モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

様々な要素を使って

2022-12-03 14:04:15 | 大人 油絵・アクリル


松尾 油彩・金継ぎ

岩田です。本日は、松尾さんの作品をご紹介します。
今まで油絵を一貫して描き続けていますが、油絵具と異素材、例えば木や他の様々な塗料などをミックスさせて色んな表現研究をしながら絵を描いています。

今回ユーチューブでご紹介している絵は2枚。こちらのブログには載せていない作品ですが、ユーチューブで最初にご紹介してある黒い方の小品は一見すると静物画。しかしよく見ると3つ程異質なものが画面にあるのが分かります。
これは、松尾さんが木を加工した上から、カシューナッツの樹液から取れるカシュ―という黒い塗料を塗って、金箔を模様の部分に詰めたもので、何とも不思議なこの物体が絵の中にはめ込まれています。
それら群雲や千鳥といった切り抜いた模様や漆を起草させるカシュ―という塗料と西洋から生まれた油絵具を対比するという意図の元、松尾さんが試行錯誤を重ね、こうした表現に辿り着いているのです。

とはいえ、静物画だけを見ても魅力があり、例えばテーブルに置かれた白い物体も、布なのかそうでないのか不思議さを感じさせてくれますね。

これからも、こうした松尾さん独自の表現を研究してもらいたいです。

変わってもう一枚の作品、上記の絵画は金継ぎをテーマに描いた作品。
一番上は椅子に座っている人形、右下には木製のドアに取り付けられたドアノブがトリミングされており、左下は絵の具の表情を活かしたゴッホのタッチを思わせる風景画、という異なる3つの要素を金継ぎしているというコンセプトで描いています。

途中経過を見ると、最初から出来上がりのタッチで描き始めていたり、人形の顔やドアの下に落ち着いた補色など塗っているのが垣間見られます。正直、途中はこういう絵になるとは想像できませんでした。
絵を更に近くで見てみると、ドア部分にはニードルのようなもので引っ掻いた跡があったり、主役の人形の背後の椅子や壺は背景にすっと溶け込ませるようにぼかしてある。そうした仕上げ方にも松尾さんの拘りを見ることができるのです。

現在、描いている作品も質感の違いや3つの要素をテーマにしているようです。色々な構成要素で作られる作品をこれからも楽しみです。

ユーチューブでは、画面を近づけたりしながら詳しく解説しています。是非ご覧ください!
YouTubeはこちら

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好きなものを描く喜び

2022-12-02 21:07:06 | 大人 油絵・アクリル


松野 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、松野さんの油彩作品です。
荒野を駆け抜ける野生馬。松野さんは毎年、馬のカレンダーを買っている程の大の馬好きな方だそうで、こちらもお気に入りの写真の中から選んで描かれました。

上半分を大きく空けた事で、3頭の馬が駆け抜ける荒野の広さをキャンバス外にも感じることが出来ます。地面は黄土色〜茶色でまとめられた中には、ほんのりと青みや赤みも含まれており、単調にならないよう工夫されています。油彩は乾燥に時間がかかるので、何週間何ヶ月とかけて色を重ねこれだけの深みを出していかれたのだと思います。
また、馬以外のものは一切排除されているので、観た人に馬の姿や動きが強く印象に残りますね。逆光で浮き上がる尾や鬣はまるで輝いているかのような美しさです。体はほとんど陰になっていながらも、3頭それぞれが違う色である事が分かりますね。暗い影の中での色作りは難しいものですが、よく観察して色が作られています。
足の筋肉の流れも細かく追って描かれており、駆け抜ける馬たちの足音や息遣いも伝わってくるようです。やはり馬は走っている時の脚のシルエットが特に美しいですね。

乙嫁語り(19世紀半ばの中東アジアを舞台にした漫画)の作者である森薫先生は、同じく動物(特に馬)や民族衣装が大好きで、それらを描いている時は「私、生きてる…!」と感じられるそうです。きっと、制作中の松野さんも同じ気持ちだったのでしょう。松野さんの作品を見ていると、大好きなものがあり、それを表現できる力と環境があるという喜びが改めて感じられるようです。今年も1年間で10枚近い動物の絵を描かれたそうですが、ご自身でこの絵が一番気に入っているとのことで嬉しく思います。

