モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

デッサンで得たものを油彩に

2024-03-16 18:59:18 | 大人 デッサン


服部 鉛筆デッサン

岩田です。本日は、服部さんのデッサンをご紹介します。

油彩をずっと続けて描いてきた服部さんですが、ここにきて、もう一度モチーフをただ観察し描くことで、様々な気づきを得ていこうという気持ちになり、デッサンに励んでいます。

掲載した2枚のデッサンを見ると、出来るだけモチーフに寄り添い、丁寧に描き進めていることが見て取れますね。
漠然とモチーフを選び、並べるのではなく、個々のモチーフを吟味し、それらが台上に置かれた時の雰囲気や佇まいを特に大事にされていて、デッサン一つ取っても、それを1枚の作品として仕上げたいという作者の意思を感じます。

ガラスや布に増して、ドライフラワーには、強い思い入れが感じられ、その形状や質感をどのように画面に再現していこうかという工夫が見られます。順番としては右手の方が新しく描かれたもので、薬瓶の横に置かれた花や実は、1枚目のそれよりも複雑なものですが、根気よく緻密に描き切っています。

鉛筆でこれだけのものを描くことができるので、描画材が絵の具に移行した時に、確実に良い効果が表れると私は思っています。

今回描いたものをもう一度油彩で描いてみても良いですね。
描くことで得られた気づきを胸に、鉛筆で出せたこの雰囲気や佇まいを絵の具でも表現することができるか実験してみては如何でしょう。

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デッサンから感じる空気

2024-03-12 23:55:50 | 大人 デッサン


朝倉 鉛筆デッサン

サヤカです!雨だとちょっとしたことが億劫になってしまいますね…

今回は、月曜クラスの朝倉さんの作品をご紹介します。デッサンを極めています。
ブリキのじょうろ、小さなブロック、枯れた木の枝と、それぞれ違った素材のモチーフを組み合わせました。モチーフの質感・重量感・空間・距離感を考え丁寧に追っていて、時間を掛けて堅実に観察したことが伝わってきます。明暗差のコントロールも素晴らしいです!暗い穴の部分(じょうろのタンク・ブロックの穴・枯葉の重なりの奥)と、光が当たる部分(ブロックの上面・枯葉の上面・金属のハイライト)の差がしっかりついているため、メリハリのあるデッサンとなっています。明暗差がきちんとついていることで、中間色のグレー部分も映えて見えますね。また、工業製品のじょうろとブロックが奥にあることで、手前の自然物である木の枝の乾いて婉曲した自由な動きに惹かれます。裏表に反り、ねじれ、折れ曲がる葉は、重なりも立体感も非常に綿密で、生み出された空間までもが美しい表現となりました。

デッサンはモチーフだけでなく、取り巻く空気を感じさせられるのが理想ですが、朝倉さんの作品からは静謐な穏やかさを感じます。そんな心地よいデッサンを描く朝倉さん、次作は油彩にチャレンジされるとの事。違う画材でどのような空気感を纏わせるのでしょう?これからも楽しみにしています!

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繊細な表現

2023-08-23 23:10:06 | 大人 デッサン


岩井 鉛筆デッサン

ナツメです。8月も残すところ1週間となりましたが、一体いつになったら涼しくなるのでしょうか。本日は水曜大人クラスの岩井さんの作品をご紹介します!3枚目のデッサンになります。瓶の水差しと植物、そして金属製のポットを組み合わせました。

今回モチーフに選んだポットは鏡のように周囲の風景が映っていますが、ポットに映り込む教室内の様子まで非常に良く観察して描画されました。そのおかげで、ツルツルとした金属の映り込みの表現のみに留まらず、このモチーフがどんな環境で描かれたのかという周囲の状況までもが手に取るように伝わります。反射率の高い瓶とポットも、どちらもしっかりと描き込んだ上で見え方の差をつけている点が素晴らしいですね!デッサンは8割が見る作業だと言われるほど観察が重要なのですが、ここまでそれぞれの特徴を掴み細部を描き分けることができているのは、真摯にモチーフと向き合い観察した成果でしょう。

