8月9日~16日までお盆休みを頂きます。全ての授業がお休みですので、お間違えの無いようお気を付けください。
それに伴い、ブログも1週間お休みさせて頂きます。
児島 岩絵具/和紙・パネル
大竹です。今回ご紹介させていただくのは、児島さんの日本画作品です。
画面いっぱいに並んだ、愛らしい張り子のような人形たち。それぞれ色や表情、形(体型?)までが異なり、見比べているだけで物語が浮かんでくるようです。喜怒哀楽…ならぬ「喜・驚・楽・悩」とでも言いましょうか、個性豊かな表情が見る人をクスリと笑わせます。4体それぞれに春夏秋冬の花々が描かれており、夏の人形は首元が浴衣のような襟元になっていたり、冬の人形はマフラーを巻いた姿になっていたり(この子の表情、寒さに参っていそうで可愛らしいですね)と、細部にも作者の遊び心が光ります。
日本画は平面的な表現と相性が良く、このようなイラスト的な作風ともマッチしています。背景にはあえて筆跡を残し、和紙の上に塗り重ねた絵の具の質感が、柔らかくも豊かな奥行きを生み出しています。このざらっとした温かみは、日本画ならではの魅力のひとつですね。今作は茶色で塗られ、和の雰囲気に仕上げられていますが、児島さんの作風でしたらパステルカラーのような柔らかい色でも、ポップに映えて合いそうです。
古来より日本人は、ゆるくて愛嬌のあるキャラクターを生み出すことが得意な民族かもしれません。古墳時代の埴輪や、江戸時代の浮世絵に描かれた擬人化された動物たち、そして現代のご当地ゆるキャラまで——その系譜は脈々と続いています。見ているだけで心がほどけ、ふっと笑みがこぼれる…そんな日本的なかわいらしさと遊び心が、この作品に詰まっているように思います。
左 貫志 / 右 李薫 共に中1 岩絵具・和紙・パネル
こんにちは、マユカです!今回ご紹介するのは、先々週のブログに続き、ノリ先生に烈火の如く怒られる中1チームの一員、貫志と李薫の作品です。
それではまず貫志から。
貫志は夕方の陽に照らされるお城を描きました。高く建てられた日本らしい城は、高くそびえる石垣や塀を見るに、相当にセキュリティの強固なお城だと分かります。貫志は小学生のころから油絵などでも日本のお城をモチーフに絵を描いていました。好きなものだからこそ、かなり細かな書き込みが必要なお城の立体感や積まれた石、周囲の木々等で集中力を保ち、チームの中でも最後まで比較的真面目に描いていました。描くところが多く、絵の具の乗りも普段と違うものでもクオリティを高く保ちながら仕上げられていますね
李薫は竹林の間を悠々と泳ぐ金魚を描きました。写真では少し見づらいですが、赤紫の背景にオレンジの金魚と黒い金魚が泳いでいます。アクアリウムのような幻想的な風景の中にも、少しの不気味さがあり、目を離せなくなるような魅力があります。これは日本画という特徴的な画材だからこそ出せる味だと感じます。また、暗くなり過ぎないように明るい色を各所に散りばめました。左側の竹には光を受けて少し透けているようにも感じる黄色を、手前から奥へと続く桟橋の先には、沈みゆく太陽があるのか夕日が明るく周囲を照らしています。これらの光が画面を明るくし、メリハリを作ってくれているんですね。
どちらも夕焼けをバックにした作品でしたが、片やノスタルジックな雰囲気を醸し出し、片や少し不気味な印象を受ける対照的な描き方の絵。彼らの作品は、時間の感じ方を受け取り手に正しく伝えたいときに参考になるかもしれません。
左 未奈 / 右 美月 共に高2 岩絵具・和紙・パネル
ナツメです。本日も学生による日本画を2点ご紹介します!