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これ、命のある人間だなぁ

2022-11-26 23:30:19 | 大人 油絵・アクリル


渥美 油彩

岩田です。今回は、渥美さんの油彩をご紹介します。

作者の甥っ子が焚火にあたっている様子を描いたものですが、メチャクチャ良い絵だと思います。

特に良いと思うのが子供たちの表情。人間の顔って凄く難しいですね。
というのもそれを自然に描くこと、構造的なことなど諸々あるんですが、この絵は、其々の人柄、子供たちが思っていることが伝わってきそうな位、リアリティがあります。

他にも、火にあたっている顔や手の赤みを帯びた色、メチャ良い色使ってるなーって感じ。
子供に視点を置くために、色々映り込んでいた背景もとことん端折っているし、焚火は油絵の具の質感をうまい具合に使って、他と表現を変えている。そうした表現のバリエーションが見ているこちらを飽きさないんですね。

明治から昭和初期の頃に洋画と呼ばれていた頃の人物画を起草させるような素敵な雰囲気があります。
あらためて見ても、絵の具を越えて、命のある人間だなぁって感じます。とにかく素晴らしい。僕は渥美さんが描く人物好きだな。

また見せてください!

ユーチューブで画面を近づけたりしながら、詳しく解説しています。
YouTubeはこちら

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嵐の前の静けさ

2022-11-25 21:53:10 | 大人 油絵・アクリル


小川 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは小川さんの油彩画です。嵐の前触れのような荒れた海と怪しい空模様は、初めての油彩ではずいぶん難しいテーマだったかと思います。

右奥から左手前にかけて段々と暗くなっていく空模様と、波打つ水面が不穏な空気を作っています。エメラルドグリーンが透ける様な水面が美しいですね。油彩は同じ色を単調に塗るよりも、近似色を筆跡を残す様にのせていく事で色の深みを出したり質感を表現する事が可能です。観る者の不安を掻き立てる様な荒れた水面も、これらの仕事によって作られているのでしょう。手前は重い色を乗せた反面、奥にはしぶきによって白くなった波が明るい色で作られています。この明暗のメリハリによって、画面全体が引き締まりました。作品に物足りなさが感じられる場合は、明暗差によるメリハリがない鈍い画面になっている場合がありますので、困った際には明暗差を意識してみると良いでしょう。

陸地にずらりと並ぶごつごつとした岩肌の質感も、絵の具をたっぷりとのせ凹凸によって表現しています。グレーの中にも黄色や青を混ぜる事で無機質になりすぎない様に工夫が見られます。手間の波や岩肌が立体的に作られている反面、奥の森はやや平面的に描かれていますが、その中には様々な色が含まれており、沢山の色の響き合いが魅力です。

空の方は海と同じ青色でも、より深い青色によって重い雰囲気が作られています。上からのしかかれる様な湿った空気。目に見えないものを表現するのは難しいものですが、小川さんのこの作品は左から右へと重くなっていくグラデーションによってそれらが作られているだと思います。

暗い雰囲気の中でも、絵の具の美しい色が覗く魅力的な1枚となりました。次の作品も油彩を描かれていますが、どの様な仕上がりになるのか今から楽しみです。

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塩系絵画

2022-11-21 23:33:19 | 大人 油絵・アクリル


古田 油彩(未完成)

オバラです。上記2枚、未完成の後ろ髪を引かれながら、引越しで退会された古田さんの油彩です。仕上がりを拝見できなかったのは非常に残念ではありますが、途中とは言え彼のこだわりが目を惹きますのでご紹介させて頂きます。
以前の作品をご紹介の際は、岩田先生より「グレートーンの落ち着いた色彩と素朴な筆遣いで静かな作品世界を描く」と書かれていましたが、ニュートラルな色味を広い面積に使用すると、全体的にぼやけてしまいがちです。そうならない為に、下地はこのようなビビットな赤系の色味を置かれていたのでした。つまらなくなりがちな灰色を、ここまで魅力的に奥深く見せられる技術は素晴らしいですね。