中間色(グレー)の表現も巧みです。一番色の濃くなる黒い水差しに強く暗い色を乗せたため、画用紙の白から水差しの黒までの画面全体の明暗の幅が広くなっています。反射や布の僅かな明暗の差をコントロールすることで、より繊細で具体的な描写をすることができました。

『デッサン』とは形をとらえて描く基礎トレーニングですが、こちらは岩井さんのフィルターを通した美しい『鉛筆画』として額に入れて飾れそうですね。デッサンとして形や質感を追うだけではなく、モチーフそれぞれがどんなものなのかと向き合い、岩井さんの感じ取った魅力が伝わる作品になりました。基礎デッサンを終えどんな作品を描かれるのか、楽しみにしています!

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偶然が生む形

2023-07-27 23:10:39 | 大人 デッサン


石坂 グレーデッサン

マユカです。本日は石坂さんの作品をご紹介します。

軽そうに見えて、意外にもずっしりとしている鹿の頭蓋を、墨汁やチャコールペンシル・パステル・鉛筆・木炭など、あらゆる白黒の画材を駆使して、グレーの画用紙に描かれました。
骨に落ちた影は力強く、角に当たる光は繊細に、奥へ行くほど白を薄く(少なく)して遠近感を演出しています。ここまで大胆に描いているにもかかわらず、凹凸が表現しにくい歯列を、潰さずに描かれているのを見るに、見やすいデッサンがどうであるかをしっかりと理解されているように感じました。

また、大きくにじみ広がった地面の影もかなり目を惹きますね。画板を立て、墨汁を垂らし、意図しない形へと変わる影を、その上からさらにどんどんと描き進めていくことでモチーフとなじませ、自然でリアリティを感じる画面の中に、2次元的な表現が加わることで、見ている私たちに新しさを感じさせ、興味を引くような形になっています。
石坂さんはずっと白黒の絵画(デッサン)にこだわって制作されていますが、偶然を活かすこのような技法には翻弄されていらっしゃいました。
岩田先生の勉強会でのアクションペインティングにも応用できそうなテクニックです。

偶然的にできる形や模様を活かそうとすることで、思い通りにはいかないという状況を自分から作り出すことが出来ます。意図していないからこそ、今まで試したことのない表現に挑戦したり、新しい表現を発見したりなど、偶然に生成されたチャンスを、さらなる作品作りに活かしてもらえたらなぁと思います

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今にも飛び立ちそうな雉

2023-06-01 23:38:29 | 大人 デッサン


左 寺内 / 右 林

マユカです!今回は土曜午後クラスの寺内さんと、日曜クラスの林さんの鉛筆デッサンをご紹介します。

お二人が描かれたものは、雉のはく製です。その勢いのあるポーズはもちろん、暗い羽の色と細やかな美しい模様が特徴的で、陰影のつけ方に苦戦しがちなモチーフなのですが、描きどころとあまり描かずに抑えるべき点をしっかりと描き分けることにより、とても見やすく、清潔なデッサンになっています。首元やお腹周りの黒に惑わされず、身体の立体感がしっかりと出ており、光を受けて艶めく背中が美しいですね。
また、見やすさの理由には模様の描き方もあるかと思われますが。雉の特徴的な羽の模様を全体的に描いてしまうと、立体感を損なってしまったり、画面がごちゃついてとても見づらくなってしまうものですが、全体ではなく手前や大きな尾羽だけにはしっかりと模様を描きこむことで、画面が自然に写真のピントのようになり、よりリアリティのある一枚になったのではと思います。

どちらもかなりの時間を掛けて制作されていらっしゃいました。木炭紙大(65㎝×50㎝、キャンバスで言うとF15号)なので、制作するにあたっては、かなり大きく感じられたと思います。こういった大きな画面にデッサンする際、どうしても描くモチーフが画面の中では実寸大かそれ以下になってしまいがちです。
大きく配置する、というのは簡単なようで、実はかなり思い切りが良くなければ出来ないような構図のとり方なのです。大きく配置した分だけちょっぴり形を取るのが難しいですが、細部に描きこみがしっかりできたり、離れて見たときの見栄えがとても良かったりと、いいことづくめ。皆様も大きなモチーフを配置したデッサンを描く際には、『画面に合わせようとしすぎず、少し端が切れてもいいから大きめに』を意識して構図を取ってあげたら、堂々としてカッコいいデッサンが描けますよ!

