モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

観る、描く

2024-10-16 22:04:02 | 大人 水彩


加藤 透明水彩

武蔵美では芸祭準備期間が始まり、浮き足立った気分になっています、ナツメです。本日は日曜大人クラスより加藤さんの水彩画を2枚ご紹介します!

ひとつめの作品では神戸の風景を描かれました。夕方頃でしょうか、少し陽が落ちている時間帯の影と光の加減が絶妙です。一方向からの光を意識して、物や地面の影を描いているので光が綺麗に見える上、その中でも手前はコントラストを強く、奥は弱めに描いているので一体感がありつつも距離も感じるようになっています。風景画は、次にご紹介する静物画と比べてもどこをどれだけ描くかという全体の描き込み度合いのバランスを取ることが難しいのですが、遠近に合わせて難なく描かれています。

そして2枚目は静物画。以前の水彩画に続きアトリエにあるモチーフをご自分で組んで描かれました。風景画よりもモチーフひとつひとつに手を入れられる分、とても精密に描写されています。ちょっとした反射や映り込みによりズレなどの非常に細かな部分まで追っているため、ガラスにプラスチック、木などどれも素材が違う中でそれぞれの質感が手に取るように伝わってきます。

ご紹介する順番が前後してしまいましたが、はじめの風景画が1番新しい作品になります。加藤さんは静物画に続いて風景シリーズの制作を計画されているそうで、今回の絵の次はどんな作品になるのか非常に楽しみです!

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美しさを引き立てる工夫

2024-10-10 23:22:27 | 大人 水彩


木佐貫 透明水彩

マユカです!今回は木佐貫さんの作品をご紹介していきたいと思います。

神社などで時々目にする『花手水』。心まで清められてしまいそうなくらい美しいその様子を、水彩で描かれたこちらの一枚。同系色ではなく、様々な色の花が浮いているのも目に楽しく、「この花の名前は何というのだろう?」なんて考えながら見てしまいました。

花の美しさに目が奪われてしまいますが、今回の作品では水の冷たさ・フレーム外の手水舎の素材(石)を感じさせる、水の表現が画面においてとてもいい作用をしています。竹から流れる水は透明度を高くするため後ろの色を描きこむことで透明感を出し、濃紺で水面を描写し深さがあることを伝えます。

また、浮いている花の彩度と明度が全体的に高めなため、濃紺が締め色となり、隣り合う花が混ざり合わず、くっきりと浮き上がって見えてくる効果もあります。ここが白っぽいと、花の色が何だか散って見えたり、広がっているような間延びした印象を受けてしまうのですが、しっかりと暗い色を使っているからこそ柔らかい花の質感との対比もできているのですね。よく見てみれば、手前の花は花弁の一つ一つまでしっかり描きこまれており、輪郭もはっきりと見えますが、奥の花や葉はあえてふんわりとした描き方をすることで手前のピントを合わせ、凛とした空気感まで伝わってくるのです。

この締め色、背景ではあるのですが、見方を変えると隣り合う色となります。隣り合う色というのはモチーフと差をつけた色であることが好ましいです。これはデッサンなどでも言えることで、同じような濃さで画面を塗ると融合しているように見えたり、どこで区切られているのか、立体感はどこなのか…と、なってしまうこともしばしば。色のある水彩画、油彩画などでも隣に似たような色を置くとなんだか間延びして見えてしまいますから、意識的に差のある色を選んでみるのもいいでしょう。

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食欲を刺激する

2024-09-18 22:13:07 | 大人 水彩


川上 透明水彩

九月も後半に入ってきましたが長袖の服を出すにはまだ早そうですね。早く涼しくなって欲しいです、ナツメです。

本日は土曜大人クラスの川上さんの作品をご紹介します!ボリュームたっぷりなハンバーガーを透明水彩で描かれました。

今すぐかぶりつきたくなるような、食欲をそそるシズル感が素晴らしい!一つ一つの具材を丁寧に描かれていて、ジューシーなパティや瑞々しいレタスなどそれぞれの口当たりが浮かんでくるような魅力がありますね。

