駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

インフルエンザ予防接種減少

2013年11月27日 | 診療

         

 今年のインフルエンザ予防接種が少ない。例年より10-15%少なくなる見通しだ。このままだと購入したワクチンを一部返却しなければならない。受付の話では若い人の接種が特に減っているという。料金はこの十年変わっていないし、十一月に入ってからは寒くなってきているし、なぜ減ってきたのかはっきりしない。インフルエンザ関連の報道が少ないせいだろうか。恐らくそれが一番の理由のように思われる。新聞やネットで流行の兆しとか、芸能人が肺炎を併発して入院などの記事が出れば、多少は接種希望者が増えるだろう。

 そうしたニュースが出ても一時のようにワクチンが払底するような殺到はない感じもある。厚生省が副作用訴訟を恐れ任意接種に切り替えてから火が消えたように打たれなくなった予防接種が、二十年ほど前の老人施設での流行で死亡者が出たのを機に再び打たれるようになったのだが、そうした記憶も薄れ今ではインフルエンザのニュース性もなくなり、再び接種が減少に転ずるのだろうか。ワクチン製造会社はいい面の皮で、一昨年あたりは足りなくなって叱られ、それではと量産すると余ったから返却という事態になる。

 購入する医院の方は一応お客様なので、返却不能などと言えば、「なに」。とか「そうか」。という不穏な反応必至で、卸問屋は強く出られず、ワクチン製造会社は残った在庫を恨めしげに眺めることになるだろう。インフルエンザの流行度と国民の意識の変化を読み切れなかった会社の責任と言われても釈然としないと思う。

 インフルエンザワクチンには当たり外れがある(製造するのに数ヶ月掛かるため、流行株を予測して製造するため)し、大人での予防効果は6-7割なのだが、接種に踏み切る動機は日本人得意のその場その時の空気のようだ。

コメント
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