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向き合うのは誰?

2023-02-10 21:06:21 | 大人 デッサン


石川 鉛筆

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは石川さんの鉛筆デッサンです。
真っ暗な画面の中心で向かい合う白い骸骨の構成は、”藝大 油画 デッサン”と検索して出てくる作品と並べても、引けを取らない格好良さがありますね。
背景を何度も鉛筆を走らせて黒くしていったのでしょう、線の密度を感じる真っ黒さです。そこから白い骸骨のシルエットが浮かび上がる構図は分かりやすくもインパクトがありますね。中心にも縦に明るく光が走っており、両者の間にある緊張感の様なものを表しているのでしょうか。
「ブルーピリオドさながらの自分の内部に向かっていった結果として生まれた作品…に見えるけど、そうでもないんだろうな?ティーンエイジャーでもない余裕のある大人が描いているので、表面を取り繕うのは苦も無くできるしね!」と小原先生がおっしゃっていましたが、自分と向き合っているのでなければ、相手は誰なのでしょう?作者が暗闇の中で向き合っている相手の事を想像してみたり、はたまた自分だったら相手は誰になるのか?と考えてみると面白い1枚だと思います。

骸骨の造形も線を何本も重ねて細かく追っており、骨の乾いてざらついた質感が伝わってきますね。持った時のずっしりとした重みも感じられます。我々の顔の皮膚・肉の下にある骨は複雑な形を持っており、ここまでしっかりと観察して描いた事で石川さんにもいくつか新たな発見があったのではないでしょうか。
絵を描き始めると、これまで何気なく見ていた物の見方が変化していきます。電信柱の陰影が美しく見えたり、錆びた看板が面白いマチエールに見えたり、捨てられたゴミ山の形が面白いものに見えたり…。身の回りの全ての物がモチーフという新たな視点から見る事が出来るでしょう。石川さんの周りで見慣れた物も、きっとガラリと変化して見えてくると思います。是非、その変化も楽しんで頂けたらと思います。

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観察への喜び

2022-12-16 21:41:01 | 大人 デッサン


佐原 鉛筆デッサン

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは佐原さんの鉛筆デッサンです。
入会されてもうすぐ2年になりますが、ストイックに鉛筆デッサンを描き続けられています。石膏デッサンに長くチャレンジされていただけあって、立体的なボリューム感の掴み方や、微妙な明度のグラデーションの出し方などのテクニックがお見事ですね。使用感のある草臥れた靴紐や、つま先に付きやすい汚れなども良く観察して描かれています。コンバースの硬いキャンバス生地の質感もしっかり伝わってきますね。キャンバス生地は鉛筆の線で織り糸の1本1本を追う様に細かく描いているのに対し、つま先や靴底のゴムは筆跡を抑えて擦ったり練りゴムを使うことで質感を描き分けられています。
また、こうした同じものを2つ描く際は、両方とも同じ大きさに見える様に描くのもポイントになってきます。違う向きで描かれた2つの靴を並べて置いた時、同じ大きさになる様に描けているかどうか?そういった要素もあり、身近でありながら結構難しいモチーフでもあります。
私も高校のデッサンの課題で、体育館履きを同じ様に描いた事がありました。靴全体の形と靴底のつじつまが合う様にしたり、靴紐の穴の間隔が一定になる様に描くのが難しかったですが、生地の皺や細かな縫い目を描く事が楽しかった記憶があります。きっと佐原さんも、苦労しながらも最後まで手を抜かず描くことを楽しんで制作されていったのでしょう。モチーフをじっくり観察し、新たな発見への喜びやそれを表現する為の苦労が伝わってくる1枚だと思います。

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繊細な鉛筆さばき

2022-12-15 21:43:53 | 大人 デッサン


鳥羽 鉛筆デッサン

マユカです。本日は鳥羽さんの作品をご紹介します!