透明水彩というと淡い色合いの画面になりがちなところを、主役であるハンバーガーを中心に手前にしっかりと鮮やかで濃い色を乗せています。食べ物の写真を撮る時に、より美味しそうに見せるために「コントラストを強めにする・彩度を上げる」加工をすると良いとされているのですが、まさにそのポイントを抑えた描き方をされています。

ハンバーグ以外のものを描き過ぎない加減に苦労されたとのことですが、その塩梅も丁度良いですね!遠くは薄くぼんやりと、手前ははっきり鮮やかに描かれていることに加え、その中間にあるコップや椅子などは淡くなりすぎずぼかしすぎず、という非常に難しいラインを見事に見極めて表現されているので、自然に手前の主役に目がいく画面になっています。

主役だけでなく周りの見え方の加減もコントロールすることで、お腹が空いていてハンバーガーがとても魅力的に見えて仕方ない、といったまさに今食べようとしている時のような視点が伝わってきますね。見ている内に本当に食べたくなってきてしまったので、明日のお昼ご飯はハンバーガーにしようと思います。

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雨上がりの紫陽花階段

2024-09-06 19:40:53 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、釘宮さんの水彩画です。この作品を見てもお分かりになるように、紫陽花の季節=つまり5月から制作されていらっしゃいました。雨に濡れた黒い石の階段や、雨上がりの優しい日差しが左上から右側の花に当たっているところ、門の中にお宮参りというよりは観光客であろうご婦人たち、全てが自然に調和するように注意を払って描かれています。
光を受けて葉が透けるように明るくなっている柔らかな色合いが美しいですね。奥は絵の具を薄く塗っているのに対し、陰になる左手前などは黒や近しい濃い色を思い切りのせて差を付けています。画面全体のバランスを注意しながら制作されて行ったのでしょう、どこを観ていても心地よい1枚だと思います。紫陽花の青色も美しいですね。紫陽花は小さな花びらが集合して1つの塊となっているので、どこまで描き込むかの判断が難しいものですが、釘宮さんはその塩梅を見極めて描かれていますね。

陽光や湿度、匂いといった形のないものを表現するのは難しいですが、風景を描く上ではいかにそれらを観賞者に感じさせることが出来るかが重要になってきます。一筆一筆に作者が目指したかった優しい風景への思いが込められているのでしょう、じっと見つめていると、雨と紫陽花が混ざった匂い、遠くで談笑する人々のかすかな声、葉っぱに反射する陽光が、まるで実際に体験したかのように頭の中に広がっていきます。

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広がる空間

2024-09-04 22:17:03 | 大人 水彩


黒木 透明水彩

とうとう夏休みが終わってしまいました、ナツメです。今回は大人クラスより黒木さんの作品をご紹介します!
まるでターナーの水彩画を見ているような美しい景色。写真集の見開きのページから画題を選ばれました。淡く優しい色遣いが印象的ですね。まるで空を割って現れたかのように輝く太陽にも、眩しいながらギラギラとした強さはなく落ち着いた雰囲気を感じます。

空の中心部には紫、青、黄色など様々な色相から選んで乗せています。絵の具が重なった部分にまた新しい色彩が生まれ、透明水彩ならではの複雑な色合いがとても効果的に使われていますね。この幻想的なトーンがここまで綺麗に見えるのは、周囲に暗い箇所を作っているためです。左右上の空や水面の向こうに見える街などもしっかりと暗さをつけ描かれているため明るい空との対比が際立つように設計されています。同じく手前の海は暗く、遠くにいくほど段々と水面が明るくなっているため遠近感の表現だけでなくビネット効果のように中心へと視線を集めることにも一役買っています。光を強く演出するような明度計画が素晴らしい!
横長の構図もしまって、閑静な空気の中で穏やかに波が寄せていく音や雰囲気がありありと伝わってくるような臨場感あふれる作品となりました。

ワンポイントアドバイス 横長のパノラマのような画角によってまるでその場にいるかのような視点になっていますが、こういう広がりのある風景を描く時は大きめの紙を使い、余白まで筆を止めずにはみ出しながら描くことが、のびのびと感じさせるコツです。