古田さんの作品は、塩系とでも言いましょうか?あっさりとした印象で、ごちゃごちゃ感は一切ありません。どちらの絵も鍵となるのは青いガラス製品ですが、雰囲気を左右する重要なアイテムでありながら、目立ち過ぎることはなく馴染んでいます。そのように見せるテクニックは、主役に寄り添う他のモチーフに、ナチュラルな薄いトーンのものを集め、わざと無作為に配置したことにあるでしょう。しかし無造作に見えるよう、メモ用紙の貼り方一つとっても、実に練られた構図なのです。

シンプルさにおしゃれな遊び心を取り入れ、洗練された印象は男性的。スマートなクール系絵画を目指す方からは熱い支持を集めそうです。
このような絵を描きたい場合、生活感のない無機質なモチーフを選ぶと雰囲気をアップさせてくれます。頑張り過ぎない落ち着いた空間を演出してください。

古田さん、この絵が完成したら、ぜひ写真を送ってくださいね!

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同じ気持ちになれる景色

2022-11-15 22:44:06 | 大人 油絵・アクリル


馬込 油彩

朝晩の冷え込みが強くなりましたが、皆さん体調にお変わりはないでしょうか。ホノカです。
今回は大人クラスの馬込さんの油絵をご紹介します。つい先日11月5日のブログでご紹介し、岩田先生のユーチューブの記憶が新しい方も多いはず。乾くのに時間が掛かる油絵がそんなに早く描けるはずがないのは皆さん共通の認識でしょう。馬込さんはご自宅で下地作りをし、仕上げをミオスでやられることも多いので、コンスタントに量産できるのです。

作品を見てまず感じたのは、それまでは見えなかった景色が一気に広がったような晴れやかさ、さらに空が上に向かうにつれ白く抜けていく感じが、見ていてとても気持ちの良い部分です。手前にいる人物はこの作品の主人公なのでしょうか。険しい道を歩くような格好や、軽い舗装しかなされていない道は巡礼やお遍路と言った言葉を彷彿とさせます。
この写真では分かり辛いのですが、画面下の方のマチエールには、色々な材質の物がコラージュとして埋め込まれています。これらはなんと、ガレージを掃除していた時のゴミだそうで、よく見ると小さなナットやボルト、ちぎれたほうきの先などが見て取れます。ひと口にゴミと言っても、それらは過去に意味を持って必要とされたものです。その過去の物たちが主人公の立っている地盤として使われていることで、これまで積み上げてきた道のりのように見えてきます。そんな積み重ねの上に立ち、見つめる先には次の目的地があり、そこに向かう出発の新鮮な気持ちは未来を見ていると言えるのではないでしょうか。陳腐な言い換えになってしまうかもしれませんが、過去があって未来がある。そんな主人公の歩みの過程を感じさせてくれます。

街への道はまだ半ばであり、小さく見える街は遠い様に感じます。ですが主人公は目的地まであと少しと思っているかもしれません。手前に広がる草木は鮮やかであり、希望の気持ちが溢れている様に感じます。また空にも注目すると、明るくさっぱりとした空ですが、快晴というよりは少し曇った様にグレーがかっています。曇りと聞くと暗い気分も連想させますが、これまで歩んできた疲れで目が霞んでいる故の景色にも見えてきませんか?この景色は疲れた中でもラストスパートをかけ、目的地を目指す主人公の志とも言えるかもしれません。

作品を見ていると、自身が主人公としてこれまでの道のりを辿ってきたような感慨深さや、ゴールを目前に一息を入れ出発する。思わずそんな体験ができてしまいました。また広がる風景は、登山をした時に山頂から見る景色の広大さや疲れが吹き飛んでしまう程の感動を思い出しました。一枚の作品だけでこれだけの体験を魅せてくださりありがとうございました!

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自分の意思をもっと投影しよう!

