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駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

酒煙草の申告

2012年07月02日 | 診療

    

 初診の患者には必ず酒煙草をやるかどうか聞くことにしている。単純そうな質問なのだが、いろいろなことが分かる。

 酒の場合は酒を日本酒と取り、ウイスキーの水割りを何杯も飲んでいるのに「酒はー、飲まない」。などと答える親父が居るので要注意だ。微かな逡巡を捉えウイスキー、ビール、ワイン、焼酎はと畳みかけて確かめる必要がある。で、今はアルコールは?と、聞くようにしている。

 「たまに」。とか「時々」。と聞いて、それをそのまま鵜呑みにしてカルテに書いてはいけない。もう四十年以上前に教えられたことだが、問診は投網と同じで、だんだん狭めて特定しておかないと不正確なものになる。時々と答えたら月に何回ぐらいと聞き返す、しばしば週に二回とか三回とか、とても時々とはいえない頻回の答えが返ってくる。月に二三回と聞いて、それならたいしたことはないと思っても確認は必要、稀に10日に一度でも前後不覚になるまで深酒をする人が居るのだ。

 煙草も吸ってないとか二三本とかいう返事が返ってきたら、必ず普段はと確認しないといけない。医院に来るのは調子が悪くて来るので、昨日からは三本しか吸っていないとか、吸おうとしても咳込んで吸えないとかいった状態にあることが多く、それを答えてくる患者が居るからだ。

 この辺は微妙な患者心理で、「煙草を吸うか」。という質問は当然普段のことを聞いているわけで、それを分かっていても、これ幸い?嘘ではないからと昨日からや今日はを省いて吸ってないとか二三本と答えてくる。

 どういうわけか、酒煙草に関しては医者に過少申告する患者が多い。殆ど反射的なので、うっかりすると騙されてしまう。可愛い女の子や同僚の前では吹きまくる親父も例外ではない。尤も、本当はと耳打ちしてくれる妻君の方は多少過大申告しているかもしれない。

 世に溢れる過少申告過大申告、その一端を垣間見ているわけだが、世界を見渡せば日本人なんて可愛いもんかもしれない。

コメント (6)
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