モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

ペン画に拘る

2024-10-12 20:30:43 | 大人 パステル・色鉛筆・他


野上 ペン

岩田です。今回は、野上さんのペン画をご紹介します。
こちらは、野上さんが持っている合体ロボットなのですが、調べたら多分「DXドンオニタイジン」というやつ。良く見ると、桃太郎にでてくる猿、キジ、犬、鬼たちがそれぞれ変形合体して、手足となって、一体のロボットを作り上げているという代物。

部分部分、細かいパーツで形成されていて、最初は、これをペンで描きたいっていうけど、どこまで描けるのだろうと思っていたのだけど、コツコツと緻密に描き続けて、ようやく完成に至ったという作品。

野上さんの使っているピグマのミリペンは、ペン先の太さが多様なのだけど、一番細いもので0.03ミリ。
しかし、この太さでもデティールの影などを塗っていくには、まだ太いかなぁと感じてしまうくらいで、しまいには、その一番細いペンを使い込んだ末、更に細くなったラインで描くという徹底っぷりを見せていました。

複雑な形状にも拘わらず、しっかり立体感も表現されており、長い時間をかけて、ここまで描ききったことに、ただただ感心してしまいます。

当初から、ペン画に拘り続けてきた作者ですが、このモチーフを描いたことで、相当な自信を得たはず。耐水性のペンなので、ここいらでペンの上から色を使って塗って欲しいなぁと感じつつ、黒ペンのみを使って、こんなものも描けるのか―という道も追求して欲しい。
とにかくこれからが楽しみな、野上さんの描きっぷりでした。

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毎日が物語の一ページ

2024-09-05 23:35:57 | 大人 パステル・色鉛筆・他


小山 色鉛筆

マユカです!今回は小山さんの作品をご紹介します。
色鉛筆で活き活きと描かれたこちらの2枚。娘さんの日常のさりげない仕草を描かれていらっしゃいます。今回でお嬢さんの絵も3枚目となりました。左の作品はその活き活きとした雰囲気が良く伝わってきます。色鉛筆の暖かなタッチが優しいイメージを与え、どこかほっこりとするような印象です。どちらもデッサンがしっかりととられているため人の顔を描いた際に生じるパーツのバランスに対する違和感が全くなく、小山さんの観察力、描写力の高さが伺えます。

娘さんのお顔ももちろんですが、着ている服の自然なたゆみやひろがりがその表情をさらに明るく魅せたり、性格を表す手助けになっていますね、楽しげな声が聞こえてきそうな雰囲気がとても伝わってきました。右の絵は泣きそうな顔にも見えますが、電気屋のテレビ画面にくぎ付けになっているショットだそうです。(内容は悲しいor怖い場面なのかもしれませんね。)子どもは集中している時に目を凝らすため、眉を顰めたりする表情筋の仕草が魅力です。そこを丁寧に描写されているため、パッと見たときにどんな表情なのか想像しやすく、絵に物語性が生まれます。物語性といっても、特別なストーリーが必要というわけではなく「走って楽しかった」「集中してテレビを見た」のように日常で起こる何でもないことだって「物語性」であると私は思います。
言葉のない状態で感情などの複雑な物を表現するためには表情が一番です。こういった何気ない表情は特に、いつかどこかで見たような懐かしさを感じるため、優しい気分にさせてくれるのでしょう。

特別な出来事がなくても、子供たちにとっては毎日が新しいことの連続で、大人にとってなんでもないことでも、子供たちが大きくなっても記憶に残ったり、その子の人生にとって大きなものになったりすることがあります。そんな何気ない一瞬を発見して画面に描写した小山さんの作品は、お父さんが娘さんに贈る人生の本の挿絵、その1ページのようにも見えました。

