駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

篤姫の言葉

2015年10月24日 | 診療

           

 朝夕は冷え込むが日中は動くと汗ばむ、日本でもハロウィンが商業的な後押しもあってかだいぶん浸透してきた。ハロウィンや文化の日周辺は恐らく最も過ごしやすい季節の一つだろうと思う。私はもう少し遅い十二月が好きなのだが。

 これは女性に多いのだけれども、自分を中心にした都合の良いストーリーを展開される方がおられる。多くの場合多少認知が入っている。例えばSさんはもう二十五年当院に通っておられる女性なのだが、八十歳を目前に色々問題が出てきた。五十代の頃は中々の美人で、それもあってか独り身でもどこか余裕を感じたのだが、二年ほど前から足腰の痛みが出て、ちょっとお化粧っ気がなくなったなと思っていたら、少しずつ物忘れが出てきた。介護保険を勧め、要支援2になったのだが、ケアマネージャーが時々しか顔を出さないとか、買い物が億劫とか生活の大変さを訴えられるようになった。暫く、実家を継いでいる弟さんの家に身を寄せておられたのだが、私の話を聞いてくれない、お嫁さんが毛嫌いすると、二週間ほどで戻ってきてしまった。

 「先生から弟に私を置くように頼んでくれ」と言われる。頼むくらいなら出来ますよとお返事したのだが。看護師がケアマネに話を聞くと殆ど毎日電話があり、しょっちゅう顔を出していると言う。弟さんの方も大歓迎ではないかも知れないが、離れを空け普通の扱いをしていただけらしい。

 勿論、誰の言うことが本当なのかは分からないのだが、Sさんの話通りではなさそうだ。いくら掛かり付け医でも介入できる範囲は限られているし、出過ぎたことはできない。言葉を添えるくらいはしてあげようと思うが、一方の話を聞いて沙汰をすなと篤姫の言葉を思い出した。

コメント
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