まずは左の未奈の絵。白い百合を大きく画面に配した作品です。ぱっと見て印象的なのは、花の存在感の大きさと潔さ。白く塗られた花弁は影や濃淡を抑え、あえてのっぺりと平面的にまとめられていますが、そのぶん造形そのものの美しさが際立ち形の面白さに目がいきます。細かな陰影でリアルに寄せるのではなく、色面とシルエットの強さで見せる、とても日本画らしいアプローチです。花弁の縁の曲がりやくるりと跳ねる先端の描き方にも実際の百合をよく観察した様子がうかがえ、おおらかな花のリズムが感じられます。
背景の濃い青とのコントラストも印象的で、白い花が浮かび上がるように見える構成となっています。余白の大胆さ、色面の構成、そして重心の低い構図といった点が、作品に安定感と力強さをもたらしています。細かく描き込みすぎない、形で捉える思い切りの良さが魅力的です。
そして右の美月の作品は、夜空に咲く桜を描いたものです。こちらは非常に細やかな描写が光る一枚。空には夜雲の重なりや月の色の変化など、水分量をコントロールしながら丁寧に描かれており、水面には月光が反射し揺らぐ様子までが繊細に表現されています。桜の花にも花弁一枚一枚に濃淡がつけられ、花の密度や光の当たり具合をしっかりと観察して描き分けられているのがわかります。
また、水面の光のにじみや桜の花びらが風に乗って舞う様子など、空気や時間の流れを感じさせる描写が美しく、前後の景色まで想像させるような物語性を感じますね。全体的に暗い色調のなかに花の艶やかな朱色が映えており、心に残る作品です。
この2枚を並べて見ることでまた新たな発見があります。どちらも花というモチーフを選んでいますが、ひとつは余白や形の面白さに着目し、もうひとつは光や空気感など花のある空間に焦点を当てています。それぞれ単体で見ても魅力的ですが、並べてみることで見る視点や表現の方法の違いが際立ち、より個性が伝わる面白さを感じました。
浩子 中3 岩絵具・和紙・パネル
サヤカです。今回は学生クラスより中学三年生の日本画を2枚ご紹介します。2人とも鳥をモチーフに選びました。
まず浩子は、青色の鳥と桜をメインに、鮮やかな橙色と黄色のグラデーションが目を惹く作品を描きました。日本画の作品を参考に模写したため、陰影を抑えた簡潔な表現や、余白を生かした構成といった日本画らしさが表現に取り込まれています。全体は暖色で描かれていますが、鳥の深い青が一際印象的で、画面に軽やかさや爽やかさを生んでいます。春のぬくもりの中に、吹き抜ける心地よい風のような心地よい作品に仕上がりました。
郁人 中3 岩絵具・和紙・パネル
郁人は、雀をメインに桜や満月、五重塔といった日本的なモチーフを散りばめ、背景にも多くのこだわりを詰め込みました。山の陰影には木々の存在感がにじみ、五重塔は階段の一段一段まで細やかに描き込まれています。一方で、雲や星などの背景をデフォルメして描くことで、細部の緻密さと表現の余白のバランスが巧みに保たれています。満月を見つめる雀の姿は、物思いに耽っているのか、野心に満ちているのか…。鳥の表情は読み取れませんが、なんとも想像力を掻き立てる愛らしさがあります。
菊地 岩絵具・和紙・パネル
サトルです!ワークショップや小原先生の展示など、イベント情報が続いていますが、今日は菊地さんの日本画をご紹介します。
黄土で塗られた背景と、緻密に描かれた紫陽花の対比が効いた日本画らしさを感じる作品です。無地の背景に物が描いているという構図も日本画らしいのですが、この作品を見た時に感じる、なんとも言えない懐かしさの様な感覚こそが日本画らしさなのです。
優しい雰囲気でありながら、近くで見るとその力強い描写に驚かされます。花よりも大きく描かれた葉は葉脈だけでなく表面の微妙な凹凸や色の違いまで細かく再現されており、紫陽花は花弁一つ一つのピンクから白へのグラデーション、花弁同士の複雑な重なりを誤魔化すことなくしっかりと描き切っています。
背景をフラットに塗ると難しくなるのが、モチーフが背景に馴染まなくてシールの様になってしまいがちな所です。特に、リアルな描写がしてあると更に背景とのバランスを取るのが難しくなりますが、菊地さんは背景とぶつかる紫陽花の輪郭部分を鈍い色味で描き、葉の先端や茎の輪郭などは背景に近い明るい黄色で溶け込ませる事でバランスをとりました。また、背景を完全にフラットな塗りにするのではなく、パステルなども使い一色の中に豊かな質感を生み出したおかげで紫陽花との相性が良くなったのでしょう。