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視覚から伝わる味

2024-08-29 23:45:05 | 大人 パステル・色鉛筆・他


高橋 色鉛筆

こんにちは!マユカです。今回は高橋さんの作品をご紹介していきたいと思います。

入会して数枚描いて頂く基礎デッサンが終わった後、初めての着彩作品は『色鉛筆』を選ばれました。色鉛筆は混色しなくても沢山の色数がありますので、少しずつ塗り重ねたり、直感的に色を乗せることが出来るのでとても扱いやすい画材です。
いつか描いてみたいと、取っておかれたクリスマスケーキの写真を雑誌から切り取りお持ちになり、丁寧に制作されました。

高橋さんが選んだモチーフは食べ物ですから、鮮やかな色を影に乗せることで全体的に明るく美味しそうに魅せています。暖色には食べ物を美味しそうに魅せる効果があるため、クリームやフルーツだけでなく、線画部分にも赤っぽい色が使用され、深みが出ており 側面の影の付け方やお皿から、丁寧に塗り重ねた筆跡を感じますね。最初に「色鉛筆は扱いやすい画材」と書きましたが、難点はガリガリと強い筆致で描いてしまうと画用紙がつぶれ、塗り重ねることが出来なくなることです。
しかし、高橋さんの作品はそれぞれのパーツにたくさんの色が使われていますね。これは優しく描き進めた証拠でもあり、見ていて単調に感じない利点もあるわけです。
周囲にあるモチーフも、少し上から見下ろした構図で形を取るのは大変難しいですが、しっかりと整合性が取れているため違和感なく見ることが出来ますね。

スイーツだけでなく、トーストやお刺身などの食べ物でも黄色や赤、オレンジなどの暖色を意識して使うと美味しそうに魅せることが出来ます。ダイニングの照明が温かみのある色が選ばれるのと同じ効果です。食べ物を描く際はぜひ意識して暖色を使うようにしてみてくださいね!

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課題を乗り越えながら

2024-05-18 22:43:34 | 大人 パステル・色鉛筆・他


近藤 色鉛筆

岩田です。今回は、近藤さんの作品をご紹介します。色鉛筆の楽しさを実感し、様々なものを描いている近藤さん。

以前描いたこちらの作品バイクの色鉛筆画も記憶に新しいかもしれませんが、時間をかけ丁寧に塗りこみ描き切るといったスタイル。
今までも、女性のキャラクターを描くことがありましたが、今回のように情景と絡めて描くことは初めてだと記憶しています。

先ず、描く前にどのようなキャラクターにするか、本などを参考にしながらコスチュームや髪型といった容姿、それをどういう場所に置くのかといったことを実に慎重に計画立てていくのが見て取れます。作者にとって一つのシチュエーションを決めていく作業は、自身の空想力を掻き立てる最も楽しい作業なのかもしれません。

今回は、先に人物、後で背景といった順番で作品を仕上げていったのですが、両者が上手く溶け込まず苦労していたようです。
確かに近藤さんの描き方を見ていると、全体を同時並行的にというより、部分的に描きながら最終的に全てが繋がっていくという感じ。ご自身にとっても、今回の作品は、一つの課題を見つけることができた良い機会になったことでしょう。

今後も様々な課題を乗り越えながら、色鉛筆で描くことを極めていってください。

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偶然の産物

2024-05-15 22:18:20 | 大人 パステル・色鉛筆・他


佐原 木版画・一版多色刷り

 

黄砂に喉をやられてしまいました、ナツメです。本日は月曜大人クラスの佐原さんの作品をご紹介します!