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人物を捉える

2024-08-07 22:37:49 | 大人 水彩


真愛 透明水彩

ナツメです。本日は土曜大人クラスより真愛さん(ご主人と一緒にミオスに通っていらっしゃるので、下のお名前で呼ばせて頂きます。)の作品をご紹介させていただきます。人物画を得意とされる真愛さん、今回も水彩で2枚の人物画を制作されています。

まずはストリートスナップのような画角の左の作品。雰囲気のある2人の佇まいがかっこいいですね。少し力を抜いているような姿勢にアンニュイな表情が加わりイエローオーカーや黄緑など黄みの色に対して、彩度の高い青色や柵の紫などが補色のアクセントになっています。

そして2枚目、メリーゴーランドにもたれかかっている女性。遠くはぼんやりと淡く塗っているのに対して手前は濃く塗っています。これは周りの雰囲気を描きつつも人物に焦点を当てるような効果になっています。画面の中央に集めるように使われている黒も印象的で、遊具の足やスカートだけでなく、腕にもしっかりと濃い黒を乗せることで、柔らかい色遣いの画面を引き締めると同時に、顔周りへ視線を集めるような視線誘導になっています!

どちらも対象の人物の魅力を捉え、最大限引き出すために表現方法や絵の具の濃淡をコントロールしています。

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長編ドキュメンタリー

2024-07-16 22:18:29 | 大人 水彩


佐々木 透明水彩

サヤカです!期末が近づき、レポートやテスト勉強に追われています…今回は、そんな忙しない日常に癒しをくれるような佐々木さんの作品をご紹介します。

佐々木家の次男坊シリーズ。先に生まれたお兄ちゃんはたくさん描かれたので、最近は次男坊君がもっぱらモデルになっています。小さい赤ちゃん(こちら)が、もうこんなに大きくなりました!

今回ご紹介する作品は、どれも何気ない日常を切り取った作品です。ポーズを決めているわけでも、特別な場所にいるわけでもないですが、ご家族にしか見せない表情が描かれていて、佐々木さんにしか描けない家族の温かみが伝わってきます。

焦点を当てなければいけない人物ですが、顔や服装の着彩にいくつもの色を重ねて厚みを出し、背景は単調に塗ることで、人物が背景に比べてグッと解像度が高く、無防備なポーズや表情に込められた愛おしさが際立っています。また、陰影のコントラストがはっきりついているため、体の立体感と画面全体の臨場感が感じられます。

ブログでご紹介した佐々木さんの作品を追って見ると、息子さんたちの成長が鮮やかに感じられ、長編ドキュメンタリーを見ているかのような気持ちになりました!最近、はじめてのおつかいの映像を見て、子供の時にはわからなかった親の気持ちが多少わかるようになったのか、すぐグッとくるようになってしまいました…お子さんへの愛情が込められた作品から、佐々木さんの当時の気持ちを疑似体験しているようでとても暖かい気持ちになりました!

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うん、まだまだいける

2024-07-06 18:23:25 | 大人 水彩


坂本 透明水彩

岩田です。それにしても暑いですねー。

今回は、坂本さんの作品をご紹介します。
ご自身で撮影された、鯉が池の中で泳ぐ画像を元に、透明水彩で描かれたこちらの作品。
プリントされた画像には、空や池のほとりに茂る木々、シダなどが水面に反射し、何とも言えない独特の世界が広がっています。

これは果たしてどうやって描いていけば良いのだろう?そんな言葉が坂本さんの脳裏にも浮かんでいたかもしれません。画像を見た私も「おっ、チャレンジするなー」と思った反面、でも坂本さんならどうにか描き切ることが出来るなという確信を持ちました。

これまでも、台湾九份の提灯が並ぶ賑やかな景色や、猫島のどこか懐かしい、味わい溢れる景色など、実に様々な作品を描いてきた経験上、いつものように、最初に描いたイメージを大切にしながら、最後まで粘り強く取り組むことで、間違いなく美しい世界を紙の上に展開できると感じたのです。