2022-11-12 17:22:56 | 大人 油絵・アクリル


立野 油彩

岩田です。今回は立野さんの油彩をご紹介します。
ベースがほぼ黒といった背景にライオンが一匹佇んでいるという風景を描いた作品。

この絵の元になっている写真を見ると、まだ鬣が生えそろっていない若いライオンが群れを出され、さてこれからどう生きていこうかといった感じに映ります。

絵を近くで見てみると、黒っぽい背景の中に何色も使って草原の草が描かれているのが分かります。色使いも良く考えられていて、綺麗だなと思います。
主役のライオンの体に使っている色もかなり複雑。例えばプルシアンブルーのような青色のベースに透明色のパーマネントイエローをグレーズしてみたり、濁った色を上から乗せてみたり、背景とは異なった色の遊びをしています。

全体を見た時に前後の空間は考えられているけれど、ライオンのいる位置がここで良いのかとか、背景の左右の明度の変化など、もっと自分の意図があって良いのです。そうすることで更に深みや面白味が出てくるでしょう。

例えば、以前描いた朽ちかけた家の中に気が茂っている様な、ちょっと不思議な絵があるのだけど、今回の作品と比べると作者の意図がもっと感じられるんです。
こうしたら更に面白くなるかな?といった意志を画面に投影していくと、もっともっと良くなると思っています!

作品を画面に近づけて詳しく解説しています!是非こちらもご覧になって下さい。
立野さんのYouTubeはこちら

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注目の1作

2022-11-11 10:52:15 | 大人 油絵・アクリル


箕輪 油彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは箕輪さんの油彩作品です。今までご自宅で油絵を描かれたこともあったそうですが、アトリエで本格的に油彩を習って描かれはのはこれが1枚目です。
アトリエの壁に飾ってある間「どうやって描いているのか?」と、油彩を経験されている殆どの方が注目されていましたので、今回は描き方や技法について解説させて頂きたいと思います。少し長くなってしまいましたが、油彩を始めたての方や、制作でお悩みの方の手助けとなれば幸いです。

まず色についてですが、リンゴの下に敷かれている白い布に注目してみましょう。”白い”といってもチューブから出したままの白が使われている場所は殆どありません。見てみますと、グレーがかった水色、黄土色、緑、青といった白とはかけ離れた色の方が多く使われています。それでも、それらを全体で見てみるとちゃんと白い布だと感じる事ができますね。白い布に限らず、油彩では赤いものは赤、と単純に塗るのではなく、様々な色味を含ませながら塗る事で深みを出す事が出来ます。(小学生の油絵紹介動画でも、色を少しずつ変えながら描くやり方が紹介されていましたね)では、この布地に使われている色にはどの様な理由があるのでしょうか。
まずグレーや水色ですが、グレーは白い布の影を思い浮かべた際、最も想像される色かと思います。しかし、白とグレーの無彩色(鮮やかさのない色、モノクロやグレー)だけでは味気なく薄っぺらい印象となってしまう為、影の部分に青みを加算しています。影に青色を使用する理由は様々ですが、光源が太陽光の場合は空の青の光が反射して青くなる・影の部分は温度が低いので、冷たいイメージを持たせる為などがあります。(コチラのツイート分かりやすいです)
次に黄土色や緑・赤ですが、これらは同じ空間にある物の色を組み込んでいます。黄土色は棚の木、緑や赤はリンゴの色ですね。おない空間に置いてあるものに関連した色を入れる事で、画面の中で色が馴染みやすくなります。もちろん、同じ色をそのまま使うのではなく、彩度を落としたりオイルで薄く溶いて塗ったりして馴染ませています。

また、筆の跡をあえて残す様に塗っていく事で、デッサンの様に物の形を説明することも可能です。こちらのリンゴも、形に沿って筆が走っているのが分かりますね。下の布地や棚板も、闇雲に筆を走らせるのではなく、デッサンで色を塗っていくとしたらどの様に鉛筆を走らせるかを考え、それと同じ様に筆を動かしていくと良いでしょう。特に布地は、シワや弛みによって色々な方向から筆を走らせる必要がありますので、箕輪さんの作品でもシワの形を筆跡で説明する様に描かれています。