今回は2017年の有馬記念の様子を版画にされました。力強くターフを蹴る疾走感が伝わってきますね。色版をいくつか使い分ける版画の浮世絵などとは違い、今回は一版多色刷りという一つの版に数色の絵の具を乗せる方法で印刷しています。あまり水で溶かない状態の水彩絵具を直接板の上に塗り、絵の具が乾かない内に刷ります(下図が印刷後の版です)色ごとに版を分けないため色入れ作業に時間がかかりますが、ずれずに綺麗な仕上がりになるのが特徴です。

尻尾の毛や手綱、筋肉の凹凸など非常に細かい線も丁寧に彫っています。黒い紙に刷るため彫った部分が黒く浮き上がるのですが、それを活かしてまるで競走馬が浮かび上がって見えてくるかのようにシルエットで形を捉えていますね。背景の白の掠れ方も相まって、息を呑むような会場の臨場感も伝わってきます。版画ではインクが筆のようにコントロールできず、掠れや溜まり、滲みなど偶発的に生まれる表情が魅力の一つです。彫っている間にイメージした完成図のようにはいかず、思い通りにならないからこそ、今回の掠れのような相乗効果が生まれた時の喜びもひとしおです。

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アルバムの1ページ目に

2024-03-13 23:58:33 | 大人 パステル・色鉛筆・他


小山 色鉛筆

春休みの終わりが刻一刻と迫ってきて戦慄しております、ナツメです。

本日は水曜大人クラスより小山さんの作品をご紹介します!入会後のデッサンを終えて初めての色鉛筆画で、娘さんを描かれました。

ようやく離乳食が食べられるようになった頃でしょうか、つられて笑ってしまいそうになるほど屈託のない笑顔が可愛らしいですね!このあどけなさを出すために表情に苦戦されていましたが、少しずつ調整を重ねた末に納得のいくものになりました。

色鉛筆は初チャレンジとのことでしたが、塗り方の使い分けがお上手です。髪の毛の暗い箇所にははっきりと影を描き、生えたばかりの細い毛髪を表現している一方で、肌の陰影は何色もの色鉛筆をを使い分けながら頬っぺたの柔らかさを感じるような優しいグラデーションを作っています。赤ちゃんの手はよくクリームパンに例えられると聞きますが、まさにそれくらいぷくぷくとした立体感が出ていますね。色鉛筆特有の温かみがやわらかな印象と非常によくマッチしています。

作品を見ている内に段々と小山さんの家のアルバムを覗いているような気分になってきました。1ページ目に引き続き、これからどんな成長記録が並んでいくのか、今から楽しみです。

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持ち主の人柄まで感じる絵

2024-02-09 20:53:13 | 大人 パステル・色鉛筆・他


近藤 色鉛筆

大竹です。今回ご紹介させて頂くのは、近藤さんの色鉛筆作品です。アトリエに長年置いてあるエンジニアブーツですので、今まで沢山の方が描かれています。その殆どが鉛筆デッサンでしたが、近藤さんは敢えてモノクロのモチーフを色鉛筆でトライしています。

色鉛筆の筆跡が見えなくなる程塗られた黒は、皮のしっとりとした質感や艶をよく表現しています。年季が入ったモノですので、使用感を出すために細かなシワや傷まで丁寧に描写されており、作者のこだわりが感じられます。私も学生の頃、運動靴のデッサンをした事がありますが、観察してみると使い古された靴に出来やすいシワの場所や、擦り切れやすい部分があり面白く感じたことを覚えています。なので、こちらの作品の光やシワの入れ方にとても共感してしまいます。
それぞれの素材の描き分けもお見事ですね。金属の明暗のメリハリや、茶色いラバー製ミッドソールの重量感もよく表現されています。色鉛筆は油彩や水彩に比べるとどうしても弱い印象になってしまいがちですが、紙の凹凸が見えなくなるほど描き込まれ、色鉛筆特有の繊細で柔らかな風合いが合わさり、目を離せない存在感が生まれました。作者の丁寧に制作に向かう姿勢が反映されている為か、このブーツを履いていた人の人柄までもを想像させてくれるようです。

ちなみに前回ご紹介した色鉛筆画はこちらです。前作のご自身の持ち物である思い入れのあるバイクや風景と違い、アトリエのモチーフを描かれていたので、冷静な目線で描かれている様に思います。是非様々な物に目を向けて、制作を楽しんで行って頂けたらと思います。

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眼差しを感じる作品

2024-01-25 22:52:06 | 大人 パステル・色鉛筆・他


横山 色鉛筆

自炊が楽しいです、マユカです!最近はミネストローネを作りました。さて今回は横山さんの作品をご紹介していきたいと思います!

