駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

医師への道

2009年07月17日 | 医療
 先日の緩和ケアの講習会でお会いした女医さん、落ち着いて研修医にしてはちょっと薹が立っている感じがしたのだが、外連味がなく頭の回転が速く、これはなかなか使い物になるなあと思った。
 「あの子、良いですね」。と部長に聞くと3年目なのだが良くできるので、大変助かると言う。「彼女一旦社会人になってから医者になったんで三十過ぎているんですよ」。と有名大学と有名自動車メーカーを挙げた。そうかと腑に落ちた。
 我々の時代には老けた同級生で稀に3浪とか4浪とかいう人が居たが、他大学を出た人はほとんど居なかった。この数年で、何名か一旦他の学部を卒業し、数年働いてから医師になった研修医に会ったので、世の中の流れが少し変わってきたのかも知れない。
 臨床医、特に内科系、になるのであれば、社会人の経験はプラスになる。臨床には常識が必須なので、社会人の経験がは生きるのだ。
 経済的に余裕があり学業の成績も良く特別扱いで育てられると、妙な万能感を持つことがあり、人間を診る臨床医の適性に欠けたまま現場に出てくる人達がいる。多くは現実に依って矯めされてゆくが、その間、患者周囲本人は相当の犠牲を払う事になる。僅か数名に接しただけだが、社会人の経験がある医師は常識と共感する心に恵まれており、この人は良い医者になるなあという印象が残っている。外科系の場合は技術の習得が必要なので、ある程度の若さが必要だろうが、内科系の医師であれば三十の声を聞いても間に合う気がする。
 但し、勿論例外はあるのだろうが四十代では難しいそうだ。試験勉強得意の高校教師が一念発起、難関の医学部に入ったはよいが、卒業後頭が固くて使い物にならず医局長が匙を投げたという話を聞いたことがある。頭と心に柔軟性がないとまったく新しい仕事は難しいのかも知れない。
 20代後半の社会人に4年で医師になる道を開けば、彼らは早く一人前になる素地があるので医師不足が叫ばれる今、大変有効だと思う。
 尤も文科省厚労省の幹部の脳味噌にそうした思考を受け入れる弾力性が残っているか、疑問だが。
コメント (4)
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