物をしっかり描く事と画面全体のバランスを取る事を両立する難しさ。この作品からは菊池さんの美しい完成度と高い技術を感じました。紫陽花の季節は初夏。季節に合わせて絵を飾ることは、生活に風情を添える日本人ならではの美しい習慣ではありますが、この絵を見ていると今ほど暑くなかった頃を思い出し、きっと冬になったら夏を思い出して暖かい気持ちになるでしょう。一般的な常識にとらわれず、一年中部屋に飾っていたくなる素敵な作品です。
小原です。今週から始まった展覧会も、折り返し地点になりました。20年ほど前から評価して頂ている美術評論家の方に「絵の中で完成されてしまっている絵は、鑑賞者の入り込む隙を与えず窮屈である。鑑賞者をおざなりに自己満足している作品に僕は興味はないんだ。時に慰め、時に励まし、クールに、優しく、相手に寄り添い、語り掛け、相手によって見え方が変わる絵が、ずっと飾って見続けられる。そういう深みが増してきたね。」と言って頂きました。ぜひ皆様にもご高覧頂ければ幸いです。
2025年7月29日(火)〜8月9日(土) 12:30〜18:00〈日曜・祝日休廊/最終日16時終了〉
あらかわ画廊|Arakawa Gallery
〒104-0061 東京都中央区銀座1-10-19 銀座一ビル3F
■有楽町線 銀座一丁目駅 出口10番11番より徒歩1分
■銀座線 京橋駅 出口2番より徒歩2分
残りの在廊予定の日は、8月5日(火)、7日(木)、8日(金)、9日(土)です。13時より詰めております。
※8月3日(日)日曜休廊、最終日8月9日(土)16時まで
動くパーツを付けた帽子
7月中に2回、『小学校受験を控える保護者様対象の講座』と、『動く立体造形の講座』を開きました。保護者様達の講座では、絵(がっかりしたことを描いてください)と立体(日本が世界に自慢できる物を作ってください)の両方を制作&プレゼンしながら導き方を勉強し、親子で参加する帽子制作の方は『飛ぶor潜ることができる帽子』を作り、自分らしさをアピールするプレゼンを学びました。
小さな種(疑問や興味)を大きく育てる(どのように思考を深めるか)、小学校受験を通して考えていって頂きたいと思います。
小学校受験のワークショップは残り1つです。あと少しですが余裕がございますので、お早めにお申し込みください。
8月22日(金)15:30-17:00 受講料10,000円(税込)
【絵画 15分で1枚、合計4枚 同じポージングで違う絵に】
与えられた課題で、一番大切な表現は何でしょう?絵画の試験では、その子の何を判断したいのでしょうか?
「気持ちが込められているか?」そしてそれが他者に、「一瞬で伝わるか?」が鍵となります。画力はすぐには上がりませんが、動き(ポージング)に注目し展開していきましょう!
作品の発表(プレゼンテーション)の仕方もお伝えします。
持ち物 16色のクレヨンかクレパス・汚れても良い服・作品を持ち帰る袋
参加方法などの詳細はこちらをご覧ください。
小学生対象の油絵ワークショップ、まだギリギリ間に合います!駆け込みで宿題をやってしまいませんか?お申込は5回以上の日時を指定してください。(1回の参加費3,000円)
当日のお申込の場合、お電話でお願いします。044-411-1600 留守番電話になっていた場合は、「油絵講座の申込み」と、お名前お電話番号を録音くだされば、こちらから折り返します。
8月 1日(金)・10:00 ~ 11:30
8月 4日(月)・10:30 ~ 12:00
8月 8日(金)・ 9:00 ~ 10:30 ・10:40 ~ 12:10
8月18日(月)・16:30 ~ 18:00
8月19日(火)・16:30 ~ 18:00
8月20日(水)・16:30 ~ 18:00
8月21日(木)・16:30 ~ 18:00
詳細はこちらをご覧ください。
小学生の油絵の下地は、補色(反対色)に近い下地を塗ることが多いですが、イメージによっては類似色、パステルカラー、ダークカラーを選択することもあります。内部生の場合、性格や好み、画力、集中できる継続時間も分かっているので、その子に合わせて変えたりすることも多いです。性格によってタッチやインパスト(厚塗り)に違いが出たり、好みの色合いがあり、デッサン力が高いほどナチュラルカラーが映え、短期決戦型にはインパクトのある色が合うなど、30年のノウハウを元にスタッフの判断で決めています。
今日はセミを作って、蝉取りをしている絵を描きました!
本日も通常授業はお休みで、夏休みワークショップな1日でした!
幼稚園児(年少・年中・年長)と小学校低学年(1年生・2年生・3年生)のどなたでもご参加できる『昆虫ワークショップ』の様子と、まだ参加できる日程をお知らせします。
クワガタは木の幹に止まらせています!