鳥羽さんの3枚目のデッサンです。金属製のコーヒーミルと磁器のコーヒーカップ、コーヒー豆をモチーフに組み、時間を掛けて誠実に描き上げました。ミルに映り込んだ周囲の風景やモチーフまで細かく描きこまれている辺りを見ると分かるように、繊細なタッチがとても魅力的です。コーヒー豆の一粒一粒すら、丁寧に光を描いてあります。この映り込みによって、モチーフ同士の関係性や、置いてある空間が見えてきますね!
筒状のコーヒーミルだけでなく、カップやソーサーと、かなり楕円が多いモチーフですが形がしっかりと取れていますね。少し上から見下ろしているフカン気味の構図ですが、丁寧に形をとっていることもあり、不自然さを感じずに地面にしっかりと乗っているように見えます。
私たちが両目で物を見ているからこそ起こってしまう歪みのせいで、デッサンに慣れた人でも、水平面に物が乗っているように描くというのは難しく感じるポイント。だからこそこのデッサンのような、重力をしっかりと感じる画面は見ていてストンと納得させてもらえるような、説得力を感じます。

この2つのモチーフはどちらもツルツルとした質感ではありますが、金属のギラギラとした激しい映り込みと、磁器の柔らかな映り込みとで、しっかりと差をつけて描かれているため、その硬さや光の入り方の違いを、細かな鉛筆の濃さの変化で表現しています。一番暗く、強い黒は金属にのみ使われているのも、モチーフの特徴や特性を理解して描いているからでしょう。

鉛筆の濃淡だけで表現するデッサンは、描けば書くほど質が高くなっていきますが、光が当たる面に多く手を加えてしまってグレーにしてしまったり、そんなにしっかりと手を加えなくてもいい場所に時間をかけてしまうとかえって見づらくなってしまいます。たくさん時間をかけるデッサンも、短時間で仕上げるデッサンも、鳥羽さんのように、描きどころを見極めながら描きこんでいくことが大切です。

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空気を描く

2022-11-30 23:04:28 | 大人 デッサン


林 鉛筆デッサン

気が付けば12月で戦慄しています、ナツメです。今回は日曜大人クラスの林さんのデッサンをご紹介します!

まずは9月に描かれた左のデッサン。カメラに羽、薄いペパーミントグリーンのマスカットの模型とどれも複雑なものを選ばれました。他にがさがさザラザラとした質感のものがあると、差別化して描きやすいのですが、比較的滑らかなものが多い中でそれぞれの描き分けがされているのがまず素晴らしい!形が複雑なカメラも、レンズなど細かなパーツの一つ一つまで丁寧に描写されています。そしてポイントは瓶に立てられた羽根!試行錯誤されていましたがそれもそのはず、一番奥に置かれていますが黒いためかなり強めの暗さを入れなければならない上に、ペラペラに薄いものを正面から描くという非常に難易度の高いモチーフでした。重なっている部分が透けて色が濃くなっているところや、ゆがみのシワを捉えて見事に描写されました!

右のデッサンは、先週完成したばかりの絵。前回のマスカットに続き、真っ黒なブドウの模型にチャレンジ。写真でも上達しているのが一目瞭然です!マスカットも小さい粒がひとかたまりになっている、という重要なポイントはしっかり押さえられていますが、黒いブドウではそれに加えてその中でそれぞれの粒がお互いにどう影響しているか、という「周囲の環境」が巧みに拾われているのがわかります。ワイン瓶やラクダの玩具、それらが置いてある布の影も含め、それぞれの重さや同じ空間に配置された時の関係性の描写が優れています。

前回のブログで、「一部を注視せず全体でモチーフを見ると良いですよ!」というような話をしたのですが、今回の2枚はそこが非常に良くできていると思います。瓶のラベルやカメラのロゴなど、ばらばらに見えてしまいがちな部分をモチーフの一部として、自然に表現されています。林さんのような『観察力が高く無限に情報を拾える&その情報を精密に描くような根性のある』方が、見た物をあるがまま紙に描き写す力を身につけたら、もうなんでも描けますね!『デッサンはモチーフではなく空間を描く作業』と言われるほど、周囲の環境をどれだけ反映されているかが重視されます。今回の作品のように周りの空気までもが伝わってくるようなイメージを、皆さんも是非意識してみてください!

