駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

一方を聞いて沙汰をしない

2016年07月24日 | 医療

       

 今日は曇りの予報だったが陽が差している。きっと日中は暑くなるだろう。寄る年波か、暑さには耐え難くなってはいるが、夏景色は大好きだ。夏は何と言っても若者の季節だ。若かった時代を思い出すから好きなのか、夏の生命感が好きなのかよく分からないが、夏の日射しは心に焼き付く。

 巨泉の奥さんが麻薬の誤投与で死期を早めたと悔やんでいると報道されている。本当だろうか?。もし本当にそう言っていたとしても、多分、夫を失った無念さ、やり場のない気持ちが言わせたもので、半年もすれば和らいで行くものだろうと思う。八十二歳、傍目には十全の人生を全うされたと見える。もう、ご本人の意見を聞くことは出来ないが、巨泉さんは誤投与とは言わないような気がする。

 おそらく誤投与はマスコミの作りだした表現だろう。どのような方が治療に当たられたかは存じ上げないが、そんなことを言われては非常に残念だろうと思う。そうした患者医療者関係であったとすれば、そこには勘違いがあると思う。一方を聞いて沙汰すなという篤姫の言葉を思い出す。そうではあるが医療者は口を開かないほうがいい。法的に訴えられれば別だが、そうでなければ黙っていればいい。

 今は看取るのは高齢者ばかりなので、嫌な思いをすることは殆ど無いが、病院勤めの頃は若い人を看取ることもあったので、時に、一部の家族から他の病院にすれば良かったなどと恨みがましいことを言われたこともあった。それはやり場のない辛さの表現で、時間と共に和らいでゆくものと思う。あるいは多少恨まれても、それで家族の気持ちが済むならそれでも良いと思ってきた。ご家族の希望される結果は出なかったかも知れないが、出来ることはやらせて戴いた。 

コメント
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