駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

介護保険認定格差問題

2008年10月23日 | 医療
 介護保険制度が始まり8年、試験期間を入れれば9年になる。介護審査はまず調査員の対象者訪問調査結果から機械的(コンピュータで)に介護度を判定し、次いでその結果を医師の意見書と共に認定審査委員会に提出して、そこで複数の医療介護経験者の眼で疑問判定が是正される仕組みになっている。8年間の間にいろいろな改定があり、その都度審査委員は講習会で判定審査法変更の要点を教えられてきた(出席しないあるいはできない委員も相当数いる)。
 日本の介護度判定法はきめ細かく合理的且つ情緒的に作られており、かなり納得のゆくものになりつつある。ちょっと微に入り細を穿ち、病膏肓の感じもあるが。
 時折、作成と審査の手間暇とそれに掛かる費用が莫大なので、その労力と金額を介護に直接回せば個人負担が激減するとの批判を、介護保険に非協力的な医師から聞かされる。正確な数字を知らないし、基準なしでの補助が上手くできるか疑問なので、どの程度妥当な批判か分からない。確かに無駄な費用は極力削る必要があると思う(当初付いていた弁当はなくなった)。しかし発足時から協力してきた医師としては、日本でしか出来ない盆栽的というか駅弁的というか、このきめ細かい制度は世界に誇れる仕組みになってきていると思う。
 さて、そうした制度なのだが、作成審査の手間費用の他に大きな問題が出てきている。それは地域による判定の格差なのだ。たとえば秋田県と大阪府(全くの例え)で介護度の分布に倍以上の格差があるのは実態から考えてあり得ない。どうも、この格差は調査と審査の現場から生まれているらしいのが明らかになってきた。要するに伝言ゲームの誤聞増幅という仕組みで、厚労省で地方公務員が習得した調査審査法が末端に行くほど様々に変容して伝わり、市町村ごとの調査判定基準、審査判定基準がバラバラになってきているのだ。
 確かに時間を掛けて作り上げた整合性のある制度は美しい。しかし改訂ごとに、変容して末端現場に伝わり、実際の運用はちぐはぐになってきている。
 飛躍した提案かもしれないが、本当の天下り制度を作るべきだ。官僚は末端に就職し、正真正銘の平職員として介護施設などで働いてみる必要がある。どうして歪が生ずるのか、下から見て見なければわからない。そうすれば整えられた制度が末端で歪んで運用されるのを防ぐ手立てがいくつか見いだされるだろう。
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