Various Topics 2

海外、日本、10代から90代までの友人・知人との会話から見えてきたもの
※旧Various Topics(OCN)

フランス映画『ミナ』とユダヤ人-9(戦後生まれのユダヤ系の人たちの試行錯誤)

2024年06月29日 | 芸術・本・映画・TV・音楽

フランス映画『ミナ』とユダヤ人-6(ミナと4人の男性) - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

の末尾に疑問を書きました。

ミナはエテルとの友情が何より大切なものでしたが、後で考えると、エテルがいることで、貧乏くじを引くことになりました。

「フランソワ」がミナのもとを訪れた時に彼と会ったのはエテル。「セルジュ」がミナの元を離れたきっかけを作ったのもエテル。意図しなくとも、ダナを奪った形になり、非ユダヤ人と結婚したエテル。

最終的に、エテルに希望を与え、簡単にキャンセルして絶望させたのもエテル。

人生が変わるきっかけを作ったエテル-そんなエテルをミナはどうして求め続けたのでしょうか。

 

これは、単純に「ミナが不器用で、エテルの他に何でも話せる友人がいなかった」ということだけでも説明がつくことでもあり、それは「ユダヤ人同士の友情」に拘る必要はない-ともいえるでしょう。

反対に、エテルは再会したミナに「あなたのようになろうとしたけど、なれなかった」と振り向いていうセリフの方が、「戦後に生まれたユダヤ人」として意味があったように思えてきました。

エテルの家は勝ち組ユダヤ人の一族で、家族は戦争のトラウマもないようだし、そればかりか非ユダヤ人を差別する母親がいたりします。エテルが子供のころ太ってなければこのユダヤ人のネットワークで人気者になり、疎外感を感じる-みじめさを感じる-ことはなかったと思いますが、それを経験してしまいます。

ミナは常に疎外感から逃げずに強く、自分の意思をもつけれど、ミナは正反対だったーエテルにとってミナは手本でもあったのではないかと。

大人になり、「肥満から脱却」すると、自信と狡猾さを身に着けるエテルですが、大人になっても母親(はたから見れば、新興宗教にはまっているお金持ちの母」と同じに見えます。)にとらわれてしまうことから脱却できないエテルは、母親から脱却しているというだけでも、ミナはうらやましい存在でい続けました。

エテルの母親が死んだときに、エテルにとって「ミナ」は不要になる-エテルは最後にミナとの約束を、詫びることなく「土曜はダメになった、また電話する」と軽く伝言で済まし、ミナを絶望に追いやるー。

 

ユダヤ人といっても、戦前から世俗的ユダヤ人、クリスチャンや無宗教の相手と結婚をするユダヤ人、改宗したユダヤ人(偽装も含む)がいました。

戦後はそうしたユダヤ系の人々がいて、2世、3世の人たちが生まれてきました。

 

ミナの言った、「あなたのようになろうとしたけど、なれなかった」という言葉は、ユダヤ系同士でなくとも出てきますが、この映画では、「戦後のユダヤ系の人たちの試行錯誤」を二人の女性を通して現しているように思えます。

フランス映画『ミナ』とユダヤ人-5(タイトルが『ミナ』の理由は?) - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

では、

二人の主人公ミナとエテル。なぜ題名が二人の名前でなく、『ミナ』、原題は『Mina Tannengaum』というミナのフルネイムなのでしょうか?

と疑問を書きましたが、ミナは「戦後生まれのユダヤ人たちの試行錯誤の被害者」として、監督はミナの名だけを題名にしたのだろうと、勝手に納得しました。

 

シリーズ:

フランス映画『ミナ』とユダヤ人-1 - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

フランス映画『ミナ』とユダヤ人-2(ダリダ) - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

フランス映画『ミナ』とユダヤ人-3(セルジュ・ゲンズブール) - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

フランス映画『ミナ』とユダヤ人-4(「ゴイ」とは) - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

フランス映画『ミナ』とユダヤ人-5(タイトルが『ミナ』の理由は?) - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

フランス映画『ミナ』とユダヤ人-6(ミナと4人の男性) - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

フランス映画『ミナ』とユダヤ人-7(マルティーヌ・デュゴウソン) - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

フランス映画『ミナ』とユダヤ人-8(エテル役のエルザ・ジルベルスタイン) - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

 

今回はこの記事で最後としますが、この映画は続編で、エテル以外、ミナの周りの人達を中心に描いてほしかったです。

ミナの母親をミナが「実は自分の母親ではなかったのに気が付いた」と言いますが、それは「ミナの母親が自分ではなく、常に過去を追っていた」ことに気が付いたということだと思うのです。そんな母親を描いてほしかったし、途中で南仏に移住したフランソワ、元同棲相手のセルジュ(彼が映画の最初に出てきますが。彼の作品の色は明るくなっています)、そしてほんの少ししか出てこない美術教師や、ミナの父親のことなど。

 

参考:

欧州映画ファン - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

ミナ(洋画 / 1993) - 動画配信 | U-NEXT 31日間無料トライアル (unext.jp)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« フランス映画『アメリ』とア... | トップ | 夫を殺害された?フランチェ... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

芸術・本・映画・TV・音楽」カテゴリの最新記事