メインのリンゴの周りがうっすらと緑がかっているのは、緑が赤の補色(色相環で正反対に位置する色の組み合わせ)だからですね。薄く塗ってある事でリンゴの赤色をより鮮やかに見せ、主役を目立たせる為の工夫が施されています。この補色の関係は、例えば油彩で下地を塗る際、モチーフの補色を塗っておく事で、上から塗られた色を鮮やかに見せるといったやり方にも応用ができます。


リンゴの光を反射している部分は、ハイライトの白を厚めに塗り、1週間乾かしてからオイルたっぷりの透明色の赤でおつゆ掛け(グレース)したので、透明感があります。油絵でも、オイルで絵の具を薄めて塗る事で、水彩絵の具の様に下の色を透かしながら塗る事も可能です。
影は染料のように鮮やかな青を下地に置き、乾いてからリンゴの色が反射した茶色系の影を塗って、青を透かして見せているので、美しい影の色になりました。また、左と右の光源の違いで色味も変えています。



画面左部分です。布地を見てみますと、出っ張って明るい部分の絵の具は、影になっている暗い絵の具の上に被せる様に塗られているのがお分かりでしょうか?光の方が上から被さるので、塗っていく順番も奥(影の部分)から手前(光の部分)にしています。ただ色を塗るのではなく、色を重ねる順番も意識していくと、より立体感のある画面となるでしょう。

布の後ろにある背景の壁は奥に感じさせる為に、絵の具を厚く塗り重ねないようにしています。また、布地には赤や青、緑といった白とは離れた色を賑やかにのせていますが、壁にはこげ茶や黒といった近似色でまとめていますね。こうした部分も前と奥の差を出すテクニックの1つでしょう。

色の他に、明暗差にも注目してみましょう。布地は光が当たって明るい部分と、影になっている暗い部分が点在しています。その反面、背景に明暗差は殆どなく、ほの暗く纏められています。明暗差がハッキリしているほど、人の目にはそれらが近くにある様に見えてきますので、暗く纏められは背景はより奥に見えてきます。



こちらは下半分です。棚板の奥の空間の処理ですが、この絵の中で棚板の下は一番奥に続いている(距離が遠い)ので、明暗差も全く作らず、色もほぼ黒で纏められています。ただ、単純に真っ黒に塗るのではなく、青や茶色を下地に置いてから黒で塗り重ねられているのでしょう。よく見てみますと、おつゆがけの様な跡も見えますね。絵の具の厚みやマチエール(絵肌の調子・絵の具による凸凹など)も全く作らずに仕上げているので、その差でも空間感を演出されています。下の暗い空間以外の部分には、最初にパレットナイフでパンにバターを塗る様に絵の具をキャンバスに塗り、厚みの差をつけていたと思われます。

長くなってしまいましたが、それでも書ききれないほどこの1作の中に様々な技術が盛り込まれています。箕輪さんの勤勉な制作姿勢には我々も背筋が伸びる思いになります。
もちろん、今回ご紹介させて頂いた技法が全てではなく、時には全く正反対なやり方や技法で描かれている作品も沢山あります。今後、他の作品を鑑賞する際には、今回の技法と同じ要素があるのか、それとも全く違うのか、そういった部分に着目されてみるのもまた勉強になるかと思います。

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ショッピング日和な風景

2022-11-09 23:50:58 | 大人 油絵・アクリル


赤松 アクリル・色鉛筆

ようやく布団を冬掛けにしました、ナツメです。今回は水曜午前クラスの赤松さんの作品を2枚ご紹介します!どちらも店舗の外観を正面から描かれました。昭和の頃の白黒写真から、ご自身でおしゃれと感じるものを選出して、着彩しています。

1枚目は赤いロゴが印象的ですね。形の殆どが垂直・水平の直線で構成されているため、ショーウィンドウに並ぶマネキンや布の曲線が目を惹きます。また、周囲には明度が低い色や彩度の高い色を置いているのに対して布にはピンクや水色といった淡く明るいパステルカラーを配色されています。地面や空の明るく彩度の高い色などはチープな印象になってしまいがちな非常に扱いの難しい色なのですが、隣にワンクッションの落ち着いた色を置いて使いこなしています、流石です!