8月4日(月)13:00-14:15【トンボ】
8月5日(火)15:00-16:15【カマキリ】
8月19日(火)13:15~14:30【クワガタ】(同日15時からの回は満席ですので、講座を追加しました)
8月22日(金)13:45-15:00【カマキリ】(残席わずか)
8月26日(火)13:15~14:30【トンボ】(同日15時からの回は満席ですので、講座を追加しました)
セミはマットに貼ってリアルなレリーフのよう!トンボは長い棒の先に付けて完成です!ホントに止まっているみたい!
1日で完成しますので、夏休みの宿題にもピッタリです。きょうだいやお友達を誘って、ぜひいらしてください。たくさんの子どもたちのご参加を、お待ちしております!
内容の詳細はこちらのページをご覧ください。
毎日、夏休みワークショップが目白押し!こちらの鉛筆デッサンのワークショップもすでに2回目の講座まで終了しておりますが、残りの日程もまだ空席ございますので、再度ご案内させて頂きます。
中高生(中1・中2・中3・高1・高2・高3)と小学校高学年(4年生・5年生・6年生)合同の夏休みワークショップ、『鉛筆デッサン』です。
将来は美術系に進学を希望している学生、純粋に絵を描きたい・腕を上げたい向上心溢れる小学生など、やる気があれば誰でも参加可能です。レベルに合わせたモチーフを組み、また初心者には、鉛筆の持ち方から指導します。上級者はより完成度を上げるテクニックを学びましょう。
(前半2回の講座では経験者の高校生に、バイオリンという複雑な形のモチーフを使い、視点の水平・垂直移動の変化を正確に捉える方法を学んでもらいました。)
デッサン講座 受講料1回3,000円(税込) ◆ 持 ち 物 ◆ 鉛筆(できるだけ色々な濃さ)・消しゴム(あれば練り消しゴム)
7月30日(水) ・18:00 ~ 20:00
8月18日(月) ・10:00 ~ 12:00
当日のお申込の場合、お電話でお願いします。留守番電話になっていた場合は、「デッサン講座の申込み」と、お名前お電話番号を録音くだされば、こちらから折り返します。
くわしくはこちらをご覧ください。
左 凛 / 右 翼 共に中1 岩絵具・和紙・パネル
ひとみです。今日も学生クラスから、凛と翼の日本画作品を紹介したいと思います。二人とも同じ、鳥と自然をモチーフにして描いていますが、写実とデザイン化された絵で、だいぶ雰囲気が違いますね。
凛は緑溢れる林の中にいるメジロを描いています。メジロと林、どちらも同じ緑ということで、「色が被ってしまう!主役が目立たなくなってしまう!」と色選びに苦戦しました。けれども背景の緑=中間色に青を追加し寒色寄りに、メジロの緑には黄味寄りの暖色を選び、羽などの絶妙な色の変化を捉えることで、埋もれることなく主役を映えさせることに成功しました。実際に梅の木に止まって休憩をしているかのような生き生きとした様子を感じられる1枚になったと思います。
続いて翼は、レトロなイラストを選び模写しました。紅葉舞う水辺にとまっている鳥の様子です。しかし全くの模写ではなく、尾形光琳の屏風絵ようなモダンな要素を加えることで、オリジナリティーを出しています。あえて鳥や波紋を平面的かつ線的な描き方にすることで、装飾的でデザイン性の高い1枚に仕上がりました。画面上部に鶯色の補色となる紅葉の鮮やかな朱色を入れ、下部は統一感を大切に、水に落ち着いた色を選びました。バランスの保った画面になっています。
同じモチーフを扱った二人でしたが、色や描き方でそれぞれの良さを感じられます。凛はウグイスと木々にぐっと迫って写実に描くことに、翼は画面としてのまとまりを出すことにフォーカスをしています。どこに焦点を定めるかでここまでの違いがみられて、二人が何を大事に描いているか感じられたのではないでしょうか。
左「コクリコ(虞美人草)」板・透明水彩 / 右「ヒナゲシ(芥子)」絹本着彩・透明水彩
小原です。来週から銀座で展覧会を行いますので、お知らせです。今回は個展ではなく、画廊企画の四人展となります。画廊から与えられたテーマは『華』
私はいつも古布(絹)を媒体として描いていますが、左の作品は板です。そして右の作品は絹。
左右の順番が逆の解説になってしまいますが、