案の定、今回もキラキラと眩しく、繊細な坂本さんらしい作品に仕上がりました。
暗い色から明るい色までのコントラストを目一杯使いながら、動く水面を伸びやかに表現し、シダの緑と鮮やかな鯉の朱色が鮮烈な印象を与えてくれます。

正直、こうした絵は私には描けません。完成した作品を見た時「うん、まだまだいけるな」という言葉が私の頭に浮かびました。

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思わずウットリ

2024-06-14 22:59:14 | 大人 水彩


黒木 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、黒木さんの水彩画です。以前より描かれていた鳥シリーズの3作目(1枚目はこちら、2枚目はこちら)は孔雀!異性を惹きつける豪華な飾り羽は、異種族である我々人間をも魅了する輝きを放っていますね。その存在感、なんと神々しいのでしょう!まるで後光を纏っているかのようです。

目玉のような模様や、鱗のようにびっしりと重なった羽も細かく丁寧に描写されています。見る角度によって変化する羽の色合いを、よく観察し1枚の絵の中に描かれています。また、中央にすっと伸びる胴体の深い青色は、水彩を幾重にも塗り重ねて作られたのでしょう。見れば見るほど吸い込まれそうな藍色ですね!透明水彩の発色の良さを存分に活かして描かれています。黄色と青は色相環の補色の関係にありますから、お互いの色をより一層引き立てあいます。
そして何よりも、気品溢れる孔雀の顔にウットリしてしまいますね。顔はより一層細やかに、気合を入れて描かれているのが伝わってきます。嘴の凹凸、頭に密集している羽、アイラインのような白い模様…全てを余す事なく描写してやろうという気概をも感じられます。黒木さんの鳥への愛から成せる力なのでしょう。

改題材となった鳥達の魅力を、再認識させてくれるような作品だと思います。今後の鳥シリーズも楽しみにしております!

 

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小粒の山

2024-06-06 23:14:08 | 大人 水彩


木佐貫 透明水彩

マユカです!今回は木佐貫さんの作品をご紹介したいと思います!

山盛りのいちご、シンプルながら目を惹くモチーフになっており、木の机や差し色の緑がいちごの赤を際立たせています。差し込む光は自然で優しい春の陽気を感じさせ、水彩の雰囲気にとても合っていてなんだかほっこりとしますね。ふんわりとした画材だからこそ、つやつやとしたいちごの瑞々しさを表現するのに苦労されました。

全体的にしっかりと立体感が付いており、淡い画材でも臆さずに濃く、強いコントラストの色彩を乗せているために、しっかりと光に沿ったゴロっとしたいちごの感じが出ています。一粒一粒の質感は勿論ですが、この粒を「個」として見るか、「塊」として見るかで絵の印象というのは大きく変わってきます。例えばブドウなどは、房に付いている一粒一粒を一個ずつ描いていると、光の方向が分からなくなってしまったり、立体感がなくなりイラストのようになってしまったりと、自然な感じを出すことが難しくなってしまいます。これが「個」の描き方ですね。そうならないために、ブドウの房の描き始めは5角形の角錐を横にしたようなアタリを描き、ざっくりとした全体の陰影をつけてから、粒の形を追っていく…というような描き方をします。これが「塊」の描き方です。

今回の木佐貫さんの水彩画は「塊」として見ることが出来ているので、上から見た構図でありながら、山のように積まれたいちごを感じるのでしょう。また、手前と奥の描き分けもいいですね!手前は木目までしっかり描写し、光が当たっている場所と影になっている場所でいちごの種の書き分けまでする徹底ぶり。しかし奥の方は木目は光で見えないようになっている上、いちごにも陰影をつけるくらいであとはぼやかされています。こうすることで遠近感を強く演出する効果が生まれており、画面にメリハリがついてとても見やすくなりました。まるで写真のようなピントの合わせ方ですね。