優しい色合いのこちらの作品、横山さんのお友達の赤ちゃんを色鉛筆で描かれました。むっちりとしたほっぺやぷにぷにの腕、赤ちゃんらしいやわらかさを感じる肌の質感と、お母さんの柔らかくも少し骨ばった大人の手の書き分けが出来ているため、似たような肌色が隣り合っていても、リアリティを感じます。肌色も、母親は黄色がかっていて、赤ちゃんは赤みがかっていたりと少しの差にこだわりを感じますね。
また、色鉛筆特有の温かみあるタッチや質感が優しい空間を感じさせており、ふわふわとした新生児のぱやぱやとした髪の毛なんかは特に色鉛筆での表現がマッチしています。

横山さんは赤ちゃんの肌を可愛くやわらかく魅せるのに気を使われていましたが、赤ちゃんを主役にお母さんを大胆にトリミングしているので、暗い紺のスカートが穴に見えてしまったりと、赤ちゃんを取り巻く環境の処理なども苦労されました。よく見れば哺乳瓶のガラスの質感や、赤ちゃんが身に着けているお洋服の花柄の細かさに目を見張るものがあります。哺乳瓶越しに見える手や指の歪みからも、しっかりと写真を観察して描かれていることが伝わってきます。

今回の作品では大人が赤ちゃんを優しく見守っている様子を感じることが出来るのですが、きっとそれは、お母さんの抱っこする手の仕草が優しい所と、赤ちゃんの視線がしっかりと写真を撮っている人に向けられており、その表情が自然だからかなと思います。視線の相手や、その表情を想像するだけでとても暖かな気持ちになれる作品ですね。

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積み重ねて

2024-01-24 23:39:49 | 大人 パステル・色鉛筆・他


勘太郎 ペン・キャンバス / 右 鉛筆

気づけば一月も終わりそうなことに戦慄しています、ナツメです。本日は水曜大人クラスの勘太郎の作品をご紹介します!

高校生から大学生になった今でも通ってくれている勘太郎。「おじいちゃんとおばあちゃんのプレゼントを、今日中に描かないといけない」と、スクエアのミニキャンバスに、下書き無しでスラスラと、有言実行2時間で完成させてしまいました。ラフな線で特徴を捉えて、お洒落!タイルの絵付けにも見えて、こんなコースターも良いなぁと思ってしまいました。「ここまで愛のこもった贈り物を貰ったら大喜び間違いなしだよ!」と話していたのですが、後日送ったところ「嬉しかったよ、素敵に描いてくれてありがとう!!」と言われたそうです。勘太郎は度々御祖父母に絵を描いているのですが、今回背景に書いている文字を見ても仲の良さを感じられて微笑ましいですね。余白の使い方のテクニックにはいつも感動しています。

そして右の鉛筆画ではペンやインクなどの黒いモチーフが紙上に置かれている側、左上には猫の手が。私の家にいる猫は机の上にある小物を片っ端から床に叩き落とすのですが、このペン達の運命やいかに⁉︎一本猫の手が加わるだけでも途端に物語性が強くなり、想像の幅が広がりますね!黒いモチーフ群にもしっかりと明暗の差をつけた上で、明るい箇所や色の薄いところにハーフトーンを使い、鉛筆の色が綺麗に見える画面になっています。

