新型インフルエンザ対策の困難

　インフルエンザウイルスは水禽常在のＲＮＡウイルスで、家禽牛豚人に感染して病原性を発揮します。日本では毎年冬に流行しますが、数年毎に大流行となって学級閉鎖などを余儀なくさせ、社会的に大きな悪影響を及ぼします。
　インフルエンザがやっかいなのは連続性抗原変異（変装する）を起こすため、過去にインフルエンザに罹かったことのある人も変異（変装）したウイルスが免疫監視網をくぐり抜けて、再感染が成立してしまうところにあります。麻疹や水痘のように一度罹れば二度とは罹らないとはいかないのです。
　連続性変異では変化が小さいため、免疫監視機構でかなり変装が見破られ、爆発的な流行（パンデミック）とはならないのですが、遺伝子が変異でなく交雑すると変化が大きく、変装というより別人化（これを新型インフルエンザと呼ぶ）するので、免疫監視機構は無力で、爆発的流行（パンデミック）を起こします。しかもこの別人化した時、同時に凶悪化すると致死率も高くなるので更に怖いのです。
　困ったことに既に交雑によって別人化した新型ウイルス（Ｈ５Ｎ１）の存在が鳥で確かめられています。この新型ウイルスは毒性も強く感染すると半数近い人が死亡するかもしれないと考えられています（スペイン風邪よりも質が悪い）。今のところこの新型ウイルスＨ５Ｎ１は人から人への感染力がありませんので、鳥から人への感染で東南アジア中心に９０名程度の死亡者数に留まっています。しかし、ひとたび人から人への感染力を獲得すれば爆発的な流行（パンデミック）を起こし、世界で億に達する死亡者が出るかもしれないのです。これが何時起こるかはわかりませんが、近い将来に起きる可能性はあるのです。
　現在、世界の感染症専門家と行政が防御策を考えています。便利が裏目にでることもあり、感染防御の第一対策の隔離が、一日あれば地球の裏側まで移動できる現在では上手く機能しない可能性があり、いろいろ専門家も頭を悩ませているようです。それと一概には責められないのですが、医療関係者の中には尻込みをされる方も多く、どのような第一線の診療体制を取るかも課題です。
　今現在進行形で治療薬の備蓄やワクチン製造など、知恵を絞った対策が建てられつつあります。
　問題はたくさんありますが、個人的には情報の適切な伝達と国民の冷静な対応が鍵と思っています。日本人の鼎の軽重が問われることになるでしょう。