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見下ろして見えてくるもの

2022-11-17 23:31:33 | 大人 デッサン


秦野 鉛筆

マユカです。今回は秦野さんの作品をご紹介します!

繊細な描写が目を惹くこちらのデッサン。布や鏡の直線を視線誘導に使い、構成されています。モチーフを上から見下ろしている構図になっていますが、これは実際に高い椅子に座って描かれました。元の形の先入観が邪魔をしてしまうため、形をとるのが難しい構図も自然な視点で表現されています。見下ろすことで、モチーフの一つである鏡を、布のように下に敷いても活かすことができ、立てかけて使った時とは違う表情を見せてくれています。

以前秦野さんが描いていらっしゃった水彩画は、優しく自然な光を感じる暖かな作品でしたが、今回のデッサンでも同じく優しい光を感じることができます。画面を構成しているメインモチーフはもちろんのこと、背景の布やモチーフの下に敷かれた鏡等、空間を構成する物の隅から隅まで丁寧な筆運びで描かれ、全体にしっかりと手を入れつつも主役である骸骨、ビン、植物の三つは特に細かく描きこまれているため、まるで写真のようなピントのつき方をしています。骸骨の石膏は、石膏特有の粉っぽさすら感じさせるほどのマットな質感の描きこみが素晴らしいですね。輪郭線をあまり描かずに、骨の入り組んでいる目元を表現しているためか、とても自然な雰囲気です。
ドライフラワーも、これは花でしょうか。穂の先の方にはぎっしりと詰まった花弁、よく見るとこの1枚1枚ですらしっかりと描かれています。ここまで描きこんでくると、線のようになってしまい、立体感が消えてきてしまうことが多いのですが、さすがは秦野さん。むしろしっかりと丸く、コロッとした印象の植物に仕上がっています。

デッサンを描く視点が変わると、普段とはまた違った表情が見えてきます。こういった見下ろす構図は「俯瞰(フカン)」というのですが、臨場感が生まれたり、空間を広く見せたりといった効果があります。その分描く難易度は上がってしまうのですが、挑戦してみる価値はありますので、皆さんも是非見下ろすような構図で作品を作ってみてくださいね。

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アクションペインティングのような下地を活かして。

2022-09-10 20:24:39 | 大人 デッサン


左 木村 / 右上 渥美 / 下 加藤 ー墨・カラメル色素・金泥・木炭・パステル・コンテ

岩田です。

以前、ゼミで墨汁やカラメル色素などを使って、スパッタリングやドリッピング、つまり液体を筆で垂らしたり、勢いよく筆で絵の具を飛ばしたりして遊んだ紙を下地として、鹿の骨や牛骨を描いた作品を3つ並べました。

下地として使った画材は同じですが、結果的に仕上がりに皆ちょっとづつ違いが見受けられます。とはいえ、3つとも2時間で描いているにも関わらずクオリティが高く、魅力的な絵になっています。
いつもは白い紙に黒い鉛筆で描いていくけれど、今回のような作品は、中間のトーンを作ってから黒い炭や白いチャコペン等で描いていくので通常のデッサンより時間短縮ができる上に完成度も高く見えるのです。

例えば渥美さんの作品を見ると、2時間で描いた以上に完成度が上がって見えるでしょう。
白から黒までのトーンが綺麗な上、下地が牛骨の明暗に丁度良く当てはまっています。スパッタリングでできたしぶきを上手に活かしていてカッコいいです。

