駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

[戦争のための平和論]

2015年08月30日 | 

                      

 書くまいと思えど政治の危うさかな。あっという間に、橋下大阪市長がいずれはやるだろうなと思っていた行動に出た。電光石火でやってもゆっくりやっても、信用できないことには変わりない。大阪の人はどう対応されるのだろう。

 安保法案の国会での審議をきちんとフォロウ出来ていないが、法案の理解が深まったかどうかに関心を持ち続けている。安保法案を考える参考になる本を見付けて読んだので紹介したい。「戦争のための平和論」(ちくま新書)、著者は早稲田大学教授の植木知可子さん。防衛庁防衛研究所主任研究員だった方で、海外での研究生活や外国でも講義の経験もあり、数多くの政治家を直に知っておられる。この本は安保法案に賛成反対というのではなく、戦争というものを多面的に解説することによって、具体的な平和の均衡を浮かび上がらせている。

 戦争は殺し合いなので、局地戦でも何千何万もの命が奪われてしまう。気に食わないからやっつけようなどと発砲していい訳がない。少なくとも、この本に書かれている程度の内容を国民全てが共有して、安保法案を考える必要があると思った。

 昼飯をカツカレーにするか、天麩羅蕎麦にするかを決めるのは難しいことではないし、特別な理屈や条件はいらない。誰も文句は言わない。しかし、安保法案のような法案の是非はとても簡単には決められない。決めるにはそれなりの知識と論考が必要だ。そのことを、もっと多くの人が気付かなくてはと思う。歴史的な事実もそれぞれの国によって認識の仕方が違い、何処が正しいなどとはとても簡単には言えない。他国との関係も、時空の広がりを持った重層的なものだ。若い人の中には親米的な日本が、昔アメリカと戦争していたなんて本当ですかと驚く子も少なくないと聞く。

 私はNHKの地上波とBSで植木さんに「戦争のための平和論」を六十分で十回講義して貰ったらと思う。見逃した人のために再放送もしたらいい。厳正に中立かどうかは分からない、内容も不十分な部分もあるだろう。それでも中立に近く適当な分量であるのは間違いない。最近使われている右とか左とかは空疎で底の浅い言葉で使いたくはないが、見解の相違するという意味で右も左も振り上げた拳を下ろして受講したらよいと思う。議論の基礎が出来る。

コメント
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