2枚目はレトロな喫茶店を描かれました。まず面白いと思ったのは坂の黄色一色の四角いタイルと喫茶店の形や色のまばらなタイルが対比のように描かれているところです。一直線にタイルが列をなし整然としている街の中、喫茶店の遊び心を感じるようです。ドアに手をかけている女性はこれから入ろうとしているのでしょうか、店内の景色にまで想像が及びます。看板の書体などを見ると落ち着いていて洒落た雰囲気のお店に思えますが、上の壁面の彩度の高い水色からは新しさや清潔で整ったような印象も受けますね!

2枚とも白黒に赤松さんの色彩感覚で色を乗せたものになりますが、一つの建物しか描かれていないのにも関わらずこんなお洒落な店舗が並んでいるんだろうなと周りの風景も思い浮かんできます。休日を捧げたくなるような、歩いていて楽しい気分にしてくれそうですね。赤松さん監修&デザインの繁華街、いつの日かできて欲しいです!

赤松さんの以前の作品はこちら

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浮かぶ姿に見えるもの

2022-11-08 19:30:53 | 大人 油絵・アクリル


大坪 油彩

冬の足音と共に私には卒業論文の締切も顔を覗かせ始めました、ホノカです。
今回は月曜大人クラスより大坪さんの油絵のご紹介です。覗き込むような姿が愛らしい猫を描いたこちら。飼い猫ではなく、可愛いと思った猫の写真を選んだとのことでしたが、その愛くるしさが十二分に伝わる素敵な作品です!

正方形のキャンバスに描かれる無機質な通路、その中を歩く血の通った動物、壁面は冷たく感じる青系の色が用いられ、対比が面白いです。気ままな猫の心には飼い主の存在なんて元々ないのかもしれませんが、人工で均衡の取れた景色の中を自由に過ごす様は、普段から自らの興味のある方へのらりくらりと歩き回る、そんな縛られない過ごし方が想起できるようです。
鑑賞するこちらを通り越して少し先を見据える目には、何が見えているのでしょうか?自らが猫より小さくなってしまい、その大きさに驚くような気持ちにも、もしくは自らも猫になってしまい、狭い道を探検していたら遭遇してしまった、そんな出会いへの考えも膨らんで楽しい気分にさせてくれます。

魚眼レンズで見たような立体感も面白いですね。大坪さんに伺ったところ、元々瞳は左右で同じくらいの大きさになっていたものを、よりこちらを覗き込んでいる様子に見せるために片方を大きくしたとのことでした。確かに左右で差があることでよりきょろっとした瞳の可愛らしさが強調された感じがしますね。また、猫の全身をキャンバス内に収めることで、小さい場所に入りたがる猫の特徴も抜け目なく表れています。
閉塞感漂う窮屈な壁には、後退色である青みの色を使うことで奥行きを出し、かがんだ姿勢も相まって顔がこちらに飛び出している印象に。反対に猫が見ている右上の壁は明るく照らされていることで、自然と視線もそちらに向き、奥から手前へ抜けた印象を空間に作っています。

アトリエの壁にあるこの作品を見ると、週を重ねるごとに徐々に猫が浮き出てくるように、また壁にこの通路が繋がっているかのように感じられ、制作途中も楽しく鑑賞させて頂きました!
およそ半年程かけて制作されていましたが、長い間お疲れ様でした。次回の作品も完成を楽しみにしております!

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その深い世界観

2022-11-05 18:01:52 | 大人 油絵・アクリル


馬込 油彩

岩田です。
今回は、馬込さんの油彩をご紹介します。15号の比較的大きいサイズ、4カ月程を費やした作品です。
3人のお婆さんが大きな木の下で密談をしているような写真が元になっています。いつもそうですが馬込さんの世界観が絵から滲み出ています。
以前の展覧会の講評の際には、何も言うことは無いので、こののまま描き続けて下さいとお伝えした記憶があります。

作者の世界観で言えば、妖気漂うというか、おどろおどろしいというか、ヨーロッパ的な怖さのようなものを感じます。
作品を近くで見ると、元の写真と比べ、木の茂り方が既におどろおどろしい。そこには、様々な色が重ねられ、絵の具の立体的な表情を駆使していますし、背景のブロックの色も含め、とても深味があります。
言い換えると実に多様な色の集合体なので、とても複雑に見えてくるのです。
それは意図しているというより、多分感覚的な行為。結果、全体で見ると実に深い世界観が出来上がっているのですね。