制作にとても意欲的なので、このままどんどん作品の幅を広げ、自分の表現したいことを的確な方法で伝えることができるように積み重ねを続けてほしいです。

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学生掛け軸10

2024-01-11 10:45:46 | 大人 パステル・色鉛筆・他


黒永 ペン 左右は合成

年始の挨拶に使わせてもらったペン画です。作品の講評を元旦に書くのも…と思って今日に。今社会人ですが、中学生の頃からアトリエに来ている人なので、私の中ではずっと子ども扱い。タイトルも『学生掛け軸10』と紹介してしまいました。

君に技術面で言う事は何もない。濃淡が効かないペンだけでこんな肉感的に(ムチムチ丸々太った芋虫をぶにっと掴んだら、よじれた時のボリュームを思い出す)、しかも前後関係まで表現できる人はそういないよ。もっと自信を持って、自分を大切にな。こんな素晴らしいペン画を、ぺらっぺらのコピー用紙に描いて「やれやれ。ノリ先生の『辰年の龍を描け!』の要望に応えたから、もうこれでOKですよね?じゃっ!」と、捨てて帰ろうとするの止めて。
結局もらいました。(笑)

本日で『学生掛け軸シリーズ』終了です。好きな事を好きなだけ時間を掛けて制作できる学生クラスで一斉に同じテーマの課題をやると、一人ひとりの個性が浮き彫りになり、比較できて非常に面白い授業でした。心身共に成長期の12歳から18歳の人間ですから、少し経てば興味も性格も今とは変わっていくでしょう。美術を通して人間観察できるなんて楽しすぎる!作品紹介なのか、作家紹介なのか分からないブログとなってしまったのも、致し方ないですな!ワハハハハ

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黒インクから生まれる躍動感

2023-11-16 22:48:56 | 大人 パステル・色鉛筆・他


佐藤M ペン画

マユカです!今回は佐藤さんの作品をご紹介していきたいと思います!

軽やかに駆けていく馬の姿、ふわりと宙に舞う尻尾と後ろ足がその躍動感を美しく見せています。パカラッと軽快でリズミカルな足音すら聞こえてきそうです。
今回の作品は半年前にご紹介したアクリル画とは打って変わって、ペンのみで乗馬の風景を描かれました。ハッチングなどで繊細に陰影を描写し、眩しい太陽光に溶けるように光に当たった部分を白飛びさせた為、競馬ウマの体重500㎏の重量感を出されるのに苦労されました。踏み込んだ足の力強さや、その筋肉のたくましさを見れば、その重さや力強さが伝わってきますね。

スケッチのようにさらりと書かれているように見えますが、どの個所を見ても細かに描写されており、馬は勿論のこと、上にまたがる人間もよく見れば服のシワや横顔の曲線の美しさなど、馬に引けを取らないクオリティで描写されていることが分かります。お互いに同じ進度で描き切られているために、絵として浮いたりせず、その場の雰囲気や空気感をより現実的に感じさせてくれるようです。同じくらいの完成度、というのは簡単なように見えて意外と難しいんですよね。
また、絵の重心が一点しかない馬の左足で支えられているという、不安定な構図をしているため、見ている人たちは少しのスリルをもってこの作品を見ることになるでしょう。このスリルが、絵をより印象深くさせてくれるのです。

色は付いていなくとも、その構図と時間をかけた描写によって、魅力あふれる一枚へと昇華された今回の作品。ペン一本でここまでの表現ができるのは、佐藤さんのデッサン力の高さと、光の扱い方が美しいためであると感じました。

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初めての画材を使って

2023-11-11 00:43:36 | 大人 パステル・色鉛筆・他


小嶋 模写 水彩色鉛筆・色鉛筆

岩田です。今日は寒かったなー。本日は、小嶋さんの作品をご紹介します。
こちらは、絵ハガキを模写したものですが、2匹のヒヨドリ?が赤い実をつばんでいる様子が可愛らしく描かれていますね。

小嶋さんは、入会後、最初に描く基本的なデッサンを終えて、初めて色を使った作品に取り組みました。色鉛筆や水彩色鉛筆を駆使し描かれた作品ですが、色をしっかりと乗せ、メリハリある誠実な印象の作品に仕上がりました。

