三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

櫻井義秀、中西尋子『統一教会』4 韓国の日本人信者

2012年04月06日 | 問題のある考え

『統一教会』によると、正体を隠しての勧誘、霊感商法などの違法な伝道、物品販売活動、献金強要、そして女性を大量に韓国の農村に送り込むといった活動をし、信者の時間とお金と労力を搾り取るのは、世界中の統一教会の中でも日本だけとのこと。

統一教会は国別に機能を特化させている。
韓国―コングロマリット的経済活動や社会事業も行う「花形スター」
アメリカ―保守政治や信教の自由を擁護するロビィング活動を積極的に行う「問題児」
日本―「金のなる木」として利用する
「青年信者の多くは合同結婚式まで数年間ただ同然で使われ、壮婦と呼ばれる既婚婦人達は自己破産や家族崩壊の瀬戸際まで資産を献金するよう迫られている。信者であれ、一般市民であれ、統一教会に関わる人々は生活の基盤を失っていく」
これが金のなる木ということである。
「日本が統一教会にとって絞れば絞るだけの資金が出てくる財布だと韓国の統一教会幹部達に認識される」

では、韓国では統一教会はどのように受けとめられているのか。
「韓国でもキリスト教関係者による反統一教会の動きがないわけではない。しかし、日本における全国霊感商法対策弁護士連絡会のような損害賠償請求による問題の告発は皆無である。統一教会信者や元信者の親や家族で結成されている父母の会のような団体の消息も聞かない」

韓国では統一教会は被害者が出るような社会問題化する活動をしていないから、異端的宗教ではあっても、カルト視はされていない。
もう一つ、韓国の統一教会は「宗教団体というよりも傘下に多くの団体、会社を持つ事業体(ある種の財閥)と捉えられている」ということもある。

そして、韓国の農村部の独身男性やその親には統一教会は結婚相談所として受け入れられている。
韓国の農村男性の結婚難は深刻で、結婚できないことを悲観して自殺した農村男性は1980年代に入って300余名もいる。
外国人女性との国際結婚が増加し、1999年には国際結婚は結婚件数全体の1.2%だったが、2005年には13.6%に増えている。
特に全羅南道では22.68%にもなっている。
2007年、慶尚北道の農漁村男性の5割が国際結婚。

韓日祝福を受けて渡韓した女性信者は7000人になるとされる。
韓国で暮らす日本人男性信者は300人ほど。

日本人女性がわざわざ韓国の農村(言葉が通じない、習慣が違う、農業をしたことがない)まで行って、見知らぬ男性と結婚する気になるのはなぜか。
それは次のように教え込まれているからである。
「人間の堕落におけるアダムとエバが、韓国と日本の立場であるとされる。堕落エバはアダムに「負債」があるため、日本が韓国に「侍り」、人材と資金の供給を担うのは当然とされる。とりわけ、「エバ国家」のエバたる日本人女性が合同結婚式において、韓国男性と祝福を受け、韓国で生活することが好ましいとされ、韓日の国際結婚によって、両国の「恩讐が清算される」といわれている」

ところが、信仰のある夫や舅姑はほとんどいないし、信仰を持っていても熱心ではない。
韓国では「日本でのような体系化された教化プログラムで原理を学ぶこともなければ、献身することもない。献金や布教が強要されるわけでもない」からである。
「献金や家庭での信仰実践も厳密なものではなく、行わなかったとしても咎められることはない」
というわけで、韓国では日本でのように心身をすり減らすことはない。

しかし、「生活が楽でないことは自他共に認めるところである」
収入が不安定な中で、舅姑に仕え、問題ある夫には逆らわず、夫が失業したときには自分が働いて支える。
「韓日祝福家庭は、教義上は理想家庭とされながら、実際は日本人女性達が経済的・精神的にぎりぎりの生活を続けている。その暮らしを甘受させているのが、女性は人類を堕落させたエバという教説と、日本は朝鮮半島を植民地支配したという歴史である」

『本郷人』という韓国の日本人信者向けの新聞に出された「しあわせいっぱいになる本郷女性講座」にこんなことが書かれてあるそうだ。

夫が酒を飲む、殴る、教会に来ない、学歴が低いなどの問題点について「今のような事情を抱えるようになった背景をまず知らなければなりません」と説き、「お酒を飲むようになってしまった背景にも、私の国と私の先祖が関与していることは、はっきりと知らなければならないのです」と日本の植民地支配に原因があるとする。
「日本人は、かつて韓国を侵略し、植民地にした。従軍慰安婦や強制連行で、韓国の人々特に女性達にたくさんの苦しみを与えた。その従軍慰安婦や強制連行された女性の霊が日本人女性に乗り移っている。だから、日本にいる悪霊は、他の国の悪霊よりも恐ろしい」

日本人妻たちは「信仰があるから夫や生活に我慢してやっていける」と明言する。
その信仰とはどのような信仰か。
「一つは理想世界「地上天国」の実現であり、もう一つは罪の清算である」

罪の清算は統一教会の言葉でいえば「蕩減」である。
「罪とは何か。それは原罪、遺伝罪、連帯罪、自犯罪という四つである。「堕落論」によれば、原罪はアダム、エバの堕落によって人類全てが受け継いだ罪、遺伝罪は先祖が犯した罪、連帯罪は国家や民俗などが犯した罪、自犯罪は自分が犯した罪である。このうち原罪は祝福を受けることによって清算される。残りの三つ、遺伝罪、連帯罪、自犯罪は善行の積み重ねによって清算しなければならない。日本人女性信者達の韓国での生活はこの三つの罪の清算のためにある」
これはオウム真理教の説くカルマの法則と同じ考えである。
つまり、統一教会で言う罪とはカルマ(業)である。

ただし、自分が作ったカルマだけが問題になるのではない。
日本人が作った罪(=カルマ)の報いが、韓国人の夫が仕事をせず、酒を飲んでは妻を殴ることなのだから、日本人妻にとってはそれに甘んじることが罪の清算(カルマ落とし)になる。
離婚や脱会して韓国の生活をやめることは蕩減が重くなるので、地獄で永遠に苦しむ。
どちらを選びますか、という話になり、女性信者は苦しくても韓国にとどまり、無原罪の子どもを産むほうを選ぶ。

「在韓の日本人信者は、苦労を地上天国のため、霊界で幸せに暮らすためには必要な宗教実践と受けとめて暮らしている」

米本和広『我らの不快な隣人』に、韓国の農村で暮らす日本人女性信者が紹介されているが、よほど恵まれた人たちだと思う。

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