駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

患者とバトル

2009年07月07日 | 診療
 いろいろな患者さんが居られる。自分では自分のことはよくわからないが、患者さんも数多く来て下さるし、職員も居着いているから、概ね正常で常識人?と自己判断している。
 さて、年に数回患者さんと言い争いになる。つい先日も偏屈爺さん、と決めつけてはフェアではないかもしれないがそう言いたい、と一戦交えた。
 このお爺さん、神経質で几帳面、診察室の出来事を逐一メモに取っておられる。どうも自己解釈による詳細なメモというのは、あとで人を咎めるために使われることが多く、あんまり歓迎しない習慣だ。
 血圧がやや高く記銘力が僅かに低下している他はさしたる障害はない。何かの拍子(興奮した時、思い通りに行かない時)に息切れがすると訴えられる。これは総合病院で精査して貰い、精神的なものと結論が出ている。残念ながらご本人はその説明に納得しておられない。
 血圧は変動が大きく、日によって正常だったりびっくりするほど高かったりする。今日は181/92。
 「なんでこんなに血圧が高いんだ」。
 「この前は正常だったのに変ですね」。
 「このごろ、また散歩をすると息が切れるようになった」。
 「どうして息が切れるんでしょうか、ほら酸素の飽和度は正常ですよ。どうもよくわかりませんね」。(息切れは主観なので、検査値と合わないことはしばしばある、正直精神的なものとしか説明できないことがある)。
 しばしの沈黙。「なんだあんたは医者のくせに、わからんだの変だのと言って、どういうことだ」。
 「いや、普通はこんなに血圧が上がり下がりすることはないもんですから、息切れがあると言われても肺や心臓は悪くないんですよ」。
 「もう一年も通っているのに何だその言い方は。二回目に来た時、次は家内と一緒に来るように言ったな、どういうことだ。ここに書いてある」。と指さす。どうして突然、昔のことを持ち出すのだろうか?。
 「それは、そうした方がよく分かって頂けると思ったからですよ」。と看護師の助け船。
 「納得できないんでしたら、一度他の医院で見て頂いたら如何でしょう」。
 「なにい、医者が他へ行けだとか、そんなことを言っていいのか」。あまり良くないかもしれない。
 「わしはここでいいんだ」。えっどうしてと思う。あっけにとられる医師と看護師を残して「また来る」。と帰ってしまった。 

 これでよいとは思わない。しかし、どうすれば良いのかよく分からない。たくさんの患者さんを待たせる訳にはいかない。口論のために待たされて怒声を聞いた患者さんは「他へ行けばよいのに」。と味方をしてくれるが、私も大人げないというか感情的になった、反省すべきところがありそうだ。はて、次の対戦は?
コメント
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