水彩色鉛筆は、色をそのまま塗ることもできるし、上から水を付けた筆でぼかしたり、色同士を混色するなど、工夫次第で表現の幅が広がる描画材だと思います。

今回は、鳥や植物などは色鉛筆で、主に背景に水彩色鉛筆を使って描いていますが、モチーフを描く際にも水彩色鉛筆の特性を活かし、遠くにいくに従ってぼかしていけば、画面の中にも更に空間が広がって、オリジナリティ溢れる作品へと昇華していくことでしょう。

初めて使う描画材で、ここまで描いたことは作者にとっても自信になったことと思います。今後も色々な素材にチャレンジしていって下さい。

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同じ景色も塗り方ひとつで

2023-09-23 15:43:15 | 大人 パステル・色鉛筆・他


横山 オイルパステル

マユカです。今回は横山さんの作品をご紹介します。

横山さんにとってはアトリエでの初めてのカラー素材。オイルパステルを使用した風景画です。左は白い画用紙に、下塗りとして薄く透明水彩を塗ってから描きました。右は水色の色画用紙に描いています。
だからでしょうか、右の方は朝日を受けてぼうっと光っているような、少し神々しさを感じる仕上がりになっており、右は青空の澄み渡る昼頃の、爽やかな印象を受けます。同じ構図ではありますが、受ける印象がだいぶ変わって見えてくるあたりから、モネの「積みわら」を連想しました。あの作品は陽の光の移り変わりや空気感を朧気ながらも確実に描写したものですが、今回の横山さんの作品も、左から順に朝方~昼頃というようなグラデーションしていく時間を表現しているように見えてきます。
柔らかでありながらもどこか自然の厳しさを感じるような、壮大な空気感を上手く表現されています。山の立体感を出す為わずかに描かれた細かな凹凸が、ごつごつとした雰囲気をかもしだしつつ、描きすぎないことで下方の広大な自然と繋がります。手前の湖もてらてらとした光沢感や、その深さを感じさせるような濃くしっかりとした色遣いにより、奥の山を一層引き立てていますね。

オイルパステルは子供たちが使うクレヨンとよく似ていますが、固めでしっかり描けるクレヨンに比べると、柔らかくて伸びがよいため、色をぼかしたり混ぜたりしやすいのが特徴です。油絵のような立体感や迫力も出しやすいので、油絵の上から併用して使われることもあるほどです。
横山さんの作品ではクレヨン感は薄く、雲より下を見れば油彩と言われても、「そうかも」と思ってしまうほどに何度も何色も塗り重ねてあり、複雑な印象を与える仕上がりになっています。
画用紙の目が残るように描けばさらっとした印象が与えられますし、目をつぶすようにしっかりと塗り重ねれば、重厚感のある絵になります。オイルパステルはもちろん、水彩や油彩等でも塗り方ひとつで見ている人への伝わり方は大きく変わってきます!与えたい印象によって表現を変え、描き比べてみるのも面白いかもしれませんね。

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現代の浮世絵

2023-09-21 22:29:49 | 大人 パステル・色鉛筆・他


鷲見 『八重洲2023』 油性マジック・アクリル

サヤカです!今回は大人クラスの鷲見さんの作品をご紹介します。

この絵を見れば「あ、あそこかぁ」とピンとくる方も多いはず。タイトルにもありますが、鷲見さんの馴染みのある八重洲の街並みをモチーフに制作されています。
しかし「江戸街並みの浮世絵風に描きたい。キャンバスにアクリル画で。」とおっしゃったのが8月。しかも「せっかくだから間に合わせて展覧会にも出品したい!」との欲張り発言から、この絵が出来上がりました。(皆さまご存じ搬入提出期限は831日でした。提出されたのは99日でした。しかも購入してこられた額が薄い紙用だったので、木枠から取り外したそうです。)
アクリルで下塗りをした時点で「わ?アクリル難しい!拭き取っちゃおう。」キャンバスに下描きした際に「ん?麻のキャンバス、ざらざらして描きづらい。」ペンを入れながら「え?油性マジック、思ったより細かい所が描けない。」と次々に難題にぶつかるも、ポジティブに前進されました。最後の発言は「完成度ではなく、出品することに意義がある!と思うことにします。」でした。潔い!カッコいい!見習いたい!

