々の深い緑、静かな水の重い青が大部分を占める中、巫女の装束の赤をアクセントに、引き立て合う補色のコントラストは、シンプルながらも目を引く色彩構成です。
ライティングも見どころのひとつ。左上の明るい光に対して、下の池には暗い青が使われていて、そのグラデーションの中で、鳥居と巫女を際立たせているのが上手いポイント。視線が自然と主役に集まるようになっています。

鳥居は、神域と俗世を分ける結界であり、神聖な領域への入口。その向こうから光が差し込むことで、神様の存在を感じさせる雰囲気が出ています。そして、巫女は神託を受けて伝える役目を持つ存在。まるで、彼女が神のお告げを受け取っているような、許しを請い人々の救済を求めているような、そんな物語を感じさせる一枚です。
水面の映り込み、色のバランス、光と影の演出、そしてストーリー性のある構図。そのすべてが組み合わさり、ただの視覚芸術ではなく、見る人それぞれに考えさせる思想や文学にまで昇華されました。幻想的な作品を前に、皆さんはどのような祈りを捧げ、どんな詩を詠いますか?

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光の感じ方を描く

2025-02-11 21:54:12 | 大人 油絵・アクリル


香月 油彩

サヤカです。2月になり、本格的な寒さになってきましたね…!本日は、大人クラスの香月さんの作品をご紹介します。

旅先で見た景色やご家族の姿を描かれることが多い香月さんですが、今回はご自身で撮影された風景写真を元に制作されました。こちらの2枚はF20号(727×606mm)という少々大き目のキャンバスですが、早描きの方なので、あっという間に完成させてしまわれました。(ご自宅に持ち帰って描くことももちろんあります。)前回のブログで岩田先生がアップしたのが11月25日ですから、お休みの多かった年末年始の2ヶ月で2枚完成されたことに驚きを覚えます。

左の作品は、石垣に這う根っこと奥から差し込む光の力強さが印象的な作品です。コントラストがしっかり描かれていて、光の強さが表現されています。描き込みも素晴らしく、画面全体のバランスが取れているので、画面右側のより手前に強く伸びている根っこが勢いづいています。また、階段の端に積もった木の葉が、まるで光の道筋のようで、階段を登った先にある景色への想像力が膨らみますね。

右の作品は、先ほどの力強い光とはうって変わって、夜の静けさの中の光を描いています。その他の背景の彩度が下げられているため、街の煌めきと月の静かな灯りに目を引くことができています。水平線を画面のどの高さに置くかによって、印象がかなり変わります。低い位置に置くと、開放感ある印象になりますが、香月さんの作品は真ん中に水平線を置いていて、まるでこの景色を、自分の目で見ているような実感が沸きます。

どちらの作品も光が印象的ですが、香月さんがこの景色を見た時の心の揺れが光の表現にも反映されているように感じます。生き生きとした表現力で、見た人を引き込む作品ですね!次回の香月さんの作品も楽しみにしています!

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良い絵だなぁ

2025-02-01 19:14:31 | 大人 油絵・アクリル


服部 油彩

岩田です。今回は、服部さんの作品をご紹介します。

こちらは、外国にいらした時の風景を描いたもの。夕暮れ時、日が沈みかかった空。ほの暗闇を背景に浮かび上がるトラムの電線が空を切り分けるような面白い景色を作り上げています。

下塗りをし、地面は先ずはナイフで絵の具を盛り、トラムの線路や街中のあれこれを立体的に仕立て、色を塗り重ねました。対して空は、筆を使い何層にも絵の具を重ね、雲のこんもりとした雰囲気を表現。プルシアンブルーやネイビーブルーを中心に、手前から徐々に奥へと繊細なグラデーションを表現しました。

雲と夕焼け、それらが夜の暗さに段々と侵食されていく、ほんの僅かなひと時。オレンジ、ピンク、黄色といった暖かみのある色と白、そして寒色が渾然一体となったその美しさを作者は、旅先のその場にドリップしているような感覚でキャンバスに筆を運んでいたのかもしれません。

夕暮れを眺めながら、ただ一言「今日も豊かな一日であった」、見ていると、そんな言葉が胸の中に去来するかのような1枚。

見れば見るほど、あぁ良い絵だなぁと感じさせる作品であります。

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柔らかな寂しさ

2025-01-31 23:40:13 | 大人 油絵・アクリル


岡崎 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、岡崎さんの油彩作品です。前回ご紹介した絵はこちらですが、パズルの様に隙間なく建てられたビルの街の風景から一転、森の拓けたキャンプ場を描いています。3つのテントに群がる3頭の鹿と、側にがワゴン車が停まっています。
前作に比べると、都会の息苦しくも感じられるビルの喧騒から離れ、穏やかな時間が流れている様に思います。しかし、ビルや崖の代わりに、周囲が森で壁のように囲まれている光景は、作者の根底にある心情が反映されているように感じました。柔らかな寂しさや閉塞感のある空間で、消えかけの小さな火や大人しい鹿達が描かれているのは、ひと時心の安寧を感じさせます。
ワゴン車やテント、焚き火といった人の存在を感じさせるモチーフが多く配置されていながら、そこに人は描かれておらず、野生の鹿だけが集まっているのも興味深いですね。鹿たちは、消えかかる焚火からのぼるほのかな煙を見つめているのでしょうか?それとも、新月を見上げているのでしょうか?

私は大学で絵画による心理テスト(バウムテストなど有名ですね)の授業をほんのさわりだけ受講したのですが、それによると左は過去、真ん中は現在、右は未来を表すそうです。右側で見切れて配置されたワゴン車は、未来に向けて今ここから走り出したい!といった前のめりの姿勢にも思えます。左側、特に左上は思想や哲学が表れるそうで、星ひとつない夜空の三日月は、満ち足りない何か、もしくは消耗を連想させます。(岡崎さんが意図したものとは全く違うものかもしれませんが、私はこちらの作品でこのように鑑賞を楽しませて貰いました!)

厚塗りにならないように、おつゆ描きを重ねている為、一見テンペラ画のようにも見えます。その厚みを持たせない質感によって森閑とした空気を作り出しているのでしょう。三日月だけが浮かぶ吸い込まれそうな夜空の色合いも、色を少しずつ重ねて深みを作っていったのでしょう。シンプルな描写ほど、魅力的に見せる為に気を遣う必要があります。

前作は「乾杯」というタイトル(タイトルの由来も面白いです)でしたが、今作はどんなタイトルを付けられたのでしょうか?とっても気になります。

常に自分の世界観を深め、追及していく制作は、産出の悩みや苦しさも伴う事でしょう。イメージした通りに手を動かす事は難しく、きっと岡崎さんも苦労されたかと思います。しかし、自分のイメージを出力したいという欲求は、研究や上達の為の原動力にもなり得る燃料です。是非ご自身の欲求を燃料に、どんどん手を動かしていって欲しいと思います。

 

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