表面的に見るとマットな質感の壁面に対して、木や老婆はダンマルの艶を活かして描いている。そうした所も作者の強い拘りを感じる部分です。

私はそんな馬込さんの絵がかなり好きです。
もし抵抗がなければ、一度展覧会をやってみてはどうでしょう。そうすることで、自分の絵を更に客観的に見られると共に、色々な人の意見を聞くこともできるでしょう。

最後に、この作品は実は元の写真に対して、光の設定を変えています。
ただその設定が不自然に見えているのだけが残念。画面の中に、箱庭的空間をもっと明瞭にイメージして欲しい。
絵の中の多様な質感の変化、艶があるところ、ないところの違いと共に、的確な光の設定による手前から奥への自然な変化も大事にしていきましょう。
これからも、その独自の世界を楽しみにしています。

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彩度を考える

2022-10-29 20:25:36 | 大人 油絵・アクリル


植松 油彩

岩田です。
今回は、植松さんの油彩をご紹介します。スイスの山小屋のある風景を描いた作品です。
以前にブログに載せたもスイスの山を描いた作品も良く描けていますが、この作品も同じように力作です。

画面がさほど大きくないぶん、気持ちが散漫にならず、集中して描いている様子が伺えます。
密度も高いし、ご自身も納得している作品だと思います。山小屋の壁の木の風合いや薪、針葉樹の描写、ベランダの花など細かいところを描くことが得意ですね。

そこで気になるのが緑の使い方。分かり易く言えば、緑色が絵の具そのままの色に見えるのです。とはいえ、ご自身の中では様々な色を混ぜて描いているとは思いますが、色相環の反対の色をもっと混ぜて良いのです。更には青系、オレンジといった色をもっと大胆に取り入れて欲しいと思います。

「空間」で言えば彩度。
つまり手前に鮮やかな色、奥は鈍い色を意識的に置くと良いでしょう。
例えば、屋根の後ろに置いている黄色は鮮やかすぎるので、黄色や緑の補色である紫や赤系の色を混ぜて、彩度を低くすると効果的です。手前はコントラストを強く、奥は弱くということを意識しましょう。空間を出すには、彩度を考えて描くことはとても大事なのです。

植松さん、明度で捉えることはできているので、これから必要なことは特に彩度をテーマに描いていきましょう。

画面を近づけて詳しく解説しています。是非ご覧ください。
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年月をかけた拘りの賜

2022-10-15 14:54:54 | 大人 油絵・アクリル


服部 油彩

岩田です。本日は、服部さんの油彩をご紹介します。

こちらの作品は、ご自身がドイツの城壁のある街に行かれた際に、その建物の中にある砲台のある様子を描いたものです。
とはいえ、描きたかったのは砲台ではなく、向かって右手にある大きな壁を主役に据えました。

その壁を近くで見てみると、ナイフなどを使って黒に近い色の中でも、様々に色を使いながら絵の具を立体的に扱って描いているのが分かります。一番拘りを持って描いた部分です。
とはいえ、砲台や瓦礫が落ちているような地面の表情も良く描いています。
左側の壁は右手に比べて、ややあっさりとした印象。窓周辺の壁面も色が綺麗です。

服部さんの作品、離れて見ると、全体的に暗い画面だということが分かります。
例えばレンブラントが描いた同じように全体が暗いトーンの作品。背景の暗闇は、ダンマル樹脂などで表面に艶を出していますが、油絵の黒はこうして艶を出すのが基本。
しかしそうしたスタンダードな方向を選ばず、敢えてマットな質感で仕上げているところも服部さんの拘りと言えるでしょう。
それは元の写真から受ける古び朽ちた室内の佇まいを表現したいという意志の表れなのです。

