山田 アクリル
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは山田さんのアクリル作品です。
左の作品はレンブラントの「窓辺の女」を模写しています。レンブラントの事実上の後妻ヘンドリッキエを描いているとされており、胸元に見えるネックレスの様な物は家政婦の証である鍵だとか。暗闇から光を浮かび上がらせるような明暗が特徴的ですね。アクリルでありながら、油彩の様な重厚な色合いは流石の描写力です。アクリルは隠蔽力が強い絵の具ですが、それを薄く重ねていく事で下の色を影響させています。白く滑らかな肌も、よくよく見てみると血管の色が透けた赤みや青みを感じる事が出来ます。身に纏うタップリと厚みを持った布は肌と比べ筆のザラザラとした筆跡を残す様な書き方がされています。こちらもよく観察し、アクリルで再現されていますね。白い物を白く見せる為に、白ではない色を使用しているのが見て取れるかと思います。この色のコントロールが出来る様になってくると、一段と表現の幅が広がりますね。
そして右側の作品はフクロウの写真集を参考に描かれています。夜行性のフクロウがうとうとと眠たげにも見える事から、もうすぐ夜明けなのでしょうか。柔らかな陽光がフクロウの住処を浮かび上がらせています。光が当たる木目の細かな質感が美しいですね。まだ夜が残っている様な闇の部分も丁寧に色を重ねて作られており、よく目を凝らすとフクロウの後ろのうろが見えてきたり、奥にも木々が並んでいるのが見えてきますね。
夜から朝へ移り変わる森の風景は、我々が動き出す頃に眠りに就く夜行性の生き物との境界線の様にも思えます。朝は慌ただしく時間に追われる私達から見ると、朝に微睡むフクロウの姿にはなんだか心が和みますね。(少し羨ましくもあります!)確かな描写力と、どこか和やかで温かみのある作風は、作者の心のうちが表れているのでしょう。
こうして並べると、どちらも暗闇から浮かび上がる様な色合いになっていますね!黒の扱いは難しい物ですが、ただチューブの黒をそのまま使うのではなく、様々な色を少しずつ重ねて作られた暗闇は、観る人の視線を奥へと誘う様な魅力を持っています。