加藤さんは、下地の上に主に墨で描いているので、どちらかというとラフな感じ。更に木炭によるハッチングも使っていますが、敢えてそのように着地させているのです。普段は、かなり突っ込んで描ける方なので、今までにないザクっとした仕上がりは、ご自身にとっても新鮮だったと思います。

木村さんは鹿骨を画面の中心に据えて描いている故に、どこかモチーフが象徴的、もしくは絵自体が宗教的な雰囲気を醸し出しているのが面白いところ。
細部を見てみると、鼻先に使っているちょっとしたチョークの使い方など上手いなあと思うところがありつつ、背景のコントラストがきついので、鹿骨が目立たないという点もあります。とはいえ、木村さんにとってもこういう描き方は初めてだと思うので、そのワクワクドキドキ感が伝わってくるようです。

所謂グレーデッサンと云われるものは、古くはダビンチなども描いていますね。
皆さんも画材屋でミューズコットン紙のような中間色の紙を買ってきて、今回のような描き方に是非チャレンジしてみて下さい!

映像で更に分かり易く解説しています。ユーチューブはこちら

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1年半の成果

2022-08-20 10:41:52 | 大人 デッサン


出町 鉛筆

岩田です。本日は出町さんの作品をご紹介します。

こちら人物スケッチなのですが、2021年1月から書き始めました。初めは、外国人が多い。その中でも突然現れる古今亭志ん生、とても味わい深く描いています。

一冊通してみても、上達していることは分かりますが、2冊目になるとそれぞれの人物の特徴を良く表現しています。
中には内容を詰めて描いているものもあれば、そこまで深追いしていないものまで様々。同一人物を3枚描いているものまで。

3冊目は一番最初に描いたであろうモデルをリベンジして描いているものまであります。比較してみても見違えますね。
こうした一つの行為をずっと続けるということは、大変なことであり、同時に非常に価値あること。近作は、人物としてとても自然に描けています。

そんな中でも僕が好きなのは、チャーチルと安田顕。互いに特徴は捉えているものの、やはり近作の安田顕の方が名前を見ずとも誰かは一目瞭然、1年半で確実に進化しているのが分かります。

また新作見せて下さい!

出町さんのYouTubeはこちら

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視点の遠近

2022-07-20 23:37:31 | 大人 デッサン


林 鉛筆デッサン

日焼け止めを忘れがちです、ナツメです。今日は日曜大人クラスの林さんのデッサンをご紹介します!

ドライフラワーのカサカサ感、固くてひんやりしている錫製の花瓶、ふわふわで軽めのミニフクロウなど、それぞれのモチーフの温度や重量感までが伝わってくるほど、本当によく観察してディテールまで緻密に描写されました。

奥に細かな描写が必要な色の濃いモチーフが置いてあったので遠近感を出すのが難しかったと思いますが、手前にいるフクロウの足を細く硬く描き、目の部分などにもかなり強い暗さを入れることで、白いモチーフながら後ろの花瓶との遠近感を出しています。

そして今回のデッサンのもう一つの工夫は、布を描いていることです。普段はモチーフを置いている椅子の木目を隠すために白い床として布を敷いているため、描く対象としては扱わず質感の表現もしません。ですが今回は敢えて布の折り目や起伏まで描かれたため、同じ台上に置いてあるモチーフ同士を繋げる役割を果たしており、空間までも非常に良く表現されています!

デッサンで描き込みをしていくと、描いていたモチーフがシールを貼り付けたようなペラペラの平面に見えてきてしまうことがあります。今回林さんも「ステンレスの花瓶の光が、立体的にならずストライプ模様に見えてしまう」と悩まれていたのですが、実は目が良く注意深く観察して描こうとしている人ほど起こりやすいのです。

これは映り込みやラベルの印字や木目など、目に見えているものを出来る限り描こう!と思っている内にモチーフ全体から意識が逸れていき部分のみを見てしまうため、段々ものとしての立体感が損なわれてしまう現象()です。1番はじめにつける立体に沿った陰影(ベース)をもう一度思い出して、その場所にあった明暗を取り戻すことで大抵の場合良くなります!