試行錯誤を経て完成した作品は、現代の都市の中心を描いていながら、伝統的な浮世絵の雰囲気を持つ絶妙なマッチングを表現した作品になりました。人々が高いところからの眺めを楽しむのは今も昔も共通で、江戸時代にも山やお寺のお堂などの絶景スポットが多くあったそうです。浮世絵には、そういった場所に集まる人々がよく描かれています。鷲見さんの作品にも共通していますね。浮世絵風の絵をアクリル(と言うよりはペン画)という全く違う手法で描くことで、浮世絵の表現が現代的に洗練されています。失敗を臆せず、新しいことに挑戦する鷲見さんの作品がこれからも楽しみです!

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線を重ねていく

2023-09-14 23:57:45 | 大人 パステル・色鉛筆・他


黒永 ペン画

既に課題に追われています!マユカです!今回は黒永さんの作品をご紹介します。

こちらは黒永さんがペンで描かれた多彩な生き物や植物、手などをコラージュして一枚の作品にしました。動物の手足の筋肉などを捉え、特徴がしっかりと表れたポージングはもちろんのこと、手のようにすべすべとした質感の物でも、違和感なくしっかりと描けています。
これらは黒永さんの優れたデッサン力に加え、じっくりと対象を観察する鋭い観察眼と根気によるものでしょう。ミリペンのペン軸の種類を輪郭や毛並みによって使い分けるテクニックは、一朝一夕で身に付くものではありません。長い期間ご自宅でも制作を重ねられた結果、ここまで卓越した技術となったそうです。

ペン画の影の描き方はデッサンに近いものがあります。ハッチングの技法を私は主に使っていましたが、使う画材が『黒か白』しかないのでグレーの調子を出すためには細かく網目にしたり、斜線を引いてみたりと様々な工夫が必要です。粗密が上手くいかず、白くスカスカに見えてしまったり、黒くし過ぎ穴に見えてしまったり、ハイライトで手数を抜いた部分と密度の詰まった箇所のバランスが大変なのです。
そのため、通常は描けば描くほど絵は上達するとは言いますが、ペン画にとっては毛の密度の差だったり、動物の自然な仕草、皮膚の皺の寄り方というのは、ただやみくもに描き続けるだけでは習得が難しいと思います。リアリティや実在感をもって描けるというのは、黒永さんが様々な資料に目を通して沢山インプットし、その吸収した技術をより多くアウトプットした結果でしょう。この完璧な世界…筆を動かすのが楽しくてしょうがない、という黒永さんの気持の弾みを感じました。

ちなみにミリペン(ドローイングペン)は、私も愛用していますが、漫画やイラスト・製図作業を行う時の必需品とも言えるアイテムです。さらさら書けるので軽いメモなどにも使うことがありますね。
最近は私もデジタルで描く方が多くなりましたが、ザクザクと描き進めていく感覚が懐かしくも感じます。画面が少しずつ埋められていくあの感じは、パズルなどが好きな方であればハマってしまうかもしれません。
ミリペンはアナログ派に欠かせぬ画材。他のペンよりも繊細なコントロールがしやすく、にじまないので思い通りに美しく描けます。ペンのみで描かれた作品はペン画と呼ばれ、筆や鉛筆とはまた大きく違った仕上がり方をしますので、ペン一本での作品作りに皆様も是非挑戦していただければなぁと思います。

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