細かく描き込むだけが良いというわけではなく、本当に見せたい場所、視線を向けてほしい場所を重点的に描き、周囲はあえて描かない選択をすることで意図的にピントを作り出し、より見やすく、より伝わりやすい画面にできます。主役にスポットライトが当たる絵はやはり、見ていて心地がいいものです。

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手に取れるような質感

2024-05-30 23:34:40 | 大人 水彩


加藤 透明水彩

マユカです!今回は加藤さんの作品をご紹介していきたいと思います。

ぼんやりとしてしまいがちな水彩でこれだけくっきりと見やすく、さらに物質の質感まで伝わってくるような作品たち。左の作品は描写力は勿論なのですが、同系色のモチーフで固められているにもかかわらず濃淡と、イエロー寄りのブラウンから赤み寄りのブラウンを使用し、色相を変えることで単調にならないような色使いをされています。細やかなラベルのレタリングによって実在感が一層増して見えますね

右の作品は海を感じさせるモチーフで統一していますが、セピア調の背景色と青色の浮き球、魚の置物がお互いの色彩を引き立てあい、とても目を惹く作品になっています。対極の位置にある色彩は、慣れないうちは合成の様になってしまうこともあるのですが、加藤さんの作品では空間になじみ、鮮やかな青を局所的に使用することで、茶色同系色に起こりがちなくすんだ感じもさせずに描写されています。どのモチーフも手に取ったときの重さや触り心地を容易に想像することが出来てしまうあたりに、見る人への気配りを感じました。
何処を切り取ってもその精密さに驚いてしまいますが、「いつも仕事ではスピード重視だわ、結果出さなきゃいけないわ、しかもそれが当然で誰も褒めてくれないから、ここで褒めてもらえるのメッチャ嬉しいです!」とよく言ってます。(笑)

物体だけでなく背景にも色を付けることで同じ空間上に物が置いてある様子や光の入り方が統一され、反射光などに背景と同じ色を入れることで情報量も増え、見ていて飽きない作品となります。私たちが普段見ている物達は情報量の倉庫。見れば見るほどに新しい発見があるものです。そういった「よく見ないと気づかないそのもの特有の性質、質感」を発見することでモチーフへの解像度が高まり、見た人にどんな素材のモチーフなのかを伝えるきっかけになります。どういった映り込みが入っているか、写真を撮って確認してみても描きやすくなりますね。

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新しい一面を垣間見せる

2024-05-25 23:39:27 | 大人 水彩


佐藤K 透明水彩

岩田です。本日は、佐藤さんの作品をご紹介します。

こちらは、昭和に建てられたアパート。既に人は住んでおらず、網戸も外れっぱなしの状態で放置されています。今まで旅行先のヨーロッパなどの風景を描かれていらっしゃった佐藤さんですが、突然描いたこの廃墟。
美しく整然とした街並みを描かれていた時は、どうしてもデッサンの狂いなどが目立ってしまいましたが、ゆらゆらとしたペンで描いた線とラフな塗りが、傾きかけたアパートの様をよりリアルに感じさせくれます。

今まで使っていた鮮やかなトーンは影を潜め、全面が落ち着いたグレーに覆われ、枯れたような雰囲気に包まれていて、作者のこれまでの作品には見たことのない新しい一面を垣間見られたような気がします。

身近に見られる建物をどこか擬人化したような面白さを持つこちらの水彩。これから描き方を更に洗練させていきながら、シリーズ化していっても良いかもしれません。

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葉の一枚一枚が見えるような。

2024-05-16 23:38:09 | 大人 水彩


釘宮 透明水彩

マユカです!今回は釘宮さんの作品をご紹介していきたいと思います

透明水彩で風景を描き続けていらっしゃる方です。今回は花々が咲き誇る温かみのある庭園を描かれました。前回の作品はこちら
今の季節にピッタリ合わせてフィニッシュを迎えられました。色とりどりの花がありますが、全体的に暖色でまとまっているため見やすく、花に注目しやすいカラーリングになっています。ぐっと暗い低木の地面や枝が画面を引き締め、遠くにあるものはふんわりとした印象にすることで花の鮮やかさが際立ち、目に楽しい一枚となっていますね。