もちろんデッサンだけではなくその他の絵を描く時も、一つの場所を注視していると離れて見た時に意外と良くならないな、となることが多々あります。受験生にはよく「とにかく沢山立って離れて見ろ!」などと指導したりもするのですが、定期的に絵全体を見ることを心がけてみると見えてくるものがあるかもしれませんよ!

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ベース作りから始めるデッサン

2022-06-25 21:37:24 | 大人 デッサン


左 當山 / 右 加藤
カラメル色素・墨汁・チャコールペンシル・木炭・コンテ・鉛筆・パステル・色鉛筆・アクリル絵具

 

岩田です。今回は、加藤さん、當山さんの作品をご紹介します。

これは鹿の骨、レンガなどを構成し描いたものですが、當山さんが最初にモチーフを組んで描いたものに加藤さんが触発され、同じようなモチーフを組みました。
見て分かるように、こちらは普通のデッサンとは違います。砂糖を焦がして作るカラメル色素という液体に水を加え、木炭紙大画用紙に撒いたり、垂らした後に画面を傾けて流す等の行為により、液体が醸し出す偶然性を使って素地を作りました。そしてその上から白やグレーのコンテ、チャコペンを使ってモチーフを描いた作品です。
こうした描き方は、古くはデューラーやミケランジェロなどが描いているグレーデッサンを元にしています。

互いの絵を比べてみると、當山さんは引きの構図で捉え、加藤さんは近づいて描いている。
當山さんはモチーフに対して若干余白が間抜けに見えるかなという印象。背景に色を付けてはいるが、それが薄いぶん背景の移り変わりが物足りなく見える。偶然性による濃淡がもっと顔を出しても良いでしょう。
一方加藤さんはモチーフをクローズアップして描いているぶんインパクトはある。画面の中の色幅もあるのでモチーフの中の微妙な色調が表現され、質感へのアプローチに繋がっている故に見ごたえのある絵になっています。骨の形体やレンガの重量感も良いですね。

今後の課題として、當山さんは、画面に対してのモチーフの大きさ、入れ方、アングル。加藤さんは一枚の作品としての説得力、魅力を、ここまで描けるからこそ更に追求して欲しい。そしてこちらも期待をしているのです。

7月16日の土曜日に勉強会を行います。
当日は、今回ご覧頂いたように、木炭紙大画用紙にカラメル色素、墨などを使ってモチーフを描く為のベースを作って貰い、同時に私の受験時代の絵を教材にしながら、モチーフの配置の仕方、視点の誘導のさせ方、主役脇役の作り方、メリハリの付け方といった絵の構造を中心に解説をします。
ご都合が合いましたら是非ご参加下さいね。

一昨日ご紹介した高校生も、お二人の絵に触発され、同じ技法で描いています。こちらも合わせてご覧ください!

YouTubeはこちらです

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素直な視点

2022-05-14 19:54:03 | 大人 デッサン


王 油彩

岩田です。今日は王さんの作品を紹介します。

ご覧頂いている花とコーヒーカップの油彩。王さん一枚目の油彩でが、実に良く描いています。モノに対する観察眼が素晴らしい。モチーフの形状、色など本当に良く見ていると思います。

油絵具は最初は扱いがとても難しいと思うのですが、コーヒーカップの縁の描き方にも繊細な表現が見て取れます。楕円も狂いやすいのですができる限り形を整えるように描いており、布に落ちるソーサーの影も綺麗です。

ガーベラの其々の色を良く捉えていると共に、二段で咲いている花弁が折り重なる影色もとても良いです。葉っぱや他の花も同様に観察しています。対象をとても素直に捉えていて、描き方にも破綻がありません。
しいて言えば、垂れている布が広げると四角形ということを意識して描いて欲しいというところはあります。とはいえ落ち着いた佇まいの良い作品です。

次に描く作品もこうした素直な視点で描いて欲しいと思います。

ユーチューブはこちらをご覧ください。

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