右 「ヒナゲシ(芥子)」 絹を板に貼って描き、剥がしたもの
左 「コクリコ(虞美人草)」 剥がした後に絵具が染み込んだ板
一枚描いて2つの作品が出来る、シルクスクリーン版画のような制作方法を試してみました。どちらも展示してあり、我ながらユニークな作品だと感じています。ちなみにDM用に画廊に送った2枚でしたが、オーナーが代表作として選んだのは板の方でした。より朦朧体な作風の板か、少々写実が入った絹か、好みが分かれる作品かと思いますので、お客様に感想を伺うのを楽しみにしております。
2025年7月29日(火)〜8月9日(土) 12:30〜18:00〈日曜・祝日休廊/最終日16時終了〉
あらかわ画廊|Arakawa Gallery
〒104-0061 東京都中央区銀座1-10-19 銀座一ビル3F
■有楽町線 銀座一丁目駅 出口10番11番より徒歩1分
■銀座線 京橋駅 出口2番より徒歩2分
東京方面についでがございましたら、ぜひお立ち寄り下さいませ。
私が在廊予定の日は、7月29日(火)、31日(木)、8月1日(金)、2日(土)、5日(火)、7日(木)、8日(金)、9日(土)です。13時より詰めております。
※8月3日(日)日曜休廊、最終日8月9日(土)16時まで
小川 岩絵具/和紙・パネル
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、小川さんによる日本画です。岩絵具を用いて、夜の水辺に佇むカエルの姿を描いています。
カエルは、古くは鳥獣戯画に登場するユーモラスな姿から、河鍋暁斎のような近代絵師がその魅力に取り憑かれ、墓標にまでカエルを彫ったほど、日本人に長く親しまれてきたモチーフです。現代でも「カエルのうた」や可愛らしいイラストなど、幅広い表現の中に生き続けています。
今まで油彩で生き物や風景を題材に取り組まれてきた小川さんですが、今回はそんなカエルを日本画ならではの繊細な質感と静かな美しさを活かして描かれています。
背景の深い暗さの中には、かすかに青や紫の色味が溶け込み、静寂に包まれた水辺の空気を思わせます。その中で、鮮やかな黄緑のカエルが美しく浮かび上がり、画面に生命感とリズムを与えていますね。特にカエルの喉の袋、鳴嚢(めいのう)のふくらんだ透明感のある質感は見事で、今まさに声が響いてきそうな臨場感があり、自然の息吹を感じさせてくれます。
葉の質感もまた素晴らしく、岩絵具の粒子感と相まって、しっとりと湿った水辺の空気を感じるような味わい深い表現に仕上がっています。
この作品をじっと眺めていると、夜の水辺にひとり佇み、自然の中にひそむ小さな命の息づかいに声に耳を澄ませているような気持ちになります。日々慌ただしく過ぎていく時間の中で、ふと立ち止まりたくなるような、静かな感情を呼び起こす一枚だと思います。
結衣 中3 岩絵具・和紙・パネル
こんにちは、マユカです!こんかいも学生たちの日本画を紹介していきますよ!
結衣は丸まって眠るキツネを描きました。実はこの絵、参考にしている写真には背景の落ち葉や木々がなく、彼女が自分で考えて描いたものになります。狐のイメージとも合致しますし、その上季節感を感じることが出来るため、より情景的で美しい仕上がりになっています。狐がふかふかとした落ち葉の寝床で気持ちよさそうに寝ている様子が伝わって来て、見ていてなんだかほっこりとしますね。彼女はこの作品で狐の毛並みの描写にこだわり、一本一本細い筆で絵の具を塗り重ね、尻尾から背中までふっくらと描いています。思わず触って見たくなるようなふわふわとした立体感を大事にしていることが伺えますね。
芽生 中3 岩絵具・和紙・パネル
芽生はホワイトタイガーを描きました。模様をあえて鮮やかなピンク色にし、一部黒にするという何とも大胆で面白い描き方をしました。黒く残した模様の位置も絶妙で、ここ以外の部分をさらに黒くしてしまうとピンクの良さが薄くなってしまいますし、逆に全部ピンクにしてしまうと鮮やかすぎて締まりがなくなってしまうため、今の配色がベストと言えます。目や背景には金を散らし、威厳を感じさせるような仕上がりになっていますね。虎の顔が半分しか出ていないからこそ、眼力にフォーカスして描写しており、口を見せるよりも上品で、虎の強く気高い力を感じるような作品です。