因みにこちらの作品、完成までに、かれこれ一年半くらいの歳月を費やしています。
描いている途中では、もっと壁の色が明るかったり、レンガを積み上げた目地のような線が描かれていたりと、現在の状況までには幾多の紆余曲折を辿ってきました。
今回の作品はさて置き、エスキースの段階でイメージをしっかり作って、あまり時間を掛けずにそれを最後まで貫くということも必要な経験だと思います。

次は油彩?デッサン?これからも拘りのある作品に期待しています。

 

動画で詳しく解説しています!是非ご覧ください。
YouTubeはこちら

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作品から伝わる関係

2022-10-14 14:59:43 | 大人 油絵・アクリル


石山 アクリル

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは水曜クラスの石山さんの作品です。お友達ご夫婦の写真を見ながら制作されています。
寒色の青を基調としながらも、柔らかな筆遣いと仲睦まじいご夫婦の笑顔により、画面からは暖かさが感じ取れます。人物画を描かれたことがある方にはお分かり頂けると思いますが、人の肌の複雑な色合いを表現するのは中々難しいものです。石山さんの作品では、皮膚の下にある血液の赤みや、影も濁らずに色が作られています。影の色はただ暗くする以外にも、彩度(鮮やかさ)を落としたり、色味を変える事で表現する事もできます。石山さんの作品が温もりに満ちているのも、暗すぎない影の作り方が影響しているのでしょう。また、髪や髭を黒だけではなく紺色が使われているのも良い工夫ですね。洋服の色や影とマッチして、全体にまとまりが生まれています。
眼鏡やスカーフ、帽子などの小物もよく観察して描かれていますね。面を意識した色の塗りにより、しっかりと立体を感じる事が出来ます。細かい所ですが、衣服や帽子の色の変化など非常に美しいですね。絵具そのものの色の美しさも引き出されているように思います。
元の写真が撮られた場所は日差しの強い真夏の海辺だったので、ハイライトの飛ばし方に大変苦労されたそうです。しかも、アクリルを透明水彩のように薄塗りで使われたので、技巧が難しく時間が掛かりました。その強いハイライトのお陰で画面にメリハリが生まれ、より主役である人物がクッキリと浮かび上がっています。人の目は明暗差が強い部分に惹かれやすいので、顔周辺に強い光が入る事で、見た人によりご夫婦の表情が印象的に残る事でしょう。


自分と無関係の人や、好きでもない人をここまで心を込めて描くことはできないでしょう。作品から、ご夫婦の仲だけではなく、作者とご友人夫婦の温かな関係も伝わってきますね。

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明度の大切さ。

2022-10-01 12:37:19 | 大人 油絵・アクリル


松野 油彩

 

岩田です。

本日は、松野さんの油彩をご紹介します。
松野さん、馬を描くことが多いのですが、今回は顔をアップにして描いたもの、夕日を背に走っている姿を描いたものの2点です。

左側の作品を見てみると、長いたてがみが自然に描かれており、鼻の辺りも良く観察しています。只、背景に目をやるとちょっと単調な印象。ホワイトがそのままで物足りなさを感じます。

それに対して右側の作品、打って変わって色が綺麗だと思います。
特に馬の首から胸、足の付け根にかけての影色が非常に良いです。口元は黄色味を帯びていて、結構色で遊べているのが見て取れます。
背景の雲海も、プルシアンブルーをベースにピンクやオレンジ、右端は紫色をベースに明るい色が乗せられていますし、その明るい色もホワイトに様々な色を混ぜ込んでいるのです。

2枚の作品を比較してみても、右手の作品はモチーフの立体感を感じるだけでなく、またそれが手前に走ってくる様も良く表現されています。

色で遊ぶときに大切なの明暗。
様々に色を使い混ぜることで、基本的な全体の明るさ暗さがバラバラになりやすいのです。そうなると初めに自分が描きたいと思っていた絵の印象から遠のいてしまいますね。

彩度、色相で遊ぶときに肝心なのは明度。白黒に直した時に明度がしっかり保たれているかはデッサン的思考が大事になってくるので、時々デッサンも挟んで基本に帰ることを忘れないようにしましょう。

ユーチューブでは、作品を近づけながら詳しく解説しています。是非ご覧ください。
松野さんの動画はこちら

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