釘宮さんの作品の持ち味はその細かさでしょう。前回の作品も今回の作品同様植物のある風景を描かれていますが、木や建物の木組み、屋根の雰囲気に至るまで細やかなタッチで描かれています。今回の作品でも花の描き方と茂みの描き方が少し違っていたり、奥にある葉の種類を変えられていたりと、様々な個所から観察力の高さも伺えます。それはかなり難しいパースのついた楕円形の構図が全く違和感なく描かれている所からも。繊細な描写が出来るのは、間違いなく鋭い観察力があるからでしょう

見る力は描写力に繋がります。実物やモチーフをよく観察し、観察眼を鍛えることで描くことが出来る絵の幅が格段に広がります。もし時間があれば、身近な物のスケッチなどをしてみてもいいかもしれません

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儚げでも力強く咲く花

2024-05-09 23:12:08 | 大人 水彩


室橋 透明水彩

マユカです!今回は室橋さんの水彩画をご紹介していきます。

今回のモチーフは夜に開花するという百合の花。周囲が夜のような黒寄りの濃紺でじんわりと滲むように縁どられており、ふっくらと膨らんだつぼみは花開く時を待っているよう。一足先に咲いた白い花弁はまるで周囲に存在をアピールするかのように美しく映えていますね。室橋さんの透明水彩をご紹介した前回のブログでは、大竹先生が「水彩は慣れるまで沢山描く必要があります」と書いていましたが、見比べると画材の扱いにだいぶこなれた感があります。前回の絵は少々色に振り回されたような印象を受けましたが、今回は前後感や立体感といったリアリティが格段に上がった上、モノトーン系ということもあり使用色数の少なさが落ち着きのあるしっとりした魅力につながり、モチーフとの親和性があったのかなと感じます。

植物と水彩の親和性は、その儚さにあるように思います。花弁を描く際にふんわりと滲むようなタッチで描くことにより、触れたときの柔らかさや散ってしまいそうな脆さを画面から感じることが出来ます。繊細なテクスチャを入れてみるのもよし、水分量を調整して暗い場所はくっきりと、輪郭線を整えて描けば力強さ、見やすさを兼ねることすらできちゃいますよ。水分量の調節一つで絵の雰囲気は大きく変わってきますから、その調節になれるまで枚数をこなせばそれだけ上手くなるのでしょう。

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癒しの猫たち

2024-04-26 21:05:15 | 大人 水彩


小嶋 透明水彩

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、小嶋さんの水彩作品です。可愛らしい招き猫が1枚の画面に沢山描かれていますね!いつまでも眺めていられるような癒しの光景です。こちらは小さな招き猫の置物を持参され、それを見ながらイラスト調に仕上げていきました。イラスト調に仕上げる場合、色の組み合わせや線の運び方はより気を遣う必要がありますが、小嶋さんは全体はパステルカラーで柔らかくまとめ、1列ずつモチーフに関係を持たせ描かれていますね。
元々はデッサンや色鉛筆画で動物やそれらの置物をモチーフにして描かれてきましたが、今回イラスト調の作品を制作し「自分がやりたかったのはこれかもしれません!」と目覚めていたそうです。初めての描き方を模索しながらも、楽しんで描かれているのが作品からも伝わりますね。

シンプルな画面ながらも、猫の立体感を感じさせるために薄く明暗を作っています。猫たちも1匹1匹違った柄で描かれており、華やかな画面となっていますね。1列目の猫ちゃんの後ろに描かれている食べ物は、その子達の好物なのでしょうか?アイス好きなメガネ柄の子の表情なんて、なんとも言えない可愛らしさがあります。上2段に対し、下段は夜空を見上げる後ろ姿で描かれています。表情が見えないながらの、哀愁ある背中が味わい深い光景ですね。何を思ってそれぞれの空を見上げているのでしょうか?

猫達の穏やかな表情や、温かみのある色合いからは作者の人柄までも読み取れる様な作品。皆さんが気に入った猫ちゃんはどの子でしょうか?

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